悟りのダーティーヒーロー〜釈迦ヶ岳トレラン〜

Posted by yukon780 on 11.2013 釈迦ヶ岳/三重 6 comments 0 trackback
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泣きながら絶壁の上を駆け抜ける男がいる。

場所は早朝の鈴鹿山脈・釈迦ヶ岳。


なぜ彼はこんな朝っぱらからこんな絶壁の上を走っているのか?

しかもその表情はひとつも楽しそうではなく、苦しみと悲しみで満たされてる。

ある種いつもの光景と言えなくは無い。

彼に一体何があったのか?



全てはチーム・マサカズのゲリMが「日曜に釈迦ヶ岳行くけど誰か行く人いる?」と呼びかけた事から始まった。

もちろん奥穂高岳から1ヶ月、ひたすら育児にまみれてどこにも登ってない僕としては渡りに船。

しかし見事に嫁によって「お留守番&部屋のお掃除命令」が発令され、いつものように光の速さで参加断念が決定した。


しかし無念にまみれたまま登山予定日の天気予報を見てみると、見事なる「大快晴予報」。

これには北アルプスの革命戦で「大快晴男宣言」をしたこの男としては、行かないわけにはいかない。


登山前日の土曜日。

彼は背中にこーたろくんを背負って、りんたろくんと遊びながら根性で部屋を掃除しまくった。

汗ダクダクになりながら、途中途中にオムツチェンジ、離乳食&ミルク、怪獣ごっこ、お散歩などを絡ませての一世一代のパワー掃除。

全ては翌日の登山参加権を勝ち取る為だ。


そして根性で全てのお掃除(模様替え含む)を強制的に一日で終わらせ、帰宅して来た嫁に魂の懇願。

これにより「よくやった」とのお褒めのお言葉を拝領し、奴隷としての役目を見事に果たす事に成功。

そして「朝10時のこーちゃんのミルクまでに帰ってくるなら行っていい」という、非常に厳しい条件での外出許可を勝ち取ったのだ。


これにて釈迦ヶ岳登山参加決定。

もちろん朝の8時半までには下山を完了してないといけないから、僕だけトレランスタイルでの参加。

ゲリM・小木K・矢作Cが辿る周回コースを逆走して走って行けば、いずれどこかで彼らに巡り会うはずだ。


「それじゃ参加と言うよりただの単独行じゃないか」という声が聞こえてきそうだが、形だけでも「みんなで登山しました」という結果が欲しい。

例えどんな形であろうと、快晴が保証されている山に行かないわけにはいかないのだ。


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朝3時半。

早朝トレイルランナーとはこの時間から動き出さなければならない。


昨夜嫁に「夜中に物音立ててこーちゃん起こしたら殺す。その時点で山は無しだ。」と言われているから、必要以上に息を潜め過ぎて窒息死する所だった。

そしていつものように飼い犬に吠えられながら家を脱出。


やがて5時半くらいに駐車場に着き、まだ暗い中を登山口目指してロードラン。

当たり前だが、10月下旬ともなれば早朝は猛烈に寒い。

体はプルプル震え、登山前に早くも「要救助者」の気配だ。

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しかし私は早朝の世界でしか生きられない「早朝育児トレイルランナー」。

例えどんなに寒くても、育児の身でアウトドアを楽しむにはこのくらいの苦行は受け入れる必要がある。

とにかくチャッと登って、チャッと下って、早くこーたろくんにミルクを飲ませてあげないといけないのだ。

「じゃあ行かなきゃ良いじゃないか」と人は言うだろう。

しかし快晴が確実に約束された休日に家なんかにいたら、それこそ私は狂い死にしてしまう悲しき生き物なのだ。



そして登山口到着前から過酷な試練が続く。

だって道がずっと冷たい川になってるじゃないのさ。

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僕のトレランシューズは防水のものじゃないから、非常にハードなる行軍。

ここなんてもう小川にしか見えないが、これでもちゃんとした道なのだ。

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早くも靴下を濡らしてしまい、絶望的な出だしとなってしまった。

まあ直前まで台風だったからしょうがない。

でもこの苦難を乗り越えて山頂まで行けば、いわゆる「台風一過の快晴」ってやつが待ってるはず。

今は冷たくて苦しくても我慢一徹、マゾ一徹。


そして早くも足をグチョグチョに濡らしてやっと登山道へ。

ここで朝から応援に駆けつけてくれた「丸八ポン太郎」さんと記念撮影。

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ポン太郎さんも、同じような腹を持った早朝トレラン野郎に親近感を持ってくれたんだろう。

さあ、今日も張り切って脂肪を燃やすぞ。

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今回は「ハト峰〜猫岳〜釈迦ヶ岳」の縦走周回コース。

ゲリM・小木K・矢作Cの、いわゆる「裏切り燕返しトリオ」(参考記事:常念山脈北上野郎3〜燕岳編・銀座のマゾの物語〜)は、正規ルートの「釈迦ヶ岳〜猫岳〜ハト峰」。

この逆走周回コースなら、どこかで奴らに出くわすはずだ。


そして冷えた体をホットにするべく、ワッセワッセと登山道を駆け上がる。

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しかしこういうおいしい場所では、また戻ってアングルを変えた己撮りタイムに突入してしまうので無駄に進んで行かない。

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一体この場所で何往復しただろうか?

毎度ながらこの余計な作業がなければもっと早く事は済むんだが、そうはいかないのがマゾのマゾたる所以。

同じ場所を何度も行き来しながらの無駄な体力消耗にこそ、マゾの真実があると信じてやまないのだ。

しかもそういう事するのは決まってハードな場所になって来るので、そんな所を一人で何度も往復すると若干吐き気と空しさをもよおす事しばしばだ。

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何よりも、前日の育児&お掃除の疲労と寝不足により体も重い。

しかし早朝育児トレイルランナーとして生きて行く事を誓った以上、この程度で泣き言を言ってはいけない。

全ては快晴の釈迦ヶ岳を楽しむ為の前菜マゾだと思うしかない。


そして30分で見事「ハト峰」が見えて来た。

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そしてまずは第一関門「ハト峰」を制覇だ。

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いいぞ、出だしは快調だ。

天気も十分に「大快晴」を予感させるもので、思わずショーシャンクの空状態で喜び爆発。

やはり北アルプスで「大快晴男宣言」をした僕には、もうモクモクさんとの縁は断ち切れたのだ。


そしてここから猫岳に向けて、実に快適な縦走ランのスタートだ。

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猛烈に気持ちのいいトレイルが続く。

さすが「全国トレランコースガイド100」に選出されただけはある。

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以前僕がこの釈迦ヶ岳をご紹介した時は「鈴鹿セブンで一番不人気な山」と書いたものだが、登山スタイルを変えるだけで「鈴鹿セブンで一番快適なトレイル」になるんだから不思議だ。

だから世の女性達も、どうか見方を変えて僕を見て欲しい。

きっと見方を変えれば、今まで気付かなかった素敵なダンディズムを見いだす事が出来るはず。

いつまでも変態扱いしてたら見えるものも見えないぞ。

一度でいいから、私にもモテ期とやらを体験させてくれないだろうか?


なんて不純な事を考えていたら、ついに「お釈迦さま」の怒りに触れてしまった。

急に辺り一面が不穏な空気に包まれ出した。

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木々がうごめいているようで、なんとも禍々しい世界観。

それと同時に「ポツリポツリ」と、何やら聞き覚えのある音が聞こえ出す。

やがてそれは小雨となって男を静かに包み込んだ。

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降水確率0%の朝のミステリー。

僕は0%という確率は、「全く可能性はないもの」と学校で教わった気がするがいかがだろうか?


お釈迦さまの怒りの怪奇現象は続く。

そこからは確かに晴れ渡る鈴鹿の朝の街の景色が見えるが、

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画面を引いてみると、僕の頭上だけがおかしな事になっていやしないか?

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実に分かりやすく、この雲の部分だけが局地的に雨が降っている。

今日ここでドラマの雨シーン撮影日だとは聞いていないぞ。

何故私の半径数百mにだけ雨が降っているのだ?


一方で街とは逆方向を見ると、なんとも輝かしい「虹」が登場しているではないか。

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僕の記憶が確かならば、虹というものは「雨上がりに現れるもの」と認識している。

では今私が「雨に打たれながら」見ているあれは何なんだ?

イヤミなのか?


そして雨に打たれているのに、なぜか晴れてるという矛盾。

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私は馬鹿にされているのか?


景色は見えて、虹も見えて、晴れているのに、なぜか「雨に打たれて寒い」という不思議なマゾ体験。

ハト峰での「ショーシャンク浮かれ」と「ダンディズム宣言」が相当気に障ったらしく、随分とお釈迦さまのお怒りに触れてしまったようだ。


そんな収まらないお釈迦さまの怒りで、やがてはこんな事に。



これは降水確率0%・大快晴の世界で撮影された映像です。


そしてこの光景を撮影した後、即座にスクリーンショットで撮影した現在地の天気予報がこれです。

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もうここまで来たら、なんとか日本政府も僕を何かの平和利用で役立ててもらえないだろうか?

ダムの貯水不足、水田開発、深刻な火事現場など、この能力を発揮できる場がどこかにあるはずだ。

誰かの役に立ってるって思わないと、心のダムの幸せ不足がより深刻なものになってしまう。


完全なる大快晴と聞いたから、昨日あんなに頑張って無理してやって来たのに。

雨で濡れた体が朝のキリリと冷えた寒風に晒されて、みるみる弱って行く1匹のドブネズミ。

グローブも置いて来てるから、手の冷たさも尋常じゃない。

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やはりどう見方を変えた所で、こいつにはダンディズムのカケラも無い。

所詮腐ったマゾは腐ったままなのだ。


やがて寒さでプルプル震えながら、なんとか第二関門「猫岳」に到達。

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山頂からの眺めも、さすがは「快晴予報の日」って感じだ。

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何だろうか?この楽しさゼロの世界は。

僕は楽しいトレランをしに来たはずが、またいつもの修行のお時間になっていやしないか。


でもこの猫岳から釈迦ヶ岳までの尾根道が、なんとも快適なトレイルと言うじゃない。

いよいよここからは、景色と紅葉を楽しみながらの天国タイムが始まる。

さあ、快晴のグッドトレイルを堪能しようじゃないか。

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ほほう、もうそのグッドトレイルの姿すら見せてはくれないと言うのか。

天国タイムというより、もはや地獄への一本道にしか見えないがいかがだろうか?


そしてすっかり全身ずぶ濡れで、防水じゃないトレランシューズは「履く冷清水」という新商品に変化している。

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一歩一歩「ぐちゃっ、ぐちゃっ」というサウンドを奏で、非常にマゾには心地よい。


景色も悪霊感たっぷりの陰惨な世界観へ。

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そこをさすらう孤独な悪霊。

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一足早く釈迦ヶ岳で開催されたハッピーハロウィン大会。

その悪霊は「トリックorマゾ...。悪い子はいねえか。マゾい奴はいねえか...。」とブツブツ呟きながら山中をさまよう。


やがて今にも向こうから「ラストサムライ」が突進してきそうな世界に。

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やがて森の中から荒武者達が登場して襲いかかる。

必死でこのサムライ達から逃れようと走るマゾ・クルーズ。

追いつかれたら間違いなく殺されてしまう。


しかしあと少しの所でサムライ達に追いつかれ、男はあえなく捕獲された。

やがて彼は殺害され、「めり込みの刑」にて死体を晒された。

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サムライとお釈迦さまを怒らせてしまった男の悲しき末路。


しかし彼はまだ生きていた。

なんとかその場を脱出し、追っ手を気にしながら最終目的地の釈迦ヶ岳山頂を目指す。

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「ここまで来たらきっと山頂で報われる」というパターンだけを信じて突き進む。

快晴を確約された日に、ひとつも景色を見られないなんて事が許されていいはずがない。

そこは慈悲深いお釈迦さまのこと。

素敵な悟りを開かせてくれるに決まっている。


そして、ついに釈迦ヶ岳山頂に到達。

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猛烈に寒いが、ついにやったぞ。

そんな苦行を乗り越えた僕を見て、ついにお釈迦さまが優しく語りかけてくる。


おい、そこのマゾ野郎


頑張ったお前にご褒美だ


さあ


この素晴らしき眺望をとくと見るがよい!


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おお!この世のものとは思えない程のホワイトよ!

嗚呼!この素晴らしき人生よ!

美しきときめきよ!



こうして男は悟りを開いた。

人間、あまり多くの事を求めたり考えてはダメなのだ。

この世は「空(くう)」。

色即是空なのである。


男は悟りを開いた喜びからなのか、涙を流しながら下山を始めた。

その胸中はどこまで行っても「無」であり、決して「無念」ではない。

後悔なんてしてはいないのだ。


やがて絶壁に立ち、いっそ飛んじゃうか?なんてことを思ったり思わなかったり。

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もちろんそんな窪塚的「I can fly」な事はしない。

辛くても進むのだ。

いずれ「燕返しトリオ」の三人も、この同じ苦しみに満たされるんだから。

今頃奴らはここに向かって登り始めている頃。

僕は一人じゃないんだ。


そう叫ぶと、涙ながらに絶壁の上を駆け下り、

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そして駆け上がる。

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という2枚の写真を撮る為に、この場所を4往復するという追いマゾ。

どうせならとことん追い込んでやろうぜ、という実に彼らしいマゾプレイだ。


やがてこの見事な「腰引け己撮り」。

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何故なら、彼の眼下はこんな感じ。

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ここに来てやっと紅葉を見れたが、ハッキリ言って恐過ぎて全く落ち着いて見てられない。


そうこうしていると、いよいよ「天気予報の事なんてもう信じない」と言った光景に。



これを見て「楽しそう。私もトレランやってみたい。」なんて思った人は、どうか手っ取り早く最寄りのSMの館にでも駆け込んでください。

そうじゃない人は、どうか彼を応援してやってください。

そろそろ精神的な限界が近いようです。

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奥穂高岳以降1ヶ月、ひたすら育児を頑張りやっと手に入れた快晴予報のとてもわずかな時間。

もうこの人のこんな姿は見てらないって人は、ふるって署名活動にご協力ください。

それらをまとめて嫁に提出し「どうか彼に自由を」と訴えますから。



そしてその男は失意の中、下山を続けた。

ただただ無心で下り続けた。

そしてもう下山口までわずかという地点。

彼は今更ながら「優しい木漏れ日」に包まれていた。

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もう少しで下山と言う場所での、この小馬鹿にした嫌がらせよ。


男は歯を食いしばる。

そしてその陽光とともに、男の眼前に日に照らされた一匹の精霊が現れた。

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違う、精霊じゃない。矢作Cだ。

そしてその奥から二匹の疲れたおっさん達が登って来ている。

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そしてここまで雨の苦行をして来た僕に対し、小木Kが日の光を燦々に浴びながらヘラヘラ笑っているではないか。

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今僕が車に乗っていたとしたら、恐らく迷いなくアクセルを全開に踏んで突っ込んでいた事だろう。


そして彼らと一瞬の交錯を果たし、役目を果たした「露払いの男」が颯爽と去って行く。

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彼の名は「早朝育児トレイルランナー」。

悟りを開いたこの男は仲間のためにその身を犠牲にし、その一身で快晴の代償を引き受けたダーティーヒーロー。

そんな彼の後ろ姿が美しいと感じたあなた。

お願いだから署名活動に協力してください。



やがて悟りの男は下山完了。

頭上には「天気予報通り」の世界。

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無言で天を見上げる彼の心に去来するものは何なのか?

それは無念なのか後悔なのか快感なのか?


さあ急げ、早朝育児トレイルランナーよ!


家でこーたろくんが、今か今かとお前のミルクを待っているぞ!


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帰宅後。

彼は予定時間よりちょっと遅れて軽く怒られていた。


彼はうなだれてミルクをあげた後、そっとFacebookを立ち上げた。

そこにはこのような投稿写真が載っていた。

そう、釈迦ヶ岳山頂にて快晴をバックにニヤツく中年どもの写真だ。

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もうその表情からは「おい、そこの育児野郎。お前にはこんな快晴は無理だろうな。せいぜいこの写真を見て、青空ってどんな色だったか思い出すといいさ。」と言っているかのような錯覚。

そして後に矢作Cから送られて来た、山頂からの眺めはこうだ。

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もはや何も言うまい。




世の中の快晴を楽しんで浮かれている者達よ。

晴れて浮かれるのは良い。

しかし心に留めておけ。

もしかしたら君が山に入る前に露払いをした聖者がいたかもしれないって事を。

自分が早朝育児トレイルランナーの涙の上に立っているかもしれないって事を。



慈愛に満ちた悟りのヒーロー。


次はどこの山に現れるのか?


そう。


それは君のいる山かもしれない。





〜署名活動にご協力ください〜

by ドブネズミを救う会有志一同



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鈴鹿セブン三発目〜釈迦ヶ岳〜後編

Posted by yukon780 on 07.2011 釈迦ヶ岳/三重 2 comments 0 trackback
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頂上で昼メシを食う事無く、僕は猫岳に向けて歩き出した。

まだお腹も空いてなかったし、時間も11時だったからもっと良い場所で食おう。


しばらく行くと、まるで1000m足らずの場所でも風景は北アルプスのような岩稜が望める。

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僕が歩いて来た釈迦ヶ岳までの尾根だ。

よくもまああんな所を歩いて来たもんだ。


40分程歩けば猫ヶ岳山頂だ。

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山頂はまさに猫の額程のスペースしかない。

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いい加減腹減ったから、ここでメシ食おうと思ったが狭いからやめておいた。

頂上滞在時間10秒でその場を立ち去り、ハト峰へ向けて進んだ。


わざわざこの稜線ルートで来たはいいが、それといった展望も無く単調な道のりが続く。

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どこかいいスペースがあればメシを食おうと思うんだが、まるでそんな場所が無い。

どうやらブラックホールは持久戦に持ち込むつもりらしい。

そろそろ腹へってバテテ来たぞ。


やがて森林地帯に入って行くと、実に雰囲気のいい紅葉地帯へ吸い込まれて行く。

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うん、中々よろしい。

実に正しい秋の登山を楽しんでる気がするぞ。


やがて運命の分かれ道が現れた。

道は三つに分かれ、標識が複雑に入り乱れて分かりづらい。

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右に行く道は明らかに違う道。

左に行く道は標識的にはハト峰に行かずにそのまま朝明渓谷へ下山する道。

標識の雰囲気的には、一番怪しげな斜め右前方の曖昧な道が正解っぽいが。

しかしその曖昧な道はあまりにも怪しすぎるので、一度左の道を降りて行った。


しばらく降りて行くが、やっぱり違う気がして再び引き返す。

何度地図を見ても、あの曖昧な道が正しいルートに思えてならない。


僕はその曖昧ルートに突入して行った。


見事にブラックホールの罠にはまった瞬間だ。

僕はブラックホールの顔に吸い込まれ、四次元の異空間へと葬り去られてしまったのだ。

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だんだん道は登山道とはとても思えない雰囲気になって行く。

それでもかろうじてピンクのテープの目印があったから、それをたどって進んで行った。

随分進んで行ったが、明らかにおかしな空気に包まれて来た。

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「やばい」と思って引き返すが、ピンクのテープが見当たらない。

完全に自分の位置をロストした瞬間だ。

背中に一瞬にして寒気が走る。

僕は見事に遭難した。

ブラックホールの罠に完璧にはまってしまったんだ。

やはりめざましテレビの言う通り、ラッキーアイテムの消しゴムを持ってくるべきだったんだ。



そう言えばキン肉マンはこの異次元空間からおならで脱出していた。

こんな時に思い切り余談だが、最近僕のおならの数が尋常でない。

腹の中でコポコポとおならが次々と生成され、ひどい時はおよそ5分ごとに放屁する。

プッという可愛らしいものではなく「パッスぅぅぅ〜〜、ぱすっ、すぅぅぅ」といったハイレベルな息の長いものばかりだ。

しかもすべてのおならのグレードが高く、まさにガスと呼ぶにふさわしいスメルだ。

実はこれを書いてる今現在も解き放っている。

恐らく何らかの病気なんだろう。

嫁も相当怒っているが、僕のおならがひどいというのをご両親に相談するのはやめてほしい。


話は激しくそれたが、もちろんそんな僕のおなら程度ではこの遭難から脱出する事は出来ない。

そこで思い出した。

結構な電池の消費量の為、使用を控えていたGPSアプリの出番だ。

まさにこんなときの為に準備しておいたのだ。

さっそく起動してみると、やはり思いっきりルートからそれてるじゃないか。

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黄色の稜線を歩いて来て、三つに分かれる道を稜線沿いに来たはずがまるで違う場所にいる事が分かる。

とにかく元の場所に戻るべく、iPhoneをかざしながら道無き道を戻って行く。

やがて遠く逆側の山上に、僕が目指していたハト峰が見えた。

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やっぱり全然違う方向だったんだ。

この時点で、かなり腹も空いていたがこんな場所でのんきにメシ食って場合じゃない。

早くこの四次元空間から脱出するのだ。


しばらく彷徨ってようやく分岐点の場所まで戻る事が出来た。

本当にこのアプリ入れてて良かった。(詳細は遭難野郎必携アプリ

まさか本当に遭難野郎になって救われるとは。

これが無かったら今頃僕は超人墓場行きで、腕の一本をアシュラマンに持って行かれる所だった。


結局僕が最初に降りて行って、引き返して来た道が正解ルートだった。

僕が引き返した場所から、わずか1分程歩くととても分かりやすい標識が出ていた。

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まあ、いつもの事だ。

看板屋としては、あの分岐点の看板の分かりにくさのが許せない。

もっと遭難野郎の心理を汲み取って、分かりやすい標識にしなければダメだろ。


そしてようやく、あの遭難先から見えたハト峰に到着した。

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もう、ただただ安堵感とメシが食えるという感動を味わう。

この時食べたカップラーメンミルクシーフードの味が忘れられない。

まさにブラックホールをホワイトな力でねじ伏せた瞬間だった。

三つ目のパーツ、ミート君の右腕を手に入れた瞬間だ。

鈴鹿セブンも残り四山。

こんな調子で無事に全て制覇出来るんだろうか?


あとはひたすら単調な下りで下山し、下界の芝生の広場でぐったり。

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あまりにハードな戦いに、もう紅葉なぞはどうでもいい。

疲れを癒し、とぼとぼと駐車場に向けて歩き出す。


途中前方を同い年くらいの夫婦が楽しそうに仲良く歩いている。

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きっと今日の登山を楽しく振り返っているんだろう。

お揃いのザックなんか背負っちゃってさ。

この光景を見た途端妙に切ない思いが風となり、僕の心をなでて行く。

「ああ、僕もあんなふうに夫婦水入らずで楽しく登山できたらなあ」

そんな些細な事が夢なんて。

でも一生実現する事の無い切ない想い。

遭難して少々心に弱さが出てしまったようだ。

そして切ない気持ちを抱えたまま、一人ふらふらと駐車場に着いてゴール。

「よし」という独り言が寂しく響く。

こうして鈴鹿セブン三発目「釈迦ヶ岳」は静かに完了した。



鈴鹿セブン三発目「釈迦ヶ岳」〜完〜

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ーーおまけーー

近くに「釈迦の隠し湯」と謳ったマニアックな温泉があった。

カーナビの温泉設定でも現れない程の隠し湯だ。

入り口の簡素さは隠し湯と呼ぶにふさわしい。

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この温泉、基本内湯しか無い。

そして体を洗う場所の椅子が驚く程高い。

子供なら足がつかないんじゃないかという椅子で落ち着かない。

そしてシャワーが無いから蛇口のお湯を桶にためて体を流すという古風な仕様。

隠し湯だからといって、シャワーまで隠す事は無いだろう。

しかも蛇口から出るお湯の量が微量なため、体を洗い流すのに果てしなく時間がかかる。

さすが釈迦の隠し湯だ。そのまま隠しておけば良かったか。

しかし僕はこういった雰囲気の温泉が嫌いではなかったりする。


さあ、この温泉で「夫婦登山」の切なさは奇麗さっぱり洗い流したぞ。

最後に再び一句で締める。


「これからも 孤独にさすらう マゾ野郎」


季語は無いが奇語はしっかり謳われている秀作だ。

次の戦いへ向けて再び男は動き出す。





鈴鹿セブン三発目〜釈迦ヶ岳〜前編

Posted by yukon780 on 05.2011 釈迦ヶ岳/三重 0 comments 0 trackback
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文化の日の休日。

天気はずっと曇りであまりよろしくないようだ。

そんな時にこそ登っておきたい山がある。


鈴鹿セブンの中でも、頂上の展望の無さから「ガッカリな山」として不人気な山。

どうせ展望がないんだったら、晴れてないときこそ登りたい。

鈴鹿セブン三発目は「釈迦ヶ岳」(1092m)。

カタカナ読みで「シャカガタケ」って言うと諸見里っぽくなる名前だ。


7人の悪魔超人で例えれば「ブラックホール」が最適だ。

彼の必殺技「吸引ブラックホール」によって、僕はブラックホールに送り込まれてしまうのか。

そして僕は実際に遭難し、四次元空間へ引きずり込まれることになった。(その模様は後半で)

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謎の背中痛は当然完治していない。(コチラを参照

相変わらず、自ら追い込んだ末のコンディション。

しかも朝から激しく下痢ってる。

何か強い衝撃を食らった時には、想像したくもない大惨事になることだろう。

残虐ファイター・ブラックホールに対してこんな状態で善戦出来るだろうか?

しかし、ミート君の右腕のためには少々の無理は仕方ない。

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鈴鹿に向かう車の中で、何気にめざましテレビを見ていた。

今日の占いで僕の魚座が見事に最下位じゃないか。

基本的に占いなんて信じないが、見てしまった以上気分が悪い。

しかもラッキーアイテムが「消しゴム」とはどういうことだ。

最も登山には必要のないアイテムだ。

さらなる不安が僕を支配する。

余計な事しやがって、めざわりテレビめ。

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朝明渓谷の駐車場(500円)は意外と一杯だった。

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人気がないとはいえ、さすが鈴鹿セブンの一角だ。


さっそくお釈迦様の登山口に取りかかる。

今回は中尾根ルートをチョイス。

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本道は庵座谷ルートが人気なんだけど、ここ数年の災害で結構荒れてしまってるということで中尾根ルート。

さっそく蜀の桟道のような道がお出ましだ。

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北伐時の諸葛孔明の気分が味わえる。


尾根道というだけあって、竜ヶ岳と同様に尾根までは一気に直登野郎だ。

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実にハードな急登をこなすと、おどろおどろしい痩せ尾根ゾーンへ突入。

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尾根道と言っても結構起伏が激しく、グハグハな道は続いて行く。


そろそろ己のさすらい姿を写真におさめようと、セルフタイマーをセッティング。

急いで立ち位置に移動したが、カメラに近すぎてフレームからはみ出てしまうと判断した僕は、そこにあった岩に座った。

しかしその岩が思いのほか鋭角で、ズブリとケツに突き刺さった。

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シャッターが切られるまでのおよそ3秒間、突き刺さったまま我慢している姿が写真に納まった。

ブラックホールの攻撃に注意を払っていたが、まさか己のブラックホールに岩を受け入れてしまうとは。

本日は文化の日という事で一句浮かぶ。

「秋の山 ひっそりたしなむ セルフプレイ」

下痢気味の僕にはあまりにも危険なプレイだった。

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その後もひたすら痩せ尾根と急登との戦いだ。

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ひたすら体力勝負。

ブラックホールとのがっぷり四つの四次元レスリング。

やっと展望が出来る所まで高度を上げて来たぞ。



そしてこの辺りから紅葉ゾーンに突入して来たぞ。

もう一つ勢いが無いが、中々気分がよろしい。

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それよりも先ほどのおケツへのダメージの方が心配だ。

モミジより先にキレヂでパンツが真っ赤に紅葉していないか。

しかし容赦なく、分かりやすい程の45度の傾斜が僕を痛めつける。

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やがて見晴らしの良い所に到達だ。

実にワンダフルな光景が眼下に広がった。

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不人気ながら、中々やるじゃないか釈迦ヶ岳。

しかしホッと出来たのは束の間だった。

「この先危険、落石注意」の看板とともに鈴鹿得意のちん毛ゾーンへ。

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実に荒々しい。

ちん毛だけならまだしも、足場がひどくゴロゴロだ。

とんだジゴロ野郎だ。

上を見上げれば、「ハイ、それでは今すぐ落石いたします」といった光景が広がっている。

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お釈迦様の割にはとても無慈悲な光景だ。恐ろしい。

ちん毛ジゴロゾーンを抜けると、さらに激しい急登が始まった。

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毎度写真で伝わらないのが悔しいが、もう這うように両手両足で登って行く。

秋なのに汗ビシャビシャになりながら登りきると、再びご褒美の紅葉絨毯。

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登山道からそれた場所を行くと良い場所に抜け出た。

鈴鹿らしい岩山を見ながら、崖に座ってしばし紅葉鑑賞。

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もちろん高所恐怖症な僕は、ビクビクで少しも楽しんではいない。


ここからはナイフの刃先のような、両サイド切り立った稜線の上を歩いて行く。

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刃先の鋭利さはどんどん鋭さを増して、だんだん大変な事になって来たぞ。

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左側、ほとんど垂直じゃない。

登って行く角度もお下劣じゃない。

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足をガクガク言わせながら僕は進んで行く。

左側を見れば、すごくきれいな景色なんだけど高度感がハンパ無い。

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もうひたすら這い上がって行く。

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こういう時毎度思うんだが、僕は休日にわざわざ一体何をやっているんだろうか?

そして、なんとか最高到達点(頂上ではない)に到着。

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三角点がある頂上はもう少し先だが、気持ち的にはもう十分だ。

ここが頂上という事にはならんもんだろうか。

それでもミート君の右腕の為に歩みを進める。

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そしていよいよ頂上に近づいて来た。

この苦しみに満ちた苦難の果てに待つ頂上とはどんなものだろうか?

そして僕は釈迦ヶ岳の頂上に到達した。

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貧相だ。

これが苦難の末に勝ち取った頂上か。

まさに鈴鹿セブン随一のガッカリ頂上の姿がそこにあった。

展望は無くはないが、過去2山に比べてしまうと情けなすぎる。

当然ここにはミート君の右腕は無かった。

滞在時間わずか2分で僕はその場を立ち去った。


このまま来た道を下山すればそれまでなんだが、実は縦走ルートがある。

このまま稜線を伝って行くと「猫岳」を経て、「ハト峰」を超えて朝明渓谷へ下山するルート。

猫好きでハト胸好きの僕は迷わず縦走ルートを選んだ。

その先では、残虐ファイター・ブラックホールがその穴の開いた顔を向けて待ち構えている事を知らずに。


〜鈴鹿セブン三発目〜釈迦ヶ岳〜後編へつづく〜

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