秋の三人三方散歩〜新超人達の攻防戦〜

Posted by yukon780 on 20.2015 養老三山/岐阜 2 comments 0 trackback
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「体育の日」がやって来た。


体育の日と言えば、「己の体でマゾを育む日」と相場が決まっている。

本来なら初冠雪した笠ヶ岳か塩見岳あたりに日帰りで行って、ゲロランからの喀血紅葉を咲かせるつもりだった。

しかしこの日は嫁が仕事のため、子供達と家で大人しくお留守番の予定に。


でもそんな時は決まって空は透き通るような秋の晴れ空。

もちろん家族にウソついてまで山で余計な動画を撮ってるような奴が、こんな日に家で大人しくできるわけがない。


ってことで「子供達にも良質なマゾを育んでもらおう」と、りんころの二人を山へ強制連行。

「家でキン肉マンのDVDでも観ようよぅ」とごねるりんたろくんと、今年金華山で自力登頂デビューを果たしたこーたろくんを連れていざ親子登山だ。


今年の体育の日は、近場でのんびりサクッとお手軽マゾ。

紅葉で有名な山に、あえて紅葉前に行っちゃう勇み足。


それでは、そんな平和な一日を振り返ってこう。


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父が体育の日の親子登山に選んだステージ。

そこは三方山、小倉山、養老山の三山が連なる「養老三山」。

低山とは言え、2歳児が金華山の次に登るには中々しんどい山だ。


そしてその登山口に向かって行く我が子達は、ご覧の渋々顔。

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なんとか来る途中にマクドナルドに寄って「ハッピーセット買ってやるからお山登ろう!」と買収したんだが、全く彼らからやる気が感じられない。

りんたろくんに至っては、そのハッピーセットの湯布院列車を手にしながら「ボク、山キライなんだよね」とハッキリ言っちゃう始末。

しかしそんな我が子の訴えなぞ聞く耳を持たない父。

「だって晴れてるんだぜ。」という父の無茶な理由だけで、子供達は山の方へ連れられて行く。


ある晴れた 昼さがり 登山口へ 続く道
ダメ父が トコトコ 子供を 連れてゆく
かわいい子供 売られて行くよ
悲しそうなひとみで 見ているよ

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ドナ ドナ ドナ ドナ 子供を 連れて
マゾ マゾ マゾ マゾ お腹が ゆれる


秋の悲しい一コマに見えてしまうが、あくまでもこれは楽しい楽しい親子登山。

グロテスクUMA好きなりんたろくんは、ぺしゃんこに潰れた沢ガニの死体を見つけて大喜び。

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そしてこーたろくんも、大勢の観光客の前でのオムツチェンジという大好きな羞恥プレイで大喜び。

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これにてすっかりテンションが上がった我が息子達。

やはりどんなに渋々でも、現場に来てしまえば二人とも父のDNAが黙ってはいない。

名瀑「養老の滝」に着く頃には、すっかり気を良くして楽しげな雰囲気に。

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しかしこの直後、りんたろくんは「はい、ここで登山終わりだよね?」とまさかの終了宣言。

彼は登山口前ですでに達成感に包まれてしまったようだ。


まあ確かに一般的なファミリーはこの養老の滝がゴールだ。

だが残念ながら、君の父は一般的な人ではない。


父は努めて優しい声で、「おいおい冗談キツいぜ。これからが楽しい時間の始まりじゃないか。だって晴れてるんだぜ!」と士気を鼓舞する。

きっとりんたろくん的には本気で言ったんだろうが、こういう時父は急に耳が遠くなる。

で、結局再び渋々さ全開で登山口へ向かう男。

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まるでこれからカチ込みをかけるヤクザ映画のワンシーンじゃないか。

ある意味、もの凄く山慣れした風来坊感が出てていい感じだぞ。


で、沢を渡渉して、

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いざ、登山道へ。

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大人の感覚で「養老山は楽な山だから」と選んだが、2歳児目線だと「片側が崖で道幅狭くて歩きにくい急登道」という暗黒の世界だった。

2歳児でもマゾ出来ちゃうという、まさにハッピーセットのようにお得な登山道である。


結局お父さんとしても、いつ子供達がふらついて転落して行くか分からないので全く落ち着かない。

特にこーたろくんは、突然謎のダイブをかましては家の中で骨折・流血しまくる大仁田厚のような男。

いつ何時「アイキャンフライ!」と叫んで窪塚ダイブをかますか分からない。


それでも少しづつ、頑張って登って行く二人。

なんだかんだ言いつつ、6歳にして40以上の山を無理矢理体験させられたりんたろくんは、次第に自分なりに山を楽しみ出している。

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虹色のこの虫、後で調べたら「アカガネサルハムシ」って虫らしい。

でもこの時こいつ虫のくせに「ギュゥゥゥ...ギュゥゥゥ...」と唸っていたので、りんたろくんによって超人っぽく「ミスター・ギューギュー」と名付けられていた。

その後ミスター・ギューギューは、りんたろくんのお供としてザックのポケットに封印される事になる。


一方、本日はこーたろくんの足が重い。

金華山で2歳自力登頂の偉業を達成した彼だったが、まさか早くも「あれ?山って楽しくなくね?ボクのお父さんって普通じゃなくね?」と気づき始めたのか。

次第に彼のペースは、牛歩戦術の人をスーパースローカメラで撮ったかと思うほどのスローペースに。

そしてついにはこんな事に。

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とうとう「こっちのが楽しいや」とばかりに、ハッピーセットの電車で遊び出してしまった。

くそ、よりによってこんな時のハッピーセットの景品が彼の大好きな電車シリーズだったなんて。

なんてアンハッピーなんだ。


結局彼は、立ち退きに反対する住民のようにここで座り込んで動かなくなってしまった。

で、結局お父さんがそのまま担ぐ羽目に。

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担がれても電車同士の連結プレイをやめようとしないこーたろくん。

まあいいさ。

家の中で電車遊びするより、山の中で父に担がれながらする電車ごっこのが楽しいはず。

しかも両肩を痛めているお父さんも同時にマゾれて、まさに一石二鳥である。

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さあ、こうなれば我が家の希望は長男りんたろくんに託された。

ミスター・ギューギューを味方に付けた彼は、果敢に急登を登って行く。

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しかもこの息が切れるような急登で、彼は延々とキン肉マンの「新超人」の解説を勝手に喋り続けている。

もう僕のキン肉マンの知識を遥かに越えた彼は、キン肉マン二世を含むマニアックな超人を完全に記憶。

それでも彼のキン肉マン愛は止まらず、ついに自分で多くの「新超人」を勝手に創りあげるほど。

それを今、急登を登りながら息継ぎなしでこのようにまくしたてる。


「新超人ドライヤーマンはね!ラーメンマンとモンゴルマンと同じ超人強度97万パワー!火事場のドライヤーが出た時はなんと7,000万パワー!出身地はティーパックマンと同じスリランカでね!タッグパートナーは悪魔将軍!笑い方は“ドララララララ”って笑うの!必殺技は“地獄のドライヤードライバー”!相手の両手両脚をロックして頭部に熱風を当てながらキャンバスに叩き付ける技!落ちた時の音は“グワッシャ”!ブロッケンマンがキャメルクラッチで真っ二つになった時と同じ音ね!王位争奪戦でお馴染みのビッグボディーチームのレオパルドンと親友なの!でねでね、ネプチューンマンと同じくジ・オメガマンから狙われてるの!そしてね....」


色んな意味ですげえ。

このような「キン肉ーズ・ハイ」に陥った彼は、もう目の前の登山道がどんなにハードでも全く疲れない。

むしろ聞いてるお父さんの方がグッタリして来る。

僕は息子にアウトドアの英才教育をしていたはずだったが、いつの間にかただのキン肉マン馬鹿に育ててしまったようだ。


確かにお父さんも小学生の頃、ゆでたまご先生に「機械マン」という新超人をはがきに書いて応募した事がある。

その時もはがきに隙間なく、その機械マンの特徴やら必殺技やら笑い方とか書いていた。

そっちの方のDNAだけ色濃く伝承されて、アウトドアの血は全く受け継がれなかったようだ。


その後も彼の「新超人ザ・キノボーの必殺木の棒アタック!」という技と戦いながら登って行き、

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突然座っては「シータケン」と名付けられた椎茸と戦っている。

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そして急に立ち上がり、「この超人パワー、ベルリンに届け!」と意味不明な言葉を叫んで空に棒をかざす。

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まずいな...。

超人大全集なんて本を買い与えてしまったがために、彼の今後の人生が心配になって来たぞ。

保育園でも周りのお友達と全然話題がズレてて浮いてるらしいし...。


まあいいさ。

彼は彼なりにこの登山を楽しんでいるようだ。

結果的に山の中で笑顔でいてくれれば、お父さんはそれだけで嬉しいぞ。


しかしここで彼の中に眠る、もう一つの血がたぎって来る。

それは悪魔将軍(嫁)のサドの血。

彼はおもむろに栗を集め出しては、

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それをひたすら僕に向けて投げつけて来る。

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そして僕が「いてっ!いててっ!」と苦しむ顔を見ては、嫁と同じような笑顔でハツラツと喜んでいる。

そして背後から僕のケツの穴を棒で突っついて来るこの顔は、まさに我が家の悪魔将軍そのものである。

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そして「もう歩けない。あと何秒で着く?」と嫁みたいな愚痴も止まらない。

それでも僕は「あとたったの3600秒だ!がんばれ!なんせこんなに晴れてるんだぞ!」と、ケツを刺されながら必死で励ます。


そんな感じでのらりくらりと進み、やっとこさ「三方山(730m)」到達。

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お父さんの「どうだ!いい景色だろう!」という問いかけに対し、りんたろくんは無表情でこーたろくんはまだハッピーセットに夢中という寂しさ。

まあ、子供にとっちゃどうでもいいんだよね...山って...。


そしてほんとは次の小倉山で昼飯予定だったが、この時点でまさかの「14時」。

とりあえずリアルな飢えを訴える哀れな子供達にメシを食わせる。

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その後、大人しく帰ればいいものを、「養老山は無理でも小倉山まで頑張って行こう!晴れてるんだし!」というマゾ父の提案。

もちろん「下山したらソフトクリーム買ってやるからさ...」という大人の取引も忘れない。

これに発奮したりんたろくんは、プリズマン戦のラーメンマンを見習って「ピラミッドパワーで体力回復だ!」と瞑想開始。

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しかしこれが余計な力にパワーを与えてしまったのか。

雲一つなかった空が、たちまちモクモクで覆われて行くではないか。

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しかもお約束のように冷たい風が吹き荒れ始め、強烈な寒さが冷え性親子に襲いかかる。

とりあえずありったけの防寒着を着させる。

するとそこにはこのような新超人「ファンキー・キッド」の姿が。

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ファンキー・キッドはプルプル震えながら、「寒いのキライよ。あったかいのがいいの。」と窮状を訴える。

彼は今まで何度もお父さんに山で低体温症寸前にまで追い込まれた経験があるから、山で寒いのが本気で嫌いなのだ。

一方、寒さに強い1月生まれのこーたろくんはこの笑顔。

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相変わらずハッピーセットのアピール感が凄いが、彼は彼なりにこの悪天候マゾタイムを楽しんでくれているのだろうか。


結局こんな天気だし、下山が遅くなっちゃうから今回は三方山だけで試合終了。

我が目の前を、三頭身のファンキーな仙人が下山して行く。

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そしてその仙人の呪文で、空は益々ダークに。

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さらに冷たい風が吹きすさぶ中、おもいっきりコケて喜ぶファンキー・キッド。

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そして「だから山キライよー!もっと平らでツルツルな道がいいよー!」と叫び続ける。

それでもそんなファンキー・キッドに容赦なく寒風が襲いかかり、そして何度もコケる超人強度2パワーの男。

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そしてついに彼は「山は残酷だッー!」という名言を吐いた。

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間違いなく、彼は父と山に行く度に山が嫌いになって行ってる気がしてならない。

しかし君も大人になれば分かる時が来る。

君の中にはしっかりとこのおマゾの血が流れているのだから。

残酷なほどパラダイスを感じるようになって、初めて君は父に追いつくのである。


そうこうしながら、どんどん夕暮れが迫って来て焦る面々。

グッタリする兄をよそに、担がれてるだけの男は終始ゴキゲンだ。

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そしていよいよ夕暮れが迫り来る。

その時ふと「あれ?駐車場って何時に閉まるんだろ?ひょっとして17時だったらもうアウトじゃないか」と気づくお父さん。

結局平和なのんびり親子登山も、毎度最後はタイムアタック下山へ。

そして文句が止まらないりんたろくんも担いで下るという、筋肉破壊マゾスタイルへ。

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ついに現れた三面六臂の新超人「アシュラマゾ」。

傷む両肩にさらなる重量をめり込ませ、ヨロコビに浸る悪魔曽界のプリンスの登場だ。


そこからはいつも通り、ひたすらお父さんはグハグハ筋トレタイムに突入。

総重量30キロオーバーを味わいつつ、かなりのスピードでなんとか明るいうちに登山口へ到達。

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ここからは平坦な道だからこの苦行からは解放される。

しかしどうしても「追いマゾ」好きなお父さんは、ここでピリリとしたスパイシーマゾを味わいたくなってくるもの。

ここで「アシュラ面、りんたろ〜」と叫んだ方思うと、背中の重量をこーたろからりんたろへチェンジ。

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久々に担いだら凄く重い。

そもそもこのベビーキャリアの推奨年齢は3歳までなんだが、こりゃまだまだ当分こいつでマゾれそうだ。

去年までここが定位置だったファンキー・キッドも、やはり居心地が良いのかすっかり昇天してしまっている。

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なんとなくお父さんも久々に担げて嬉しいぞ。

これで時間も随分巻けたし、後は駐車場が閉まる前にここから脱出だ。


しかし最後の最後の段階で、今更ながらこの兄弟に火がつく。

急にこの坂道で、ハッピーセット電車対決が始まったのだ。

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白熱する彼らの電車デッドヒートの中、辺りはどんどん暗くなって観光客の姿もない。

焦りまくるお父さんをよそに、彼らは頑に電車対決をやめようとしない。

山の中では我先にとキャリアに乗って来る彼らも、この時は「イヤだ、乗らない。ここで電車遊びする」と言って父を困らせる。


今後ハッピーセット買ってあげるのは、絶対下山後にしておこう。

そう思った秋のお父さんでした。

ちなみにこの頃、ミスター・ギューギューはりんたろザックの中で息絶えていました。



結局この日の山滞在時間は7時間を越え、普通の縦走登山並の長い時間を山で過ごす事が出来た。

夜暗くなって帰宅した僕に、もちろん悪魔将軍から「一体何時まで山で2歳の子を連れ回すの。風邪引くがね!」と軽く小言を言われてしまった。

しかもその後、全く何もない場面でふいに「乳首もぎ取るよッ!」って言われたし。

子供らと風呂入る時も、脱衣所で急に髪留めのゴムで乳首「パチンッ」ってやられたし。

すげえ笑ってるし。


今思えば、いっそその姿を写真に撮ってはがきに貼って送れば良かった。

ゆでたまご先生に「新超人ですよ」って。


超人強度は8億パワーで、岐阜出身。

好物は困り果ててる旦那。

必殺技は「旦那懲らしめ」と「乳首の断頭台」。

笑い方は「ひゃっひゃっひゃ」。



拝啓ドクター・ボンベさん。


僕に何事にも耐えられる強い心臓を埋め込んでください。


あと、涙腺も切っておいてください。


目から養老の滝が止まらないのです。






秋の三人三方散歩 〜完〜



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聖なるピンチヒッター〜養老三山〜

Posted by yukon780 on 13.2012 養老三山/岐阜 2 comments 0 trackback
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週末。

快晴の土曜日は、丸一日アンパンマンミュージアムでパン共と戯れて久しぶりの家族サービスが出来た。

多少ポイントが溜まったものの、当然フラストレーションも溜まった。

天気もいいし、山に行きたい。


でも、前回の藤原岳で大事なトレッキングポールを1本失くしてしまっている。

僕の中では「トレッキングポールとサポートタイツがない状態では山に登りたくない」という信念がある。

特にこの2本のトレッキングポールは、僕の登山を支える最重要アイテムだった。

僕が劉備とするならば、左右のポールは関羽と張飛のような存在だ。

どれか一つでも欠けてしまえば、思ったような登山が出来ない。

しかし残念ながら、藤原岳攻防戦で呉軍の急襲を受け我が義弟関羽が死んでしまった。


あれからずっと悲嘆にくれる僕。

だから、新たにポールを買うまではしばらく大人しくしておく事にした。



しかし、土曜日の夜。

玄関の傘立てから天の声が聞こえるではないか。

「私を使いなさい。」

なんとお遍路さんの時に使った金剛杖が僕に囁くではないか。

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弘法大師空海が関羽のピンチヒッターとして名乗りを上げた。


なるほど、こいつがあれば新しいポールを買うまでの当座は凌げそうだ。

いや、むしろ不幸な僕にとってこれ以上ご利益のある相棒もいないだろう。

僕は聖なる力であらゆる困難から守られるはずだ。

しかも鈴も付いてるから、熊避けにもなるし。


こうして張飛と空海という異色の二刀流で、翌日の日曜日の登山が可能になった。

しかしこの時の呼びかけが、悲しい出来事への第一歩となるとは僕は知る由もなかった。


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日曜日、朝8時に家を出発。

男の向かった先は「養老の滝」。

もちろん張飛が酒好きだからといって居酒屋チェーン店に飲みに行ったわけではない。

「養老山」「小倉山」「三方山」の養老三山縦走登山だ。


三山縦走といっても、そんなにレベルは高くないから気楽な雪山登山だ。

危険度は低い上に、今回は聖人空海のご加護まである。

恐らく何事も無く終わって、ブログ的にはつまらないものになるはずだ。


そう思っていた。

「その時」が来るまでは。


僕の今シーズン最もショッキングな瞬間「その時歴史が動いた」がスタートした。


ーー「その時」まで、残り1時間ーー


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家からおよそ40分程で、養老山が見える場所まで辿り着く。

本日の養老のYahoo天気予報は朝から晩まで「晴れ」マークが踊っていて降水確率も0%だった。


今に始まった事じゃないが、思った通りの光景が広がっている。

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養老山は深く雲の中で、フロントガラスを叩く水滴はどう考えても雨だと思うんだが。


養老の滝観光駐車場の前でしばらく思案に暮れる。

もう帰ろうかな。


でもきっと空海のご加護で今後晴れて来るはずだ。

いくらなんでもあの予報で、ずっとこんな感じが続くわけがない。

僕は意を決して駐車場に入って行った。


この時帰っていればあんな事には...。


ーー「その時」まで、残り20分ーー


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早速準備を整えて出発だ。

まずは養老の滝を目指して観光路を歩いて行く。


ここで一つニューアイテムをご紹介しておこう。

最近、金華山で使い勝手の良かったグローブを失くしたので(罪と罰)、新たに購入したもの。

スマホが操作出来るグローブ、ノースフェイスのEtip(イー・チップ)Gloveだ。

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登山中やランニング中に結構頻繁にiPhoneを操作するので、その際いちいち手袋を外さなければいけなかったのが煩わしかったからこいつを購入した。

人差し指と親指部分に特殊加工が施してあるから操作出来るってこと。

若干その部分が滑りやすいのが気になる所だが、中々良いものを手に入れた。

これで、これからグローブしたままでもサクサクとiPhoneを操作出来るぞ。


ーー「その時」まで、残り1分ーー


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しばし歩いて行くと観光マップの看板が出て来た。

早速iPhoneに入れて来た地図と照合してみよう。


僕はiPhoneを取り出し、早速この革新的ニューグローブでカションとロックを解除。

やっぱ、ちょっと滑るな。


あ。

あっ。

ああっっ!


そして次の瞬間。


ーーその時歴史が動いたーー


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いや..。

いや...。

イイイイヤアアアアアアアアッッッッッッッッ!

キャアアアアアアアアアッッッッッッッッ!

UUUUURRRYYYYYYYYYYY!


なんて事だ。

もう一度言う。

なんて事だ。


まだ買って半年も経っていない我がiPhone4Sを落として割ってしまった。


サクサク操作するためにこのグローブを買ったのに。

サクサクどころか、ザクザクになってしまったじゃないか。


おお、神よ。

なんの恨みがあってこのような仕打ちを。


おい空海、どうした?ご加護は?

天国で天才同士、ジョブズと喧嘩でもしたのか?

iPhoneになんか恨みでもあるのか?


最近何かを失っては何かを買って、そしてまた何かを失う。

何かが壊れれば修理して、別の何かを壊す。

今に始まった事ではないが、最近この負の連鎖っぷりが激しくなっている。

空海は僕に「輪廻転生」の教えを説こうとしているのか?

だったら空海よ。

もう十分身にしみてるからやめて。ほんとお願い、もうやめて。



こうしてまだ登山口に着く前に、早くも本日のKPP(心ポッキリポイント)が訪れてしまった。

かつてこれほどのローテンションで山に登り始めたのは初めてだ。


もう割れてしまったものはしょうがない。

まだ裏のほうで良かった。

空海のおかげで、画面の方が割れなかったんだと前向きに考える事にしよう。

割れた分だけ楽しめば良いじゃないか。


気勢を張っては見たけど、僕はいつもの倍の猫背で登山口にトボトボ歩いて行った。


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やがて名瀑「養老の滝」が現れた。

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この程度のマイナスイオンでは、僕のマイナスな心を癒す事は到底出来ない。

いっそこのまま滝にでも打たれてみようか。

全てを忘れさせてくれるかもしれない。

そしてそのまま安らかに眠れるのではないか?


そもそも、昨日お遍路杖を見つけなければこんなことには...。

5分でも家を遅く出ていれば...。

あの信号が赤だったなら...。

それを言ったら金華山でグローブを失くさなければ...。

金華山に行ったのもニンニクを食ったせいだから、ニンニクさえ食わなければ...。

会社の新年会だった訳だから、入社してなければ...。

転職も養子になったせいだから、嫁と出会わなければ...。

じゃあ僕が生まれて来なければ...。


生まれてすみません。



いかん!


またしてもネガティブの滝壺にはまっていってしまった。

空海から与えられしこの試練。

前向きに行かないと。

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やがて登山道に入った。

しばらく行くと看板が出て来た。

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どこをどう進めば良いかまるで理解出来ない看板だ。

僕はまたしても試されているのか?


とりあえず、なんとなくそれっぽい道を進んだ。

人の足跡もあるから、間違いないだろう。

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しばらく足跡をたどって行ったが、どうも様子がおかしい。

足跡は随分ハードな場所から川を渡って行っている。


しかたなく足跡を辿って行くが、やがて僕は気づく。

人間の足跡にしては随分小さいなと。

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獣じゃないか。

随分ワイルドなコース取りと思ったが、これで納得だ。

ワイルドに割れたiPhoneを持つ男らしく、僕もワイルドにそのコースを攻めて行った。

もう、どうにでもしてくれ。

運命を受け入れる準備は出来ているぞ。


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野生の導きで、なんとか登山道に復帰。

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何とかなるものだ。


ここからはアイゼンを装着して、しばらくはクネクネと高度を上げていく。


途中このような看板が現れる。

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どうやら以前、ここから滑落して亡くなってしまった人がいたらしい。

この場所は当然として、今後はあの場所にも「iPhone滑落注意」の看板を設置しておいてもらいたい。


ついでにどうでもいい情報を載せておく。

実はこの場所で右肩をつった。

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ザックを降ろさずに、背中から無理にクリームパンを取ろうとした結果だ。

些細な事も空海は見逃さない。

人間、横着したら痛い目に合う事を教えていただいた。


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しかしそれにしても、中々いい感じの雪山だ。

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激しい坂があるわけでもなく、のんびりと雪中ハイクができて中々よろしいぞ。

だんだん天気も良くなって来たし、強行軍で登って来て良かったかも。

辛い事はあったが、ここからは気合いを入れ直していこう。


無理矢理テンションを上げる方法。

こんな時はやっぱりリンダリンダだ。

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中年にしてはそこそこ飛べてるんじゃないか?

マゾネズミだって美しく生きてやるさ。


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しばらく気持ちのいい登山道を歩いて行く。

やがて一つ目の山「三方山」への分岐が見えて来た。

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このあたりから、結構登山者がどこからか増えて来た。

若い山ガールもいたから、僕はベテラン山ボーイ風に精一杯格好付けてニコリと笑う。

しかしよくよく見ると、僕の手にはお遍路金剛杖の異質な修行ボーイ。

なぜか彼女達との距離を感じてしまった。



やがて三方山の山頂に到達。

結構凄い眺めだ。

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ここからは、なんと我が家まで見える位置だ。

嫁を上から見下ろすなんて、実にいい気分だ。

せめてここにいる間だけは、丘亭主関白でありたい。


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三方山からは縦走路の平坦で気持ちのいい雪道が続く。

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やがて笹原峠の尾根に出た。

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尾根に出た事で、突風と共に細かい雪がキラキラと舞う。

ここからは新雪が豊富になって来たから、スノーシューに履き替える。


景色もいい感じになって来て、大分気分も晴れやかになって来たぞ。

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樹氷のトンネルだ。素晴らしい。

薄い雲越しに太陽の光がグレーに滲んで、大変神々しい。

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やはり試練の後にこそ、この様な神々しい自然の姿に感動出来るのだ。

色即是空空即是色。

小さな事でいちいちへこんでる場合じゃない。

すべては空ですね、空海さん。


感慨深く哲学にふけっていたら、突然激しく吹雪いて来た。

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せっかくポジティブになりかけて来たのに、横殴りの吹雪が僕を痛めつける。

さっきまでは「へこんでる場合じゃない」って言ってたのに、すっかりへこんでいる自分がいた。


まだまだ修行が足りないようだ。

もっと自分を痛めつけていかんと。

僕はニヤリと笑って小倉山の山頂を目指した。


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着いたぞ、二本目の山「小倉山」の山頂。

今度はザイルパートナー空海さんが登頂記念撮影。

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相変わらず風は強いが、ご利益パワーで吹雪も収まって来た。


1000mに満たない山だから甘く見ていたが、ここまで来ると中々の積雪量だ。

テーブルらしきものが埋もれているし。

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結構良いな、冬の養老三山。

あんまり人もいなくて、ここまでくると踏み跡のない新雪パラダイス。

スノーシューで遊ぶにはもってこいのフィールドだな。

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うーん。堪能した。

踏み跡のない新雪を歩き回るだけが、こんなに楽しいとは。

嫁が寝転んでいる僕のケツを踏みにじって喜んでる気持ちがよく分かった。

分かるけど、一応かつて愛を誓った相手のケツを踏んじゃダメだ。

僕の心の雪原は蹂躙されすぎて、もう白いアスファルトと化している。

でも踏まれながらも満足げな顔をしていたりするので、ちょうどいいのか?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さあ、ラストの養老山へ向けて新雪ハイクだ。

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ここからはさらに新雪オンパレード。

あえて踏み跡のあるルートからはずれて、フカフカの雪を堪能する。

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振り返っても僕の足跡しかない。

これこそ本当の「ヴァージンロード」。

いや、僕は男だから正式には「童貞ロード」か。

なんか急に響きが情けなくなるのはなぜだろう?


そして踏み跡のある道に戻って、一路養老山の山頂を目指す。

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美しい。

なんてセクシャルな白肌流線型ボディー。

いいぞ。

この先のフィナーレ、養老山の山頂はどんなに素晴らしいことだろう。



そしてついに養老山の山頂へ到達した。

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展望ゼロ。

過去最高に地味な山頂だ。

たまたまそこにいた山ガールさんに撮影してもらったんだが、彼女も怒りで手が震えているようだ。

写真がブレブレじゃないか。

それともiPhoneアウトローモデルを使いこなすワイルドな僕に緊張でもしているのかな?


しかしハードボイルドすぎる僕は、あまり若い子とおしゃべりできない。

ワイルドシャイボーイの僕はこの山頂の広がらない景色と同じく、その山ガールと大して会話を広げる事は出来なかった。


そして僕は地味に風が来ない林の中でおにぎりを食って下山して行った。

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


下山後、車に着いたから嫁に下山報告だ。

少しでも心証を良くする為に、温泉にも入らず直行で帰りますと伝えてやろう。

こうした日々の努力が僕の冒険を支えるのだ。


電話をするべくiPhoneを取り出す。

ずっとしまっていたからすっかり忘れていたが、久々に現実を再び目の前に突きつけられた。

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しかし、今日一日の修行を経て僕は強い心を手に入れた。

よく見るとカッコいいじゃないか。

道具はハードに使ってこそ道具なんだ。


そう言えば僕は自分の車「エクストレイル」を新車購入した二日後に底をへこませ、その四日後に当て逃げされている。

そういう儀式を経て、初めて人は割り切ってその道具と本物の付き合いが出来るんだ。


今回もつまりはそう言う事さ。

そう思う。

そう思いたい。


悔しい。

やっぱり悔しいです。

そう思うなんて無理だ。


アウトドア用の強靭なiPhoneケースを探していた矢先だっただけに悔やまれてならない。

こんなことならこだわらずに安いケースでもとりあえず買っときゃ良かった。


僕に必要だったものはアイゼンでもピッケルでもなかった。

iPhoneケースだったんだ。


しばらくは、この割れかかった心を保護してくれるカバーを探す旅に出よう。

まだまだ僕のお遍路修行は続いて行くのだ。



聖なるピンチヒッター〜養老三山〜 完


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