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りんたろ七五三〜そして父誤算〜

Posted by yukon780 on 20.2014 伊吹山/滋賀 3 comments 0 trackback
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ケツからご来光を覗かせながら必死で走る男がいる。

そこは早朝の伊吹山中。

独立峰ならではの吹きさらしの寒風が容赦なく男に襲いかかる。

その風を切り裂いて、ただただ父は走る。

全ては息子の「七五三祝い」のためである。



そもそも彼はこの日、こんな所でグヘグヘ言う予定ではなかった。

では何故このように早朝からマゾることになったのか?


時は前日に遡る。

この日彼は、5歳の息子りんたろくんの七五三参りに訪れていた。

この落語家みたいな男がそのりんたろくんだ。

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このように、彼は父の「立派なアウトドアマンに成長して欲しい」という思いをはねのけ、順調にお笑い芸人として成長している。

そして誰彼構わずキスしまくるエロ太郎としてもハードに成長中。

基本的にこの神社にいる間、彼は男女問わず常に誰かにチューをかましていた。

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このままではまずい。

一体どこで育て方を間違えてしまったのか?

まだ5歳だから許されるが、このまま成長したら立派な変態だ。


やはり通常の七五三参りでは彼の変態路線への成長は止める事が出来ないようだ。

そもそも神社に金だけ払って子供の健やかな成長を祈願するなんて、随分と虫の良い話じゃないか。

男親たるもの、やはり「己の体」を奉納してこそご利益があるのではないか?

大人には大人の七五三が求められる時代ではないだろうか?


という事でその男は、愛する我が子の為に自らの身を山に捧げる決心をした。

ここからは大人の七五三のお時間だ。


この「大人七五三」という行事は、まず家庭内に祀られてある「嫁」という名の神に祈りを捧げる事から始まる。

男による伝統的な祝詞(のりと)が神殿に響き渡る。

「掛けまくも畏き嫁大神。岐阜に住めるマゾが真名児りんたろ。今年五歳になりぬれば 世の常の例のまにまに伊吹山山頂に参出敬ひ拝み奉る。早朝だけでいいのです。嫁大神の寛大なる御心のままにどうか僅かばかりの奴隷解放を。ご迷惑はおかけいたしません…あなかしこ…あなかしこ…」


この祝詞を現代訳すると「どうか早朝だけ伊吹山トレランさせてください。全ては子供の為なのであります。」といった所。

過去最高に威力のない「口実の剣」。

要するにただ単に山に行きたいだけの苦肉の策だったが、奇跡的に「10時までに帰ってこい。遅れたら殺す。」という比較的寛大なご采配を賜る事に成功。

10時までの帰宅なら無理すればかなりのマゾが楽しめる。


そして男がその大人七五三のステージに選んだのが「伊吹山」。

トレランには向かない直登直下の独立修行峰。

そしてこの山の山頂には日本史上最強の男「ヤマトタケル」が祀られている。

りんたろくんの男らしい成長を祈願するには持って来いの参拝場所なのである。


こうして男は早朝4時に家を出発して行った。

全ては息子のため。

この身を伊吹の神に捧げる「大人七五三」の神事が幕を開けたのである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


暗闇の伊吹山麓。

人々が寝静まる町中を、犬に吠えられながらひたひたと走り始める男がいた。


2キロほどロードを走り、伊吹山の登山口に到達。

大人の七五三を前に彼の気分は高揚していた。

高揚しすぎてヘッドライトを消し忘れたまま記念写真を撮ってしまい、もはや本人確認も出来ないほどだ。

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何やら顔が爆発した瞬間を激写された人みたいになっているが、彼が今回の伊吹山七五三参拝者。

子供の為と言い張って、己の欲を満たす為だけに山に突入しようとしている聖者である。


本当は大人しく予定通りお留守番してるはずだったんだけど、なんせ天気予報が晴れだったもので...。

しかも来週末には京都一周トレランの続きが控えているだけに、ここらで一発体を作っておきたかったんですね。


なんて本音がポロリしてしまったが、意気揚々と七五三スタート。

ひたすら暗闇の地味なハイクアップで、順調なマゾミングアップ。

いい感じで胃酸もアップして来た頃、一合目到達。

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ここは旧スキー場なんだが、ここから山頂までは一切の妥協は許さない延々直登ルート。

累積標高差は実に1167mで、「ひたすらまっすぐ登るだけ」といった実に男らしい独立峰。

はっきり言ってとても走れるような山じゃないんだが、今回は山に身を捧げるのが目的なので問題ない。


問題なのはむしろ、この「伊吹山って屋根付きだったっけ?」と思ってしまったほどの天を覆うモクモクさんの存在だ。

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天気予報が晴れだから無理してここまで来たんだが、あの情報はギャグだったのか?

七五三とともに、早くも父の誤算がスタートしてしまったようだ。


そして懸命に登って行くほどに、辺りはお馴染みの光景に包まれて行く。

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そして三合目に着く頃にはこんな事に。

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白いにもほどがある。

秋なのにほとんどホワイトアウトじゃないか。


しかしこうなればもうこっちのものだ。

やはり山はこうでなくっちゃ始まらない。

我が白き土俵で、伊吹の神にこの身を捧げる事が出来るなんて私は実に果報者である。


という強がりを呟いた後、男はひとしきり泣いた。

だったら何も伊吹山くんだりまで来なくても、近所の山でも同じ風景だったんじゃないのか...。


そう言えば確かヤマトタケルも伝説ではこの三合目で遭難したとある。

かくいう僕も以前伊吹山登った際、この三合目のトイレでケツから吐血した遭難の思い出がある。(参考記事:流血の挑戦者〜伊吹山前編〜

どうもこの三合目には魔物が潜んでいる気がしてならない。


しかしこれぞ大人七五三の試練。

肉体のみならず、このように精神もえぐってこそご利益があるというものである。


その後、その三合目の呪いに抗うかのように、ひたすら突っ走って高度を上げて行く。

やがてモクモクさんと同時に五合目に到達。

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伊吹山はこの五合目からが勝負。

こっから斜度はキツくなる一方で、筋肉破壊のお祭りが開演だ。

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そして木々などの遮るものもなくなり、その寒風はダイレクトに我が身にマヒャドを直撃させてくる。

それでも愛する我が子の為、ここは歯を食いしばって突入だ。


一方で、この頃には日が昇って来て辺りは幻想的な景色に包まれた。

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このマゾと絶景のバランスがたまらない。

モクモクさんは毎度迷惑な奴だが、彼がいるおかげで見られる景色だってある。

振り返ってみれば、もはや空襲でも受けたかと思うようなモクモクの町並み。

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鉄塔に至っては、まるで20世紀少年のロボットのような荘厳な佇まい。

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一瞬「嫁か?」と戦慄が走ったが、よく見るとこれは鉄塔だ。


そんなこんなで六合目の避難小屋を越え、

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さらに順調に高度を上げて行く。

猛烈にしんどいし、何やらやたらと寒いがここまでは順調に事が運んでいる。


と思った矢先。

景色が白いだけならまだしも、まさかの「足元も白い」区間がスタート。

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どうりで寒いわけだ。

というかさすがにまだ雪はないものと想定してこの伊吹山に来たんだが、この先大丈夫なのか?

そんな不安に対し、伊吹さんはバッチリ「ホワイトカーペット」でお出迎えしてくる余計な歓迎セレモニー開始。

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これじゃ滑って走れないじゃないか。

というかこんな所をトレランするなんて全く想定してなかったから、なんだか異常に怖いじゃない。

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斜度も鋭くなって来てるし崖もあって、中々の位置での計ったかのようなホワイトカーペット。

こいつはとんだマゾな映画祭に迷い込んでしまったようだ。

絶対にこの作品を滑らせてはいけないぞ。


そこからは慎重に、そしてハードに早朝マゾに邁進。

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大人の七五三とはかくも激しい行事なのか。

この霜っぷりは、またしてもモクモクに次ぐ父誤算である。


やがて九合目ともなると、世界は完全に冬の装い。

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もはやエルサが駆け抜けて行っかのようなこのアナ雪感。

想定外の樹氷を見ながら、冷え性の薄着トレラン男が懸命に駆け抜ける。

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「なんなら紅葉も楽しめるかも」なんて感じで秋の山を楽しむ予定だったんだが...。

さすが大人の七五三。

父の誤算はとどまる事を知らない。


しかしそれでもお父さんは、プルプルしながら山頂台地に到達。

そこはまさに凍てついた寒々しい世界だ。

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ここはキグナス氷河が修行した東シベリアのコホーテク村なのか?

最近マゾってなかった僕に対してなんて上質なおもてなしだろう。

スパシーバ、イブキ。


さあ、もたもたしてると吹き上がる寒風でホーロドニースメルチされてしまう。

凍る前に、急いで山頂へ。

ついに七五三参り目的地、ヤマトタケルに拝謁だ。

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早速「りんたろくんが男らしく成長しますように」という願い事と、「嫁が優しくなりますように」という絵空事を祈願。

そしてここまでのマゾ奉納に気を良くしたヤマトタケルから、この快晴のご褒美だ。

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なんという神のお力。

なんだかんだと、無理してここまで来て良かったよ。


となると欲が湧いてくるのがマゾの性。

この広い山頂台地の反対側に行って、眼下に広がる絶景を拝んでみたくなるというもの。

神が降臨して来そうなこの世界の先に待つその絶景を。

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こうして調子に乗った男は「山頂からの絶景」という見慣れない世界に向かって再び走り出す。

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やがて辿り着いた先の展望台は凍り付いたベンチ。

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滑らないように慎重にこのベンチの上に立つ。

目をつぶり、深く息を吐く。

そして静かに目を開ける。

ビバ!

眼下に広がる絶景よ!

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彼は北島康介風にこう言った。

「何も見えねえ...」と。


空はバッチリ晴れてるのに、見事なほどに眼下は真っ白。

もうただただ涙がこぼれ落ちないよう、天を仰いで白きため息を吐くばかり。

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これぞ大人の七五三。

数々の誤算の上に成り立つ身を切るような行事。

このおめでたさで、息子りんたろくんの順調な成長は約束されたようなものである。


やがて「何が何でも東側の景色は見せないぞ」と言わんばかりのモクモクさんのやる気がさらに鬱陶しくなってきた。

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これ以上の深入りすれば、一気にあのモクモクの餌食になることは明白。

と言うかこんなとこでもたもたしてたら、10時に間に合わなくなって嫁の餌食になる事の方が超明白。

やる事はやったから帰ろう。

もうマゾ高は十分だ。



で、こっからがお待ちかねのお時間。

ただただひたすら滑降してかっ飛ばして行く猛烈ダウンヒル。

この場にランボーNがいたら「飛びたい」と言う事間違い無しの、琵琶湖を眺めながらのこの大急降下。

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怖いんだけど、帰宅が遅れてしまう方がもっと怖い。

ここからは一気呵成に猛ダッシュ下山スタートです。

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ここからは写真も撮らず、本気で走り続けた。

腿の筋肉は壮絶なパンプアップフェスティバル。

この時間帯から通常の登山者が下から続々と登ってくるので、すれ違うたびにスピードを殺して腿に爆発的なハード負担。

それでもこの世界を滑降していく爽快感はスペシャル極まりない世界だ。


通常コースタイム2時間半の下山を、嫁に対する恐怖を味方につけて見事50分で駆け下りる事に成功。

そして腿の筋肉を10本くらい断裂した状態で、ヘコヘコとフィニッシュ。

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久々に壮絶な筋肉痛。

実はこの日以降本日に至るまで、まともに階段が降りれないほどの筋肉痛が続いている。

今週末の「京都トレランの為の体作り」で始まった行事だったが、まさかの「京都トレランの為の肉体破壊」を達成。

まさかの連鎖が止まらない。

父の誤算が止まらないのだ。


そして足を引きづりながら車に向かう途中、「伊吹薬草の里」という薬草風呂が登場。

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冷えた体、筋肉が強ばった状態の僕には生唾ものの施設。

この時点で家に10時に帰れる事は確定していたので、ついつい嫁に甘えてみる事に。

僕は電話で陽気に「サッとお風呂入っちゃっても良いかな?」とタモさんの「明日来てくれるかな?」的な軽いノリで聞いてみた。

今の私にはヤマトタケルが憑依しているから、きっと神の力で良いお返事が頂けるに違いないと踏んだのだ。


しかし電波が悪いのかと思うほどに、受話器の先は漆黒の闇の無言が続く。

僕は「あれ?もしもし。もしもーし。」と言っても応答がない。

やがてその氷結の無言に絶えられなくなって「スミマセン...。すぐ帰ります...。」と力なく言ってしまったヤマトタケル。

するとその闇の底から低い声で「よし」というお声。


いよいよ嫁は圧力だけで会話するようになって来た模様。

気持ちが大きくなって、思わず甘えてみたくなった私が愚かだった。

本日一番の父誤算は、意外と身近に存在していたようだ。


男は帰り道、おいしいパン屋さんでお土産のパンを高価な順に数個買って帰った。

そして嫁大神の御前にうやうやしく奉納。

七五三は終わっても、彼と神との隷属関係は終わらないのである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何はともあれ、無事にりんたろくんの七五三が終わりました。

随分話が脱線した気がするけど、要するにそれが言いたかっただけの回でございます。


最後に今回は前回ご紹介したGoProでもテスト撮影してるので、おまけでここに載せときます。

やたらとスピーディーに走り倒してる感が出てますが、その辺は編集の妙でございます。

補正はかけてるけど、後半は画面がブレブレなので吐かないように気をつけてご視聴ください。



はい。

お疲れさまでした。

もう筋肉アウトです。



今週末の京都...


もう走れる気がしない....




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坂の上の雲〜伊吹山後編〜

Posted by yukon780 on 27.2012 伊吹山/滋賀 0 comments 0 trackback
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思いがけない出血と遭難。

ただでさえ万全でないコンディションに追い討ちをかけてくる伊吹山。

まだ五合目にして、すっかりやつれてしまった男。

しかし、これより先は「雪山中級者の山」と言われるにふさわしい世界が広がる。


初心者雪山登山シリーズ最終章伊吹山、後編です。


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さあ、ここから後半戦だ。

五合目から頂上までは、一直線の「直登男道」。

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寄り道なんてしない、曲がった道も大嫌い。

男は黙って直登一直線。

みんなも応援してくれているんだ。


実は今回から新しい試みをしている。

この山は開けている上、山頂は観光地でもあるので携帯の電波が結構届く。

なのでiPhoneを駆使して、facebook上で登山実況中継。

栗城史多のように、この感動を共有してもらうのが狙いだ。


しかし先ほどから中継しているのは「ケツから出血しました」とか「違う道を歩いてました」とかいった間の抜けた投稿ばかり。

寄せられるコメントには憐れみこそあれ、誰一人感動していない。

中には「がんばれ、お尻!」などと登山とは別な意味での激励のコメントが寄せられる。

やはり僕は栗城にはなれない。

情熱大陸のオファーも、きっと来ないだろう。



突き進んで行くと、徐々に迫力を増して伊吹山が迫り来る。

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写真ではよく分からないが、山頂直下のもの凄い斜面に「人」の姿が確認出来た。

まさか、あそこを登って行くのか?


はっきり言って僕は激しい「高所恐怖症」の男だ。

前にも言ったが、脚立の一番上にも登れない腰抜け野郎。

果たして僕は登りきる事が出来るんだろうか?


やがて六合目の避難小屋到達。

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いよいよここから、本格的に直登パラダイスが始まる。

ここで行動食を食べてエネルギーチャージし、アイゼンを装着して戦闘態勢に入る。

ここからは「雪道」になるので、七合目とかの看板は出て来ない。

ひたすら頂上を目指す直登一直線の始まりだ。


さあ、気合いを入れて行くぞ。

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上を見れば雪の急坂が延々と続き、振り返れば身もすくむような景色が飛び込んでくる。

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この圧倒的恐怖感が伝わるだろうか?

とにかく目の前の一歩に集中して、出来るだけ振り向かないように進んで行く。


それにしても道が酷すぎる。

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雪は完全にシャーベットで、シャビシャビでとてつもなく歩きにくい。

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アイゼンの爪もあまり効かなくて、滑るったらありゃしない。

斜度が増すにつれ、「一歩進んで半歩ずり落ちる」という辛い行軍となって行く。

これが凄まじく体力を奪い、気持ちまで砕かれそうになるほどしんどい。


そんな気持ちをあざ笑うかのように、斜面はどんどん鋭くなって行く。

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チラリと振り向けばいよいよ恐怖が募って行く。

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マゾの快感と高所恐怖症の恐怖が入り交じり、どんどんトランス状態に陥って行く男。

そんな過酷な状況でもオノレ撮りはかかさない。

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平然と登っているように見えるが、凄まじい恐怖と戦いながらのセルフタイマー。

こういう余計な事してるから、無駄に体力を失うことになる。


やがて、おそらく八合目付近。

さらに斜度はとんでもなくなってくる。

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伝わらないのが悲しいが、随分と「死」を意識させてくれる恐怖感。

すっかりケツの穴がキュキュッと絞られて、おかげでこれ以上の流血は避けられそうだ。


雪面も相変わらずズルズルに滑る中でのこの状況。

自然と恐怖で体が前傾になってしまうから、ふくらはぎの筋肉がちぎれそうだ。

一歩進んでは立ち止まり、気合いを入れ直してまた一歩の繰り返し。


もう足下だけを見ながらの無心登り。

もう、しんどすぎて多少の事があっても驚かない状態。

しかし、そんな僕をとても驚かせるものが足下に突然現れた。

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なぜだ?

なぜこんな1000mを超えたこのような斜面に、映画「スピード」のおすすめレビューが?

どんだけこの映画の良さを知ってもらいたいんだ。

ついに僕は幻覚を見始めたのか?


しばし立ち止まって固まる僕。

先人が残したこのメッセージは何を意味するのか?

最後の一文「出来ない事をやるスリル感」というのが、今の僕にピッタリだが前置きが長過ぎる。

確かに良い映画だが、ここまでして人に勧めたい程に感動したんだなあ、この人。


ふと我に返って、再び山頂目指して進んで行く。

ここで気を抜いて滑落したら、それこそスピードアクションが始まってしまう。



そして、ついに山頂直下の九合目付近。

あの六合目付近から「人」が点で見えた辺りだ。


傾斜はさらに「倍率ドン」でアップする。

もうオノレ撮りも限界が近づいて来ている。

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恐怖のあまり、全く「立ち位置」まで移動する事が出来ない。

体を起こす事も出来ず、ただただ怯える小動物の姿が映し出された。

さらに写真を見てお分かりの通り、下からの突風でヒップソリが持ち上がっている。


実はここに来て、凄い勢いの突風が吹き始めた。

「足下から吹き上げる」感じの凄い風だ。

この傾斜と、滑る雪と、とんでもない景色の恐怖に加えての突風タイムセール。

もはや生きた心地がしない。


それでも、よせばいいのに命がけのセルフタイマー。

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恐怖と快感が交差する感情交差点。

単独行の辛い所だ。


ここでiPhoneが「ピロリン」と陽気な通知音を発した。

やっとの思いで画面を確認すると、facebookにチーム・マサカズのアゴ割れMが「何かおもろいことやって」との無茶ぶりメッセージ。

殺す気なのか?

こいつらは純粋に応援する事が出来ないのか?

今のこの決死の状況を分かっているんだろうか?


それでも限界ギリギリの「いいね!」パフォーマンスを中継しておいた。

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これが今の僕に出来る精一杯のパフォーマンスだった。

はっきり言って、気分は少しも「いいね!」ではない。

来年はアゴ割れMをここに連れて来て、絶対何かやらせてやる。



最後の急坂を登りきって、ついに山頂広場に躍り出た。

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その場に膝をついて「ふっー」と息を一つついた。

これは中々の達成感。

やっと登りきったぞ。


でもイマイチ感動に浸りきれないのは、「この道を帰って行かねばならない」ってことがあるから。

でも、なるべくそれは今は考えないようにした。


ここから山頂歩道を歩いて、山頂の碑を目指して行く。

さあ、恐怖の時間は終わりだ。

ここからは山頂をしっかり堪能してやるぞ。

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そう思っていた矢先、突風はさらに勢いを増し、ついにあれほど快晴だった空があっという間に雲に覆われ始めた。

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なぜなんだ?

僕には「ご褒美」というものは与えられないのか?

Yahoo!天気もWeatherNewsも、今日は一日晴れって言ってたじゃないか。

そもそも1時間寝坊しなければ、快晴の山頂を楽しめただろうに。

突風の中九合目を登る事もなかったろうに。

りんたろくんが夜泣きしなければ、嫁と喧嘩しなければ基本的に寝坊だってしなかったろうに。


毎度の事ながら、このガッカリ感にはなじめない。

お得意の後悔のネガティブ螺旋の沼に落ちて行く男。


しかし気を取り直して、雪に埋まった売店を横目に山頂を目指す。

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厳冬期なら、完全に雪に埋もれている売店だ。

本当に今回が雪の伊吹の最終チャンスだったんだなあ。


そしてやっと頂上のヤマトタケル像が見えて来たぞ。

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もうこの頃には、突風は「暴風」と化していた。

台風中継の若手アナウンサーのように、体を斜めらせながら頂上へ向かう。


そしてついに「伊吹山」制覇です。

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実に長かった。

この日の登山だけでなく、ここまでに至る経緯を考えると感慨もひとしおだ。

景色も素晴らしいじゃないか。

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しかし風が強くて、寒いしゆっくり浸ってる余裕がない。

ご覧のような有様で、体全体から「辛さ」がにじみ出ている。

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結局このヒップソリは、「風の強さを表現する」という意味で大活躍だ。

もう完全に上向いちゃってるし。

そして何より無駄だった物が、重量のある「スノーシュー」。

全く登場の機会はなく、ただの「重り」としての役目を果たして僕のマゾに一役買ってくれた。



建物の陰の風が少ない場所に移動して昼食。

ここで石川県から単独で来ていた人と意気投合し、共に下山をする事になる。


石川県で消防士をする彼は、消防士なのに中々にうっかり者だ。

トレッキングパンツを忘れて来て、なんとユニクロのジーンズでここまで登って来た強者だ。

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とんだカジュアルな雪山登山者。

転んだ時点で、ずぶ濡れになってしまうから絶対に転べないスリリング登山を楽しんでいるようだ。


そんな彼と談笑しながらの下山。

しかし、改めて思い知る現実。

この崖のような所から、今度は降りて行かねばならんのか。

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もうここまで来たら腹をくくろう。

幸い、この人は結構ハードな山をこなして来た経験者だ。

何かあれば、全力でこの人に頼ってしまおう。


そして投身下山前の勇姿を撮影してもらう。

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これが遺影になるかどうかは、この先の下山次第だ。

もちろん「シリセードチャンス」ではあるんだが、とてもじゃないがこんな所を滑って行ったら死んでしまう。

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なんかスカイダイビングでもする時のような心臓のバクバクだ。

とにかく慎重に慎重に下って行く。


セルフタイマーでは限界があった場所に、彼に立ってもらって撮影。

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これで、この高度感と斜度が結構伝わるかな?

ここからはもう頭を真っ白にして、一歩一歩確実に足場を作りながらの下山が続く。

しかし、ある程度下ってくれば多少傾斜もマシになる。

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さあ、やってきたぞシリセードチャンス。

もちろん、この時点でヒップソリは滑りすぎてしまうのでまだ使わない。


まだ怖いけど、せっかくここまで来たんだ。

頂上ではご褒美が貰えなかったし。

ここで楽しい思いをしなくてはやっぱり報われないじゃない。

切れ痔が裂けて大出血の大惨事にもなりかねないが、ここまで来たらやってやる。


2、3回ピッケルの滑落停止訓練をして止まる練習をしてから、よーいドン。

凄い勢いでケツで疾走して行く(滑落して行く)男。

すごいスピードだ。

そして、楽しい!楽しすぎる。


一度止まって、ケツの感覚チェック。

若干じんわり感があるが、大出血にまでは至っていない感じだ。


そこからは調子に乗ってがんがんシリセード。

途中太い枝が突き出てた所があって、慌ててグローブで回避。

グローブが破れたかと思う程の衝撃があったが、何とか無事だった。


楽しすぎても、あまり調子に乗ってはダメだ。

あれがもし股間にスペシャルヒットしていたら、今後りんたろくんの弟か妹の誕生は絶望視されるところだった。


もちろん、消防士の彼は歩いて下って来ている。

ユニクロのジーンズでシリセードした日には、彼のケツは凍傷にかかって肛門を切断するはめになる。

さすがの火消しの男も、自分の命の火を消すような無謀は冒さない。



六合目付近まで降りてくると、傾斜もなだらかなのでヒップソリの出動。

インターバルタイマーをセットして、再び登って行く男。

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そして、子供用ソリで無邪気に滑ってくる中年。

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とんだ自作自演の茶番劇。

それでもやっぱりこいつは楽しいや。

やっぱり雪はおっさんでも童心に戻してくれるんだね。


消防士さんも合流して、僕が吐血した便所とともに伊吹山にお別れ。

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いい試合だったぜ、伊吹ジョーよ。

来シーズンこそは「真っ白になった」お前を正式に倒しにくるからな。


こうして僕は下山して行った。

空はすっかり分厚い雲に覆われてしまった。

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晴れ予報だった事なんて、もうどうでもいいさ。

いつも通のコンディションで、いつも通りの天気の中での最終チャレンジ。

ある意味、僕らしいフィナーレ。

雨が降らなかっただけでも、ツイていたと思うべきだろう。


そして、感動の登山口へのゴールの瞬間。

長かった雪山登山シリーズのフィナーレ。

ゴールしたら、ガッツポーズでもして華々しく記念撮影だ。


ゴール手前で、まさかの「会社からの電話」が鳴り響く。

どうしても、今日確認しなくては行けなかった事があったらしい。

結局、仕事の電話をしながらの地味すぎるゴール。

そこには感動も華もない、ただ一人のくたびれた会社員の姿だけがあった。



こうして、念願だった冬の(春の?)伊吹山登山が終わった。

これで、しばらく落ち着いて日々を暮らして行けそうだ。

まずは溜まりに溜まったこの疲労を回復させる事と、ちゃんと痔を治すところから初めて行こう。

春の新生活のテーマはノー・モア・血便だ。


そして、4月5月はいよいよカヌーシーズンの到来。

6月のアユ釣り解禁までが勝負です。


とりあえずは、嫁との仲直りをしていくか。

そして、また「素直で大人しい」養子野郎にも戻らなくては。


もう、春はそこまで来ている。


伊吹山 〜完〜






流血の挑戦者〜伊吹山前編〜

Posted by yukon780 on 26.2012 伊吹山/滋賀 0 comments 0 trackback
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前回の壮絶なる前夜祭。

その祭りで男の身にこびり付いた諸症状は「連続登山疲労」「風邪気味の体」「マスオストレス」「夜泣き寝不足」「夫婦喧嘩の後味」の5本。(前回記事参照)


そんな、ある種のベストコンディションで挑む雪山中級者の山「伊吹山」。

天気予報はついに「快晴」「微風」予報。

雪山登山シリーズ最終章がついに始まった。


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伊吹山登山者駐車場の、ほんのちょっと下の駐車場に駐車。

実は普通に登山者駐車場に停めると1000円だが、そこから10秒歩いた所の民間駐車場は500円なのだ。

これ、知らずに1000円のほうに停めてしまったら切なすぎるだろ。


そんなこんなで、出発前の記念撮影。

ここは本来スキー場の入り口ゲートなんだけど、スキー場は数年前に閉鎖されてしまっている。

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目が腫れぼったいのは、もちろん寝不足だからだ。


そして登山口に着くと、早速飛び込んでくる看板。

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しょっぱなから恐怖をあおりやがって。

いきなりやる気を削いでくれる注意報が発令されている。

神はどうあっても僕を登らせたくないのか?


僕の場合「注意報」は「警報」に匹敵する。

降水確率0%でも、車のワイパーがマックスに動いた事もある男だ。

まだ登山口なのに、激しい不安感が僕を支配した。


そしてここからは非常に地味で、かつ意外と急でしんどい道が延々と続く。

IMGP6016_20120323174130.jpg

厳冬期であれば、もうこの辺からすっかり雪だったろうに。

そしてこの地味な区間が結構長い。

中々一合目が現れず、この間隔が頂上まで続くのかと思ったらゾッとした。


何はともあれ、一合目到着。

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スキー場の閉鎖により、すっかり廃墟と化した場所だ。


ここからは、かつてのゲレンデだった場所を延々と登って行く。

もちろんスキー場だったから、中々の急登だ。


登って来た道を振り返れば、ズバンと景色が開けて、奥には琵琶湖が霞んで見える。

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ここで2つの事にお気づきだろうか?


まず1つ目は、今までになかった物が背中に括り付けられている事だ。

別にエロすぎて亀仙人になったわけではない。

今更ながら導入した「シリセード用」の子供用ヒップソリだ。

下山時に、快適に雪面を滑って下ってくる為のアイテムだ。


そして2つ目は、そのソリを使う為の「雪」が全くない事だ。

やはり来るのが遅かったのか?

シリセードどころか、これの一体どこが「雪山」なんだ?

どの辺りが「なだれ注意報」なんだ?

僕のモチベーションが崩れて行く事への注意報だったのか?


またしても僕は不安に支配された。



しかし、登り続けて二合目を過ぎるとちらほらと雪が現れ出した。

そしてついに僕の眼前に、目指す伊吹のピークがドドンと姿を現した。

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待たせたな、伊吹ジョーよ。

僕の気分は再び高揚し、壮絶な減量を乗り越えた力石徹のような気分になった。

僕は勇ましくリングに向けて歩き出した。


しかしそのリングまでの花道は、すっかり「ゲリ道」と化していた。

IMGP6063_20120323174207.jpg

もう雪が溶けちゃってるから、グッショグショなのね。

絶対来るの遅かったって。

こんなの雪山登山じゃないよ。


こうして力石はクソの花道をグチりながら進んで行った。



やがて足下をクソまみれにしながら三合目に到達。

最後のトイレが現れた。

IMGP6066_20120323174212.jpg

クソまみれついでに、一発ここにクソをお見舞いしてやろう。

僕が生きた証を、この伊吹の大地に奉納するのだ。


僕は全力で踏ん張り、己の分身を便器へと切り離した。

その時、肛門に突き抜けた「冷やっこい」感覚。

何事かと思い投下物を確認すると、目を疑う凄惨な光景が飛び込んで来た。


鮮血が飛び散り、便器が真っ赤になっている。

投下物との美しき茶と赤のコントラスト。

これは何かの新しい韓国料理なのか?


冬の伊吹山三合目での、まさかのケツから「吐血」。

怪我したときの為に絆創膏を持って来ているが、まさかケツの入り口に蓋をするわけにはいかない。

いよいよ追いつめられた僕のコンディション。

最近ずっと大人しかった切れ痔が、この局面で炸裂するとは。

登山口の「なだれ注意報」とは、さてはこの事だったのか。


この二日で父親の威厳、養子の慎ましさ、嫁の愛とともに、大量の血までも失ってしまった。

もはやこれ以上失う物は何もない。

文字通り「尻に火がついた」状態だ。

もうこうなったら、この勢いで一気に伊吹山のピークハントを狙ってやる。

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猛々しい後ろ姿だが、まだケツがシパシパする。

それでもこの手負いのマゾは、あくまでも頂上を目指す。

彼の奮闘に多くの観客が涙する事だろう。


大分足下が雪で覆われ、やっとゲリ道とはおさらばだ。

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かと言っても、雪が「シャーベット状」なので、なんせ滑って歩きにくいったらない。

たたでさえ、今の僕に「踏ん張り」は効かない状態だ。

これ以上踏ん張ると、体中の血を紛失する事になる。



やがてやっとこさ「四合目」到達。

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実はここから道が二手に分かれていた。

地図を見てもイマイチどっちが正解か分からない。

すると左の道の入り口付近に「雪だるま」を発見した。

おそらくこっちが正解という事を表現しているんだろう。


そして僕はその道を突き進んで行く。

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何やら人の踏み後らしき物も何もないが、地図見てもあってるっぽいから進んで行く。

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上を見上げると、この場所で「雲が作られる瞬間」が目撃出来た。

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うまく表現できないが、「こうして雲は出来るんだ」っていう場所だった。

こうして伊吹山にぶちあたった気流で雲が作られ、伊吹おろしとともに岐阜に雲を運んで行く、まさに雲の源流部だ。

急がないと、こんな晴天がいつまでもつか分からないぞ。


次第に道はどんどん急になって行き、凄まじくハードな展開になって来た。

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だんだんと「この道であってんのか?」という激しい不安が僕を支配する。

やがて道はどんどん狭まって行き、最終的に行き詰まった。

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もうこれ以上先には進めなくなっている。

実に分かりやすい遭難だ。

随分と登って来てしまったが、これで道が間違っている事がはっきりした。


今注文しているハンディGPSが、今日の登山に間に合っていればこんなことにはならなかったろうに。

やっぱりつくづく僕にはGPSが必要だな。

登山道も、そして人生にも。


結局せっかく登って来たこのハードな急登道を、むなしく引き上げて行く。

やがて、僕をこんな目に遭わせた「雪だるま」が再登場。

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一体誰がこんな紛らわしい物作ったんだ。

普通の人は騙せなくても、この僕は騙されるぞ。

伊吹の罠は実に恐ろしい。


結局余計な体力を失って、やっとの思いで五合目に到達。

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やっと、半分。

というかまだ半分なのか?


僕は無駄な道迷いと無駄な出血によって激しく消耗していた。

しばしこの場所でぐったりと休憩。

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お尻の状態が不安なので、しっかり座って休憩することも出来ない。

「無事下山出来たら、ちゃんと痔を治そう。」

そう固く誓った瞬間だった。



しかし、ここからの後半戦。

そこはマゾと恐怖が支配する世紀末登山だった。

冬の伊吹山の本番はここから先にあった。

ついに本気を出した伊吹山が、傷だらけの男に襲いかかる。



〜伊吹山後編につづく〜



立ちはだかる壁〜伊吹山前夜祭〜

Posted by yukon780 on 25.2012 伊吹山/滋賀 0 comments 0 trackback
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ついにこの時がやって来た。


あまりにも長過ぎたここまでの日々。

お預けを食らい続けた男の5度目のアタックチャンス。

初心者雪山登山シリーズ最終章「伊吹山」を落とす時が来たのだ。



何度も言って来たが、とにかく冬のこの山の天候は安定しない。

僕はこの2ヶ月以上、毎朝かかさずに我が家の二階の窓からの「伊吹チェック」をしてきた。

いつも雲に覆われていて、1日中快晴なんて事は滅多になかった。

晴れたとしても「伊吹おろし」で有名な強風に見舞われる事もある山だ。


そんな中でも、過去4回だけ休みの日に快晴・無風に恵まれた日があった。

一回目のアタックチャンスは「アンパンマンミュージアム」に費やされ、二回目は無情なお留守番命令のために「もんもんサンデー」となり、三回目は保険証紛失による「交番出頭宣言」が飛び出し、四回目は二日前の「階段ヒットパレード」だった。

もうこれ以上の「寸止めお預けプレイ」はごめんだ。

いくら僕がドMでも、限度というものがある。


はっきり言って、もう伊吹山の雪はすっかり溶けちゃって「厳冬期」から「残雪期」に変わり果てている。

憧れの女の子をやっと自分のものに出来たと思ったら、すっかりお互い老け込んでしまってたって感じだ。

しかし、どうあっても雪のある内に抱いてやらないと今シーズンを締めくくる事が出来ない。

池田山に始まった壮絶な初心者雪山シリーズ。

ついに完結編、雪山中級者の山「伊吹山」の始まりです。


今回は出発までの前哨戦でございます。


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水曜日。

あまりにも唐突に、翌日の木曜日の仕事が休みになった。

即座に僕がした事は、もちろん仕事のスケジュールチェックではなく伊吹山のお天気チェック。


晴れだ。

風も穏やか予報。

唐突に訪れた五度目の伊吹山アタックチャンス。

今週末に雨が続く予報だから、おそらく「雪山」としての伊吹山の本当のラストチャンス。

もう、なにがなんでもこのチャンスを逃す事は出来ない。


しかし体力的には少々厳しい事になっている。

土曜日に雨の中修行登山をし、火曜日に階段筋トレ登山をした疲れを引きずりつつの木曜日登山。

六日で三回目の登山にして、少々風邪気味。

過去最もハードな雪山登山に対して、こんなコンディションで大丈夫なのか?


しかし、考えようによっては「通常コンディション」だ。

これで雨でも降ろうものなら、僕にとってはベストコンディションと言える。


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帰宅後、翌日が休みになった事を伝える前にお義父さんに切り出された。

「なんや、りんたろの腹にブツブツができとるで明日は病院に連れて行かんとな。」


またなのか。

嫌な予感が僕を支配した。

これで「明日休みになりました」って言ったら、話の流れからして僕がりんたろくんを病院に連れて行く事になる。

息子よ、なぜこんな時に湿疹おこしてんだ。

見るからに大した事はないんだけど、心配性のこの家族が見過ごす事はないだろう。


しかし今日の僕は固い決意を胸に帰宅して来ている。

恐る恐る「明日休みになりました」と切り出した。

すると案の定お義父さんが「じゃあ病院に行ってから、天気もいいからスタッドレスタイヤをノーマルタイヤに替えるか?」と言って来た。

病院のみならず、一項目やる事が増えてるじゃないか。

なぜ、わざわざ天気のいい日にタイヤを替えなくてはならんのだ。

そんな事は中途半端な天気の日の夕方にでもやれば良い事じゃないか。


なんて事はもちろん言えません。

しかしマスオだってたまには抵抗して、波平の囲碁の誘いを断る事だってあるんだぜ。


僕は激しく喉をカラカラにさせながら「明日はどうしても外せない野暮用がございまして」と強行に拒否宣言。

突然休みになったにも拘らず、どうしても外せない野暮用があることもおかしな話だ。


こうして、心に強烈なストレスを刻みながらも何とか翌日の自由をもぎ取った。

「ダメ養子」のレッテルの一枚や二枚、気にするものか。

自由を手に入れるには相応の犠牲が必要なのだ。


一度で良い。

万全な体調で、かつストレスを感じずに登山に向かえる日が来るんだろうか?



嫁はまだ帰宅前だったので、メールだけ入れてさっさと寝た。

寝てしまえばこっちのものだ。

もうこれ以上誰にも僕の伊吹山登山の邪魔はさせない。

次に目が覚めた時には、ついに伊吹山に向けて旅立てるのだ。


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目が覚めた。

正確には無理矢理目が覚めた。

まだ真夜中だ、何事だ?


ここに来て、まさかのりんたろくんの凄まじいまでの「夜泣き」が炸裂したのだ。

こいつ、最近めっきり夜泣きしなくなったと思っていたのに。

しかもこの日に限って、とてつもない激しさ。

収まる気配は全くなく、家族中が目を覚ますという深夜の大騒動。


しかもこの時に「夜泣き時のあやし方」の見解の相違で、嫁と見事に対立。

鳴り止まない夜泣きと、ミッドナイト夫婦喧嘩が勃発。


結局夜泣きと喧嘩のストレスという新たな参入者によって、さらに激しく疲弊して行く男。

「連続登山疲労」「風邪気味の体」「マスオストレス」の3本立てに加えて、「夜泣き寝不足」と、「夫婦喧嘩の後味」の2本が加わった。


さすがは最後の難関伊吹山。

毎度の事だが、登山は登る前から勝負は始まっているんだ。

今回も中々ハードな前夜祭だ。



結局激しい寝不足で、予定より1時間以上寝坊してしまった。

この1時間の寝坊が、後に「九合目の恐怖」への伏線となって行く事になる。


しかしここまで来たら、どんな障害だってはね除けて行くまでだ。

過去4度の無念の日々を思えばこれしきの事屁でもないわ。


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朝6時。

こうして僕はついに「伊吹山」に向けて旅立って行った。

しかしこの時、男はまだ知らない。

数時間後、彼は激しく「流血」し、さらにルート外の場所で途方に暮れる事になる。



男は無事に伊吹山を制覇することが出来るのか?


「死して屍、拾う者なし」の雪山登山シリーズ最終章。

伊吹山登山、開幕です。



ーーつづくーー



りんたろ登頂記〜伊吹山〜

Posted by yukon780 on 12.2011 伊吹山/滋賀 0 comments 0 trackback
IMGP9230.jpg

午前中お父さんは炎天下の中3時間のウォーキングでくたばっていたけど、午後から嫁がエステなんぞに行ってしまったかからりんたろくんとお留守番。

でもこんなに天気が良いのに黙って家にいるわけにはいかない。

お父さんはへろへろの体に鞭を打って、りんたろくんを連れて伊吹山へ向かった。

伊吹山の頂上はこの時期でも気温21度くらいでとても快適。しかも子連れでも頂上まで歩きで1時間くらいの所まで車で行けるのだ。

でもこの伊吹山フリーウェイは通行料に3000円も掛かる。正直200円くらいだと思っていたからショッキングだ。こうなったら徹底的に遊んでやる。

IMGP9173.jpg

頂上駐車場はさすがに涼しかった。
節電に躍起になるより、みんな山や川で涼めばいいぞ。

お父さんはりんたろくんを背負って、デイバッグを前にかけていざ登山。

絵に描いたような夏の空。入道雲。最高の季節がやって来たね。

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頂上付近まではおよそ40分程の行程。

さあ、ここからは己の足で歩け、りんたろう。

IMGP9182.jpg

頂上まであと少しだ。がんばれ。

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そしてりんたろくん、見事日本百名山のひとつ伊吹山を制覇しました。
前回の池田山に続いて二つ目の登山。彼の伝説が少しずつ積み上げられていくのだ。

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そのへんのおばちゃんに記念の撮影をお願いしたが、明らかに人選ミスだったようだ。
ある意味画期的なアングルと傾き。
お父さんなんて見切れちゃってるし。


その後は頂上でのんびり。
ここは売店も結構あるし、きれいなトイレもあるから子連れでも安心だ。

りんたろくんはくるくる回るソフトクリームでずっと遊んでいた。

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遊びすぎて抹茶ソフトの抹茶部分がはずれてしまい、非常にお父さんは焦りましたよ。


そして、実にシュールな顔出し看板に挑戦。

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かつてこれほどまでにやる気のない顔で、顔出し看板の写真におさまる子供を見た事がない。

お父さんも驚く程のローテンション。


頂上付近の弥勒菩薩の祠にきちんと合掌してお辞儀をするりんたろくん。

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続いて景色のいい所でお食事です。

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たそがれ始めるりんたろくん。

今君は何を思ってるんだろうね。むりやり標高1377メートルの場所に連れてこられて戸惑ってやしないかな。


そして軽装の方はご遠慮くださいという看板があったコースにて下山。

子供背負っては中々大変だったけど、気持ちのいいルートでした。

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伊吹山からの帰り道、ちょっと関ヶ原によりました。

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そう、まさにここ関ヶ原の戦いの決戦地(田んぼの真ん中にあります)なんです。
実に男の血がたぎるね、りんたろくん。


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なんか正しい日本の子供の夏の風景と言う感じ。

なんかお父さん、こんな日本の原風景的な空気が大好きなんです。

きっとお父さんも自分のお父さんにこういうとこ一杯連れてってもらって、その記憶が心に染み着いているんだと思うよ。君もそうなってくれれば良いけど。


まだまだ当分はお父さんの遊び相手でいて下さいね。一緒に歩いていこう。

夏の一コマでした。

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