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槍ヶ岳6〜煩悩まみれの最終章〜

Posted by yukon780 on 22.2012 槍ヶ岳/長野 4 comments 0 trackback
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下界に近づくにつれ次第に精神バランスが崩れて行くご一行。

前回はついに少林寺奥義「水上槍ヶ岳」を炸裂させてただの露出狂野郎と化した男もいた。

それほどまでに追いつめられた厳しい下山が続いている。



目下の目的は徳沢まで行ってテント泊。

そして翌朝に上高地まで下山して帰るんだ。


さっさとこの北アルプスを脱出するのだ。

有給使ってまで望んでここに来ているが、もはや脱出しか頭には無い状態。


しかし、彼らはもう逃げ疲れた逃亡者。

この苦しい長行軍から解放されるのならもういっそ自首したいと誰ともなく呟く。

しかしそこはお互い励まし合いながらも下山は続いていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

少林寺修行の泉にて水上の槍ヶ岳を堪能した我々は、再び下山を開始した。

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だいぶ体力は回復したが、次第にこの二人に異常が起こり始める。

よく見ると、彼らの胸のカラータイマーが点滅していたのを僕は見逃さなかった。


実はここまでストイックな逃亡劇が続いた事もあり、我々の頭の中は次第に煩悩に支配されていた。

誰ともなく「肉が食いたい」「ビール飲みたい」「風呂に入りたい」などの俗な欲望が沸々と湧いて来る時間帯。

中でもバターNとB旦那の「ニコチン欠乏症」の症状が厳しい局面に達していた。


愛煙家の彼らは途中でタバコを切らし、以来長時間ノースモーキング状態が続いている。

かつてはヘビースモーカーだった僕には彼らの苦しみが痛いほどわかった。

彼らがタバコを吸っている他の登山者を見る目つきは、もはや襲いかかる直前のストーカーのような目つきになっていて戦慄が走ったほどだ。

急いで下山しないと、彼らは理性を失って人を襲いかねない。


そんなスモーカーストーカーズの二人の横で、カクカクとロボットダンスをする男。

いよいよ僕の持病三兄弟がタンゴの調べからハードメタルへと転調。

痛みは益々酷くなり、とにかく色んな事が危険な状態だ。


とにかく急いで下界に辿り着く事が重要だ。

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みんなほぼ無言での汗だくダンシングが続く。

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すっかり疲弊して笑顔が無くなってしまったB女房。

しかし何度も言うが彼女にとっては明日のカヌーがメイン。

この時点でもあくまで「ついでの寄り道」の状態。

ストーカーやC3-POになってしまった悲壮感たっぷりの男たちをよそに、彼女は川を目指して黙々と突き進むのみだ。


やがてひたすら下り続けて、やっと横尾山荘にたどり着いた。

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かつて登山をする前の僕は、上高地からここまでトレッキングして「ああ、この先にあるのは本物の登山者の世界だな」と感慨深く思ったものだ。(参考記事

その数年後に、まさか僕が槍ヶ岳から下山してこの横尾に辿り着こうとは。

しかも軽快にロボットダンスを踊りながら。


しかし、感慨に耽る僕をよそにうなだれるスモーカーストーカーズの二人。

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横尾まで来ればタバコが売っていると期待していた男たちを見事に裏切った横尾山荘。

ついに禁断症状が始まり、彼らの平常心が奪われて行く。

今ここでタバコを吸っている奴がいたら、間違いなくそいつは命を落としていた事だろう。


ほぼ廃人と化してしまった二人を励まし、さらに我々は進んで行く。

ここからはアップダウンも無い爽やかウォーキング道。

しかし廃人となった二人には、その爽やかを愉しむだけの理性はすでに失っていた。


僕とB女房も全く景色に目がいかない。

二人の会話のメインテーマは「徳沢に着いたら何を食べるか」に絞られていた。

しばらくまともなメシを食っていない。

しかも本来2泊は予定外だったから、我々の食料は底をついている。

だからどんなに高くても山荘の食事を食べる事になる。

とにかく今の我々には「肉を食らう」というテーマが最重要課題だった。


爽やかな徳沢までの道のりを「タバコタバコ...」「カツカレーカツカレー...」と呪文を唱えながらの行軍。

こうして煩悩にまみれた4人はほうほうの体で、本日の目的地「徳沢」に到達した。

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早速目に入ったのは、食堂に並べられていた美味そうな肉料理の数々。

よだれが滝のように流れ落ちそうなのをこらえながら受付へ。

受付の人がにこやかに我々を出迎えて言った。


「本日分の食堂の受付は先ほど終わりました。売店にパンとおつまみならございます。」


僕は溢れ出た殺意を抑えるのに精一杯だった。

さらに受付は絶望のデザートを添える事を忘れない。


「こちはではタバコは取り扱っておりません。」


この場にスモーカーストーカーズがいなかったのが唯一の救いだ。

彼らがこの場にいたら、辺り一面血の海になっていただろう。



肉も無ければタバコもないという現実。

結局僕は晩飯用にジャムパンと柿の種を買った。

ここにビールを加えれば、まるで日雇い労働者の晩餐のようなメニューだ。

かろうじて流血の大惨事を免れたのは、この先にある徳沢ロッジで風呂に入れるって情報があったからだ。



徳沢のテント場も人で溢れ返り、中学生どもの奇声が非常に騒々しい。

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テントを張って、徳沢ロッジへ入浴へ。

そこで僕は火照った体を瞬間冷却しようと、水が出ていると思われた浴槽の蛇口に手を付けたら大熱湯。

そして軽く腕に火傷を負うという微笑ましい一コマもあった。


久しぶりの風呂でサッパリしたところで、受付の売店で世紀の大発見。

なんと「どん兵衛」が売っているではないか。

もはや肉とはほど遠い食品だったが、それでも我々は歓喜に包まれた。

今の僕らはどんな些細な文明すら涙を流して感謝するほどまでに成長していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日早朝。三日目の朝。


まずは僕が今回から導入したこちらの商品を見てもらいたい。

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このスタッフバッグは、奇麗な着替えを「BEFORE」に入れておき、使用済みの汚れた衣類を「AFTER」に入れるというもの。

中の仕切りが動くのでいちいち使用前のものと使用済みのものを分ける必要が無いという優れものアイテムだ。


しかし本日は予期していなかった「三日目」。

まさかの「AFTER」からの再出動。

役目を終えたはずの初日のくっさいパンツやTシャツを履いての清々しい出発の朝となった。

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B女房に至っては寝間着のジャージでの出発となり、コンビニにでも買い出しに出かけるかのようなラフっぷり。

ラン○ネとかに載ってるようなカラフルな格好の女は真の山ガールではない。

彼女は本格登山二発目にして早くも本物の山ガールになったようだ。



徳沢から上高地まではおよそ2時間の距離。

実に清々しいゴールまでの道のりだ。

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しかし清々しいと言っているのは僕とB女房だけで、約二名がグッタリとうなだれながら歩いている。

完全にニコチンハンターと化してしまったFWツートップ。

バターNとB旦那の「スモーカーストーカーストライカーズ」のお二人だ。


彼らに取ってのゴールネットは上高地ではなくあくまでもタバコ。

もし今路上に一本のタバコが落ちていたら、彼らは平気でお互いで殺し合いをするだろう。

奴らの限界が近い。


そんな中、中間地点の明神館に到達。

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一番最初に到達した僕は、中の売店にキラリと光り輝く7つの星を確認した。

セブンスターだ。


僕は大急ぎで後方でゾンビのようにふらついていたバターNに報告。

「タバコ、売ってるよ!」


僕はこの時のバターNの笑顔を生涯忘れる事は無いだろう。

タバコ税増税だなどと息巻いている国会に、この時の彼の笑顔の写真をバラまけば減税間違い無しだ。

同時にJTの人にも見せてあげればすごく励みになった事だろう。


そして餓鬼のように売店に駆け込んでタバコを買った直後のバターNがこれ。

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ちなみに初日の高山病時のバターNの表情がこれだった。

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人はこれほどまでに変われるものなのか?

誰もがこれを見て思うだろう。

最初から登らなきゃいいのに...と。


そしてB旦那も追いつき、愉悦に満ちたツートップの姿が捉えられた。

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ついに彼らはゴールを決めたのだ。

この場所こそが彼らにとって「頂上」だったのかもしれない。

その表情は達成感に満ち満ちている。



息を吹き返したバターNが別人のように軽やかに進んで行く。

明神まで息をひそめていた笑顔が全開だ。

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すれ違う人全てに「オハヨウゴザイマス!」と元気いっぱいに挨拶をする姿はほとんど島崎三歩だ。

タバコって奴は体に悪いけどこうして人を元気にもするんだよね。

それとも実は間に合わずにすでに精神が壊れてしまったのかもしれないが。


そして上高地までの最後のヴィクトリーロードを噛み締めながら歩いて行く。

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いよいよこの長かった、いや長過ぎた槍ヶ岳登山が幕を閉じようとしている。

ついにゴールのカッパ橋の姿を捉えた。

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最後は皆で一緒にカッパ橋を目指す。

橋の中間に着くまで振り向いちゃダメだぞと言いながら。


我々は振り返る事無く静かにカッパ橋の中央に立った。

そしてせーのでゆっくりと振り返る。

そこにはズバンと穂高岳の姿が広がっていた。

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ついにゴールだ。

長かった。実に長かった。


振り返ってみれば、腸内にバリウムを仕込む所から始まったこの旅。

ドラクエパーティーとして灼熱のダンジョンに入って熱中時代を満喫。

ついには暑さでやられて白雪姫を抱き食糞族に成り下がった。

壮絶な槍との頂上対決では僕の高所恐怖症の自信は確信へと変わった。

そして逃亡下山で頭をやられたバターNの少林寺奥義の突然のお披露目。

最後は肉とタバコの欲望にまみれながら彷徨った4体のゾンビ。


そんな戦いも全てここで終わったのだ。

他の人には見えていなかっただろうが、僕にははっきりと見えていた。

梓川から感動のエンドロールが上って行ったのを。

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我々の感動の映画「槍と僕らの3日間戦争」が幕を閉じた。


最後に試写会会場に集まってくれた皆さんと出演者で、映画ヒット祈願の記念撮影。

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ここでサプライズゲストも登場。

名優槍ヶ岳さんも駆けつけてくれました。

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プライベートではソフトな方なんですね。


そして僕らはバスで新穂高まで帰って行きました。

あとは温泉にでもつかって帰るだけだ。

疲れました。


槍ヶ岳 〜完〜



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

我々がそのまま帰るわけはない。

登山後に温泉に浸かって帰るのはシニアのやる事だ。

我々のようなアクティブマゾは温泉ではなく「川に浸かって帰る」のが基本だ。


次なるステージは、その足で万水川カヌーへ。

槍の穂先も乾かぬうちに繰り広げられた、槍ヶ岳から万水川への通称「槍万(ヤリマン)ツアー」。


遊びに貪欲な彼らの蛮行に終わりはないのだ。



万水川カヌーへ 〜つづく〜


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槍ヶ岳5〜水上の槍と男塾〜

Posted by yukon780 on 19.2012 槍ヶ岳/長野 4 comments 0 trackback
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雪渓の荒野をフラフラと彷徨う男がいる。

今にも力尽きそうなこの男。

天を仰ぎ、その表情は苦悶に満ちている。

灼熱の太陽が男を照らし続け、今まさにじりじりと焼尽そうとしているのか。



我々は再び灼熱のダンスステージへと降りて来た。

出発前の予定を変更して、登りの飛騨沢ルートとは逆の上高地へ抜ける槍沢ルート。

このルートをチョイスしたのは、池に逆さ槍ヶ岳が写るという「天狗原」に行くためだ。

その美しき絶景を求めて、苦悶絶句の長行軍が始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


前回槍ヶ岳との壮絶な死闘の末、息を引き取った男。

しかし何とか息を吹き返した男は、再び殺生ヒュッテまで降りて来た。


ポツンとある二つのテントが我々のテン泊地。

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改めて抜群のロケーションでのテント泊だったな。

槍ヶ岳山荘の狭いテント場の事を考えると、こっちの方で正解だったようだ。


さて、下山についてのパーティー会議。

本来は南岳まで縦走して、行きに来た飛騨沢ルートを下って行く予定だった。

しかしもはやパーティー全員が瀕死の状態だという事で縦走は満場一致で却下。

そしてまたあの長い長い飛騨沢ルートを下って行く気力もさらさらない。

いっそ逆側の槍沢ルートで下って途中でテン泊して、翌日に上高地から新穂高までバスで帰る事に。

一泊二日の予定が見事に二泊三日になってしまったが、誰一人異議を唱える者はいなかった。



そして気合いを入れ直し、我々は下山を開始した。

戦友槍ヶ岳も強烈な快晴の笑顔で僕を見送ってくれた。

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さらば槍ヶ岳よ。

ひょっとしたら、もう二度と君には登らないかもしれない。

だってあなたやっぱり怖いもの。

また20数年後に、恐怖の記憶が薄まってから戦おうじゃないか。



本日も大快晴で突き抜けるような群青の空を堪能しながらの下山だ。

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しかしこの空が何を意味しているか、我々は痛いほど知っていた。

誰も口にしないが、これから標高が下がるにつれ恐怖の灼熱地獄が始まる事を誰もが噛み締めていた。


そしてやはり進んでも進んでも変わらない景色に、本日も長期戦となる事を覚悟。

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随分前に「さらば槍ヶ岳」と感慨深く呟いたものの、いつまでたっても振り向けば槍ヶ岳。

会社の上司に「お疲れ様でした」と言ったあと、駅のホームでまた上司にばったり会うかのような気まずさ。

格好良く「あばよ」と言った手前、妙に恥ずかしい。



そして突然ズッコケる男。

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決して誰かが「ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃー」と言ったわけではない。

少しでも楽して下山しようと雪渓を得意のシリセードでの滑降を試みているのだ。

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それでもせいぜい進んで2m。

明らかに余計な体力だけが消耗されて行く。



もう随分降りて来たぞ。

徐々に太陽の照りつけも厳しくなって来た。

それでもいつだって「振り返れば奴がいる」。

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もういいよ。

別れが惜しいのはよく分かったが、気分がへこむからそろそろ消えてくれないか。

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ただただひたすらに槍の追撃を振り払おうと掛け下って行くご一行。

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サラッと書いているが、実に長く暑く辛い行軍が続いた。

そしてついに槍ヶ岳を振り切る事に成功し、その後もさらに下って行く。



実はとある分岐点で、我々は荷物を置いて大トラバースを開始。

大きな雪渓を果敢に横切って行く。

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残り少ない貴重な体力を消耗してまで彼らが目指したもの。

それは天狗原という場所にある池。


その池の場所からは「最も美しく槍ヶ岳が見られる絶景」が展開されていると言う。

池に槍ヶ岳が映り込み、雲上の別天地と呼ばれる楽園があるらしいのだ。

実は結構行くかどうか迷ったが「せっかく来たんだし」の法則によって我々は突き進む。

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なんとかこの大雪渓を無事にトラバースする事に成功した所で休憩。

疲労感は否めないが、絶景の為なら無駄な大回りも苦にならないぜ。


すると天狗原方向から下山して来たおっさんが言った。

「池に行っても残雪で池が覆われてて何も写ってないよ」と。

幻の絶景は、辿り着く前に幻のまま終わったようだ。


絵に書いたような「徒労」。

体力以上に気力を激しく奪われた我々は再び元来た道を戻って行く。

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一体何をやっていたんだろう。

僕らの貴重な時間と体力を返していただきたい。



早くも本日のメインイベントが大空振りで終わり、失意の中さらなる下山が続く。

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このあたりまで来ると、しだいに太陽が本気を出し始めて来る。

滝のような汗が滴り落ち、徐々に僕は中年特有の酸っぱい匂いに包まれて行く。


風が無いもんだから汗は中々乾かず、たちまち全身が嫌なウェッティ感に支配されて行く。

パンツもビショビショで多少の失禁ならカバーできそうなほどだ。


水場があれば我先にと争って水行を始める。

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気分はジャングルを彷徨う日本兵だ。

だんだん登山といより、何かから「逃亡」している気分になって来た。


わざわざ有給使ってまでやって来て、この楽しそうな男達の表情。

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実はこの辺りから僕とB旦那の足の裏は火傷したような痛みに襲われている。

親指の外側と足裏の土手の部分が靴擦れを起こし、一歩一歩に痛みが走るというお得意のマゾプレイ。

まさにドラクエで呪いの靴を装備してしまったかのような状態だ。

今ルーラを唱えてゴールまで飛ばしてくれる奴がいたら、僕らは1万ゴールドでも惜しみなく支払った事だろう。


その後も上から灼熱、下から火傷の状態をキープしながらの下山が続く。

そしていよいよ僕の足裏、膝、腰の「持病三兄弟」が陽気なタンゴを歌い出した。

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そのリズムにつられて陽気に踊りだすマゾ。

その後ろ姿からも彼の喜びの歌声が聞こえて来そうでは無いか。


限界が近い。

そろそろ僕のHPが完全に0になってゲームオーバーの時が近づいて来ている。

しかし「槍沢ロッヂ」に到達した僕は、ついに最強のアイテムを手中に収めた。

HPを全快にしてくれるという伝説のアイテム「世界樹のしずく」を手に入れたのだ。

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まさかあの「世界樹のしずく」が普通に500円で売っているとは。

やはり世界樹のしずくはアサヒ製に限る。

頑張って冒険して来た甲斐があったってもんだ。



HPを回復させ、さらに我々は下山して行く。

次はこの火照りまくった体の暑さをどうにかしたい。

すると我々の前に「回復の泉」が現れ、僕は早速火傷状態の足裏の回復を図る。

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雪解け直後の信じられない冷たさで10秒とつけてられない。

熱々と冷え冷えを交互に繰り返す少林寺の修行のような風景。

これで僕は鉄の足を手に入れたはずだ。


しかしさらなる少林寺野郎が信じられない修行風景を見せつけて来た。

天然マゾ野郎バターNによる奥義「全裸低体温症寸前遊戯」が炸裂した。

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事前にこの水のありえない冷たさを体感した僕から見たら、完全なる自殺行為。

ついにバターNの脳内バターが暑さで溶け出し、彼は狂人になってしまったのだ。


彼の暑さ故の蛮行に歯止めがかからない。

彼は突然寝そべってエビぞりになって頭を洗い出した。

ついに究極の少林寺奥義「水上槍ヶ岳」がその全貌を現した。

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他人の女房の前で惜しげも無く披露された見事な槍ヶ岳。

この絵だけ見たらただの変態だが、彼は我々に奇跡を見せてくれたのだ。

あの天狗原で幻に終わった「水上の槍ヶ岳」を、幻から現実へと美しく昇華してくれたのだ。

もはやこれは芸術作品。

今度僕は、中日新聞の写真投稿に「先っちょ!男塾」というタイトルで応募しようと思っている。



さあこれである程度体力は回復したが、若干精神的な破綻を来し始めているご一行。

いよいよこの狂人と化した一行の逃亡生活が次回終焉の時を迎える。



というか忙しすぎて全く話が進んで行かないぞ。

もう8月も終盤突入じゃないか。

思いのほかな長編になってしまった。


終わってからも中々手強いな、槍ヶ岳よ。



槍ヶ岳6へ 〜つづく〜



槍ヶ岳4〜涙の頂上決戦〜

Posted by yukon780 on 14.2012 槍ヶ岳/長野 7 comments 0 trackback
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槍の穂先で遠方を見つめ黄昏れる男。

男の胸に去来する感情は感動なのか恐怖による絶望なのか。

その後ろ姿からはまだその感情を読み取る事が出来ない。



20数年の時を経て再び相まみえた両雄。

槍はあの頃のままの姿で男を恐怖に陥れたのか?

それとも成長した僕は、見事に当時のトラウマを払拭し槍をねじ伏せる事に成功したのか?


男の勝利への足跡を振り返ってみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


東鎌尾根の激戦を突破し、ついに我々は槍の足下に辿り着いた。

見上げた先には米粒のような人間どもが這いつくばっている様子が見て取れる。

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きっと芥川龍之介はこの光景を見て「蜘蛛の糸」を書き上げたに違いない。

登山者がみんな地獄から這い上がろうとしている亡者に見える。

しかしこの高所恐怖症という地獄から這い出る為に、これは避けては通れない試練なんだ。


しかし槍はそんな僕の意気込みをしょっぱなからへし折ってくる。

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試合開始直後から早くも僕の顔から笑顔が消えた。

槍はあの頃のままの姿で「さあ、遊ぼうよ」と無邪気に僕を誘ってくる。

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僕の脳内シュミレーションは100%の確率で「滑落」のエンディングに吸い込まれて行く。

普通にこれ、落ちるでしょ。危ないよ。


まだ戦いは始まったばかりだというのに、僕の喉の渇きはすでにピークだった。

恐ろしさでカラカラの喉から「ひゅ〜、ひゅ〜」という細い呼吸だけが漏れてくる。


上を見上げれば吐き気を催す光景しか目に入らず、

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下を見れば絶望的な絶景だ。

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今日ばかりは思わざるを得ない。

なぜこんなにも晴れてしまったんだと。


もはやスタート時の意気込みは粉々に吹き飛んでいた。

そこには勇ましさのカケラも無く、ただの高所恐怖症のおっさんの姿しか見られなかった。



場所によっては素晴らしい景色が目に入る。

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しかし今の僕にとってこの景色は、恐怖を増長させるスパイスでしかない。

そして追い討ちをかけるように奴がその姿を現す。

20数年前に散々僕を苦しめた「ハシゴ」だ。

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こいつを見た途端、当時の恐怖が蘇る。

この時、もう僕は泣きそうになっていた。

いや、もう泣いていたかもしれない。


それでも絵に書いたような「腰が引けてる」状態で果敢に登って行く男。

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呪文のように「僕は一階から二階に登っている。そう、ここは所詮二階なんだ」と自分に言い聞かせる。

とにかく下を見てはダメだ。

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手がガクガクと震え、喉が痛い程に乾きまくる。

今下を見たらそのまま卒倒して滑落し、そのまま天国へのハシゴに手をかける事になること請け合いだ。


やがて道が二手に別れ、男前コースと腰抜けコースに別れた。

果敢に男前コースを行く勇者B旦那。

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ここが分かれ目だ。

今こそあの頃の軟弱だった自分に別れを叩き付けるチャンスではないのか?

ここで男前コースを華麗に突破すれば、僕は新しい自分を手に入れることが出来るのではないか?

トラウマを払拭するビッグチャンスの到来だ。


僕は勇ましく「Bさん、僕もそっち行きます!」と高らかに宣言。

男前コースにその歴史的な一歩を踏み入れた。


しかしその一歩が途端に恐怖の大波となって僕に降り注いだ。

ヘビの前のカエル、ヤリの前のマゾ。

体は硬直し、ケツの穴はふわりと緩む。

そして歴史的敗北宣言。

「Bさん、やっぱり無理でした!」


高所恐怖症の克服どころか、恐怖症の自信が確信に変わった瞬間だった。


僕は大人しく腰抜けコースへ。

しかしこちらのコースは腰抜けコースではなく「腰が抜ける」コースだった。

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絶壁恐怖のトラバースからの鎖場へ。

正直縦方向の動きよりも、横方向の動きのが怖い。

結局どっちのコースも高所恐怖症男にとっては絶望ルートに変わりはない。

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もう僕は滑落前から生きた心地がしない。

このまま幽体離脱して俯瞰で自分を眺められそうな程に、精神と体のバランスは混沌としていた。

ふと振り返ってみれば、相変わらず吸い込まれそうな光景が広がっている。

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岩に書かれた矢印がすべて「ゴー・トゥー・ヘル」を暗喩している気がしてならない。

頭の中の未来予想図は死へのランプが5回点滅し、「オ・チ・テ・イ・ク」のサインを送り続ける。


もうこうなったらダメだ。

頭の中は悲劇的な妄想で支配され、体の自由が奪われて行く。

そんな中、頂上への最後の難関が現れる。

僕にトラウマを植え付けた張本人の「ラストのハシゴ」たちだ。

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ここを登りきれば槍の頂点だ。

しかし登る前から僕は精神限界の頂点に達していた。


このハシゴ、岩との距離が短すぎて足の置き場がつま先しかない。

そのいつズルッと行くか分からない緊張がプラスされ、手足の震えが止まらない。

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かろうじて残された筋力でなんとか失禁を防ぐのがやっとだ。

今気を緩めたら、即座にジョンジョワーだ。


槍の穂先で美しき虹を描くわけにはいかない。

とにかく下を見るな。

ここでジョンジョワーしたらりんたろくんが「お前の父ちゃん、ヤリションで新聞に載った人だろ」といじめられてしまうかもしれない。

そう、ここは息子の為に強いお父さんとして登りきるんだ。


そしてついにこの時を迎えた。

槍の穂先に到達したのだ。

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狭い槍の頂上で腰が抜けたように倒れ込む。

壮絶な槍との戦いが終わり、気がつけば360°周りを囲んだ大観衆から拍手喝采の嵐。

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富士山や穂高岳などの錚々たる面々が惜しみない拍手を両選手に送った。

20数年前と変わらぬ恐怖で相対した槍ヶ岳と、20数年前と変わらぬ弱腰で挑んだ僕。

二人の間には熱い友情が芽生えていた。


僕は槍の健闘を称え、彼の元に歩み寄る。

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そして優しく彼を持ち上げる。

20数年前の僕を持ち上げるように愛を込めて。

そしてここに長い年月の穴を埋める、歴史的な和解の瞬間が訪れた。

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正直この場所に立つだけでかなり恐ろしく、軽く僕のパンツは濡れていたはずだ。

それでも槍ヶ岳との20数年越しの和解を遂げたことで満足していた。

結局高所恐怖症は克服出来なかったが、ここに来たことに意味がある。


改めてみんなとも記念撮影。

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上から見るとこんな感じ。

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今この記事を書いててもケツがムズムズする。


狭い山頂に次々と人が登ってくるからそうのんびりもしてられない。

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さあ、そろそろ下山だ。

実は下山にこそ真の恐怖が潜んでいる。


登りは上ばっか見ているからいいけど下山は下ばっか見ることになるから、その失禁率たるや想像を絶するものがある。

このハシゴを降りる第一歩の恐ろしさは筆舌に尽くし難い。

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登りで精根尽き果てた僕にとって、この下りは地獄の黙示録。

頭は真っ白で、ほとんどの記憶を失っている。

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薄れいく意識の中で、徐々にゴールが見えて来た。

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そして無事に安全地帯まで到達した男は、

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歓喜のガッツポーズを披露したかと思うと、

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静かに息絶えた。

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死して屍拾う者なし。

激しすぎた緊張から解き放たれた男は、大地の有り難さを噛み締めるように死んで行った。

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我々はこの憐れな男の死に様を忘れない。

高所恐怖症はどこまで行っても高所恐怖症のままだと証明したこの男の死に様を。


戦友槍ヶ岳も、祝福の陽光を惜しみなく男へ降り注ぐ。

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しかし気の毒な事に、このボロボロの男にこの先待ち受けるのは地獄の下山タイム。

実はこの時点で、まだ一日が始まったばかりの早朝。

ここからは再び10時間越えの灼熱下山で、ガラスの膝と靴擦れパラダイスとのシャル・ウィー・ダンス。


登りとは別のコースでの下山で、上高地へと抜けるコース。

気の遠くなるような長い長い北アルプス脱出への戦いが始まった。



槍ヶ岳5へ 〜つづく〜


槍ヶ岳3〜ソウルの借りはロンドンで〜

Posted by yukon780 on 11.2012 槍ヶ岳/長野 2 comments 0 trackback
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因縁の槍ヶ岳とがっぷり四つに組む男の姿。

ザ・魔雲天にバックドロップを仕掛けるテリーマンのようなその勇姿。


ついに男と槍との頂上決戦の時が来た。

目指す場所は槍の先っちょ。

そのそそり立った穂先をへし折って、お前に植え付けられた高所恐怖症を克服して新しい自分を手に入れてみせる。


それでは早朝の殺生ヒュッテのテント場から振り返ってみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


早朝のお約束と言ったらご来光だ。

でもさすがに槍ヶ岳山頂では狭いし人がごった返す危険があったので、あえて別の場所をチョイス。

槍のご来光渋滞が終わってから、我々は悠々と奴を料理する道を選んだ。


殺生ヒュッテの裏手からから20分程登って行くと東鎌尾根の稜線に出る。

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見事に誰もいない。

ここでじっくりとご来光を拝んで、槍の討伐祈願だ。


燕岳越しにうっすらと白んで行く空。

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どうやら本日も素晴らしい晴天のようだ。

なんか富士山まで丸見えだし。

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正直、頭の中の辞書から「快晴」という言葉が消えかけていた悪天候男の僕は、この時点で激しい動揺を隠せない。


過去、たまに晴れた時は決まってその「代償」を払って来た。

「全身破壊」や「発熱朦朧」や「暴風寒波」を筆頭に、数え上げればきりがない。

僕はこの時覚悟した。

かつてこれほどまでの快晴無風の世界を体験した事が無い。

きっと僕は今日死んでしまうんだと。

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せっかくの快晴を心から楽しめない悪天候男の悲しき性。

天候に恵まれた自分を受け入れる事が出来ない男。

結局悪天だろうと快晴だろうと、この男から悲壮感が抜ける事は無いようだ。


そして徐々に辺りは朝の光に包まれだし、因縁のライバル槍ヶ岳もその姿を厳かに見せつける。

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決戦の前の静けさ。

戦いの前に互いにリアルな日の丸を拝んで国歌斉唱と行こうじゃないか。


お、来るか?

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来るのか?

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来ましたねえ。

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やっぱりいいもんだね、ご来光は。

この場所は殺生ヒュッテのご主人に教えてもらった穴場スポット。

周りに人もいなくて最高のショータイムでした。


しかしご来光なぞは所詮前座にすぎない。

本当のショータイムはこれから始まるのだ。


日本屈指のサド山槍ヶ岳 VS マゾしこジャパン主将の僕

今大会屈指の好カードで、マゾしこ悲願の金メダル獲得なるかに注目が集まる。


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実はここから槍ヶ岳本戦に向けての「準決勝」が始まる。

せっかく登って来たから、このまま東鎌尾根の稜線を歩いて槍の穂先を目指すんです。

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しかしこの東鎌尾根、もちろん槍の前哨戦だけあって甘っちょろい道ではない。

本当に槍に登る資格があるのかどうかがここで試されるのだ。

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写真右手は見事な滑落コース。

好奇心の固まりのB女房はへらへらと笑っているが、もうすでに僕の喉の渇きがハンパ無い。

早朝だというのに体と脳の目覚めっぷりが凄まじい。


はしごなどが早くも登場し、大いに不安を煽る。

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この程度で臆してはいけない。

でもどんどん体が硬直して行く高所恐怖症野郎。

そして目を疑いたくなる光景。

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快晴の代償を払うにはあまりにも早すぎんじゃないのか?

まさか槍との決勝を目前にして臨終の時を迎えてしまうのか?


それでも何とか越えて行く。

しかし容赦のない東鎌尾根の波状攻撃が止まらない。

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実はこの時点で僕はちょっと泣きそうになっている。

高所恐怖症の人なら分かってくれるだろうが、もう最悪な状況のイメージだけが頭の中でリアルな再生を繰り返す。

一度捕まったら中々這い出る事の出来ない滑落妄想のアリ地獄。


それでも必死で皆について行く。

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そんな状況でも必死でシャッターを切る男の影が映っている。

この戦いに賭ける彼の並々ならぬ覚悟の程がうかがえる。


そしてついに東鎌尾根の「準決勝」を突破して決勝進出。

お月様のような銀メダル以上が確定した瞬間だ。

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さあ、ここから先に狙うは金メダルのみ。

中学生以来の決勝の舞台。

20数年前ソウルオリンピックで大敗を喫したこの山に、今このロンドンオリンピックで雪辱を果たす。



決勝の会場前からは圧巻の眺めだった。

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今回の決戦を一目見ようと集まった錚々たる観客達。

かつて僕と激戦を繰り広げた富士山。

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そして、いずれ対戦するであろう燕岳。

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で、反対側を見れば北アルプスの北方の雄達が大挙して押し掛けていた。

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さすがはオリンピック決勝の舞台ともなれば観客達も豪華だ。


しかしどんな状況だろうと平常心を保つ事が勝利への鍵だ。

ここはひとつ、日本一の富士山をまたいで屁でもかましてやるか。

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試合前に己を鼓舞するボルトのような貫禄。

そして詰めかけた観客を煽り、手拍子を促す。

会場の観客を味方に付けて、必死で自分を奮い立たせる高所恐怖症の男。


もうあの頃の僕じゃない。

こんな山ちょちょいと登ってさっさと終わらせてみせる。

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さあ、祭りの始まりだ!



槍ヶ岳4へ 〜つづく〜





おや?と思われた方も多いだろう。

前回あれだけ煽っておいて、今回の記事でも頂上に登らないのかと。

いつになったら登るんだと。


別に連載終了間近のハイスクール奇面組みたいに、無理くり話を引き延ばそうとしている訳ではないんです。

槍ヶ岳以来強烈に忙しくて中々記事を書けないんです。

盆に入って実家にも帰らんと行かんので、次回アップは気長にお待ちくださいね。


次回こそは槍の穂先をワイルドにぶち折る僕の姿をお送りいたします。



槍ヶ岳2〜マゾ場のくそ力〜

Posted by yukon780 on 10.2012 槍ヶ岳/長野 0 comments 0 trackback
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雪渓に横たわる一人の男の屍がある。


彼は何故このような場所で息絶えたのか?

そして何故彼はこの場所で野グソを食べる事になってしまったのか?

振り返ってみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


灼熱の塔の激戦をくぐり抜け、ついにラスボス槍ヶ岳の居城に侵入した遊者ご一行。

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完全に日陰は無くなり、ここからはノンストップ灼熱ダンシング。

そして登りの角度もハードになっていき、誰一人会話する元気もない程グハグハになっていく。

ミスター高山病のバターNに至っては、軽く嗚咽を漏らしながらのハードプレイが続く。


歩みは遅くなるばかりだが、後方からミシュランマンがどんどん忍び寄って我々をせかす。

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早く登らないと絶景が拝めないばかりか、テント場すら確保できない。

実にスリリングな展開だ。


しかしここからはとても美しく、いかにも3000mの山の雰囲気が展開された。

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写真だけ見るととても素敵な風景だが、登ってる本人達にはもはやそんなものを楽しむ余裕は無くなっていた。

人としての感性は失われ、ただただヨロヨロと登り続けるゾンビ軍団。

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バターNに至っては、もはや人相すら変わってしまった。

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いつも思うが、必ず高山病に冒されるのに毎回参加するこの男のマゾは天下一品だ。


負けてられない。

マゾ使いの僕も進んでその身を山に捧げた。


ぶしゅう、ぶしゅうと言いながら先行してガンガン攻めていく僕。

皆をある程度振り切った所で得意の己撮り。

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そして再び下ってカメラを回収する「小刻みピストン登山」を開始した。

この地味なカメラとの往復作業を取り入れる事で、通常より倍の体力を使ってお手軽にマゾれるのだ。

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表情は確認できないが、実際は肩で息をして苦悶の表情を浮かべている。

こうでもしないと、僕がカメラマンだから、最悪自分が写真の世界に存在しなくなってしまうのだ。

皆の写真も撮影しつつ、しっかり己もカメラに刻み付ける。

このプレイ、是非皆さんもやってみてはいかがだろうか?



それにしてもどこまでも雄大な景色。

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正直雄大すぎて、全く進んでいる気がしない。

上を見ても下を見ても、30分前の景色と代わり映えがしないという精神攻撃。

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遥か後方にはアリのようなバターNとB女房。

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遠目で見ても、彼らの限界が近い事が伺えた。

上を見ても近いようで遠い稜線がそびえて我々に本日何度目かのため息をつかせる。

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長いわ!

ここまでの行程が長過ぎる。

もう出発してからかれこれもう9時間が経過している。

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この9時間重いザックを背負って灼熱の太陽に照らされ続け、風もなくて滝のような汗を流し続けている。

見た目の華やかさとは裏腹に、いつまでも姿を見せないラスボス槍ヶ岳に苛立ち始める男達。

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僕に至っては一日目にして早くも靴擦れが始まって、本気でしんどい状態だ。

暑い、とにかく暑い。


そんな時、登山道からそれた斜度の激しい場所に妖艶に僕らを誘って来る「白雪姫」が見えた。

ついに幻を見てしまったんだろうか?

僕とB旦那は誘われるがままにフラフラと白雪姫に吸い寄せられた。

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危険を覚悟で飛び込んだ白雪姫の懐。

万が一足を取られたら、そのまま滑って姫との恋に滑落してしまう。

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それでも抵抗するなんて無理だった。

僕らのほてった体を優しく包み込む白雪姫。

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白く冷たい柔肌が、熱に侵された男共を瞬間冷却していく。

すっかりこの快楽から抜け出せなくなってしまった。(これが冒頭の屍写真に繋がります)


急がないとテント場が埋まってしまう。

でも彼女のエロティックな冷たさが我々の出発を許さない。


さらに遅れていたB女房とバターNも魅惑の姫の元に吸い寄せられて来た。

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そして見事にパーティーは全滅した。

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しかしすでにゾンビ化していたミスター高山病バターNは奇跡の復活を遂げた。

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まさしくこの白雪姫は天使だったのだ。

調子に乗った我々は、さらなる体力の回復を画策。


猛暑により完全に液体化して天寿を全うしたかと思われていたチョコレートを姫に投入。

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そして食らう。

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たちまちこめかみに激痛が疾走し、甘さと冷たさで僕はレベルアップした。

我も我もと食らいつく遊者。

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しかしどう見ても、絵的に「食糞族」にしか見えない。

このブログも倫理問題に触発して閉鎖になる恐があるが、これは紛れもなくチョコレートだ。


もう手に取るのも歯がゆくて、直接大地にワイルドに食らいつく男。

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大問題の衝撃映像。

何度も言うがこれはチョコレートだ。


これですっかり元気を取り戻し、みるみる力が湧いて来た。

これぞマゾ場のくそ力。


しかし、この雪渓遊びですっかり貴重な時間を失ってしまった。

こうしている間にもテント場が埋まってしまう。

急がねば。

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高山病のバターNはともかく、今回直前で急遽参加が決まったB女房も疲労度が凄まじい。

彼女は今回が本格登山2回目にして槍ヶ岳なので無理もない。


本来は参加する予定ではなかったB女房。

しかし予備日に「万水川でカヌーする」なんていうプランを聞きつけた彼女は、その持ち前の好奇心を抑えきることが出来ずに参加を決めたそうだ。

なので彼女にとっての目的は槍ヶ岳登山ではなく、あくまでも万水川カヌー。

言ってみれば槍ヶ岳は「ついで」で登っているという、恐ろしいまでの北アルプスに対する侮辱っぷり。

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彼女を突き動かしているのは下山後のカヌーのみ。

みんなの憧れ槍ヶ岳も、B女房にとっては邪魔な障害物に過ぎない。

僕もよく己の女房に邪魔者扱いされるが、槍ヶ岳も「まさかこの俺が」的な気分を味わっているに違いない。



そんな槍ヶ岳だが、どこまで進んでも相変わらず姿を見せない。

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少し進んで行ってはグッタリを繰り返す。

もう正直、この登山のスタート地点の出来事が思い出せないほどに遠い記憶に感じる。


そして出発から10時間が過ぎた辺りで、やっと稜線上に到達した。

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ひいひい言いながらここまで登っていくと、左前方から殺気を感じた。

何者かが僕を見下ろしている気配。

恐る恐る僕は顔を上げる。


そこにはどどんとラスボスが鎮座していた。

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やっと捉えたぞ、槍の穂先め。

20数年の時を越えて、ついに対峙した槍と男。

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そのそそり立ちっぷりに威圧され、当時の恐怖が蘇る。

よくよく見るとダニのような登山者達が穂先にへばりついている。

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僕は激しく引いた。

どう見ても高所恐怖症の男が来るべき場所じゃなかった気がする。

でも今はまだ考えないでおこう。


視線を外せば、稜線の反対側の絶景が広がる。

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やっと報われた感がある。

10時間歩き続けた末のご褒美としては十分だ。

皆も追いついて来て、何時間ぶりかの笑顔の記念撮影。

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まだゴールではないのに、すっかり達成感に浸ってしまった4人。

我々の中に「もう十分だ」という気分が蔓延していた。


バターNに至っては汗が塩の結晶になってしまうほどの辛い登山だった。

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己のバターでプリントTを作れてしまうのが彼の特技だ。


しかし悠長に達成感に浸っているわけにはいかない。

急いでテント場を確保しなくてはならない。

電池切れのバターNとB女房を置いて、ひとまず僕とB旦那で槍ヶ岳山荘を目指す。

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ちなみに翌日はこの奥に見える稜線を越えて南岳経由で下山の予定だったが、この時点で我々の中に厭戦ムードが広がっており諦める事になった。

所詮これが今の僕らの実力だ。


やがてテント場に到着すると、絶望的な光景が広がっていた。

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テント場は見事に埋まっていた。

しかしかろうじて一張り分だけ空いていた事を確認。

大急ぎで槍ヶ岳山荘のテント受付へ駆け込む二人。

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おっさん曰く。

「ちょっと前に受付しちゃったから。残念だけど間に合わなかったねえ。」


ジーザス。


心当たりはある。

あの雪渓で余計な遊びをしていなければ間に合ったはずだ。

喜んでうんこ食ってる場合じゃなかったんだ。


とりあえずここから反対側に20分下った場所にある殺生ヒュッテのテント場まで下る事にした。

ネーミングからして我々にピッタリだ。


寝床は確定したけど、どうしてもここでやっておかねばならん事がある。

お約束の重要な儀式。

シルバーに輝く聖杯に入った黄金水を、この汚れた体に注入するお時間だ。

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いちいちこの儀式をしなくてはいけないのが、めんどくさくてかなわない。

この嫌そうな顔といったらどうだ。

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ほんと、めんどくさいわ。


やがてゾンビ2名が追いついて来て、臨時パーティー会議が始まった。

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果たしてこのまま槍の頂上を目指すのか、それとも今日はここまでにしておいて明日の早朝にアタックをするべきか?

時間的に今アタックをすれば、テント場はまだここではないので暗くなってしまう。

かと言ってこの晴天が明日も続いているとは限らない。

当然早朝アタックとなれば、殺生ヒュッテから再びここまで登って来てからのアタックなので明日の行程はさらにロングなものとなる。

槍ヶ岳も「おい、やんのか?やんねえのか?」とイラついているご様子だ。

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悩みに悩んだ末、全てを天にゆだねる事にした。

100円コイントスで「桜」が出れば今からGO、「100」が出れば早朝アタック。


で、結果はこちら。

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内心、皆がホッとした空気が流れた。


山頂アタックを持ち越しにしたが、我々は怖じ気づいたわけでも疲労で限界ってわけでもない。

あくまでもこれは神のご意志である。

行きたいのは山々だが、ここはこらえて殺生ヒュッテのテント場へ下降していく。

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快晴のこの時間のご褒美「槍影」もご登場。

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正直、僕には悪魔の影にしか見えない。

本当に明日、あそこに登らなければならないのか?

しかしトラウマにグッバイする為には避けては通れない道なのだ。


やがて殺生ヒュッテに到達。

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スタートから11時間の時が流れていた。

体の芯から疲れたよ。

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さあ、明日は早朝からいきなり奴との対決が控えている。

いよいよ因縁の槍との頂上対決。

軽々とねじ伏せて、高所恐怖症の原因となったあの頃の自分に強烈なグッバイを食らわすのだ。

待ってろよ、この槍野郎。



槍ヶ岳3へ〜つづく〜


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