木曽駒ヶ岳 後編〜失踪ミステリー〜

Posted by yukon780 on 11.2012 木曽駒ヶ岳/長野 4 comments 0 trackback
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木曽駒ヶ岳にて開催された「ゲリM復活祭」。

しかしここまではいつも通り僕単独の「マゾ男一人祭り」。


そろそろ他のメンバーが黙っちゃいない。

一人だけ楽しんでずるいじゃないかと。


そして我も我もと進んでマゾの沼に突入して行くメンバー達。

やがて勢い余ったメンバーの一人が、ついに「失踪」するという事態に。


風雲急を告げる木曽駒ヶ岳。

男達の戦いはここからだ。


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木曽駒ヶ岳山頂を制覇したチーム・マサカズのご一行。

一般の方々はここからロープウェイへ引き返して行くのが常道。

しかしマゾの方々は振り返る事無くさらに奥へ奥へと突き進んで行く。

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計画としてはこうだ。

木曽駒ヶ岳山頂から稜線を辿り、両サイドの大絶景を堪能しながら北上。

そして絶景を堪能した後は一度八合目まで下降し、「濃ヶ池」という美しい山上池を堪能する。

そこから一気に乗越浄土まで登って、中央アルプスの槍ヶ岳こと「宝剣岳」の山頂を猛々しく制覇。

そしてすっかり男らしくなった4人は、大満足でロープウェイにてビクトリーウェイを駆け下りるって寸法だ。



まずは素晴らしき稜線漫歩。

両サイド見渡す限りの絶景の中を、絶倫男アゴ割れMが颯爽と駆けて行く。

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修行不足の者には景色が見えないかもしれないが、我々にはちゃんと見えている。

アゴ割れMも時折足を止め、眼下に広がる大絶景に絶句してしまっているようだ。

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まずいぞ。

このままではまた奴の口から「なんかさ...感動が欲しい」という、決して言ってはいけない言葉が飛び出してしまう。(参考記事:南木曽岳の悲劇


一方でそんな景色の中、ガレ場を降りて来るゲリMとオギK。

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そもそも今回の登山は、国家試験受験から解放された「ゲリMお疲れ登山」。

精神的抑圧からの解放の為に企画されたものだが、彼は今新しいタイプの精神的苦痛と対峙している気がしてならない。

そろそろ彼は、この「ゲリMお疲れ登山」が「ゲリMをお疲れにする登山」だという事に気付く頃だろう。


しかしこの真っ白な稜線行軍は、思いのほかいい感じの道だった。

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晴れていたらどんだけ最高の道だった事だろう。

一体今までに何度「ああ、晴れてたらなあ」という言葉を吐いて来た事だろうか。

そもそも毎度天気予報は晴れなのに、なぜ僕らはいつもこの真っ白な「精神と時の部屋」で修行をする事になるのか?

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あの悟空ですら「気が狂いそうで一ヶ月も入っていられなかった」と言うほど過酷な環境。

重力とマゾ力は地球の10倍。

むしろゲリMはここで受験勉強した方が集中して勉強出来たかもしれない。


しかしここに来て、神が頑張ったゲリMに祝福のご褒美。

この憐れな男達に、雲間から光を恵んでくださったのだ。

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やっぱり晴れると素晴らしいじゃないか。

しかし晴れたというのに彼らの表情が硬い。

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我々は晴れたら晴れたで強烈に「焦る」。

経験上、こんな晴天はすぐ終わって再び大荒れの天気になるのが分かってるから、急ぎつつ全力でこの快晴を楽しまなきゃいけない。

結果、焦燥感にまみれて「楽しめない」といういつものパターンに突入した。


晴れてるうちに慌ただしく写真撮影をこなす4人。

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急げ急げ急げ。

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そして出来るだけ浮かれるなよ。

笑ったりするなよ。

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ああ、浮かれるなって言ったのに。

こうしてあっという間に僕らは精神と時の部屋へ引きずり戻された。


快晴撮影が間に合わなかったアゴ割れMなどは、苦々しいほどの無念の表情だ。

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もはや任侠映画のワンシーンのようだ。

今にもポケットからチャカを取り出して、僕に向けて「感動はどこじゃ、オラ」と脅しをかけて来そうだ。

かろうじて踏みとどまったのは、おそらくまたケツからストッパーが制止に入ったんだろう。


そしていつもの状況に戻り落ち着きを取り戻すご一行。

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さあ、ここから一気に高度を下げて行くぞ。


ここからの下りは、高所恐怖症野郎の僕にとっては中々にヘビーだった。

しかしここで僕以上の高所恐怖症野郎がいたことが判明。

その男は「ゲリM」だった。

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自分の腹を急降下させるのは得意でも、岩場の急降下は彼にはかなりのストレスとなった。

最初の難関を下りきった頃、彼の足はプルプルと震えて表情は虚ろにこわばっていた。

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まるでゲリで苦しむ人がトイレから出て来た時の表情そのものだ。

彼はここで一気に体力と精神力を失い、次第にすっかり口数も減って遅れ出す。

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振り向けば遥か後方の雄大な景色の中にゲリMが埋もれているのが確認出来る。

彼は今、一人きりで慎まやかにマゾを愉しんでいるようだ。

この素晴らしい時間を邪魔してはいけない。

これは試験を頑張った彼に対する、僕たちからの心ばかりのプレゼント。

存分に楽しんでいただきたい。


やがて眼下に目指すべき「濃ヶ池」を確認。

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この時は誰も口にしなかったが、みんな同じ事を考えていたようだ。

「あれ、あの池汚いぞ。一つも美しくないじゃないか」と。

しかしすぐさま目線を前方に移動させ、何事も無かったかのように突き進む4人。



ここでイタズラ好きの神の気まぐれ。

またしても晴れて束の間のセカンドチャンス。

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今日は僕が前半で体を張ってある程度快晴代償を前払いしておいたから、さすがの神も気前がいいようだ。

再び大慌てで撮影タイムです。

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さっきは間に合わずに組長写真になってしまったアゴ割れMも、ここぞとばかりに全開だ。

しかし後方を振り返ってみれば、せっかくの晴れに目もくれない弱り切った男の姿が。

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なんて楽しそうな姿だろうか。

フラフラで表情も乏しく、非常にいい状態をキープ出来ているようだ。


そんなゲリMをよそに突然激しい討論会を繰り広げ始める「おっぱい評論家」の2名。

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そんな渾身の討論会を前にしてもゲリMの表情は虚ろなままだ。

もはや彼は弱りすぎているから、今目の前にパーフェクトおっぱいの全裸ガールがいたとしても無表情でスルーすることだろう。


このように皆に放尿シーンを激撮されても怒る気力も無いようだ。

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おかげでかつてないスケール感満点の美しい放尿シーンが撮影された。

彼は本当に素晴らしい友人達に恵まれた幸せな男だ。


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ここから非常に地味な道を一気に下降。

やがて美しき「濃ヶ池」へ到達。

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うすうすは気付いていたが、全く美しさを感じさせないゲリのような池。

誰ともなく言った。

「汚いね」と。

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当初はここをランチ予定地にしていたが事前に済ませておいて良かった。

ここではランチどころかウンチだ。


結局わざわざ大迂回してまでやって来た濃ヶ池は、我々に濃い疲労感だけを与えるだけの池だった。

そしてここからの行軍がさらに僕らを楽しいファンタジーへと誘う。


もはや道というより川になってしまった道を突き進んだり、

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猪突猛進のアゴ割れMがあり得ないルート取りで死地に追い込もうとして来たり、

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大ガレ場のトラバースを横切って、

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振り向けば老人と化したヨロヨロのゲリMがいる世界。

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非常に地味で体力だけをえぐる苦痛の区間。

そしてヘロヘロになった我々の前に、気の遠くなるような登りの道が現れる。

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僕なんかは喜びでお手上げ状態。

この後編では触れてないが、彼の足の痛みはこの時点で火を噴くような痛さとなっている。

靴の中は大熱狂のエンドレス・カーニバル。


追いつめられれば追いつめられるほどに喜びで打震える男。

こうなって来ると体に力がみなぎって、興奮で呼吸も荒くなる。

痛みと苦しみでニヤニヤしながらガシガシと登って行くマゾ神。

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ああ、強烈な登りだ。

最高だ。


そして眼下には素晴らしい景色と弱りきった男達の姿。

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みなさん、ようこそ夢の王国へ。

さあ共にファンタジーアトラクション「イッツ・ア・マゾール・ワールド」を存分に楽しもう。


やがて限界を通り越したゲリMの頭上に神の追い打ちが忍び寄る。

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周辺はいよいよ悲壮感たっぷりのガスの世界へと包まれて行った。


神もここが勝負所と判断。

いよいよこの山が、平和とは対極の凄惨な登山現場へと変貌を遂げたのだ。

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やがてポツリポツリと雨が降って来る。

ソツのない神のラッシュ攻撃だ。

雨が降る事はこっちも織り込み済みだったが、このタイミングは実にお見事。

もはや我々は喜びでKO寸前だ。



↓出発の時はあんなに平和的な穏やか快晴だったのに、

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今となってはガスの勢いは留まる事を知らず、いよいよ1m先も見えないような深い霧の世界へ。

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これはあの時と同じ日・同じ場所の出来事なのか?

もうあの頃の純朴だった僕らには戻れない。

やはり行き着く所はいつだって泥仕合。



そしてついに極上のミステリーが幕を明けた。

ある男が神隠しにあって失踪するというハイレベルなプレイを仕掛けて来たのだ。


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その時、先頭を行っていたのはアゴ割れMと僕。

アゴ割れMが精力(セーリョック)ホームズとするならば、僕が扮するは助手のマゾソン。


一足先に登りきって宝剣山荘に到達したホームズとマゾソンは、雨宿りをするべく山荘に向かった。

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ここまでは一本道。

後ろにはオギK、そして遅れてゲリMがいるはずだ。

はぐれてはいけないので、ひとまず山荘には入らずに彼らを待とう。


しかしガスが酷くて彼らの姿は全く確認出来ない。

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やがてこの真っ白なガスの中からゲリMが現れた。


おや、オギKはどこに行った?

ゲリMの前を歩いていたはずだぞ。

ゲリMに聞けばオギKを追い抜いてはいないと言う。


他にそれる道なんて無い。


「オギKが消えた」


奴は神隠しにあったのだ。


まずいぞ。

奴は今頃、大きな銭湯宿で下働きさせられて顔の無い妖怪と汽車に乗っている頃か?


どう考えても他に道は無いし、滑落の危険箇所もなかった。

現時点で一番怪しい容疑者はゲリMただ一人。


そこでホームズとマゾソンと容疑者Mで緊急会議。

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ひとまず容疑者Mはそのままロープウェイ乗り場を目指し、ホームズは木曽駒ヶ岳方面の捜索、マゾソンは今来た道を再び捜索することになった。

結果的にホームズと疲労困憊のマゾソンは再び山中を彷徨うという延長戦に巻込まれた。


誰もいないガスだらけの登山道に向かって僕は「おおおい、オギKーー!」と叫ぶ。

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もちろん返事は無いばかりか、このままでは二重遭難の恐れ有りだ。

再びグハグハと登り返し、ホームズと合流するがオギKの行方は不明のまま。


結局散々捜索した挙げ句見つからないので、我々は山荘の人に「おぎやはぎの小木に似た奴が来たらロープウェイ乗り場で待っていると伝えてください。」と言って下山を開始した。


もはやこの先にある宝剣岳に登ろうなんて気はさらさら無くなっていた。

だってもうその姿すら見えないんだもの。

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すっぽりとガスを被ってしまって、宝剣岳は見事な包茎岳と化していた。

このガスを晴らすのはさすがの上野クリニックでも無理だ。

こんな所に突入したら100%の死が約束されるだろう。


不安な気持ち一杯でホームズとマゾソンは下山して行く。

僕の脳裏には、僕の胸ぐらを掴んで号泣する喪服姿のオギK奥さんと子供達の姿が浮かぶ。


いつものように下山すればするほどにガスは晴れて行く。

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毎度この人を馬鹿にしたような現象には腹が立つ。

もう随分時間が経っているから、さすがに容疑者Mはもうロープウェイ乗り場に到着しているだろう。

そこでオギKと合流していてくれればいいが。


と思って下の方を見たら、何やら見慣れた男を発見。

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なんとゲリMがまだ下山してないばかりか、山ガールに写真撮影をお願いされて鼻の下を伸ばしているじゃないか。

それを見て唖然とするセーリョック・ホームズ。

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ホームズは言った。

「犯人はあいつだ」と。



結局我々は精魂尽き果てたゲリMに追いつき、共にゴールのロープウェイ乗り場を目指す。

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やがて遠方から、のんきに携帯をいじくって退屈そうな男を発見。

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オギKは生きていた。

ほっとしたが、そのあまりののんびりとした待ちっぷりを見てどっと疲労感が襲って来た。


どうやら僕とアゴ割れMが一瞬山荘方面に足を向けた際、濃いガスで山荘も確認出来なかったオギKはわずかにそれてそのまま下山してしまったようだ。

なんてことのない結末だったが、彼のおかげで随分と悲壮感に満ちた登山を楽しむことが出来た。

ありがとう、オギK。



そしてなんとか無事に下山記念写真。

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もはやゲリMは完全に表情を失ってしまっている。

どうやら今回の「ゲリM復活祭」を存分に楽しんでくれたようだ。

もはや感動で感情すら失ってしまったようだね。



せっかく復活しても、このようにすぐに追い込まれてしまう。

それがチーム・マサカズ流の祝福。

非常に恐ろしいチームだが、このチームを作ったのはゲリM本人だ。


もう後悔しても遅い。

動き出したこの船は、もはや誰にも止められない。



木曽駒ヶ岳 〜完〜


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実はこの旅には続きがある。

まだマゾ経験の浅いこのメンバー達と別れて、ここからは僕一人のマゾ延長戦。


ここから深夜の山奥心霊ロングドライブを経て、B旦那たち横浜組がいる気田川へと向かう。

そしてそのまま気田川カヌーに突入だ。


与えられた土日を全力で遊びきる男。

そんな男の命がけのドライブが始まった。



〜つづく〜


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木曽駒ヶ岳 前編〜ゲリM復活祭〜

Posted by yukon780 on 07.2012 木曽駒ヶ岳/長野 2 comments 0 trackback
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標高2,956mで神に祈りを捧げるこの男。

男の名は「ゲリM」。

まさかを楽しむアウトドアマゾ集団「チーム・マサカズ」の発起人だ。


しかしここ数回のチーム活動にゲリMの名はなかった。

さすがに毎回ゲリで参加出来なかったわけではない。

彼は8月の国家試験に向けて猛勉強中だったのだ。


そして今回、無事に国家試験が終わった事で正式にチーム復帰。

そして「ゲリMお疲れ登山」と銘打って、精神的抑圧から解放された彼を今度は肉体的に追い込んでやろうというのが我々の目的だ。


とは言え「復帰直後だから軽めの山を」という要望を出して来た彼をそんなに無理をさせる事は出来ない。

そこで僕がチョイスしたのは「木曽駒ヶ岳(2,956m)」。

ここはロープウェイで2600mまで上がって行けるから、お気楽に3000mクラスの登山が楽しめる場所。


しかし我々はあくまでもアウトドアマゾ集団。

すんなりピークハントして帰って来るわけがない。

山頂から縦走したのち、一度8合目まで降りて再び登って来るという男前な周回コースをチョイス。

軽めの復帰登山を期待しているゲリMを一気に追い込んでみせる。


そして結果はいつもの様に素敵な「まさか」が溢れるマゾ登山となった。

ある者は高山病の頭痛と戦い、ある者は恐怖で弱って行き、ある者は神隠しにあって姿をくらます。

天候もいつも通りの展開となり、ゲリM復活祭に恥じない登山となった。


今回のメンバーはゲリMとアゴ割れMとオギKと僕の4名。

それではそんな悲しい4人の男たちの楽しい楽しい登山を振り返ってみよう。


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早朝4時。

この時間にして駒ヶ岳ロープウェイの駐車場は大混雑だ。

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そしてこの時点で早くも僕は最悪な体調を楽しんでいた。


僕らは前日入りして車中泊していたんだが、なぜかアゴ割れMが頼んでもいないのにクーラーバッグ持参で大量のビールを持って来ていた。

明日に備えてさっさと寝なくてはいけないのに、夜中の1時になんてものを登場させるんだ。

結果、咲かせてはいけないのに学生時代の思い出話に花が咲いてしまい貴重な睡眠時間が削られて行く。


そして酒を飲んだ後に車内で寝ようとするが、いつものように僕は寝付きが悪い。

毎度のごとく睡眠薬で強制スリープ状態にするんだが、やはり酒の後というのがよろしくない。

やがてやっとこさ眠りに落ちようとした矢先、誰かの車の防犯ブザーが高らかに鳴り始める。


僕を強制的に眠らそうとする睡眠薬と、そうはさせじと延々と鳴り止まない防犯ブザー。

僕は苦痛にまみれた泥のような意識の中、寝たのか寝てないのかよく分からない状態で朝を迎えた。


こうして本日もマゾ野郎にとって絶好のコンディションが仕込まれた。

この状態が後々僕を更なるマゾへと追い込んで行くことになる。

戦いは山を登る前から始まっているのだ。




そしてさすがは人気の山、バスに乗るのも始発の1時間前から行列だ。

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あんまり時間がかかるから僕はゲリMに荷物を預けてトイレに行った。

登山前に余計な茶色い荷物を切り離して計量化を図る大事な作業だ。


男便所と言えど並ばなくてはならない。

やっと僕の出番となり、急いで荷物を放出しようとしたが「バスッ、バッスゥゥゥ」というジョジョ的な音しか出ない。

踏ん張っても踏ん張っても肝心の荷物が出て来ず、ガスだけが音とともに排出されるだけ。

外には多くの人が並んでいるだけに、恥ずかしさと焦燥感が僕を包み込む。


すると便器の外からも「バスッ、バッスゥゥゥ」という音が聞こえる。

なんと外でアゴ割れMが「おぅい、いるか?バス、バスが出るぞー!」と言っているではないか。

僕は荷物放出を緊急放棄し、急いで駆け出してバスへ向かう。


何とかバスには間に合ったが、結果的に僕はわざわざ並んでまで皆の前で屁をこいて帰って来ただけという悲惨な結末となった。

本日も見事なスタートダッシュが決まったようだ。



バスでロープウェイ乗り場に着いて再びロープウェイ待ち。

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ここで僕はメンバーに自慢げにこいつをご紹介だ。

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ちょっと前にブログでご紹介した新相棒登山靴「マムートさん」だ。(参考記事

今回はこの硬派なスイス野郎のデビュー戦でもある。

少々高かったが、今後の快適な登山を金で手に入れたと思えば安いものだ。

もう今日からは靴擦れとは無縁の登山が始まるのだ。



この時点ではそう思っていた。

神は男の「浮かれ」を決して見逃さない。

後にこのマムートさんが、この憐れな男を肉体的にも精神的にも追い込んで行く事になる。


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やっとロープウェイに乗って、一気に2600mの千畳敷へ到達。

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いきなりの森林限界の世界。

かつてこんなに一気に高度を上げて来た事がないから、若干戸惑いがある。

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しかし本日はゲリM復活祭にふさわしく「大快晴」。

近頃僕は快晴後の代償請求におびえて、快晴に対してすっかりデリケートになっているがやはり気分がいい。

今日はただただ楽しいだけの登山が楽しめそうだ。


出発前の記念撮影もとても平和な空気に包まれている。

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しかし彼らはまだ知らない。

この後には「いつも通り」の濃厚なマゾの世界が待ち受けている事を。


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神社にお参りしてからの出発。

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今思えばこれが自殺行為だった。

これは神様に「僕の存在」を自ら知らせる行為。

天に愛されない悪天候男が最もやってはならない事だ。

真っ赤な服を来て猛牛の集団に突っ込んで行くような行為だった。


そんな事も知らないのんきな四人が、快晴の千畳敷カールを突き進んで行く。

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いやあ、気分がいいねえ。

浮かれてロロノア・マゾまで登場する始末だ。

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まあ、浮かれてると言っても「まさかのリコール」によって左右別々のトレッキングポールを使う事になった腹いせ写真なんだがね。(参考記事

おい、見てるかレキの社員よ。

君たちのリコール製品のせいでこんな悲しい思いをしている男が日本にいるんだぞ。

なんとかしてくれよ。


それにしても人気の山だけあって登山者がうじゃうじゃいるぞ。

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僕は周りにも迷惑をかける悪天候男だから、今日は晴れて本当に良かった。

皆さん、今日は存分に登山を楽しみましょう。

さあ、僕と一緒にレッツ・エンジョイ登山。



そんな浮かれ心を合図に、ついに神の反撃体勢が整った。

何やら僕は背中にいつもの殺気を感じて振り返る。

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呼んでもいないのにいつも現れるアイツ。

ちょっとでも浮かれるといつも現れるアイツ。

そしていつも僕だけを愛してくれるアイツ。



アイツは今日も思いっきり僕に抱きついて来た。

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あっという間にアイツの優しさに包まれる。

ついさっきまで大快晴だったのに、一気に周りはダークな世界へと引きづり込まれた。

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ああ、出だしの20分だけが我々に許された日光だったのか。

のんびりした陽気な世界が、瞬く間に悲壮感に満ち満ちた世界へと変貌を遂げてしまった。

マゾなメンバーはともかく、他の登山者になんと言ってお詫びすればいいのか。

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いっそこのリコールポールで腹かっさばいて許しを請いたいがそうもいかない。

同じ日に僕と同じ山を登ってしまった己の不幸を呪うがいい。


さあ、短かったがレッツ・エンジョイ登山はここまで。

ここからは魅惑のレッツ・エンジョイ・マゾタイム。

結局落ち着く所に落ち着いただけの事。


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急登を乗り越え、「乗越浄土」という名の稜線まで到達。

辺りは一気に開けて素晴らしい眺望が広がり、南アルプスなどが一望のもとだ。

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という想像を膨らませる四人。


今までの修行登山で「想像する」という特殊技術に磨きをかけて来た甲斐があったってもんだ。

景色は見るもんじゃない、想像するものなんだ。


オギKに至っては、こんな状況にも関わらず想像だけでこんなにも楽しそうだ。

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実は彼は行きの車の中で、Podcastの爆笑問題の下ネタを聞きながら興奮したって話をして喜んでいる。

もはや彼は景色を通り越したものまで想像する力を得てしまったようだ。



一方で天を仰ぎ、苦痛に顔を歪めているのは僕だ。

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彼は心眼で南アルプスの絶景を堪能しているわけではない。

実は彼は人生で初めての「高山病」を絶賛堪能中なのだ。


正直僕は高山病にはならないものだと思っていた。

しかし昨夜の酩酊朦朧車中泊による寝不足と、ロープウェイで一気に高度を上げた事の合わせ技一本。

とっさの悪天候マゾには順応出来るが、急激な高度順応に見事に対応出来なかったのだ。


ちょっと酔っぱらったような状態で、軽く頭痛と気持ち悪さが続く。

フラフラと木曽駒ヶ岳山頂を目指す座頭市。

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前回の槍ヶ岳で「ミスター高山病」ことバターNの事を散々に書いたが、まさか僕も高山病になるなんて。

これが彼の住む世界なのか。

彼はこんなにも楽しい世界の住人だったのか。


なんだか僕ばっかりマゾを楽しんで皆に申し訳ない気持ちで一杯だ。



一方で有り余る体力をいつも持て余す「歩く精力」ことアゴ割れM。

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精力が溢れすぎた彼は、何故かトレイルランナーに付いて走って行ってしまった。

そして時間が経つとまた走って戻って来る。

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なんて落ち着かない男だろうか?


そして前方に山ガールを発見すると再び走り出すアゴ割れM。

ガール達を追い抜いて、僕らを待つ振りをしながらガールの顔をチェックするソツのなさ。

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この男は一度「血抜き」でもしとかないと大人しくなれないのかもしれない。


しかしそんな彼には自前の「ストッパー」が搭載されている。

興奮しすぎると、彼のケツから「イボ」がひょっこりと顔を出す。

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そして痛みで彼の動きは止まる。

うまい事出来ている。



その後も木曽駒ヶ岳山頂を目指し、黙々とモクモクの世界を登り続ける男達。

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しかし高度を上げるほどにテンションを下げて行く男が一人。

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高山病のあまりの素晴らしさに、すっかり言葉を失って喜びを噛み締めている。

高山病がこんなにも楽しいものなんて知らなかった。


そしてもう一つ、彼のテンションを下げる事に一役買っている奴がいる。

それは彼のおニューの登山靴「マムートさん」だ。


さすがに値段が高いだけあって靴擦れがない。

フィット感も実に素晴らしい。

しかし過剰にフィットしすぎたのか、小指の付け根の骨が出た所がとても痛いじゃない。

最初は頑にその痛みを認めようとしなかったが、もはや認めざるを得ないほど明らかに痛い。


それは靴擦れの痛みというか、「打撃系」の痛み。

トンカチで骨の部分をコンコンコンと叩き続けているかのようなニュータイプの痛みだ。


考えないようにしていたが、「靴が足に合っていない」という驚愕の事実を僕はついに受け入れた。

正直足よりも僕の心が激しく痛い。

今後ずっとこの硬派すぎたスイス野郎とともに僕は登山人生を歩んで行くのか。

僕は高山病で薄れゆく意識の中、悪魔のようなマンモスの笑い声を聞く事しか出来なかった。



そんなボロ雑巾のような僕の姿を見て、さすがの神も憐れに思ったのか。

少しだけ景色を「チラ見せ」してくれた。

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まるで薄目を開けて景色を見ているようだが、少し見れただけでも大満足だ。

景色なんてこのくらい見えれば上等だ。

全裸全開の節操の無い女より、真面目なオフィスレディーが髪をかきあげた時にチラリと見せるうなじにこそ奥ゆかしさを感じるものだ。

そうゆう事にしておこうじゃないか。


やがて山頂を捉え、青空に向けて必死で高度を上げていく高山病男。

IMGP1894_20120905201905.jpg

そしてついに木曽駒ヶ岳山頂に到達。

頭と足と心を痛めつつの歓喜の瞬間を迎えた。

IMGP1900.jpg

しかしこれは歓喜のバンザイではなく、あまりのしんどさに「もうお手上げ」という状態。

お気楽登山の木曽駒ヶ岳でも、いつも通り見事なマゾっぷりを披露するあたり流石は歴戦のマゾ。


そしてひとまず木曽駒ヶ岳山頂制覇です。

IMGP1913_20120905201925.jpg

おや?と思われた方も多いだろう。

「ゲリM復活祭」と銘打った割には、ここまではただの「一人マゾ祭り」じゃないかと。

ゲリMを追い込むと言いながら、追い込まれてるのはお前じゃないかと。

そもそもゲリMが全く出て来なかったじゃないかと。


僕のようなプロになると、今回のように登山前からフルスロットル・マゾで楽しむことが出来る。

しかしアマチュアマゾの彼らには多少時間が必要だ。


さあ、ここからはいよいよ稜線歩きから美しい池を経由した大周回コース。

ついにゲリMが悲鳴を上げてゲリにまみれるのか?

そしてこの中の一人が「神隠し」にあって物語は急展開。

謎が謎を呼ぶミステリー。

悲壮感たっぷりの後半戦開幕。


まだまだ奴らから目が離せそうにない。



木曽駒ヶ岳 後編へ 〜つづく〜


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