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御嶽失禁オールスターズ〜奇跡の蒼いそら〜

Posted by yukon780 on 11.2013 御嶽山/長野 0 comments 0 trackback
「週末は京都に行きます。」

「嵐山の紅葉を目指してトレイルランニングです。」

そう言っていた男。


しかしその週末。

京都で紅葉を満喫しているはずの彼が、何故こんな事になっているのか?

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どう見てもここは渡月橋ではない。

紅葉どころか、見渡す限りの白銀の世界だ。


数日前まで彼は「京都一周トレイル秋の陣」に向けて準備をしていた。

日々走り込みをし、Facebookでも「週末のトレラン32kmに向けて準備万端」と宣言。

地図もわざわざ京都観光協会から郵送で入手し、荷物も完全に準備完了して後は現地に向かうのみと言った状態。

そして決戦2日前の状態でこの奇跡的な天気予報。

IMG_3168.png

日曜日の岐阜方面の天気は微妙だったが、京都方面は晴れ時々曇りの絶好のトレラン日和。


以前から苦心して嫁から「1日フリー券」を拝領奉る事に成功していたこの日曜日。

僕は出発直前まで、ウキウキ状態で気持ちはすっかり京都に向かっていた。




と、見せかけて。


日曜日。

男は急転。

トレランザックを部屋に投げ捨て、雪山装備一式を担いで家を飛び出した。

向かった先は京都と全く逆方向の「御嶽山」。


てっきり僕が京都に来るとばかり思っている親友のモクモクさん。

彼はいつものように晴れと見せかけて現地で潜伏していた模様。

あれほど晴れ予報だった京都は、当日になって見事にモクモクさんに支配されていた。

IMG_3175.png

一方で僕が京都に行くと思って油断している御嶽山は、当初の曇り予報から一気に無防備な状態に。

IMG_3174.png

してやったり。


そう、これは「敵を欺くには味方から作戦」。

最近事前にFacebookに行き先を投稿すると、その情報がモクモクさんに漏れていた感があった。

恐らくチーム・マサカズ内にモクモクさんへの内通者がいるに違いないと思った僕は、直前まで隠密に雪山準備も進めていたのだ。


こうして僕は「徹頭徹尾大快晴」という奇跡の一日を手に入れた。

それはもうオリンピック並みの「4年に一度あるかないか」の奇跡。

突然長澤まさみに「好きにして」と言われるに等しい、我が人生では絶対にあり得ない快事なのだ。


人生で初めての大快晴の雪山登山。

吹雪にまみれて泣いていたあの頃にさようなら。

2013年ももう終わりが近いという段階で、やっと今年一番の快晴がやって来たのだ。


晴れただけで随分と大げさな前置きだったが、それほど貴重な事だとご理解いただきたい。



そんな一生のうちに二度と来ないかもしれない快晴記念日。

その大切な日に彼がチョイスしたのが「御嶽山」。

雪山3シーズン目にして、ついに冬の「3,000m峰」の世界に初アタック。


今シーズンしょっぱなからいきなりの大本番。

体力一本勝負の純粋な直球勝負ハードマゾ登山。

失った物もあったが、終止笑顔が溢れた絶景登山だった。


そんなレアな記録。

じっくりと振り返って行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


おんたけ2240スキー場のゴンドラに乗って、登山口付近まで到達。

もうこの時点で、空が青過ぎて直視出来ないほどのエッチな絶景。

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青空慣れしていない僕としては、あっという間に目がつぶれてしまいそうな青。


そしてスキー客にとってはここが最高点だが、登山者はここが出発点。

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そして何気にここに写っているのが、チーム・マサカズの「矢作C」。


僕は急遽行き先を御嶽山にした際に、急だから誰も来んだろうと思いつつも、一応一緒に行く人を急募してみた。

すると「独身フリーダム・矢作C」がスキー客として手を挙げた。

さすが時間がある男はひと味違う。


何気に彼は相当なスキーの腕前を持った男で、実は本業は「従軍キャメラマン」でも「テクノメガネ」でも「親父狩りMr.オクレ」でもなく「スキーヤー」なのだ。

そんな彼とはここであっという間にお別れ。

結果として一緒に来たのはいいが、ここからはお互いにストイックなソロの旅路が始まるのだ。

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僕は「帰ってこなかった時はよろしく頼む」と言い残し、この赤いデッドラインを越えて登山口に向かった。


そしていきなり氷の道で転倒して臀部を強打するという余興を楽しみながら、無事に田の原の登山口に到着。

ケツは痛いが、かつて彼がこれほどまでに笑顔で出発記念写真に納まった事があっただろうか。

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いつもは出発の段階で頭上は重い雲に満たされ、苦渋の出発写真が基本なのに。

晴れているとこんなにも気分がいいもんなんだね。


かと言って、実は彼はかなり緊張している。

そもそもこの「御嶽山」は独立峰なんで、一度天候が荒れると途端に難度の高い山と化す。

冬の富士山と似たような山だから、晴れたとは言え強風が吹くと非常に危険。


しかも彼の今までの雪山の最高標高は伊吹山の1,377m。

それがいきなりのこの「3,067m」の世界へ突入するって事で、体感的にどんな世界が待っているかも分からない。

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山頂付近に雪煙が舞っているのも確認できるし、ドキドキとワクワクが止まらない。

厳冬期ではなく、しかも快晴微風のこの日だからこそ今の僕でも挑戦できる山だ。


幸いしっかりしたトレースも付いてるし、他にも少し登山者がいる。

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しばらくは気持ちの良い林の中の雪道を進んで行く。

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やがて景色が開けて来たあたりで背後を見ると、ででんと恵那山。

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そして中央アルプスの山並み。

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スタートからわずか40分あまりで到達したエクスタシー。

長らく快晴絶景から遠ざかっている身としては、ちょっとした刺激であっという間に昇天してしまう。

まだパンツがこすれた程度の刺激なのに、こんな事で山頂まで持つのだろうか?

やはり雲一つない青い空は、もうそれだけで立派な公然猥褻罪です。


しかし先はまだ長い。

こんな所でエクスタシーにまみれてハアハア言ってる場合じゃない。


その後もグッハグッハと高度を上げて行く。

やがて8合目の金剛童子に到達。

頭上には流れ星のような飛行機雲。

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青い。

今までこのような写真を雑誌で見ては「こんなものはCGだ」と言って破り捨てて来たが、いざ自分がそこに身を置いてみるとたまらなく気持ちE。

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ひがみ人生を歩いて来た僕は「我がカメラはモノクロ撮影専門です」と言い張って来たが、この日初めてフルカラー撮影が出来る事を知った。

修行こそ我が登山と言って来たが、やはり登山は晴れてナンボなんだね。

ここはもう陽気に楽しんじゃっていいんじゃないか?

ほら、お地蔵さんだってこんなにスポーティーでファンキーなんだし。

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まるで「もうストイックはやめちゃいなYO!陽気に浮かれちゃおうYO!」とでも言っているようではないか。

そしてこのアディダス兄さんの登場から、一気に森林限界を越えた世界へ突入。

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写真では伝わらないが、いよいよこの辺りから風が強まって来た。

遮る物の何もない独立峰ならではの世界がここから始まるのだ。


そして斜面も急になって来て、雪にも氷が混じり始める。

そこでついにこいつが出撃。

以前、風邪を引いた勢いで買ってしまった「グリヴェル姐さん」のご登場です。(参考記事:極妻アウトレイジ〜風邪に吹かれて〜

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ついに現場で「12本爪アイゼン」を履く時が来てしまった。

もうこの姐さんを足に装着した時点で、僕はもう堅気の世界には戻れなくなる。

雪山登山という名の極道の世界に堕ちて行くのだ。


そして男はグリヴェル姐さんを装着し、「命のやり取りの世界」へとその一歩を踏み出した。

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やっぱり素晴らしい。

いままでの10本爪スノースパイク「なんちゃってモンベルちゃん」に比べ、本格的12本爪アイゼン「グリヴェル姐さん」の雪面への食いつきっぷりが凄まじい。

このような急登の場所ではモンベルちゃんではズルズル滑り落ちていた場面。

でもグリ姐さんの12本のドスが鋭角に突き刺さってしっかり体を支えてくれる。

なんて頼りになる姐御なんだろう。


一方で御嶽山も余計な回り道はさせないという、極道の山らしい男らしき「直登一本道」で歓迎ムード。

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いよいよ風とともに猛烈な急登が襲いかかる。

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もちろん僕としても、渾身の「己撮り」でその思いに応える。

急斜面の行ったり来たり程、無駄に体力がそがれる行為はない。

しかも風で三脚も不安定だから、カメラを壊す危険と隣り合わせのスリルも味わえる。


よく考えたら、ここん所やたらと手の込んだ変化球的なマゾが多かった。

変化急過ぎて現場にすら辿り着けない事もしばしばあった。

ここらでマゾの王道「グハグハ急登・体力一本勝負」にこの身を捧げて初心に還ってみようではないか。


やがて2,600m付近の「富士見石」に到達。

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そして御嶽山も、そんな直球マゾ勝負に花を添える演出を開始。

この辺りから猛烈な突風が吹き出し始め、ここから見る9合目付近は雪煙が舞いまくり始めた。

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中央やや右下にいるのが登山者。

その雪煙の激しさがお分かりいただけるだろうか?


いよいよ未知なる3,000m峰の雪山世界に入って来た感が強まって来た。

足下の雪も、ほとんどが氷になっててカチカチだ。

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高度を上げるごとに危険は増して来たが、それでも同時に景色の絶景っぷりも増して行く。

もう空に至っては、宇宙に向かって歩いて行っている気分だ。

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何とも言えない高揚感。

人は晴れてるだけでこんなにも幸せになれるのか。

そして幸せすぎる大急登が、その高揚感にマゾなスパイスをピリリと効かせてくれる。

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思わず「オー、モーレツ」と呟いてしまった程の登り。

モーレツすぎて、凄い勢いでエネルギーが失われて行く。

やはり3,000m付近の高所だからか、息が上がるのが早い。

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次第に10歩歩いては立ち止まって休憩するの繰り返しに。

やがてその10歩も5歩になって、いよいよヘコヘコ状態。

まるでイモトが山頂直下で一歩一歩フラフラ登って行くっていうあんな感じだ。


でもこの男には視聴者はおらず、誰一人感動させる事のない一人マゾ登山。

標高3,000m付近で勝手に行われる「地獄の果てまで、イッテM!」の撮影風景。


やがてそのドMハンターは、吐き気をこらえながらやっと9合目の中央不動に到達。

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不動尊に安全祈願をしようにも、その門はカチカチに閉ざされている。

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まるで嫁の心を見ているような気分。

子供達を置いて一人でこんな事してる僕には、とてもこの氷の扉を溶かせそうにない。

本当にすまない。

でもこんな晴れた日はそうないんで、大目に見てください。


そしてそんなのんきなお父さんの前に、いよいよ氷と岩だけになって来た道が立ちふさがる。

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ほんとグリヴェル姐さんと来なかったら、この先にはとても進めなかった。

でも何気に氷と岩の連続なので、結構神経を使って登って行く。

一方で横を見れば、ご覧の通りの美しき世界。

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いよいよ「雪山やってます」的な光景に、気持ちにも張りが出て気分が高まって行く。

寒いししんどいんだけど、やっぱりコタツでみかん食ってテレビ観てるよりかはずっと心は穏やかな充足感。

自分の心身をフルに使って自然と対峙する充実感と、それに付随する大絶景。

恐いね、雪山さん。

もう抜け出せないこの世界。

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もちろん危険が一杯の雪山登山。

でも世の中には雪山の悪いイメージだけが相当に浸透している。

正悪を知った上で、自分の力量と経験をふまえて物事は判断するべき。

一方的な広義だけで批判をするのは良くないことね。

でもほんと危険なんで、よくよくちゃんとした装備と経験積んで楽しんで欲しいもんです。


楽しんでって言いながら、苦悶の表情で最後の急登を登って行く男。

持って来た行動食の量が少なくて、すっかりガス欠に。

久しぶりに本気のパワー登山になっている。

それでもなんとか王滝口頂上神社に到達です。

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王滝口頂上って言っても、もちろんここは真の頂上ではない。

ここからいよいよ3,067mの剣ヶ峰を目指す戦いです。

当然足下はカッチカチです。

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神社も凍っちゃって「札幌雪祭り会場」に迷い込んだかのようだ。

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そしてツートン狛犬と顔面氷結男の石像も。

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さあ、ここからは氷と風の世界。

神社を越えると、そこには剣ヶ峰までの道がどどんと現れた。

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これが3,000mの世界。

猛烈な寒さと突風が支配する場所。

いよいよ美しさと恐ろしさが共存する「沢尻エリカ的」な世界の始まりだ。


スケートリンクのような道をアイゼンを効かしながら慎重に歩いて行く。

やがてお馴染みの「よく風呂場に落ちてる毛」というオブジェがいつにも増して美しい。

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そしてその奥には、すっかりエビのシッポまみれになった石像オールスターズの皆さんが。

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もはや芸術作品のような美しすぎる氷結っぷり。

もう原型がなんだったかも思い出せないほどだ。

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なんか台湾スイーツの「雪花氷」にしか見えない。

僕ものんびりしてたらこんな風に美味しそうに氷結してしまう。

急がないと。


しかし風の勢いはもはや台風並み。

何度か耐風姿勢をとっては、風の落ち着きとともに足を進めて行く。


そしてこの時、サングラスが外れかけた。

グローブで調整しようとした途端、僕のサングラスのグラス部分があっという間に風に乗って吹き飛んで行った。

それはもう全盛期の松井秀喜の打球のスピードと同じくらいの早さで、はるか彼方に飛んで消えて行った。

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慌てて追いかけたが、それはキャッチャーが松井のホームランを追うに等しい不毛な行為。

そしてそこには、インナー眼鏡だけになってしまった哀れなキャッチャーの姿。

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ザックを下ろしてゴーグルにする手間を惜しんだばかりに、大事なサングラスのグラスを失ってしまった。

しかしこれはいつもどおりの「快晴代償」の儀式。

僕はあえてこの御嶽山にサングラスを奉納したのだ。

たかだかサングラス程度のお供え物で、この大快晴が手に入ったと思えば安い物だ。

そう思いたい。

そう...おもいたい...。



さあ、やる事はやった。

ちょっと目からの水分で曇るけど、ゴーグルに付け替えて先に進むぞ。

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やたら鼻先だけが凍傷ぎみになって行く中、相変わらずのパワー登山。


やがて雪に埋まった頂上小屋を越えて、

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いよいよ最後の階段(雪の下だけど)を登って行って、

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鳥居をくぐって、

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雪が舞いまくる神社の先に、

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ついに山頂が見えた。

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急登一直線の雪山男道。

モクモクさんが京都で待ちぼうけを食らっている隙に...。


ついに「冬期御嶽山単独登頂」達成でございます。

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もう初の冬期3,000m登頂よりも、この「快晴をバックに登頂写真」という実現不可能かと思われた偉業に大感動。

もうこれはピューリッツァー賞ものの衝撃写真。

ジェームス・キャメロン監督ですらその快晴映像化を諦めたと言われた悪天候男が、ついにここ御嶽山山頂で歓喜に包まれたのだ。


しかし各方面から「これはほんとに本人なのか?」「顔が全く分からないじゃないか」「別の晴れ男マスクマンによるヤラセ写真じゃないのか?」という疑問の声が寄せられた。

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どうか信じてやって欲しい。

間違いなくこれは私なのです。


さあ、そして独立峰ならではのお楽しみタイム。

360度の絶景のお時間でございます。

北方にどっしりと佇むは「北アルプスの皆さん」です。

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乗鞍岳越しに、センターには槍ヶ岳の穂先が天に突き抜けております。

そしてそのまま左下に目を移せば、夏場は二の池がある場所が広大な雪原に。

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これ、写真よりも現物は猛烈に美しいです。

夜のお店の逆バージョンと言えば分かり易いでしょうか。

写真の美しさにつられて指名し、現物見たらビックリなんて事はここでは無いのであります。


そしてその流れでさらに左に目をやれば、あまりにも美しすぎる霊峰「白山」の秀麗なお姿が奥の方に。

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日本三大霊山の御嶽山から見る、もう一つの霊山白山。

まだ360度のうち90度くらいしか回転していないが、もう僕のパンツは感動失禁でびしょ濡れだ。


そしてさらに左に回転すれば、ここまで登って来た道と遠く恵那山。

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そのままさらに回転を続けると、「中央アルプス」と「南アルプス」が重なって登場。

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まさにオールスター夢の競演。

さらにその奥に目を凝らすと、

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富士子はん!


この瞬間、僕のエクスタシーは頂点に。

北・中央・南アルプス、そして白山・御嶽・富士と来て日本三大霊山そろい踏み。

おまけに大快晴。

もちろんこれは夢でもなければ、いつもの空想でもない。

今、我が周囲を日本の山オールスターズが取り囲んでいるのだ。


いよいよ失禁が止まらない。

感動のオシッコが油田の様に大噴出。

ファイントラックのアンダーウェアですら脱湿が追いつかない。


寒過ぎて鼻水も止まらないし、もうただの感動排泄マシーンと化した男。

しかし絶景だからと言ってこの場に長く留まるわけにはいかない。

長居してしまった日にはたちまちこの噴水失禁が凍り付いて、僕まで凍ってしまう。

そしてこの山頂に新しい像が増えてしまう。


夏山と違って「のんびり山頂で昼飯」なんてのんきな事を言ってられる環境ではない。

もちろん即座に下山を開始です。

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しかもこの時点で13時半。

僕は矢作Cに「13時をメドに引き返す。15時までには帰還する」と宣言していたので、実は結構なタイムアタック下山なのだ。

スキー場のゴンドラも16時が最終なだけに、大急ぎで下山します。


名残惜しいが、この人生最後の大快晴と大絶景を目に焼き付けながら元来た道を下って行く。

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ああ、最高だ。

やっぱり雪山は最高に楽しいや(晴れれば)。

神様もたまにこうした甘々な体験をぶち込んでくるから、こっちとしてもまた深みにはまって行く。

手口がイカサマカジノと一緒だ。

最初は稼がせていい気分にさせといて、その魅力から抜け出せなくなった段階できっともの凄い仕打ちを用意してるんだろう。

もしくは雪女の「お兄さん、ちょっと遊んで行かない?」という甘い誘惑で誘っておいて、後から恐いお兄さん達が出て来るパターンか。


それでもやっぱ良いもんは良い。

そうそうある事じゃないんで、この快晴登山を目一杯楽しんでやったぞ。

ほんとにここ最近、夜泣きな毎日でノイローゼ気味だったんですよ。

これでまたしばらくお父さんは頑張れそうです。



で、下りは急登で登って来た道を急下降。

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でもアイゼンはガッチリ効くし、目の前の絶景を堪能しながら快適に駆け下りて行く。


時間はないけど、いよいよエネルギー切れで体が動かんくなって来たから、8合目付近の風が落ち着いた場所でやっとこさ遅い昼食。

もうこれ以上ないテラスランチでございます。

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この場所で食うカレーヌードルの壮絶な旨さを想像していただけるだろうか?

それはもう三ツ星ホテルのランチを軽く上回る美味しさだ。


しかしのんびり食ってると、15時を越えて矢作Cによって捜索願が提出されてしまう。

ここから先はアイゼンも外し、ピッケルをポールに持ち替えてダッシュ下山。

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後半はもうほとんどトレラン状態。

今転倒したら、たちまちこの雪道に美しいカレー汁が巻き散らかされた事だろう。

それでもなんだかんだと、15時10分になんとか無事下山。

この全体的に素晴らし過ぎた登山に対し、この男も渾身の浮かれドヤ顔でフィニッシュだ。

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はしたない程のエクスタシーな表情。

今までは大概下山完了とともに息絶えている記念写真ばかりだったが、この日ばかりは素晴らしき笑顔写真。

恐らくもう二度とこんな満足顔で写る事はないだろうから、何かあった時はこれを遺影にしてください。


そしてすっかり待ちくたびれてた矢作Cと合流。

彼は「さすがに一人きりのスキーは寂しかった」と力なく語り、1時間以上食堂で孤独に僕の帰りを待っていた模様。

なんだか誘った手前悪い事をしてしまった。

リフトも1本しか動いてなかったし、これは矢作Cなりの「サポート快晴代償」だったんだろう。

こうして我々は無事に帰宅の途についた。



コアでサドな読者からは「おい、あんた何楽しんじゃってるんだ?あんたの笑顔なんて見たくないんだ。グッと来る死に様を見せてくれよ。」という非難の声が上がりそうな今回の登山。

しかし僕としても、そう毎回毎回死んでは生き返っていたらまるで男塾だ。

今回くらい大目に見てやってくれないだろうか。


サングラスを失い、ゲイターをアイゼンで引き裂いたというトラブルはあったが、それを補ってあまりある充実した登山。

雪山の訓練としても上々で、なにかと勉強にもなった。

反省点も多々あったんで、次回の雪山に向けてまた色々と調整して行こう。


さあ、これから本格的に各地に雪が降る。

今年こそ冬の八ヶ岳に行きたい。

鈴鹿の山も味わい尽くしたい。


ただ問題はやはり家庭内ホワイトアウト。

あの猛吹雪の世界をいかに迷う事無くラッセルして乗り越えて行けるかどうか。

もちろんGPSでも現在地が把握できない。

最悪、育児雪崩に巻き込まれて今シーズンの雪山がこれで終わってしまうなんて事もありえる。

怒った嫁の120本爪アイゼンで、ザクザクに心が切り裂かれる可能性もある。


これ以上彼女の心が凍り付かないように。


彼が川上屋の「高級くりきんとん」を、お土産で買って帰った事は言うまでもない。


雪山登山成功の秘訣は装備や経験ではない。


賄賂なのである。




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御嶽山3〜天使と悪魔の分岐点〜

Posted by yukon780 on 01.2012 御嶽山/長野 0 comments 0 trackback
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地獄の入口をヨタヨタとうろつくこの男。

一度は摩曽支天念という神にまでのぼり詰めたこの男が、ついに地獄へと堕ちて行く。


摩利支天山からの、行きとは別コースのお鉢巡り。

男を待ち受けていたものは地獄のような荒涼としたステージ。


やがて霊山御嶽山が「醜い己と対峙せよ」とばかりに試練を課す。

男は地獄の風景の中での自問自答で醜い己に打ち勝つことが出来るのか?

冷静と情熱とネガティブと劣等感の狭間で男が辿り着いた境地とは?


北岳制圧への道〜御嶽山編〜最終章です。


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あえて難コースからの摩利支天山制覇。

神となった男は下山を開始し、再びお鉢をぐるっと回って剣ケ峰を目指す。


やがて賽の河原まで戻って来た男に異変が起きていた。

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まるで死んだ子供が、賽の河原で親を探してうろついているかのようなこの光景。

実はこの時点で彼は、原因不明の「左ケツの張り」を訴えているのだ。


摩利支天山から下山中に突如左ケツに「ぴりり」と電気が走った。

こけたわけでもひねったわけでもない。

何もしていないのに思いがけない部位からの突然過ぎる痛みの新規参入。


ただでさえ足の痛みに耐えている状況での左ケツの反乱。

しかし考えようによっては「痛みをもって痛みを制す」の方程式で、逆に足の痛みが気にならなくなるかもしれない。

でもそんな淡い期待に反して、各所の痛みは各所の痛みとしてしっかりと脳に信号を送り続ける。

脳もその信号を余す事無く受け入れて、絶妙なバランスで下半身全体が見事に痛い。


そんな満身創痍の男の前に立ちふさがるは、随分とロックな岩の登山道。

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ここをよじ登って行けというのか?

よせばいいのに、行きとは違う道を選んだ事により距離もハードさも痛みもパワーアップ。

いよいよ地獄のような登山になって来たぞ。


ブホブホと岩をよじ登って行く。

ある程度登りきり、ほっとして上を見上げればどこまでも続くガレ場急登のご登場。

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これを見て、思わず心がポッキリ行きそうになる。

まだ昼飯も食ってないし、ちょっとここらで休憩が必要だ。


ここは行きに見た二の池のちょうど逆側で景色もよろしい。

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眺望こそモクモクのせいで全く見えないが、池が見えるだけで十分幸せだ。


お湯を沸かし、カップラーメンに注いで3分後。

カップラーメンの出来上がりとともに、二の池のモクモク化も完成していた。

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お湯を沸かすわずか3分だけが僕に許された二の池満喫タイム。

こうして魅惑の3分間を堪能した男はM(マゾ)-78星雲のウルトラの星へと飛び立って行った。



ささやかな幸せすら奪われた男。

昼メシのシーフードヌードルがいつもより塩辛かったのはこぼれ落ちた涙のせいなのか。

それでも男は再び登り始める。


地図によると、このガレ場の急登を登りきれば「一の池」があるという。

二の池と三の池があれほど見事だっただけに、一の池への期待も高まるというものだ。

わざわざこんなアホみたいなハードルートに来たのもそのためだ。


足とケツの痛みに耐えながら、やっとのことで稜線に辿り着いた。

そして眼下には壮大な「一の池」が広がって...

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おや?池は?

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おい、まさかとは思うがあのチョロリとした水たまりが「一の池」だとぬかす気か?

僕はこんな小さな水たまりを、こんな壮大なスケールで眺める為にはるばるここまで登って来たというのか。


即座に全身から力が抜け、もはやココロもカラダも立っているのがやっとだ。

そんな疲れ果て唖然とする僕の前に追い討ちをかけるような光景。

どこまでもどこまでも続くガレた稜線。

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これを見た僕は思わず言ってはいけない言葉を口にしてしまった。

すでに世は2012年だが、恥ずかしげもなくあえて言ってしまおう。

「おんたけ、どんだけ〜〜」と。

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イワオの大群のようなアホみたいな岩の道が延々と続いている。

そんな道をキン骨マンみたいにゲッソリしてしまった男が登って行く。


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ここは地獄なのか?

僕は知らないうちに摩利支天山で滑落死していたのか?

よく見ると亡霊のような男達も歩いている。

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昔、聖闘士星矢でこんな光景を見た事があるぞ。

蟹座の聖闘士の「積尸気冥界波」を食らった奴が、死の国(冥界)へと送り込まれて火口みたいな所に落ちて行くあのシーン。

分かる人にはこれ以上無い例えだが、分からない人は全く分からないだろう。


そしてもういい加減見飽きたモクモクさんが本日何度目かのご登場。

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より一層、その地獄感に彩りを添えてくれたようだ。

全く嬉しい限りでゾクゾクするぞ。


その後も、益々地獄のような光景になっていく御嶽山。

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やはり僕は地獄に堕ちてしまったんだ。

閻魔様も「お前文句ばっか言ってるが、なんだかんだと毎週のように遊んでるじゃないか。貴様のような奴は満場一致で地獄行きだ。」と審判を下したんだ。


前方では火口の奥で火山が噴煙を上げている。

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まさか噴火か?

こんなとこで噴火に巻込まれて死んだら、きっと僕の友達たちは「あいつらしいなぁ」って言うんだろうな。

そんな風に言われる僕の生き様とは一体なんなんだ?


地獄に突入した事で、次第に卑屈なネガティブ野郎へと堕ちて行く男。

よく見るとあの噴煙もモクモクの発生源じゃないのか?

まさかあそこに実は嫁がいて、必死で僕に雲を送り続けているんじゃないのか?

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インドア派と思い込ませておいて、毎回僕の先回りして雲やら雨やら雷やらを発生させていたのか?

そして苦しんでいる僕を眺めてほくそ笑むのが彼女の趣味かもしれないぞ。


一度は神になった男が、ついに堕天使となって歪んだ自問自答を繰り返す。

ここは霊山御嶽山。

今、まさに男は心の清濁を試されているのだ。


うつろに地獄を彷徨い、やっと剣ケ峰に戻って来た。

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ここまでこれば人も沢山いるし、少しは人心地を得ることが出来るはずだ。

しかし剣ケ峰で目に入ったのは、沢山の登山者以上にボリュームMAXになったモクモクさんだった。

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もうやめて。

ほんと、勘弁してください。

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瞬く間に僕はモクモクさんの懐深く引きづり込まれていた。

山の天気は「変わりやすい」というが、もうはっきりと「変わるんです」と言い切ってもらいたいものだ。

今となっては、2メートル先が見えていれば僕にとっては「視界良好」と言えるだろう。

受け入れるしか無いのか。


例のごとく僕のせいで巻込まれて行く被害者の方々。

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いつもなら大声で「ごめんなさい」と叫びたい所だが、歪んだ今の僕は「同じ日に山に登った不幸を恨むがいい」と呟く。

きっと悪魔や貧乏神も最初は善人だったんだろう。

で、今日の僕のように徐々に心が歪んで堕ちて行ってそんな風になったんだろうな。

きっとそうだ。


やがてエスカレートした神の新たな追い打ちが開始される。

僕の目の前に「にゃんにゃんカップル」を送り込んで来たのだ。

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手を繋ぎながらのラブリー下山。

闇の心に支配された僕の前で展開されるポップな世界。


最初のうちは微笑ましく見ていたが、やがて僕の中に嫉妬・悔しさ・鬱陶しさ・羨望・劣等感などの感情が入り乱れてスパークする。

僕の全力パワーを解き放ってこいつらに雨でも降らせてやろうか?

その手を繋いでいる真ん中を突っ切って行ってやろうか?

男に対して「やがてその女もドSな嫁に変貌を遂げるんだぞ」と叫んでやろうか?

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僕の卑屈な堕天使化が止まらない。

どうせ女の方はレキのポール使ってるけどリコール対象じゃないに決まってる。

どうせ男の方は加齢臭も無く、登山靴もぴったりで、それでもってサラサラヘアーに決まってる。

昔の僕のように、天パにストレートパーマかけにオシャレ美容院に行って店員さんに「チッ」って舌打ちを打たれた経験なぞないに決まってる。

くそう、吹き荒れろ。雨よ降れ。全てを破壊してしまえ。



いかん。

落ち着け。

あんたどんだけネガティブになってるんだ?


恐るべし霊山御嶽山。

僕は今、自分の闇の部分をまざまざと突きつけられていたのだ。

ここはまさに天使と悪魔の分岐点。

人として僕はどちら側の男なのかが御嶽に試されているのだ。


こんな時は得意のセルフマゾ機能を発動。

自らに「強烈な尿意」という十字架を背負わせ、余計な事を考えられない状況に自らを追い込んでみた。

はちきれんばかりの膀胱が、下山の一歩一歩でシャウトする。

立ちションをかまそうにも、大量の登山者の存在がそれを許さない。

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こんな見晴らしのいい場所での放尿は変態行為と紙一重。

あの遥か先に見える駐車場のトイレまで、体内で尿の表面張力を維持させながらこぼす事無く辿り着かなければならない。


しかし駐車場は見えているのにいつまでもいつまでも近づかない持久戦。

パンツを濡らしているのは汗だけではない気がしてならない。

ここから先は顔面蒼白内股ウォーク。

失いそうな意識をつなぎ止めるのに必死だ。

そしてそんな状況にも関わらず、僕の足はしっかりと脳に痛みの信号をLTE並の高速通信で送り続ける。


いろんな限界の先の限界の世界を彷徨いながら、フラフラで駐車場に近づく。

その頃には子供や老人にも追い抜かれるという悲惨な状況。

駐車場に到達し、登山を終えた感動など感じるわけもなくトイレに駆け込む男。


僕は忘れない。

この時の手足がしびれるほどに突き抜けた放尿の快感を。

この時の僕の恍惚の表情は、堕天使の悪夢から見事に解放された悟りの境地。

僕は霊山御嶽山に、人として大事なものが何なのかを教えてもらって気がしてならない。


そして「本当のゴール」となったトイレの脇で一人寂しく勝利の記念撮影。

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このやりきった感溢れる姿が、今回の戦いの壮絶さを物語る。

久しぶりの完全燃焼。

もう、しばらくは登山する気にもなれない。



待てよ。

これって1週間後の「北岳」に向けての仮装登山じゃなかったっけ?

まずいな。

予行演習で燃え尽きてしまったようだ。

足も痛めたしスタミナも使い果たしてしまった。


でもこれは結果的に想定内。

実はこれはテスト登山ではなく、事前に悪状況を仕込みつつ快晴代償を前払いする為の登山。

これで北岳に対する準備は万端。


いざ、王座簒奪へ。

待ってろよ、北岳よ。



御嶽山 〜完〜


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜おまけ〜


帰りに温泉に寄ったんだが、そこがいい温泉だったので紹介しておこう。

それはこの「こもれびの湯」だ。

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僕の温泉の判断基準はいい湯だったり効能がどうかではない。

いい温泉とは、おもしろいかどうかが重要だと信じている。


ここの湯は濁りすぎていて、まるでドブにでも浸かっているような野趣溢れるお湯。

さらにお湯は強烈な「鉄」の匂いで、一度浸かれば瞬く間に全身が鋼鉄臭に包まれる。

そこに設置されている「ヒノキボディソープ」で体を洗うと、鉄と檜の香りが大喧嘩して、何やら体が「工業的」な匂いでコーティングされる。

そして今日一日の汗と加齢臭と工業臭が不思議なケミストリーを巻き起こす。

で、温泉を出る頃には鉄臭さ満載の「アイアンマン」となっているという不思議な温泉。


みなさんも一度行ってみてはどうだろうか?


御嶽山2〜そして男は神になる〜

Posted by yukon780 on 26.2012 御嶽山/長野 0 comments 0 trackback
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切り立った断崖絶壁を黙々と進んで行く高所恐怖症の男。

まったくの予想外の展開に男の動揺が止まらない。

しかも辺りはモクモクのガスに支配されている。

糖質ゼロ・カロリーゼロのビールは嬉しいが、ここは眺望ゼロ・楽しさゼロの地獄のピーク。

飲み込む唾で男ののどごしも爽やかだ。


男の向かう先は「摩利支天(まりしてん)山」。

御嶽山の4つあるピークの一つだ。

摩利支天とは言わずと知れた仏教の神様で「護身」の神。

そこに挑むは、数々の判断ミスを冒し続ける「誤審」の男。

男はついにその山頂で神を見る事になる。


それでは剣ケ峰から摩利支天山の男の模様を振り返ってみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕はほろ苦いコーヒータイムを終え、剣ケ峰から動き出す。

ここからは富士山のようにお鉢をぐるっと回って、その先にある摩利支天山を目指すのだ。


向かって左側は素敵な二の池と晴れた世界。

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しかしその場で右側を見れば楽しげなモクモクファーム。

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今まさに僕を中心として、晴れと曇りが激しくぶつかリ合っている。

ここからはモクモクさんとの抜きつ抜かれつの追いかけっこだ。


手前の二の池はその美しい姿を惜しげもなく見せつけてくれるが、

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御嶽山周辺はとにかく眺望だけは絶対見せないぞという心構え。

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今までに無いタイプの晴天ドーナツ化現象。

景気良くおっぱいは見せるけど、絶対に顔は見せないぞという御嶽山の決意が見てとれる。



やがて二の池まで降りて来た。

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上から見てても見事なエメラルドグリーンだったが、目の前で見てもエメラルドグリーン。

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キレイだが、足が痛すぎて僕の心はすっかりエメラルドブルーだ。


ここから先は途端に登山者も減り、快適なトレッキングが続く。

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曇ったり晴れたりが続くが、実にいい気分。

足の痛みを除けばね。


実はこの頃から新たに踵の靴擦れパーティーが始まっていた。

小指付け根への打撃緩和の為に靴紐を緩めたのが原因だ。

強く結んでバッチリフィットさせれば小指付け根がシャウトし、緩ませれば靴擦れする世界。

この中間にこそ目指すべき「ベストフィット」の締め具合があると信じて何度も調整。

結果的に小指付け根も痛めつつ靴擦れもするという最悪の事態に追い込まれた。


ここから先は「限界を迎える前にいつ撤退の英断を下すのか」という自問自答の世界に突入。

僕は雄大な山と向きあいたかったのに、ただひたすらに己の足と向きあう小さな世界の住人となってしまった。



やがて突然目の前に広大な景色が広がった。

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山頂部とは思えないほどの広大なる平原。

4試合くらい同時に野球が出来そうなほどの広さに、沢山の石が積まれたケルンが沢山ある。

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ここは「賽の河原」と呼ばれる独特な場所。

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賽の河原は三途の川の川原。

言葉の意味を調べてみると「報われない努力」「徒労」とある。

フィットしない登山靴を諦められずに使い続ける誰かさんにはピッタリの場所だ。


それにしても山岳信仰の霊山だけあって、他の山とは違った独特の世界だ。

やがてダッチオーブンのように吊るされた鐘越しに三の池が見えて来た。

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運良く三の池を拝む事は出来たが、その先に広がっているであろう南アルプスの山並みは例のごとく想像するのみ。

この先の遥か彼方に討伐すべきキング北岳がいるはずだ。

さあ、その前に摩利支天山を軽くねじ伏せて来ようじゃないか。

この稜線の遥か先にその頂が待っている。

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天気もまだいい感じをキープしている。

快適トレッキングはここまで。

ここからは再びガッツリと登って行くパーティータイムだ。


そんな僕の心意気を察してくれたのか、頼んでないのに神が応援のモクモクサービスを開始。

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グハグハと稜線まで登って来た時には僕はいつもの真っ白な精神と時の部屋に突入していた。

この部屋での1日の修行は人間界の1年分に匹敵するらしい。

こうして僕のマゾは周囲を突き放し、やがて孤高のマゾ男となるわけだ。


進行方向がモクモクすぎてどうなってるかよく分からない。

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やがて現れる稜線は、両サイド切り立ってなんだか妙に怖そうじゃない。

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そしてマニアックすぎる山なのか、僕以外誰一人登山者がいない。

暗くなる景色、一人ぼっちの寂しさ、切り立った稜線への恐怖、そしてスケールを増す足の痛み。

ああ、いいぞ。

いよいよ「僕の山」が始まったんだ。

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参ったなって顔をしながらも、どこか嬉しそうだ。

この色の無いグレイッシュな世界がどうにも居心地がいいじゃない。

先の見えないガレ場の稜線をひいひい言いながら進んで行く。

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下を覗けば、モクモクさんが邪魔で一体どこまで滑落していくのかも分からない。

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そして前方から今までで最大のモクモクさんが大挙して押し寄せる。

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さすがに全身に恐怖が走った。

こんな足場の悪い場所で視界が利かなくなったら大変だし、最悪雷だって考えられる。

でも頂上はもうすぐそこ。だと思われる。

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先が見えないからここからはフィーリング勝負。

普段の登山で、あえて眺望の無い真っ白な山頂を制覇して来たのは「心眼」を鍛えるためだったじゃないか。

今こそ想像力を働かせてみようじゃないか。


見えるのは足下のみ。

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今つまづいたら、右にこけても左にこけてももれなくヒモ無しバンジーが待っている。

こんなにハードな稜線だなんて地図には載ってなかったぞ。


痛む足と恐怖と疲労を楽しみながらよぼよぼと進んで行く。

やがて見上げた先に、ポツンと看板のようなものが見えた。

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着いた。

ついに摩利支天山の山頂に到達したのだ。

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槍ヶ岳の山頂よりも遥かに狭い場所に地味に突き刺さる山頂看板。

当たり前だが周には誰一人いない。

当然眺望もゼロ(晴れてたら相当凄い景色だったろう)で感動もゼロだ。

今日もいいマゾが完成して満足だ。


しかしここで僕は背後に神々しい気配を感じた。

一カ所雲がぽっかりと穴をあけ、そこから差し込む光。

そしてその光に照らされた一人の神。

さては摩利支天なのか?


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違う。

奴は「摩曽支天念」(マゾしてんねん)だ。


ついにマゾを極めた男が神へと昇華した瞬間。

男に祝福の光が降り注ぐ。


悟りを開き、穏やかな顔で下山を始める男。

しかしその男の前に別の道が見えてしまった。

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モクモクすぎて見えなかったが、稜線の下の方にとても歩きやすくて安全な別のトラバース登山道を発見。

こんな快適な道があったにもかかわらず、なんと男は自ら進んでハードな稜線を突き進んでいたようだ。


いつもならこんな信じられないような結末に心もポッキリ行く所だ。

しかし神となった今の彼は違う。

摩曽支天念は静かに頷き、口元にアルカイックスマイルを浮かべて下山して行った。



そんなわけあるか。

余計なハード稜線のせいで山のピークよりも足の痛みのが遥かにピークだ。

当然男の口元にスマイルは無く、眉間にシワを寄せた苦々しい表情。


そこに神の姿は無かった。

そこには般若のお面のような苦痛にまみれた男のふらつく姿だけがあったと言う。



御嶽山3へ 〜つづく〜


御嶽山1〜男のコーヒータイム〜

Posted by yukon780 on 24.2012 御嶽山/長野 0 comments 0 trackback
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翌週末の北岳制圧に向けての仮想登山。

北岳は南アルプスのキング。

反乱軍の一員として、王位簒奪の為の準備は入念に行なう必要があるのだ。


選んだステージは富士山同様の独立火山峰「御嶽山」(3,067m)。

山岳信仰の霊山にして「修行の山」。

家からのアクセス、標高、登山タイムの全てが仮想北岳に持って来いの山だ。



ただし、テスト登山のつもりが今回も本番さながらのマゾに追い込まれて行く男。

軽く「テスト」なんて言ってるが、実はこの山は去年から狙い続けていた憧れの名山。

岐阜県民として、この「御嶽山」と「白山」はいずれ倒さねばならない宿命の山なのだ。


とにかくテストしたい事は、3000mの山に単独で登れるかどうかではない。

因縁の登山靴「マムートさん」が長時間の登山に耐えられるのかということ。

正確に言えば、僕の足がマムートの打撃攻撃にどこまで耐えられるかの我慢勝負。

快適登山を楽しむ為に買った靴が、今最も僕の足を引っぱっている事は確かだ。


それではそんな「9時間耐久我慢大会」の模様を振り返ってみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


金曜夜。

仕事を終え帰宅し、男の三大任務(子供の風呂・歯磨き・寝かしつけ)をこなした時はすでに21時過ぎ。

準備を整え、22時に家を出発。


今回は飛騨側からのスーパーロングコースでの登頂を目指していた。

しかしカーナビが登山口である濁河温泉までを検索した所、「5時間半」という魅惑のタイムを提示している。

今回は朝の5時前から登り出そうと思っていたので、このままでは不眠不休でスーパーロングコース突入となってしまう。


向かう車の中でどんなにシュミレーションしてみても、行き着く所は必ず「過労死」だった。

散々迷った挙げ句、今回は王滝口(長野だけどこっちのがアクセスが多少早い)からのロングコースに切り替えた。

事前の情報収集不足が早くも露呈した結果だ。


登山口を変えたと言っても、車で寝られたのはわずか2時間ほど。

本日もスタート前から男の顔に激しい披露の色が滲んでいる。

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目の錯覚なのか、登山口の文字が血文字のダイイングメッセージのように見えて不安を煽る。

まあ、ある意味北岳も同様の結果が予想されているので調度いい。

「睡眠不足」はマゾ使いの事前仕込みとしては王道中の王道。

今日もグッドコンディションだ。




この王滝口の登山道は御嶽山の最高地点「剣ケ峰」までの最短コース。

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このように子供も登ってしまうおよそ3時間程の行程。

もちろん今回は剣ケ峰も越えて、その先の摩利支天山までを目指すロングコースだ。


正直僕はこの王滝口の剣ケ峰までの道のりをなめていた。

以前チーム・マサカズのオギKの娘二人が、このルートで登頂を果たしていたからだ。

小学生の女の子に登れるんだから軽々登れるだろうと。

しかし、地味にキツい登りが延々と続くじゃない。

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何が一番驚いたかと言えば、もうこの時点でマムートさんのローキック攻撃が始まった事だ。

今回は薄手の靴下にチェンジし、ジェルクッションのシートを患部に貼付け、靴紐も緩めに設定。

ここまでして痛かったら絶望的って感じだったのに。


テストするまでもなく分かっていた事だが、早くも確信した。

この靴は間違いなく僕に合っていないと。


早くも痛くなる小指の付け根の骨。

おまけにここの所のキツかった仕事と寝不足の体が、まるで登山に順応してくれない。

結局いつも通りグハグハと苦痛に顔を歪めながらの登山となった。

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振り返れば早くも雲海が広がっているが、僕の足にも痛みという不快が広がっている。

景色は美しいのに、心が沈んでいるのは何故だろうか。


それでも天気予報通りの素敵な青空にはご満悦だ。

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しかしこの数時間後。

この景色が真っ白なクラウドサービスに支配されるなんて事はこの時は思ってもいなかった。


そしてオープニングの写真やこの写真。

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いつものように己撮りで颯爽と佇んでいるように見えるが、この山での己撮りは羞恥の極みだ。

この写真の後ろはこんな感じで、わんさと登山者がいる。

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彼らの前でカメラをセットし、そそくさと立ち位置に移動してポージングしてまた戻って来るという一部始終が衆目に晒されるのだ。

大衆に自慰行為を目撃されているかのようなこの恥辱。

マジックミラーじゃないマジックミラー号で撮影しているようなこの感覚。(意味分かるか?これ)

色んな意味でたまらねえ。



八合目を越えれば、さらに傾斜もきつくなってくる。

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オギKの娘達はよくぞこんな所を登ったもんだ。

その時はオギKの奥さんも登ったようだが、こんなところに我が嫁を連れて来たら訴訟問題に発展しかねない。


九合目まで来ると、火山だけにやや硫黄の匂いがするようになる。

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登山中に度々オナラをこく僕としては実にありがたい山だ。

木曽駒ヶ岳のときの記事では書かなかったが、僕は終始屁をこいてチームのメンバーに迷惑をかけている。

ここなら例え麗しきレディーと来ても心置きなく放屁可能だ。


やがて「王滝口頂上」へ到達。

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ここを抜けると、景色が開けて荒涼とした山容が姿を現す。

ついに御嶽山の頂上「剣ケ峰」を捉えたぞ。

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霊山だけに、実に荘厳なオブジェが立ち並んでいる。

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梅雨時になると天パの僕の前髪はこんな感じになる。

しかしそんな湿気とは無縁の最高の快晴状態がたまらない。

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ああ、足が痛いけど楽しいなあ。

そう言えば本来登山って楽しむものなんだよなあ。

進んでマゾだ修行だなんてやってるけど、今回は何事もなさそうだ。

今日ぐらい楽しんじゃってもいいのかな?


なんて僕の心の声が神々達の怒りに触れた。(この人達↓)

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お前のような男を楽しませてなるものかと、早速後方から刺客を送り込んで来たのだ。

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噴火したのか?と思うほどに、ものすごい勢いでモクモクが形成されて行く。

結局いつも通りなのか?

急がねばならない。

前方は平和な快晴が展開しているが、

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振り向けば圧倒的な勢いで迫り来る神の刺客達。

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またやってしまった。

あれほど浮かれるなと何度も言い聞かせてきたのに。


結局いつも通り雲とのデッドヒート。

晴れてるうちにせめて山頂だけは拝んでおきたい。


最後の階段を駆け上がり、

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見事、剣ケ峰到達。

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うああ、雲が雪崩のように迫ってるぞ。

山頂到達の感動に浸っている場合じゃない。

ささっと登頂記念撮影。

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勝った。

なんとか美しき二の池だけは「浸食」される前に拝むことが出来た。

しかし地図には「360度の絶景」と書いてあったが、この時点で90度くらいの絶景。

それでもいつも景色を想像する事しか許されない僕としては大上出来だ。

やはり空想の女性よりも生身の女性のが圧倒的にいいものだ。

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結局迫り来る雲のおかげか、足を痛めながらもわずか2時間での登頂。

まだまだ先は長い。

御嶽山との第1ラウンドを終え、僕はゆっくりと勝利のコーヒーを作り始める。

そのわずかな90度の絶景を堪能しながらのコーヒーはきっと格別だろう。

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さあ、コーヒーができたぞ。

この素晴らしき景色を見ながらのコーヒーがまた最高...

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アツアツのコーヒーが出来上がった頃、僕はモクモクの濃い雲の中にいた。

景色なんて真っ白で何も見えやしないじゃない。

あれかな?コーヒーの湯気でメガネが曇ったのかな?

いや、違う。

コーヒーを湧かしているこのわずかな時間の間に、僕はいつもの世界にご入店していたのだ。


この時男の飲んだコーヒーはいつもより苦かったという。



こうして僕と雲との楽しい追いかけっこが幕を明けた。

ここからはいよいよ摩利支天山を目指すロング周回コースのスタート。

テストというにはあまりにもハードな修行が始まろうとしていた。


御嶽山2へ 〜つづく〜


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