武奈ヶ岳3〜青白アタックチャンス〜

Posted by yukon780 on 10.2013 武奈ヶ岳/滋賀 0 comments 0 trackback
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後方から迫り来るモクモクと、それを必死でかわそうとする一人の修行僧。

もはやすっかりお友達になった足の激痛とともに、男はひたすら急斜面を駆け上がる。



苦痛にまみれた男を突き動かすもの。

それは山頂から見られるという「琵琶湖と伊吹山の大パノラマ」の絶景だ。

嫁に土下座したのも、3時間かけてはるばる来たのも、全身破壊の体を酷使してきたのも、痛む足を引きずりながら登って来たのも、全てがその絶景を見るため。


そしてその山頂へ向けた最後の戦いが始まった。

根性男、富樫源次が憑依した男にもはや怖いものは何も無い。



それでは大絶景までの戦いの記憶を振り返ってみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ワサビ峠まで一度高度を下げて、いざ武奈ヶ岳山頂へ。

疲弊しきった男の前には強烈な急登が立ちふさがった。

IMGP0656_20130108101853.jpg

もはやグハグハ度はマックスだが、この突き抜けるような青空が僕に勇気を与える。

この青空がいやが上にも僕の気持ちを高揚させる。


一体山頂ではどれだけ美しい光景が広がっている事だろう?

今まではいつも山頂は真っ白なガスの世界で、景色なんて全く見えないパターンがお決まりだった。

それは月曜日の夜7時45分前後に、必ず格さんが印籠を出すくらいのお決まりパターン。

しかし現在頭上には快晴が広がり、さしもの格さんも印籠を出すタイミングを失する事だろう。


でもなんだろうか?

この背後から感じる激しい殺気は。

IMGP0652_20130108101841.jpg

何やら僕を境に青空とモクモクが激しくせめぎあっている気がしてならない。

しかし出来るだけこの事は考えないようにし、快晴の山頂だけを信じて突き進む。



痛みで顔を歪めながら、ひたすら急登の連続を越えて行く。

振り向けば、僕が武奈ヶ岳を確認した場所が大分遠くになって来た。

IMGP0660_20130108101909.jpg

ちょうどあの頃に、遥か前方にひたすら急登していた登山者を見たあたりに今僕はいる。

やはり想像以上にハードな登りが延々と続くぞ。

IMGP0662_20130108101914.jpg

でもあそこまで行けばおそらく頂上のはず。

最後の力を振り絞り、ムッホムッホと駆け上がる。

もうトレッキングポール無しではとても登って行けないくらいに右足の痛みが笑ける状態。

そして二日前のフルマラソン未遂のせいで、全く体にエネルギーが充満せずにもはやガス欠状態。


でもあと少し。

もう少し。

なんか標識が見えて来た。

きっと山頂の標識だ。


最後の力を振り絞って。


登りきったぞ!

IMGP0663.jpg

あれ?

何、あの遥か前方に現れた山は。

ここ山頂じゃないの?

カメラを望遠ズーム。

IMGP0664.jpg

うそだろう?

アリのような登山者が亡霊のように山頂を目指して登っているではないか。

山頂はまだまだ先じゃないか。



まるで総力戦で倒したと思ったドラクエのラスボスが、さらに巨大化して再登場した時のようなあの絶望感。

お釈迦様の手の上の孫悟空になった僕はその場に倒れ込む。

僕という男は、なんて非力で無力なんだろうか。



それでも富樫源次によって、ドスで胸に「闘」の文字を刻まれた僕はへこたれない。

これは神が与え賜うた「ワン・モア・マゾ」。

こんなビッグチャンスを逃す手は無い。


再び動き出したヨレヨレの男。

IMGP0666.jpg

追い討ちをかけるように、さらに雪は深くなって歩きにくさ全開。

歩けども歩けども、ちっとも景色は変わらず近づいている気がしない。

IMGP0667_20130108101958.jpg

でも冷静に考えてみたら、この雰囲気はとっても素晴らしいな。

そうだった、そもそもこういう雰囲気を求めて僕は雪山に来ていたんだ。

IMGP0668_20130108102004.jpg

いつも間にかマゾる事に気を取られすぎて、「雪山を満喫する」という人として本来の目的を見失う所だった。

そろそろ人間らしさを取り戻さないと、本物の変態になってしまう。


そこでせっかく担いで来たんだから、スノーシューに履き替えて優雅な空中スノーハイクと洒落込もうじゃないか。

IMGP0669_20130108102013.jpg

またやってしまった。

アイゼンの時に引き続き、ここでもスノーシューを履く際に無理な体勢になって左脇腹から背筋にかけて猛烈にツってしまった。

以前銚子ヶ岳で謎の背筋痛になった時以来の、息を吐く度に背中を痛めるというロングマゾブレスダイエットがスタート。


例のごとく前屈みになると背中に痛みが走るので、やたらと姿勢良く狂言師のように歩いて行く。

実にややこしいスノーハイクとなってしまった。


もはや全身あますことなくボロボロになってしまった。

仕方ない。

「雪山を満喫しよう」だなんて思ってしまった僕が全て悪いのだ。

その軟弱な考えで富樫を怒らせてしまったんだ。


こうして再び富樫によって原点の己を取り戻した男は進んで行く。

IMGP0674_20130108102036.jpg

IMGP0676.jpg

いいぞ。

スノーシューに変えた事によって、雪のクッションが無くなって足の痛みがさらにハードになったぞ。

スノーシューは新雪を歩きやすくする道具だが、足にダイレクトに痛みを響かせる便利なアイテムだ。

はるばる担いで来た甲斐があったってもんだ。


しかしそんな事よりも気になる事がある。

IMGP0677.jpg

気のせいだろうか?

随分と頭上の「青」が占める割合が少なくなっていませんか?

「白」が随分と「青」のパネルをひっくり返したのか?

そんな救いのないアタック25が今ここに始まったのか?



そんなバカな事は無いだろう。

だってまだ11時だよ。

曇るのは14時からだって言ってたじゃないのさ。

信じないよ。

信じないからね。


そうして再び見上げてみる。

IMGP0678.jpg

山頂がみるみる白く包まれて行く。

完全に青のパネルは駆逐されてる。

振り返ってみれば白パネラーの応援団が大挙して押し掛けているし。

IMGP0682_20130108102126.jpg

負けるな、青のパネラーよ。

稜線の逆側を見れば、まだなんとか青のパネルは生きている。

IMGP0680_20130108102113.jpg

僕は全力で青のパネラーの応援に回る。

急げ。

まだチャンスはあるはずだ。

IMGP0688_20130108102158.jpg

IMGP0689.jpg

よし、山頂アタック前の最後のコブを越えたぞ。

いよいよ最後の問題だ。


児玉清が視聴者を煽る。

「さあ、青の方が追い込まれました。これは白の方の有利は揺るがないでしょうか?青の方の最後の巻き返しなるのか?まいりましょう。アタックチャーーンス。」

IMGP0694.jpg

「問題。あなたを愛している人は誰でしょうか?」


やった、ラッキー問題だ。

僕は大急ぎで駆け上がって山頂のボタンを押した。

そして確信を持って答えた。

IMGP0697.jpg

「嫁!」


「ハイ、残念!」と間髪入れずに児玉清。

すかさずボーンと白の回答席が光る。

「悪天候!」と確信を持って答える白パネラー。


「結構!その通り!」


やがて白のパネラーのラストコールがお茶の間に響き渡る。

IMGP0698.jpg

「25番!」

ボーンボーンボーンボーンボーンボーンボーン。

IMGP0699.jpg

こうして見事にパネルは真っ白になった。

児玉清が興奮気味に叫ぶ。

「白のモクモクさんが25枚のパネルをお取りになりまして見事パーフェクト達成!パリ挑戦権獲得!おめでとうございます!」

IMGP0700_20130108102246.jpg

「青の方はまた来週この時間、パリが待っております!ごきげんよう!さよなら!残念!」

追い打ちのような清の残念コールが心に突き刺さる。

これはラスト登山だから、僕にはもう来週の挑戦権は無いというのに。


こうしてモクモクさんはエールフランスでのパリ旅行券を獲得し、僕には「悲しみ」と言う名の参加賞が渡された。

こうして1時間前まであれほど快晴に包まれていた山頂は、すっかりいつもの状態に。

IMGP0702_20130108102250.jpg

当たり前だが、この先に琵琶湖の大パノラマも伊吹山の勇姿も見る事は叶わない。


男はただただその場に立ち尽くし、真っ白な虚空を見つめていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



男が立ち尽くしていた「同日の同時刻」。

知人のK.Ikehata氏は木曽駒ヶ岳を登っていた。

僕が当初登山候補に挙げていたあの木曽駒ヶ岳の事だ。


後にFacebookに投稿された、この時の彼の写真は以下の通りである。

63748_397413993677955_576120081_n.jpg

298974_397414043677950_136673607_n.jpg

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408681_397413950344626_761128048_n.jpg

もはや何も言うまい。


僕がこの写真をiPhoneで見た時、ポツリポツリと画面上に水滴が落ちた所までは記憶している。

しかしそれ以降の記憶は全くない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


話を男に戻そう。


男は目の前の絶景を堪能しながら、一人寂しくカップラーメンを食っていた。

IMGP0706_20130108102255.jpg

彼がプルプル震えているのは感動からなのか?

それとも寒さか怒りか悔しさか。


そして静かにカップラーメンを食い終わり、足を引きづりながら下山開始。

お先は真っ白。

IMGP0707.jpg

後ろも真っ白。

IMGP0708.jpg

花嫁さんの何倍も真っ白が似合うの男の後ろ姿。

やがて目も当てられない光景と化す武奈ヶ岳。

IMGP0709_20130108102318.jpg

そして最後の追い打ち。

強烈な尿意が男に襲いかかった。


モクモクのくせに、妙に周囲の視界だけはバッチリ良好だからオシッコポイントがまるで見つからない。

IMGP0718.jpg

ここからは体から流れ出る脂汗とともに下山する我慢大会。

体に無理をしてまではるばる登って、山頂でガスにまみれた上に「もらした」となってはもはや救いようが無い。


命がけの内股脱出劇。

およそ1時間後に深い森の中で放尿した頃には、すっかり顔色がデスラー総統になっていたほどの限界度。

それでも男は下り続ける。

そこには「本来の目的」が待っているのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


長い長い時間が過ぎた。

とても長い時間が。


もはや全身の疲弊具合はとても文章では表現出来ない境地にまで達している。

男は無事に下山したのだ。


そしてやっと本来の目的である登山口近くの神社での「初詣」。

IMGP0737.jpg

ここに来るまで随分と長い遠回りをして来た気がする。

それだけにこの「安産祈願」は効果絶大なはず。

そして僕は生贄となり、この山に「己の健康」を捧げたのだ。



無事に初詣が終わり駐車場へ帰還。

空は見事な「青空」に包まれていた。

IMGP0743_20130108102454.jpg

富樫。

富樫よぅ。

僕の生き方は間違ってないよな?

これで良かったんだよな?

こんな最後がお似合いなんだよな?



そして男は涙を拭って車を走らせる。

再び長い長い育児の日々の始まりに向かって。




武奈ヶ岳 〜完〜


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武奈ヶ岳3〜青白アタックチャンス〜

Posted by yukon780 on 10.2013 武奈ヶ岳/滋賀 0 comments 0 trackback
IMGP0685.jpg

後方から迫り来るモクモクと、それを必死でかわそうとする一人の修行僧。

もはやすっかりお友達になった足の激痛とともに、男はひたすら急斜面を駆け上がる。



苦痛にまみれた男を突き動かすもの。

それは山頂から見られるという「琵琶湖と伊吹山の大パノラマ」の絶景だ。

嫁に土下座したのも、3時間かけてはるばる来たのも、全身破壊の体を酷使してきたのも、痛む足を引きずりながら登って来たのも、全てがその絶景を見るため。


そしてその山頂へ向けた最後の戦いが始まった。

根性男、富樫源次が憑依した男にもはや怖いものは何も無い。



それでは大絶景までの戦いの記憶を振り返ってみよう。


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ワサビ峠まで一度高度を下げて、いざ武奈ヶ岳山頂へ。

疲弊しきった男の前には強烈な急登が立ちふさがった。

IMGP0656_20130108101853.jpg

もはやグハグハ度はマックスだが、この突き抜けるような青空が僕に勇気を与える。

この青空がいやが上にも僕の気持ちを高揚させる。


一体山頂ではどれだけ美しい光景が広がっている事だろう?

今まではいつも山頂は真っ白なガスの世界で、景色なんて全く見えないパターンがお決まりだった。

それは月曜日の夜7時45分前後に、必ず格さんが印籠を出すくらいのお決まりパターン。

しかし現在頭上には快晴が広がり、さしもの格さんも印籠を出すタイミングを失する事だろう。


でもなんだろうか?

この背後から感じる激しい殺気は。

IMGP0652_20130108101841.jpg

何やら僕を境に青空とモクモクが激しくせめぎあっている気がしてならない。

しかし出来るだけこの事は考えないようにし、快晴の山頂だけを信じて突き進む。



痛みで顔を歪めながら、ひたすら急登の連続を越えて行く。

振り向けば、僕が武奈ヶ岳を確認した場所が大分遠くになって来た。

IMGP0660_20130108101909.jpg

ちょうどあの頃に、遥か前方にひたすら急登していた登山者を見たあたりに今僕はいる。

やはり想像以上にハードな登りが延々と続くぞ。

IMGP0662_20130108101914.jpg

でもあそこまで行けばおそらく頂上のはず。

最後の力を振り絞り、ムッホムッホと駆け上がる。

もうトレッキングポール無しではとても登って行けないくらいに右足の痛みが笑ける状態。

そして二日前のフルマラソン未遂のせいで、全く体にエネルギーが充満せずにもはやガス欠状態。


でもあと少し。

もう少し。

なんか標識が見えて来た。

きっと山頂の標識だ。


最後の力を振り絞って。


登りきったぞ!

IMGP0663.jpg

あれ?

何、あの遥か前方に現れた山は。

ここ山頂じゃないの?

カメラを望遠ズーム。

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うそだろう?

アリのような登山者が亡霊のように山頂を目指して登っているではないか。

山頂はまだまだ先じゃないか。



まるで総力戦で倒したと思ったドラクエのラスボスが、さらに巨大化して再登場した時のようなあの絶望感。

お釈迦様の手の上の孫悟空になった僕はその場に倒れ込む。

僕という男は、なんて非力で無力なんだろうか。



それでも富樫源次によって、ドスで胸に「闘」の文字を刻まれた僕はへこたれない。

これは神が与え賜うた「ワン・モア・マゾ」。

こんなビッグチャンスを逃す手は無い。


再び動き出したヨレヨレの男。

IMGP0666.jpg

追い討ちをかけるように、さらに雪は深くなって歩きにくさ全開。

歩けども歩けども、ちっとも景色は変わらず近づいている気がしない。

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でも冷静に考えてみたら、この雰囲気はとっても素晴らしいな。

そうだった、そもそもこういう雰囲気を求めて僕は雪山に来ていたんだ。

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いつも間にかマゾる事に気を取られすぎて、「雪山を満喫する」という人として本来の目的を見失う所だった。

そろそろ人間らしさを取り戻さないと、本物の変態になってしまう。


そこでせっかく担いで来たんだから、スノーシューに履き替えて優雅な空中スノーハイクと洒落込もうじゃないか。

IMGP0669_20130108102013.jpg

またやってしまった。

アイゼンの時に引き続き、ここでもスノーシューを履く際に無理な体勢になって左脇腹から背筋にかけて猛烈にツってしまった。

以前銚子ヶ岳で謎の背筋痛になった時以来の、息を吐く度に背中を痛めるというロングマゾブレスダイエットがスタート。


例のごとく前屈みになると背中に痛みが走るので、やたらと姿勢良く狂言師のように歩いて行く。

実にややこしいスノーハイクとなってしまった。


もはや全身あますことなくボロボロになってしまった。

仕方ない。

「雪山を満喫しよう」だなんて思ってしまった僕が全て悪いのだ。

その軟弱な考えで富樫を怒らせてしまったんだ。


こうして再び富樫によって原点の己を取り戻した男は進んで行く。

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IMGP0676.jpg

いいぞ。

スノーシューに変えた事によって、雪のクッションが無くなって足の痛みがさらにハードになったぞ。

スノーシューは新雪を歩きやすくする道具だが、足にダイレクトに痛みを響かせる便利なアイテムだ。

はるばる担いで来た甲斐があったってもんだ。


しかしそんな事よりも気になる事がある。

IMGP0677.jpg

気のせいだろうか?

随分と頭上の「青」が占める割合が少なくなっていませんか?

「白」が随分と「青」のパネルをひっくり返したのか?

そんな救いのないアタック25が今ここに始まったのか?



そんなバカな事は無いだろう。

だってまだ11時だよ。

曇るのは14時からだって言ってたじゃないのさ。

信じないよ。

信じないからね。


そうして再び見上げてみる。

IMGP0678.jpg

山頂がみるみる白く包まれて行く。

完全に青のパネルは駆逐されてる。

振り返ってみれば白パネラーの応援団が大挙して押し掛けているし。

IMGP0682_20130108102126.jpg

負けるな、青のパネラーよ。

稜線の逆側を見れば、まだなんとか青のパネルは生きている。

IMGP0680_20130108102113.jpg

僕は全力で青のパネラーの応援に回る。

急げ。

まだチャンスはあるはずだ。

IMGP0688_20130108102158.jpg

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よし、山頂アタック前の最後のコブを越えたぞ。

いよいよ最後の問題だ。


児玉清が視聴者を煽る。

「さあ、青の方が追い込まれました。これは白の方の有利は揺るがないでしょうか?青の方の最後の巻き返しなるのか?まいりましょう。アタックチャーーンス。」

IMGP0694.jpg

「問題。あなたを愛している人は誰でしょうか?」


やった、ラッキー問題だ。

僕は大急ぎで駆け上がって山頂のボタンを押した。

そして確信を持って答えた。

IMGP0697.jpg

「嫁!」


「ハイ、残念!」と間髪入れずに児玉清。

すかさずボーンと白の回答席が光る。

「悪天候!」と確信を持って答える白パネラー。


「結構!その通り!」


やがて白のパネラーのラストコールがお茶の間に響き渡る。

IMGP0698.jpg

「25番!」

ボーンボーンボーンボーンボーンボーンボーン。

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こうして見事にパネルは真っ白になった。

児玉清が興奮気味に叫ぶ。

「白のモクモクさんが25枚のパネルをお取りになりまして見事パーフェクト達成!パリ挑戦権獲得!おめでとうございます!」

IMGP0700_20130108102246.jpg

「青の方はまた来週この時間、パリが待っております!ごきげんよう!さよなら!残念!」

追い打ちのような清の残念コールが心に突き刺さる。

これはラスト登山だから、僕にはもう来週の挑戦権は無いというのに。


こうしてモクモクさんはエールフランスでのパリ旅行券を獲得し、僕には「悲しみ」と言う名の参加賞が渡された。

こうして1時間前まであれほど快晴に包まれていた山頂は、すっかりいつもの状態に。

IMGP0702_20130108102250.jpg

当たり前だが、この先に琵琶湖の大パノラマも伊吹山の勇姿も見る事は叶わない。


男はただただその場に立ち尽くし、真っ白な虚空を見つめていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



男が立ち尽くしていた「同日の同時刻」。

知人のK.Ikehata氏は木曽駒ヶ岳を登っていた。

僕が当初登山候補に挙げていたあの木曽駒ヶ岳の事だ。


後にFacebookに投稿された、この時の彼の写真は以下の通りである。

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もはや何も言うまい。


僕がこの写真をiPhoneで見た時、ポツリポツリと画面上に水滴が落ちた所までは記憶している。

しかしそれ以降の記憶は全くない。


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話を男に戻そう。


男は目の前の絶景を堪能しながら、一人寂しくカップラーメンを食っていた。

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彼がプルプル震えているのは感動からなのか?

それとも寒さか怒りか悔しさか。


そして静かにカップラーメンを食い終わり、足を引きづりながら下山開始。

お先は真っ白。

IMGP0707.jpg

後ろも真っ白。

IMGP0708.jpg

花嫁さんの何倍も真っ白が似合うの男の後ろ姿。

やがて目も当てられない光景と化す武奈ヶ岳。

IMGP0709_20130108102318.jpg

そして最後の追い打ち。

強烈な尿意が男に襲いかかった。


モクモクのくせに、妙に周囲の視界だけはバッチリ良好だからオシッコポイントがまるで見つからない。

IMGP0718.jpg

ここからは体から流れ出る脂汗とともに下山する我慢大会。

体に無理をしてまではるばる登って、山頂でガスにまみれた上に「もらした」となってはもはや救いようが無い。


命がけの内股脱出劇。

およそ1時間後に深い森の中で放尿した頃には、すっかり顔色がデスラー総統になっていたほどの限界度。

それでも男は下り続ける。

そこには「本来の目的」が待っているのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


長い長い時間が過ぎた。

とても長い時間が。


もはや全身の疲弊具合はとても文章では表現出来ない境地にまで達している。

男は無事に下山したのだ。


そしてやっと本来の目的である登山口近くの神社での「初詣」。

IMGP0737.jpg

ここに来るまで随分と長い遠回りをして来た気がする。

それだけにこの「安産祈願」は効果絶大なはず。

そして僕は生贄となり、この山に「己の健康」を捧げたのだ。



無事に初詣が終わり駐車場へ帰還。

空は見事な「青空」に包まれていた。

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富樫。

富樫よぅ。

僕の生き方は間違ってないよな?

これで良かったんだよな?

こんな最後がお似合いなんだよな?



そして男は涙を拭って車を走らせる。

再び長い長い育児の日々の始まりに向かって。




武奈ヶ岳 〜完〜


武奈ヶ岳2〜僕と富樫と油風呂〜

Posted by yukon780 on 09.2013 武奈ヶ岳/滋賀 0 comments 0 trackback
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足の痛みに耐え、ワッセワッセと雪中行軍を続ける孤独な日本兵。

彼は登山をしているのではない。

原点に立ち返ったその男は、今まさに己のマゾと向かい合っている真っ最中だ。


肉体は歓喜の悲鳴を上げ、捻挫風味の右足が一歩毎にシャウトを繰り返す。

これは自らが望んで踏み入ったマゾサンクチュアリ。

決して一般人が踏み入ってはいけない、選ばれた者のみが侵入を許される聖域なのだ。



今シーズンのラスト(多分)雪山登山。

わざわざ勝ち取ったこの魅惑の修行タイム。

その苦行の軌跡を振り返る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


登山口で本来の自分の姿を取り戻した男。

重苦しい体調、寝不足の体、捻挫疑惑の右足、ダークな空模様。

そのどれをとってもベストコンディションと言う他ない。


そんな僕の前に現れたのは、のっけからの大急登タイムだった。

IMGP0573_20130109151459.jpg

写真では分かりにくいだろうが、かなりスペシャルな急登が延々と続いていく。

こいつは久々のパワー登山だ。

IMGP0575.jpg

重い。

実に体が重い。

出だしから汗ダクダクのグハグハで、気分はウハウハだ。


ひたすら登ってやっと尾根かと思いきや、

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再び急登急登急登急登オオォォォォッッッッ!!

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こんな序盤で早くもディオ化する武奈ヶ岳。

とても頂上まで体が持つ気がしない。


そしてどこまで行っても止む気配をみせない急登野郎。

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随分とサラリと書いているが、ここまで来るだけで随分と時間を費やした。

やがてその急登っぷりはさらに勢いを増し、一歩進んで半歩ずり落ちるを繰り返すようになる。

この下りのエスカレーターを上り続けるかのような精神的な攻撃。

たまらずアイゼンを履き、ポールをピッケルに持ち替えて果敢に攻め上がる。

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しかしピッケルに持ち替えた事が裏目に出て、下半身に強烈な負荷が。

たちまち僕の捻挫疑惑の右足が唸り、なぜか左足まで痛くなって来た。

アイゼンも10本爪という中途半端なものだから、滑ること滑ること。

しかもアイゼンを履く時、無理な体勢になった事により左脇腹をツってしまっているというおまけ付だ。


なんだかさっきよりも進まないどころか、体の疲弊度が猛烈な勢いで加速していく。

しかし「マゾ界の富樫源次」と言われた持ち前のど根性で、尚も這い上がっていく。

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煮えたぎる油風呂に浸かって「へっへへ、いい油だったぜ」と言い放った男塾一号生富樫源次。

この男も「へっへへ、いい急登だったぜ」とニヤケながらも、あえて痛む足を引きずって己撮りを繰り返す。


かつて男塾一号生筆頭、剣桃太郎は言った。

「男塾の教科書には死という文字はあっても、敗北という文字はない。」と。

それはマゾの世界にも通じる名言なのだ。


そんな苦行を繰り返す男に、ついに天が微笑んだ。

雲間から太陽が現れ、樹間から光が差し込んだのだ。

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間もなく子守り日に埋もれる男に降り注いだ木漏れ日。

陽光が射すだけで、風景は一変して豊かで美しい姿を晒し出す。

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美しい。

晴れるとこうも美しいものなのか。

普段ほとんど晴れない僕としては、こうしてたまに日が射すと猛烈な感動に浸ることが出来る。


それはいつもは素っ気ない女が、突然見せる優しさのようなツンデレ的感動。

そして砂漠の真ん中で突然現れた、キンキンに冷えたビールのようなヨロコビ。

いつも何の為に日焼け止めクリームを塗っていたか疑問だったが、やっとUVを遮るチャンスが到来したのだ。


これは晴れ男や晴れ女には一生味わうことが出来ない悪天候男ゆえの特権。

ざまあみやがれ、晴れ男晴れ女め。


しかし、どっちが良いかと問われれば僕はやはり晴れ男になりたい。




何はともあれ、天気が回復傾向のようだ。

日の光を噛み締めながら本日の最高タイムを満喫しながら進んでいく。

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ああ、いいなあ。

最高だなあ。

足さえ痛くなければなあ。



僕の浮かれた気分を察知したのか、ここにきていよいよ右足が必死で痛みの信号を脳に送りつけて来る。

そして急登につぐ急登で、一歩一歩の体の重さがキング・ザ・100トンに重りを追加されていくような気分だ。

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マリポーサが言う通り、こいつは久々にいい血が見れそうだ。


やがて、本日何度目かの急登を登りきると、

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木々が無くなり、一気に視界が開けた。

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そして振り返れば、そこには大絶景が広がっていた。

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そろそろ足の痛みに堪え兼ねて「撤退しよう」なんて思っていた矢先に現れた絶景。

天気も回復傾向だし、こうなってくると山頂からの大パノラマが見てみたくなるのがマゾの性。

痛む足を引きづりながら、その景色に後押しされてさらに山頂を目指す。


しかしこれは毎度お馴染みの「一度は良い景色を見せておいて撤退をさせない」という神の絶妙な伏線。

毎度このパターンで山頂に着いて涙する男だが、やはり今回も運命には逆らうことが出来ずに突き進む。



体調は最悪だが、天気の回復によってホクホク顔で登っていく。

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ここからはいよいよ快晴のヴィクトリーロードが始まるのだ。

今シーズン最後の雪山にふさわしい、山頂からの素晴らしき大展望が待っているのだ。


でも後方から迫り来る不穏な気配が気になるな。

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まさかとは思うがあのガスだらけのモクモクさんはこっちに向かっているのかな?

何やら必死で僕に追いつこうという心意気が感じ取れるのは僕だけだろうか?


いや、まだ10時だぞ。

晴れのち曇りの天気予報では、曇るのは14時〜15時でまだまだ先のお話のはず。

気のせいに決まっている。



いよいよ雪も深くなって来て、ハードな雪中行軍は続く。

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そしてついに、目指すべき武奈ヶ岳の姿を捉えたぞ。

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すごく奇麗だぞ、武奈ヶ岳さん。

天気も良くて、あの山頂の向こう側に広がる琵琶湖と伊吹山はさぞかし美しい事だろう。

でもね。

あんたどんだけ遠いんだ。

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実はこの時間にはすでに山頂に着いている予定だった。

この時点で山頂に着いていれば、大絶景の大パノラマを満喫していたはず。

しかし重い体と痛い足とツッた脇腹のせいで、遅々として歩みを進めることが出来なかったのだ。

想像以上に時間をかけすぎてしまった。

でも曇り予定までまだ4時間もある。

もう一踏ん張り頑張ろうじゃないか。



ここからは一旦、ガッツリと高度を下げて行く。

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せっかくここまで苦労して高度を上げて来たのに再び下って行く空しさよ。

肉体的にはもちろん、精神的にも中々のダメージだ。


遥か先を見上げれば、アホみたいな急登をよじ登って行く登山者が確認出来た。

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正直、あそこまで行ってその急登を登って行く自信も体力もないぞ。

やっぱり無理があったか。

なんか天気が良くても、こうも足が痛いと全然楽しくないって事に今更ながら気付き始めているし。



しかしそんな弱気な僕に再び剣桃太郎が囁く。

「男塾の教科書には死という文字はあっても、敗北という文字はない。」と。


ありがとう、桃よ。

忘れかけていたマゾ魂を再び奮い立たせてくれたんだな。

まだまだ僕はやれるんだな。

マゾってもいいんだな。



やがて鞍部に辿り着き、

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見上げる先には武奈ヶ岳への急登入口。

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ついに本当の戦いが始まる。

マゾ界の富樫源次は心のドスを握りしめる。

そして胸に「闘」の文字を刻み付け、最後の戦いに向けて根性を振り絞った。

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「みさらせ、これがドMの根性じゃーっ!!」



この姿を多くの人が呆れた顔で眺める。

そしてやがてこう言うだろう。


「もうやめなさい」と。




武奈ヶ岳3へ 〜つづく〜


武奈ヶ岳1〜生贄初詣〜

Posted by yukon780 on 08.2013 武奈ヶ岳/滋賀 0 comments 0 trackback
育児専念元年。

男は元旦に「今年は大人しくする」と高らかに宣言した。


そして数日前には「新春ロンリーマラソン」によって全身破壊を達成。

見事に体中と足を痛める事に成功し、心身ともに「山に登りたい」なんて気力を奪う事に成功した。

これで大人しく正月を過ごせるはずだった。



しかし。

なぜこの男はこんな事になってしまったのか?

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足を引きずりながらも、なぜか一人苦悶の表情を浮かべながら雪山に攻め入って行く男の後ろ姿が確認された。

動けないはずじゃなかったのか?

大人しくするんじゃなかったのか?


一体男の身に何が起こったのか?

振り返ってみる必要がありそうだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


全身破壊の2日後。

すっかり動けず、病人のようになった僕の前に目を疑う光景が広がっていた。


天は見事なまでの日本晴れで空気は澄み渡り、なんと我が家から遥か遠くの御嶽山や中央アルプス・南アルプスの山並みが確認出来るではないか。

それは目の前に突然AKB48の全メンバーが全裸で現れたに等しい驚愕度。

こんな事は岐阜に嫁いで来て以来、一度もなかった怪事件だ。


それを見た途端、無理矢理沈静化させた僕の煩悩が大爆発。

次々と巻き起こる西部警察クラスの大爆発に、もはや心身のワナワナが止まらない。

そして「ハッ」と気付いた時には嫁に土下座している自分がいた。


「明日山に行かせてください。これが出産前の最後でございます。最後に一回だけ。すぐに済ませるから。ちょっとだけ、お願い。」と、まるで別れる間際に最後の一発を懇願する男のような情けない姿がそこに展開された。

そして粘り強い交渉の結果、いつものように「死んで来い」という暖かいメッセージを頂く事に成功。

生まれ来る我が子に是非とも見てもらいたい、父の逞しき一コマだ。



早速翌日の天気チェック。

大方どこもかしこも天気良し。

これほど選択肢がある状態はかつて無かったぞ。

僕の前にはタイプの女性(山)の写真がズラリと並べられ、雪肌の真っ白な美女が揃って僕をカモンな表情で誘惑している。

もの凄い優良店だ。


僕はその中で北アルプス「西穂独標」・中央アルプス「木曽駒ヶ岳」・比良山系「武奈ヶ岳」の三名に絞った。

もしかしたら今シーズンの雪山ラスト登山になるかもしれないから、絶対に失敗はしたくない。

写真の出来の良さに騙されて、いざご対面した際に二度見する事になっては目も当てられない。


しかしいくらなんでも3,000mクラスの「西穂独標」と「木曽駒ヶ岳」は気持ちの覚悟が追いつかない。

そもそも今僕は2日前の新春ロンリーマラソンで全身破壊ほやほやの状態。

そんな状態で挑んだら全身どころか人生破壊を達成する事は必至だ。


やはり何事にも順序というものがある。

いきなり3,000mに行く事は、付き合ってもいないのにいきなり相手に体を求めるような野蛮な行為だ。

ここはまず武奈ヶ岳で、デートから手を繋ぐまでを目的とした純朴なお付き合いから始めよう。


という事で、関西の人々の憧れの初心者クラス雪山「武奈ヶ岳」さん(1,214m)をご指名だ。

天気も晴れのち曇りで、曇るのは14時か15時頃。

早朝から攻めれば大快晴の山頂からの素晴らしき眺望が、僕を待っているはずだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌朝。

まるで16歳の初デートのような興奮が渦巻いていたのか?

なんと2時半に目覚めてしまった。


寝不足感は否めないが、これで早朝からのアタックが可能になって大快晴の山頂は約束されたようなものだ。

3時に家を出て、意気揚々とはるばる琵琶湖の裏側の武奈ヶ岳へ車を走らす。



そして6時過ぎ。

まだ真っ暗な葛川市民センターの駐車場到着。

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暗くて空の確認は出来ないが、おそらく雲一つない空が広がっている事だろう。

ワクワクしながら準備を整え、6時半に出発。

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雪国だねえ。

家も昔話に出て来そうな家が多くてとてもいい雰囲気だ。

空も白んで来たね。

見上げてみようか。

勝利の空を。

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お、おおぅ。

雲一つない青空と私は聞いて来ましたが、聞き間違えていたでしょうか?

なんでしょう、この不気味に空を覆いまくる重苦しい妖気は?

話が違うじゃないか。


「こんなはずじゃなかったのに。」

「なんて事なんだ。」


こうして出発からわずか2分で、早くも2011年と2012年度のボクデミー賞の流行語大賞が飛び出した。

絶対に快晴でなくてはならず、万全に万全を期したこのラスト雪山登山。

己の持つ負の力にただただ驚くばかり。

早くも深い深いため息でサングラスは曇りっぱなしだ。


まあ、基本的に僕は気象庁の天気予報の信憑性を東スポの河童記事程度としか認識していない。

いつも通りで、ある意味予報通りと思い込む事にし、唇をかみながら登山口へ到着。

IMGP0569_20130108101136.jpg

数十分前まではあんなにワクワクしていたのに、登山口ではもういつもの憂い顔での記念撮影だ。

万全を期しただけにその落胆っぷりは計り知れない。


そして彼を憂い顔にしているもう一つの原因。

右足の土踏まず周辺が劇的に痛いのだ。

それはもはや「捻挫」と言った痛み。

まだ何もしていないのに、早くも救助が必要な状態に追い込まれた。


人は車の運転中、知らず知らずの間に捻挫をする生き物なのか?

間違いなく二日前の全身破壊フルマラソンによる「疲労捻挫」の疑いが高い。



ここで男は心から悩む。

天気も話が違うし、足にも爆弾を抱えた状態で登って果たして楽しいんだろうか?

しかしせっかく苦心して手に入れたこの最後の雪山チャンス。

はるばる3時間かけてここまで来たのに。

それをまさかの「登山口撤退」という惨憺たる結果で終わらせていいものだろうか?

でも帰るんなら今じゃないのか?



こんな時は初心に還るが吉。

そもそも僕のような人間が登山を「楽しもう」などと考えた時点でおかしな話だったのだ。

僕にとっての登山とは苦行そのものでなければならなかったはず。

天気が悪い?足が痛いだと?

上等じゃないか。

お前はマゾだろう。

こんなヨダレが出るような環境は中々整わないぞ。

さあ、行け。

存分にマゾるが良い。



こうして男は何か大きな力に後押しされ、その痛む足を武奈ヶ岳に向けて踏み出した。



目標は下山後に、ここにある神社で初詣をする事。

この登山口から神社に行けばものの5分とかからない。

そこをあえて8時間かけて山頂経由での初詣を目指す。


これはそんな男の修行初詣物語。

安産祈願の為、男はその身を生贄として武奈ヶ岳に差し出す時が来たのだ。



武奈ヶ岳2へ 〜つづく〜


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