常念山脈北上野郎3〜燕岳編・銀座のマゾの物語〜

Posted by yukon780 on 28.2013 常念〜大天井〜燕/長野 0 comments 0 trackback
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銀座のネオン街の入口で立ち尽くす男。

この先に待ち受けるは可憐な夜の蝶たちか?

それともハードなぼったくりSMバーなのか?



男はいよいよ「表銀座コース」に合流し、さらなる常念山脈北上を続ける。

目指すゴールは北アルプスの女王「燕岳(つばくろだけ)」(2,763 m)だ。


そしてついにおぎやはぎとゲリMの「テン泊チェリーボーイズ」との合流の時も近づいて来た。

実は燕岳への道の途中にある「蛙岩(げえろいわ)」にて、彼らとは感動的な合流を果たす予定になっている。

北上する僕に対し、彼らは燕山荘から少し南下して出迎えてくれるのだ。

待っていてくれる仲間がいるって事は本当に心強いものだ。


さあ、果たして北アの女王様は微笑んでくれるのか?

それとも強烈な鞭でビシバシと攻撃してくるのか?

どっちにしてもたまらない。


常念山脈北上野郎最終章。

靴擦れ限界男のザギン豪遊物語。

常念〜大天井岳でけちょんけちょんにやられた鬱憤を晴らす時。


そう、やられたらやり返す。

マゾ返しだ!


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早朝4時。

僕のお気に入りの目覚ましアラーム音「テントを叩く雨音」が鳴り響く。

目覚めて2秒で絶望感を味わえるという実にお得なアラーム音。

もちろん僕の第一声は深い深いため息。

爽やかな朝がやって来た。


空しくテントの前室でメシ。

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湧かしたお湯が足らなくて、強烈アルデンテパスタと猛烈濃厚スープの二品。

朝一からやる気がごっそりと奪われていく。


そんな時はご来光を見て元気になろう。

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眩しいなあ。

登山の醍醐味だよね。

やっぱり山の朝はご来光を想像するに限るね。



ひとしきりご来光を頭の中で堪能し、さっさと濡れたテントを片付けて出発。

さあ、今日も張り切って北上を続けようか。

さわやかな朝すぎて、かつて無いほどに希望と元気に満ち満ちた出発写真だ。

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彼がこんなにも爽やかな表情なのは、もちろん今日もマムートさんが朝から絶好調だからだ。

前日痛めた足が一晩寝ただけで回復するはずも無く、靴を履いた瞬間から痛みが襲いかかるというスピーディーな対応。

プレイボール直後の一投目を、相手の先頭打者にいきなりライトスタンドに運ばれた気分。

もう誰もマムートさんの勢いを止める事なんて出来ないようだ。


しかしそんなマムートさんとの旅は恐らく今日で最後。

彼との別れを惜しみながら、精一杯この痛みを味わいながら今日一日をがんばるとしよう。



さあ、いよいよ常念山脈も本日から「表銀座コース」に合流だ。

「表銀座コース」とは槍・穂高を眺めながら縦走する北アで大人気のコース。

そこをあえて「槍・穂高に背を向けて逆走する」という、実に不可解な行動を開始するマゾ男。


さあいよいよ憧れの表銀座。

絶景を堪能しながらの素敵な稜線散歩タイムのスタートだ。

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ほほう、これが噂の銀座ですか。

随分霧にまみれた世界なんだね。

ネオンの灯りすら見えないが、ちゃんと営業しているのか?


しかし前方を見ると、続々と霧の中にご入店していく常連客たち。

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僕と同じ数少ないザギン逆走メンバー達。

本当の銀座での遊び方を知っている小粋な奴らだ。


さあ、いよいよ開店の時間がやってきた。

静かに霧のシャッターが上がり、松本の街が現れる。

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槍・穂高と逆の方が見えてもそんなに嬉しくはないが、これも銀座のツウな楽しみ方。

快晴で絶景のザギン遊びなんて若造のする事。

ここから先は大人の世界だ。


そして目の前のシャッターが開き、ついに眼前に真の銀座の世界が広がった。

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ついに憧れの大都会。

マムートさんを同伴してのザギン遊びのスタートだ。


さすが一等地だけあって、登り調子のマゾなお店がひしめきあっている。

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あのお店なんてハシゴつきで随分とオシャレだし。

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ワクワクするなあ。

足を怪我している僕にも優しい設定の街だね。


天気は悪いけど、これだけ前が見えれば僕としては十分に大満足。

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昨日に引き続き穂高の景色は見れないけど、見たくもない前方のグッタリするほど長大な光景だけはハッキリと見える。

こいつは今日も精神的な快感に浸れそうだ。

待ってろよ北アルプスの女王様。

今甘い声で歌ってやるから、そこでちゃんと「銀座のマゾの物語」を聞いてメロメロになっているがいい。


さあまずはこのお店にご入店だ。

気さくなサービスがモットーの「スナック喜作」だ。

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この表銀座ルートを切り開いた男・小林喜作。

まさに彼は「銀座の父」。

まずはこのお店で今後の運勢を占ってもらおうではないか。


しかしさすがは占いの名店。

その敷居の高さは半端ないものがある。

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そして念願の占い開始。

喜作は言った。

「ツバメで裏切られ、やがてオナラに救われるだろう」と。

この時は何の事かさっぱり意味が分からなかったが、やがてこの占いは的中する事になる。


スナック喜作を出ると、素敵な銀座の稜線メインストリートへ。

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やはり人気コースだけあって実に歩きやすくて、天気がよければ最高の稜線なんだろう。

しかもよくよく目を凝らしてみると、なんと早くも仲間のいる燕山荘の姿が見えるではないか。

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昨日の「永遠に現れない大天荘」の事を考えたら、これは今日は楽勝なのか?

しかし実はこれ、一旦油断させてからじわじわと苦しみを与えるという女王様の作戦。

とある友人の登山心得をここに記載しておく。

「あると思うな山頂、あると思うな山荘。」

気を抜いたら、あっという間に女王様のムチがしなりまくるぞ。


よし、じゃあ次はこの「ラウンジ・水晶の館」というお店にご入店だ。

このお店は眉目秀麗な女性が多く在籍しているという噂。

特に水晶岳子さんという子と鷲羽岳子さんという子は、日本百名ホステスに選ばれたほどの奥ゆかしい美女らしい。

その美顔を拝む為に多くの登山者がこの表銀座を目指してくるのだ。


店に入ると、僕の前にズラリと美女が並んでいた。

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顔が...見えないじゃない。

雲で隠れてどの子が水晶さんでどの子が鷲羽さんかわからないぞ。

なんだ?ここは顔出しNGのお店なのか?

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まあいいさ。

それはそれで興奮するってもんだ。

やはり銀座の名店だけに、ツウのツボを心得ている。



その後、次のお店「パブ・魔界村」へハシゴだ。

お店の山ガール風ホステスさんに誘導されるがままに店の奥へ。

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その雰囲気から、杭が全部「墓標」に見えてしまう。

まるで超人墓場に迷い込んだかのような気分。

こいつは随分とミステリアスなお店だ。


そして陽気なレジャー感ゼロの、悲壮感漂う魔界村的なこの雰囲気。

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どこまでもどこまでも続く荒々しく長い道のり。

はるか先で待つ女王様の所まで足が持つ気がしない。


と、そんな感じでひるんでいると誘導してくれたホステスさんがあんなに遠くに。

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しまった。

あの子は誘導だけしておいて頃合いを見て退出したのだ。

これは店の奥にいる強面の男達が出て来て「ポッキー10万円」の請求書を渡してくるパターンじゃないのか?

急いで彼女を追いかける。

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するとここで無情なる急降下。

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随分と高度を下げて行くな。

まさかまさかとは思うが、これを下りきった先には...


やっぱりガッツリと登らされるのね。

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見事に下った分の標高をぼったくられてしまった。

これが銀座の現実。

どんなに遠くを見つめても、一度失った標高は戻っては来ない。

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さあ、がっつり登ってまた一からやり直しだ。

やられた分はやり返すのが僕の流儀。

見事に登りきってこの大マゾ常務を土下座させてやる。

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でも何気にここまでのザギン豪遊のせいで、すっかり僕の体力は奪われていた。

加えて足の痛みはスペシャルな雰囲気。

登山靴で固定しているから何とかなっているのであって、靴を脱いだらとても立っていられる気がしない。


でも地図を見ると、恐らくさっきのガッツリ下った所がネーミング的にも「大下りの頭」だったんだろう。

そう考えると、ここを登りきった所に「蛙岩」があるはず。

蛙岩はテン泊チェリーボーイズとの合流地点。

あと一踏ん張りだ。


足を引きずりながらヒイヒイと登って行くと、上の方に人の姿が見えた。

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さてはあれはチェリーボーイズ達じゃないのか。

これには嬉しくなって元気100倍。

きっと矢作Cあたりが、あそこから一眼カメラで僕の勇姿を撮りまくってくれている事だろう。

いよいよ感動の合流が近づいて来ている。


振り返ればガッツリ下ってガッツリ登って来た道のりが見て取れる。

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そして吐きそうになりながらも、なんとか仲間達がいる蛙岩へ。

あと少しだ。

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着いたぞ!

蛙岩だ!

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お?

気のせいだろうか?

何やら「大下り」って書いてある気がするぞ。

うそでしょ。


僕が地図を見て想像していたより全然進んでいなかった事が判明。

よくよく考えてみれば僕は逆走しているからこその大急登だったわけで、正規ルートから見ればここからが「大下り」の始まりなわけだ。

もちろんまだここは蛙岩ではないから、仲間達の姿はカケラも無い。


この時のショックは相当にヘビーなものだった。

おまけにこの時点で随分と風が強くなって来る始末。

あまりのショックさで、意図せずにジョジョ立ちしてしまっている自分がいた。

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もう飲めない。

お金もないよ。

やっぱり銀座は恐ろしい街だ。


見事にポキポキに心が崩壊して行く限界男。

そして引き寄せられるように次のお店に無理矢理ご入店。

そこは悲しみの男達が集うバー「レイニーブルー」。

店内ではしとしとと雨が降っているという、小洒落た演出が売りのお店だ。

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この打ちひしがれた段階での「雨」のご登場で男のブルー度は加速して行く。

店内に流れる音楽は中島みゆきか森田童子ばかり。

僕の感情の中から「楽しさ」という言葉が完全に消え失せて来た。


もうカメラすらザックにしまって、ただただ雨に打たれながら進んで行く。

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このバーにいた数十分の記憶がごっそり無くなっている。

地味だが、この旅の中で一番キツかった時間帯だ。


やがて多少雨は上がってレイニーブルーを出る。

すると目の前に異様な岩の光景が。

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おお!

蛙岩だ。

蛙岩に着いたぞ。


時間も何気に約束した時間通りに到着した。

皆はどこだ?

このボロボロになった僕の心を癒してくれる仲間達はどこだ?

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いないぞ...。

というか人の気配すら感じない。



銀座に男の悲痛な叫び声がこだまする。

「チェリィィィーーー!」

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その声はやがて「UURRRYYYYYーーー!」となり、彼は石仮面に心を支配された。

正直薄々は感じていたんだ。

奴らはこの天気でわざわざここまで南下して来ないだろうと。


まあいいさ。

恐らく彼らは燕山荘でのんびり紅茶でも飲みながら僕が来るのを待っているのだろう。

今行くからもう少しだけ待っていてくれ。



こうしてよろよろと蛙岩を後にする男。

彼の心を反映しているのか、辺りの暗い雰囲気はどんどん重さを増して行く。

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ついに銀座最後の名店「SMクラブ・燕の巣」に足を踏み入れたのだ。


本来は楽しいはずの表銀座ルート。

晴れていれば大絶景を見ながらの登山者憧れの縦走路。

しかし今僕の目の前にあるのは大絶望のみ。

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前方にちょっと大きな岩とか見ると「山荘か?」と色めき立ち、岩だとわかって再び絶望っていうのを何度も繰り返す。

いよいよ幻覚に支配され始めて来たマゾ太郎。

その全身全霊で、女王様の過酷なムチをノーガードで浴び続けるハッスルタイム。

ピシッ「おいブタ野郎!もうギブアップか!」
ピシッ「まだ行けます!」
ピシッ「行かせてくださいだろ!」
ピシッ「スイマセン!」

いよいよディープな銀座の世界に突入した模様。

あまりの辛さとあまりの足の痛さで男のニヤニヤが止まらない。


やがて男が三角木馬で痛めつけられ始めた頃。

入店後何度目かの山荘の幻覚が。

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いや、あれは幻覚なんかじゃない。

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燕山荘だ!


ついに男は燕山荘に到達。

見事に銀座の深い夜を抜け出したのだ。


さあ、いよいよチェリーボーイズ達との感動の再会。

これだけひとりぼっちで切ない思いをした分、その感動もひとしおだだろう。



おや?

誰もいないぞ。

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燕山荘は渋滞が起きるほど大人気の山荘と僕はうかがっていたが。

渋滞どころか人間がいないぞ。

チェリーボーイズは?

矢作Cは?小木Kは?ゲリMは?


あ、

ああ...

ああああ.....




矢作Cィィィッッーー!

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石になってるじゃないか!

待たせすぎてしまったのか?(石化前の矢作C↓)

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すまない。

ひょっとしてさっきの蛙岩(げえろいわ)にあった岩はゲリMだったのかもしれない。

小木Kは恐らく失踪でもしてしまったんだろう。


悪い事をした。

でも今は8時半。

約束の時間通りにここまで来たから、そんなに待たせたつもりは無いんだが...。



すると今まで全く繋がらなかった携帯が圏内に。

そしてLINE上に呟かれていた矢作Cのメッセージをピロリと受信。


「テンコウワルシ。先に下る。第3駐車場で待つ。」



ほほう。

こういうのをなんて言うのかな。

「おいてけぼり」って言うんだっけ?

しかもこのメッセージ入れた時間が「6時26分」って。

まだ銀座の最初の店「スナック喜作」に入店したくらいの時じゃん。

2時間も前に早々と見捨てられてるじゃないの。


チェリーボーイズ達の裏切り奥義「燕返し」炸裂。

あまりにも早すぎたチェリー達の撤収劇。

ショックに打ちひしがれ、雨に打たれるがままの孤高の限界マゾ野郎。



しかしそんな哀れな男の元に、突然救世主が現れる。

それがこの男。

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なんと彼はこのブログの数少ないマニアックな読者で、今回の燕行きを知ってわざわざ白馬から応援に駆けつけてくれたのだ。

しかも早朝真っ暗な内から、この雨の中ここまで駆け登って来たというではないか。

早々と雨天撤退を決め込んだチェリーとは真逆のドM男。

当初は「落雷雨男N」というネーミングにしようと思ったが、初対面なのに失礼があってはいけないので今後はとりあえず「屁こきN」と呼ぶ事にする。


彼は基本的に屁を推進力にして山を登るタイプの人で、下山後もメシ屋で豪快に屁をこいていた。

おかげでこんなネーミングになってしまったが、本気で失礼だったら急いで訂正するのですぐにご連絡頂きたい。

最初のミスだけでずっと「ゲリM」という名前をつけられてる男の前例があるだけに、彼には早めの挽回を期待したい。


しかしこの屁こきNのおかげで、折れかかった心が随分と救われた。

こうして僕は予定外だったパートナーを得て、改めて燕岳の山頂を目指す。


北アに詳しい屁こきNは、「あれがイルカ岩です」と言った具合にガイドまでしてくれる。

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実に有り難い。

ただ惜しむらくは彼も極端な雨男。

せっかく来てくれたはいいが、さらに雨足が強くなって景色は完全に真っ白になって来てガイドもしようがない状況に。

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負のパワーが混ざり合い、現場は荒れ模様。

まさに超人タッグ編で言う所の「ヘル・ミッショネルズ」の二人。

この二人が組めば磁気嵐クラッシュだって容易に繰り出せそうだ。


そして陽気に二人で「己撮り」。

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こんな茶番に付き合ってくれるとはとても良い人だ。

しかし何気にこの時点でおかしな所が見受けられる。

通常燕山荘で荷物をデポして山頂往復するのがセオリーなのに、なぜか彼らは重い荷物を無駄に背負ったまま突き進んでいる。

もう火中の栗マゾを拾いにいく気満々だ。


やがて山頂に到達。

ついに三番目の最終峰「燕岳」制覇です。

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当然いつも通りの白背景。

ついに長過ぎた常念山脈北上の旅が終結。

もちろん360度の絶景を前に男の雄叫びが止まらない。

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長い長い旅路の果てに辿りついた最後の山頂が、まさかこれほど無感動なものだとは。

あまりにも空しい。

マラソンの有森さん風に言えば、「初めて自分で自分を哀れんでやりたい」といった残念な局面だ。


しかしまだ自分を哀れんでいる場合ではない。

ここからはまだまだ長い長い下山が始まるのだ。

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北アルプス三大急登の合戦尾根を下って行かねばならんという延長戦。

足に絶望的な痛みを抱える男にとって、もはやそれは「リンチ」に近い酷な仕打ちだ。

ここからはざっとダイジェストだけど、この下山だけでたっぷり3時間歩き続けている事を忘れずに見ていただきたい。


三大急登の下りで早くも足腰が砕け散る男。

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そして雨が上がったからカッパを脱いだら即座に雨に降られる男。

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やがて精根尽き果ててリアルにうなだれる男。

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そして階段地獄で足の痛みは限界を遥かに超えて、膝も大爆笑を始める男。

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最終的には放心状態のC3-POに成り下がり、

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男は別の世界に旅立って行った。

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目も当てられない常念山脈北上野郎の末路。

そしてそんな彼の苦しみを見事な手腕で演出したマムートさん。

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さようなら、マムートさん。

もう二度とお前を履く事は無いだろう。

そしてさようなら、マゾ男。

8月9月の鬱憤を必要以上に晴らす事ができて、無事に成仏できたことだろう。


ゴールで息を引き取った彼の頭上。

役目を終えたモクモクさんが「ぱあああああっ」と分散して行き、嫌みすぎる青空が広がった。

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もはや何も言うまい。



そしてもう歩けなくなった僕を屁こきNさんが車に乗せてくれて、チェリーボーイズ達が待つ第3駐車場へ。

そしてついに、マゾ野郎とチェリーボーイズ達が感動の合流を果たしたのだ。

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燕岳で落ち合うはずが、最終的には「ゴール合流」というまさかな結末。

しかも一人メンバーが増えてるし。


あまりにも遅すぎたこの全員集合。

今回の旅はチームプレイのつもりだったが、結果ただの単独行だった気がしてならない。




旅は靴擦れ世は情け。

夏の無念は常念で。

天井越えてザギンで豪遊。

目指すは仲間が待つ燕の巣。



嗚呼、やっぱりマゾはいいもんだ。

これだからやめられないね。


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常念山脈北上野郎 〜完〜


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常念山脈北上野郎2〜大天井岳編・おもてなしの嵐〜

Posted by yukon780 on 24.2013 常念〜大天井〜燕/長野 4 comments 0 trackback
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お馴染みの白い世界。

そこで雄叫びを上げる一匹のマゾ男。

これは悦びの叫びなのか?

それとも限界疲労の末の断末魔なのか?



常念山脈を北上して、仲間達が待つ燕岳を目指す「男一匹マゾ行脚」。

前回は思ひ出の常念岳で感動の絶景を味わった。

しかしそれと同時に、彼はここまでの長い行程で早くも限界点に到達。


疲労度が著しい徹夜明けの体。

もうこの時点でかれこれ30時間近く起き続けている。

そして勢いを増すマムートさんの洗礼。

足の痛みは猛烈な状況となり、いよいよ怪我人の様相を呈してきた悲壮感満点男。

この時点で登山開始から6時間の時が過ぎていた。


そんな状態で男は次なるステージへ突入。

目指すは常念山脈最高峰、2,922mの「大天井岳(おてんしょうだけ)」。

でかいくせに、地上からはまるでその姿を見る事が出来ない実にミステリアスなる山。

そんな大天井岳に、岐阜の汚点将軍が挑む。


常念山脈北上野郎第二章。

大天井岳への長い長い戦いが幕を開けた。


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振り返ると先ほどまで戦っていた常念岳への急登が見て取れる。

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この余計な常念岳ピストンで随分と体力と時間を消耗してしまった。

そして改めて前を向き、これから進むべき道を見る。

目指すべき大天井岳への稜線の入口は、見事に霧のベールに包まれたままだ。

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この先、一体どうなってなっているんだろうか?

そう呟く男の後ろ姿には、蓄積された疲労感がたっぷり滲み出ている。



実は彼はこの時、さっき勢いで飲んじゃったビールの事ですっかり後悔にまみれている。

もうこの時の男の脱力感と言ったら凄まじいものだった。

やる気とは裏腹に、体がもうお休みモードに突入しようとしているのだ。

そりゃ30時間起き続けて9時間歩き続けた体に、いきなりビールを投入したら誰だってそうなるさ。


体は「もう眠らせてくれ」と訴えてくるが、頭はしっかりと「前進だ」と息巻く。

やる気と体のバランスがこじれた典型的な中年思考。

このセルフねじれ国会のせいで、中々士気が上がらない。


しかし何とか大天井岳まで行けるだろうという勝算はあった。

実はここからはいよいよ快適なる「稜線散歩」。

大してアップダウンもないだろうし、疲弊しきった体でもなんとか行けるはず。

やっとここからが優雅な縦走ウォークが始まるのだ。


さあ、両サイドの絶景を見ながらの起伏の無い快適稜線散歩のスタートだ。

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何事だ?

霧を抜けると両サイドがとってもジャングリーな「大急登」が始まりやがったぞ。

緩やかなる稜線はどこに行ったんだ?

霧を抜けて、胸突き八丁に戻ってしまったのか?


のっけから凄まじい勢いで襲いかかる大天井岳への道。

胸突き八丁を通り越したマゾ泣き十丁。

稜線上で繰り広げられたまさかの急登パラダイス。

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体がフラフラするのは疲労のせいなのかビールのせいなのか?

今にもさっき飲んだビールをリバースして、再び切れ味鋭いのどごしを堪能できてしまいそうだ。


そんな状態の男に対し、どこまでも容赦のない急登攻撃は続く。

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まずいぞ。

辛すぎて泣きたくなってきた。

誰だ?

稜線に出れば起伏の無い道が続くと思っていた浅はか野郎は?


それでも持参したエネルギージェルをこまめに補給しながら、何とか踏ん張って進んで行く。

そして長い長い急登タイムが終わると、やっとこさそれらしい光景になってきた。

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山腹を巻いて長大に伸びて行く素敵な稜線散歩道。

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これだよ。

求めていたものはこんなスケール感のある稜線散歩だったんだ。


急登で疲れきってはいたが、すっかりホクホク顏で突き進む。

辿ってきた道を振り返ればこの壮大さ。

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これぞ北アルプス。

はるばる8時間歩き続けてきたからこそ出会える光景。

僕は正直山頂を落とす事よりも、こういった稜線をずっと旅したい人間。

こいつは猛烈に気分がよろしい。

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それにしても登山者がとてもまばらだ。

さっきの常念岳までは大量に人がいたが、こっち方面に向かってくる人間が劇的に減った。

やはり常念山脈北上はマニアックな部類のルートなのか?


その後も延々と延々と延々と稜線を歩いて行く。


それにしても。


それにしてもだ。


とにかく長いぞ!

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確かに僕はこういった稜線をずっと旅したい人間だと言った。

しかしそれも時と場合によるという事に気がついた。

体調不良の怪我人限界状態で歩いても、ただ辛いだけだという事を知ってしまったのだ。

出来れば体調万全の晴れた日に、ちゃんとした靴を履いてこの稜線を味わいたかった。


この時の僕の神経は、景色よりもいかに足の痛みをごまかすかに焦点が置かれていた。

もはやポールで体を支えるのがやっとの疲れきった逃亡兵だ。

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ここをずーーっと歩いてきて、この先もずーーっと歩いて行かねばならない。

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そしてこの遥か先に現れたどでかい山塊。

よくよく目を凝らしてみれば、信じがたい光景が目に入る。

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さてはあそこもこれから行く道なのかな?

そしてその道を辿って行くと、さらに延々と続いて行く道らしきものが。

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しかもせっかくさっきの急登で稼いだ標高を、再びここから下降してからの再急登ルートが見える。

挙げ句、ゴールの大天井岳の山頂も大天荘の姿も確認できない。


この絶望的な「距離感」を目の当たりにし、ついにポッキリと心が折れた男。

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現実を突きつけられ、ガックリと肩を落とす限界男。

もうこの時点で倒れ込みそうな疲労感と足の痛み。

そしてついに彼は滝川クリステル風に、笑顔でこう呟いた。

「コ・ロ・ス・キ・カ」と。


しかしこのイバラの道を選んだのは自分自身。

よせばいいのにあえてマムートさんを履いてきたのも自分。

そして不眠状態で登り出しちゃったのも自分。

勝手に4Lの水担いで急登を楽しんでしまったのも自分。

それで行かなくてもいい余計な常念岳ピストンかましちゃったのも自分。

さらにはビール飲んで勝手に燃え尽きたのも自分自身だ。


まさに自業自得なロンリーマゾプレイ。

じわりじわりの耐久型SMの館。

ここは自分自身のアホさと向き合うのにちょうどいい場所のようだ。


それでも足を進めて行く不屈の滝川マゾシテル。

一体この先、どれほどヘビーな「おもてなし」が待ち受けているのか。

頼むから、これ以上のおもてなしはやめていただきたい。

五輪を通り越してご臨終になってしまう。


ほんと...しんどいや...


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マゾ野郎が限界のピークに到達していた頃。

ついにチェリーボーイズ達が合戦尾根を乗り越えて、無事に燕山荘に到着した模様。

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合戦尾根中の写真が見事に一枚も撮られていないという事から、彼らの余裕の無さが伺える。


しかもこの時、ゲリMがFacebookにまさかの「頂上でまったり」という投稿をしていた事が後に発覚。

まだここは頂上じゃないのに、さも頂上を落としてやったかのような口ぶり。

とんだ粉飾投稿野郎だ。


恐らく彼はこの燕山荘に辿り着いて燃え尽きてしまったんだろう。

満足してしまったのはわかるが嘘をついてはいけないぞ。


彼らには彼らの戦いがあるようだ。


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せっかく稼いだ高度を延々と下って行き、鞍部で大休憩するマゾ。

振り返れば、心ポッキリポイントからトボトボと下り続けてきた道が。

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こうして見ると、がっぽりとえぐれた崖の先にはモクモクさんが常時待機中。

「少しでも浮かれやがったらいつでも出て行く準備はできているぞ」と言わんばかりのお姿だ。

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おかげでせっかくの稜線なのに、全く景色が見えやしない。


でも今回ばかりはモクモクさんのお力を借りるまでもなく、浮かれる余地が見当たらないほどの限界感。

モクモクさんには常念山脈のヘリに張り付きながら、じっくりと高見のマゾ見物を決め込んでいただこう。

おかげさまでこの先の視界は良好。

ずーっと続く急登と、どこまでも続く道のりが丸見えで精神に大きなダメージが突き刺さるね。

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とにかく無心で登り続ける男。

「まだまだ登ります、長い坂」

もはや気分はカネ美食品の新人社員研修CMだ(東海地区限定)。

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しかし地図を見る限り、この道を登りきった先にゴールの大天荘があるはず。

長く辛い戦いだったが間もなく終わりは来るのだ。


そしてヒイヒイ言いながら、やっとこさこの長過ぎた登りの終わりが見えてきた。

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いよいよあそこを越えたら大天荘だ。

実にここまで長かった。

やはりどんなに辛くても、終わらない苦しみなんて存在しないのだ。

一歩一歩歩みを進めれば、必ずゴールに辿り着けるのだ。


さあ、ついにゴールだ!

そしてビールだ!

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あれ?

山荘は?

ビールは?



僕は恐る恐る標識が指す先を見た。

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おお...ジーザス...。


ゴールの山荘どころか、まだまだ延々と続いて行く常念山脈さん。

大天井岳どころか、あると思っていた山荘の姿すら見えないという絶望。

これにはたまらず座り込んでしまうマゾ太郎。

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もう...だめだ...。

せめて視界の中に山荘が見えればまだ救いはあったのに。

おもてなしが過ぎるぜ、大天井岳。


そしてふと気付けば、どこを見回してもこの広大な空間に人間の姿は僕一人だけ。

この時薄々気がついてしまった。

「なるほど、だからこのコースはこんなに人気がないんだね」と。


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マゾ野郎がマットに沈んでいる頃。

ついにテン泊チェリーボーイズ達が念願の筆下ろし。

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大人気の燕山荘テント場にて、密集するテントの中での山岳テント初体験。

ここでゲリMが信じられないチェリーミスを連発する。


なんと彼はテントを固定するための「ペグ」を忘れてくるという暴挙に出たのだ。

しかも固定用ロープも忘れて来たという事実が発覚し、風の強くなるであろう稜線上テント場にて「テントを固定しない」というビッグチャレンジ。

もし強風が吹けば、たちまちゲリMのテントは美しく宙を舞って常念山脈の谷底へ吸い込まれて行くだろう。


結局彼はテント内に直に石を置いて無理矢理固定。

これにて彼のテンションは急激に下降して行ったと言う。

挙げ句他のソロテントの二人に対して「ねえ、そっちのテントで寝ていい?」などという弱気な発言。


そしてこのゲリMのテンション急下降と、慎重派の矢作Cの「天気悪いから山頂行くのやめよう」という早すぎる決断によって彼らは早々と燕岳登頂断念を決定。

なんと信じられない事に、山頂を目の前にして戦意を喪失してしまうというまさかの早漏っぷり。


彼らには彼らの戦いがあるのだ。


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一方、ようやく重い腰を上げて、再びヨロヨロと歩き出した男。

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彼は断念したくても、まだテント場に到達してないので断念すらできない状況。

まさか燕組が早々とリタイアしているなんて思ってもいない。


ここからは本日何度目かのスペシャルな登りのお時間。

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振り返れば、足を引きずりながら僕が辿って来たおもてなしコース。

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そして相変わらず、観客のモクモクさんがニヤニヤしながら山脈のへりにへばりついてこっちを見ている。

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急がないと、こいつらが溢れかえって僕はあっという間にモクモクに飲み込まれてしまう。

さらに後方を見れば、さらに巨大なモクモクがこっちに睨みをきかせている。

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非常に危険な香りのするモクモク。

間違いなくこんな奴らが中にいるはずだ↓

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奴らは着々と僕にカミナリを直撃させる計画を練っている。

こんな逃げ場の無い稜線上でのサンダガは痛恨すぎる一撃になること必至。

しかし急ごうにも足取りが重いのなんのって。

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それでも歯を食いしばって登る。

間もなくこの長い登りの頂点だ。

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長過ぎたぞ。

これを越えたらやっと山荘が出てくる。

もう山荘見た瞬間に感動で泣いてしまいそうだ。


そしてついに登りきった。

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お。

おい...。

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山荘は?

大天井岳はどこだ?


いやいやいやいや。

うそうそうそうそ。

絶対ウソだよ。


ここにきてまさかまさかの状況。

またしても山荘も大天井岳の頂上も見えないという絶望マックス。


これを見た時。

力なく大地に倒れ込んで行く男。

ついに彼は天に召されてしまったのだ。

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こうして彼は、お花畑が満開の天井の世界へと旅立った。


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マゾ男が息を引き取っている頃。

山頂断念チェリーボーイズ達は陽気にテント場を楽しんでいた。


こんな場所でまで、矢作Cお得意の台湾ラーメンが調理されていたのだ。

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ビールも飲んじゃって、完全に山頂に行く気の無い男達。

そもそもこんな凝った食材よりも、テントのペグを持ってくるべきだろう。

時空を超えて声を大にしてツッこんでやりたい気分だ。


しかし、彼らには彼らの戦いがあるのだ。


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どれくらい気を失っていただろう?

何やら綺麗なお花畑の中を歩いている夢を見ていた気がする。


男はふらふらと立ち上がり、再び歩き出した。

振り返ると実に雄大で長大な縦走路。

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このフルコースマゾ料理は今の僕にはスパイスが利き過ぎている。

そしてもういい加減「デザート」かと思われた時に現れた「吉牛」クラスの重い追加料理。

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もうくどすぎてとても食べきれない。

大天井岳へと続くこの天井知らずな嫌がらせの数々。

でも無理矢理でも食べないと要救助者になってしまう。

とにかく歩き続けるのだ。

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一体僕は登山口からどれほど歩き続けているだろう?

もうかれこれ10時間以上経過している。

そして昨日の朝、出勤の為に起床してから実に33時間寝ていない。


意識が朦朧として来た。

もうフラフラしすぎて酔拳の達人のような動きになっている。


なんだかもう7年くらいこの山脈を彷徨っている気分だ。

さては下山したらもう東京オリンピックが始まってるんじゃないのか?

そしてヒゲボーボーの僕の前に見知らぬ中学生くらいの男の子が現れて、「おとう...さん...。おとうさんなの?僕だよ。りんたろうだよ!」とか言ってくるんじゃないのか?


そんな事を考えていたら、はるか前方に山頂のようなものが見えて来た。

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ようく目を凝らしてみると、何やら人影が見える。

これは真実か幻覚か?

もしこれが現実で、もしまた裏切られるとショック死は免れない。

僕は慎重な心構えで、足早に先に進んだ。

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おお。

おおお!

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終わる。

ついにこの長い一日が終わるぞ。

もう「たけしの挑戦状」くらい、永遠にクリアできないと思われたこの戦いがついに終わるのだ。


こうしてやっと男は大天井岳直下の「大天荘」に辿り着いた。

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一の沢から登り続ける事11時間。

不眠靴連れ男の「初日」が終わった。

そう、これはまだ初日なのだ。



早速受付でテント場の受付。

そして「大絶景」を目の前にした極上のポジションにテントを設営する。

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目の前に広がる穂高連峰の勇壮な峰々。

何度見ても、ただただ溜め息が出てしまうほどに感動が止まらない。

そしてそんなパノラマ絶景を堪能しながらの勝利のビール。

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こんな雄大な景色を前にするとビールの味もちょっとしょっぱいな。

目から溢れ出るエキスが口に入り込んで、ビールもオシャレに「ソルティビール」になったみたいだね。


でもそんな感じで惨めにビールをちびちび飲んでいると、思いがけない使者からささやかなる癒しのプレゼント。

おわかりになるだろうか?↓

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ウォーリーを探せ並にとけ込んでいるが、なんと雷鳥の群れがご登場。

景色が絶景すぎて、すっかりブルーになってる僕を慰めに来てくれたのだ。

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実に素晴らしい体験。

雷鳥さんにまで気を使わせてしまったようだ。


そんな時、テントの中から「お前は一人じゃないぞ」という声が。

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なんと「ずっとひとりぼっち」だと思っていた僕に仲間がいた事を発見。

テントの中に隠れて、家からずっと一緒について来てくれた「カナブンさん」だ。

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僕は一人じゃなかったんだね。

しかし気付いた時には、すでにこの戦友は息を引き取っていた。

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ありがとうカナブンさん。

お前の死は無駄にはしない。

ここまで来たら、限界越えてるけど意地でも大天井岳を落として来てやる。


こうして僕は、もう休めば良いのに大天井岳の山頂を目指して歩き出す。

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カナブンさんの分まで必ず登頂を成し遂げてみせる。

きっと燕岳の奴らも今頃は登頂を果たしている事だろう。

僕も負けてられないぞ。(※もちろん早々と登頂断念しているなんて思ってもいない)


するとこの段階で、さっきまで高見のマゾ見物を決め込んでいたモクモクさんが「ここが勝負所だ」とばかりに溢れ出して来た。

ふと振り返ると、もうすでに僕のテントが吸い込まれている。

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急げ。

奴は大天井岳ごと僕を飲み込んで抹殺する気だ。


やがて大急ぎで登りきって、ついに大天井岳の山頂へ。

長い長い初日の、真のゴールに到達だ。

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360度の大絶景をバックに歓喜の絶句。

カナブンさんの分までやりきった感動の登頂シーン。

嗚呼!息をのむほどの穂高連峰の美しさよ!

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僕はこの感動の絶景を必死で目に焼き付ける。

はるばる無理して11時間かけて登って来た甲斐があったってもんだ。

興奮が止まらない。

登山って楽しい。

こんな感動があるからやめられないよネ...。




そして一気に悲しくなった。

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僕は一体何をしているんだろうか?

足を怪我してまで手に入れたものがこれなのか?

そもそもなぜ200名山の山頂に僕一人しかいないんだ?


標高2,922mにポツンと座る孤高のマゾ。

あまりにも空しい大天井岳の夕暮れ。


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ひとしきり山頂で泣いた後で下山。

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今回は前回の蝶ヶ岳の反省を元に、一番風の影響を受けない場所にテントを立てている。

最も風下で、なおかつ大きめなテントの裏にテントを張って暴風壁がわりにする徹底ぶり。

これで今回は快適で静かな夜が過ごせるはず。

ここからは優雅に読書タイムと洒落込もうではないか。(軽量化の為に短編集の必要ページだけちぎって持って来ている)

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しかし僕が暴風壁として利用したテントの住人がまさかの中国人。

そして遅れて来た彼らの仲間達が、次々と僕のテントの周りにテントを設営。

たちまち僕はチャイナ包囲網の中で四面楚歌の状態に。


チャイナ軍は本日の出来事を楽しそうに話しているのか、ものすごい早口で甲高い会話が全方向からドルビーサラウンドで僕の耳に侵入。

まるで本の内容が頭に入らないばかりか、さっきよりも余計に激しい孤立感だ。


ひとしきりそんな状況を楽しんでいると、チャイナ軍は山荘の方のベンチに移動して夕ご飯だ。

これで落ちついて僕も夕飯を食えるぞ。

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さあ、静かになったし優雅にこの唯一のお楽しみタイムを堪能しよう。


その時。

チャイナテントの奥の方からおっさんの怒号が。

「お前達、山なめんじゃねえ!」と。


どうやら高校の山岳部がテントを張っているらしく、円を描いて体育座りして先生らしきおっさんの話を神妙な顔で聞いている様子。

まだまだおっさんの怒りが収まらない。

「スマホで山の名前調べてるようじゃダメだ!俺は50年山やってるがな、お前達のような甘い考えじゃとっくに死んでる!わかってんのか!だいたい部長のお前がだな....」

と、猛烈に長くなりそうな説教タイムに突入。


全然落ち着いて飯が食えない。

それどころか僕まで怒られてる気分になって来てどんどんブルーになって行く。

おっさんは「山じゃあなあ、お前のような甘い考えの奴が周りに迷惑をかけるんだ!」と息巻いているが、今この場所で一番僕があなたに迷惑をかけられている気がするがいかがだろうか?


結局味気ない食事を済ませ、早々とテントイン。

やがてチャイナ軍団もテントに帰って来て、僕の周りは中国語とおっさんの怒号が飛び交う無法地帯に。

しかも僕は彼らの風下にいるから、声が届く事届く事。

テントの中からだと、北アルプスというより北京の交差点のど真ん中でテント張ってる気分になって来て落ち着かないのなんのって。



それでも不眠時間が37時間を越え、何度も限界ラインを超えて来た男。

寝付きの悪さは天下一品と謳われたこの男だったが、この日ばかりは北京の交差点だろうとあっという間に眠りに落ちた。

あまりにも長過ぎた一日がこうして終わって行く。


ちなみに言うまでもないが、彼が「満天の星空を撮ろう」とこの日の為に意気込んで用意して来たレリーズ(遠隔でシャッターを操作するもの)はザックの中から出てくる事は無かったという。


夜。

テントを叩く「ぽつぽつぽつ」と言う音。

その音はやがて「ザッーーー!」という音に変わる。


その音は雨の音なのか?

それとも一日を戦いきった男に対する、観客からの惜しみない拍手なのか?


熟睡する男の目からは一筋の流れ星。

きっと大天井岳からの本当の大絶景を夢の中で見ているのだろう。

そして満点の星空撮影にでも成功したのだろう。


せめて。

笑わせてやってくれ。

彼に後悔させないでやってくれ。


そう。


夢の中だけだとしても。





常念山脈北上野郎3〜燕岳編へ〜 つづく



常念山脈北上野郎1〜常念岳・涙そうそう編〜

Posted by yukon780 on 19.2013 常念〜大天井〜燕/長野 2 comments 0 trackback
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ビバ自由!

ウェルカム現実逃避!

おかえりマゾ野郎!



ついに奴が旅立った。

育児養子という鎖を断ち切り、野に解き放たれたストレス限界男。

8月9月の長すぎた呪縛生活からの脱却プレイが始まったのだ。


もうこの男を止められる奴はいない。

それが例え「数十年に一度の経験したことのない大雨」を引っさげて接近中の台風18号でもしかり。

もうまともな判断能力すら無くなっているこの男にとって、18号の接近なぞは敵ではない。

もはや人造人間18号が出てきたとしても関係ない。

行くと言ったら行くのだ。



男が向かった先は北アルプス「常念山脈」。

かつてこの山脈は「マゾ野郎誕生の地」として重要な役割を担った歴史的な場所。(参考記事:マゾ男登頂記

当時は蝶ヶ岳から常念岳への地獄行脚で、最終的に脱水死寸前にまで追い込まれたという「マゾの夜明け」的な旅だった。

まさに常念山脈は、この溜まりに溜まった鬱憤を晴らすには持ってこいの相手なのだ。



そもそも今回はこんなハードな旅にする予定はさらさらなかった。

元々はチーム・マサカズの矢作Cが企画した「のんびり燕岳・テン泊童貞野郎筆下ろしツアー」というとても平和的なイベントだった。

しかし塩見岳と乗鞍岳という2大イベントにことごとく参加できなかったストレス満点男は、燕岳だけのピストンではとても10円ハゲの拡大化を止める事は出来ないと判断。

深刻なマゾ不足を抱えた彼は、ついに「単独別行動宣言」を発動。

それは常念山脈のはるか南方よりスタートし、「常念岳」から「大天井岳」を経由して、表銀座ルートを逆走してみんなの待つ「燕岳」を目指すというハードロングコース。

常念山脈の誇る「黒い三連星」を、一泊二日のジェットストリームマゾアタックで一気に叩きのめすという作戦だ。


そして満を持して今回の相棒に指名したのが、あの伝説の登山靴「マムートさん」。

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毎度打撃系の痛みと、味わい深い靴擦れを提供してくれる名参謀。

一体何度持ち主に「マンモスくるピー」と言わしめた事だろう。

今回は二度目の修理を経て、マムートさんにとっても己の進退を賭けた戦い。

これでダメならもれなくグッバイだ。



さあ、旅は靴擦れ世は情け。

夏の無念は常念で。

天井越えてザギンで豪遊。

目指すは仲間が待つ燕の巣。


さあ、長い長い戦いの幕開けだ。


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早朝5時。

一の沢の登山口。


暗闇に浮かぶ一体の亡霊。

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無念すぎた夏のせいで、まったく成仏できずに霊魂となって彷徨うマゾりひょん。

ついに怨念となって北アルプスにご光臨だ。


しかし実は彼は生きている。

いや、正確にはもうこの段階で死にかけている。


実は例のごとく子供達を風呂に入れてからの出立だったから、登山口駐車場に着いた時点ですでに2時すぎ。

そしてなんとか停めれた駐車場が猛烈に斜めってたことにより、全く仮眠が取れないという絶望。

結局彼は一睡もする事が出来ないまま朝を迎え、早くも「徹夜明け」という名のマゾ仕込みを完成させた。


そんな中、登山開始10分にしてヘッドライトの電池が切れるという凡ミス。

あれほど準備に時間をかけたというのに、電池残量のチェックを怠っていたのだ。

結局真っ暗な登山道をノーライトで突き進むといった波乱の幕開けに。

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スタート間際から早くも神経がすり減って行く。

そして猛烈に眠くて体がだるい。

この段階で、早くも「撤退するなら今じゃないのか?」というまさかな囁き声。


しかし一方で、そんな久々のマゾな感触をしっかりと味わう男。

「ああ、やっとこの世界に帰ってきたんだ」という思いが男を奮い立たせる。


やがて辺りは明るくなり、

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闇の恐怖から解放された矢先。

スタートからわずか1時間。

早くもマムートさんが動いた。

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痛い。

痛いじゃないの。

すごく痛いよ。


なんと開始1時間で、早々とマンモスが雄叫びを上げたのだ。

小指付け根の外側の骨に打撃系の痛みがほとばしり、両かかとに刺激的な靴擦れの痛み。

2回目の修理を経て、奴はさらにパワーアップして帰ってきたようだ。


本日はまだあと9時間ほど歩かねばならんというのに...。

たまんねえ。

やはり常念山脈のマゾは一級品だぜ。


男のマゾ震いが止まらない。


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マゾがプルプルしていたその頃。

マゾに遅れる事2時間。

燕岳に向けてチーム・マサカズの平和組が、陽気に記念撮影中。

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矢作C、ゲリM、小木Kの「テン泊チェリーボーイズ」のみなさんだ。


予定では明日の朝、燕岳に向かう稜線上にある「蛙岩(げえろいわ)」で僕と平和組は合流する。

今回はその感動のご対面までの瞬間を、二元中継でお送りいたします。


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平和組が陽気に登り始めた頃、男は痛みに耐えながらエボシ沢の休憩ポイントまで辿り着いていた。

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そして本来は出番がなく終わるはずの「緊急用救急セット」が、早くも彼のザックから取り出されていた。

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まさか開始1時間半でこいつが登場するなんて。


すかさず患部に靴擦れ防止用の絆創膏を貼って行く。

しかしその絆創膏のわずかな厚みのせいで、さらに隙間がなくなって打撃系の痛みがパワーアップ。

それでも果敢に突き進む男の痛々しい姿。

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そんな彼の前に立ちはだかる、ゴロゴロの急登イワオゾーン。

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すごい道だぞ。

さすがは天下の常念山脈。

まるで登山道らしきものが見当たらないほどにハードだ。


それもそのはず。

実は彼は登山道から外れて別の道無き道を突き進み、なんと早くも遭難していたのだ。

たまたま同じく先行して遭難中のおっさんに「君、どうやらこの道は違うようだぞ」と言われて引き返す。

危うく開始2時間で常念に飲み込まれる所だった。



でもこんな時に力強い味方がいる。

それはこのハンディGPS。

これの地図を見ながら現在地を...

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あれ?

地図が映ってない。

歩いて来た軌跡しか映ってないよ。


これじゃ現在地分かんないよ...。

壊れてるじゃないのさ...。

持って来た意味ないじゃないのさ...。

(※このGPS、帰宅後に治りました。)



そして足の痛みと失意を引きずりながら、なんとか通常の登山道に戻った男。

結局さっきとたいして変わらないゴロゴロ道に、痛む足も喜んでいる。

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ここまで辛くても彼を突き動かすものは何なのか?

そう、それはもちろんこの素敵な「蒼い空さん」だ。

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近頃の僕は、「青ってどんな色だっけ?」と言ってしまうほどに青空を忘れていた。

そして太陽と無縁の僕が、長らく見る事のなかった「自分の影」との感動のご対面。

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みなぎる元気。

もはや足が痛いとか言ってる場合じゃない。

ついにあの苦悩の日々に対する見返りタイムがやってきたのだ。


そしてもちろん、風のないこの灼熱タイムに提供されるのは大急登の「胸突き八丁」。

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ここからは汗だくだくの、延々と続く容赦ない急登ヒットパレードが開幕だ。

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もうどこまでもどこまでも急登千本ノック。

足腰はみるみるヘロヘロになって行き、一歩一歩進む度に靴擦れの痛さはバージョンアップ。

このまま天上のお花畑まで行ってしまうんじゃないかという程の昇天タイム。


男のニヤリが止まらない。


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マゾが愉悦に浸っている頃。

平和組は第二ベンチに到達していた。

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基本的に矢作Cのカメラはいつものようにザックインされていたようで、道中の写真が全く無い。

しかしこの休憩時の写真からは、早くもゲリMの疲弊感が伺える。


彼らには彼らの戦いがあるのだ。


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その後も胸突き八丁の急登を突き進むマゾ野郎。

最終の水場に到達し、ここで一気に大量の水を確保。

これ以降は水場はないので、リザーバーと水筒にたっぷり4Lの水を入れる。

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たちまち強烈に重量アップ。

さらに己を追い込んだ状態で、さらなる魅惑の急登ゾーンへと突入。

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やはり水による急激な重量アップがモロに響き、まるで足が先に進んで行かない。

4L背負った分、4L嘔吐して帳消しに出来そうなほど気持ち悪くなってくる。

そう、ここに来て不眠で登り続けてきた体が悲鳴を上げ始めてきたのだ。


それでも4L担いでグヘグヘと登って行く男。

そんな哀れな男に強力な援軍が登場。

それは下からせり上がってきた「モクモクさん」だ。

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さあ、役者が揃った。

マゾ兄さんとマムートさんとモクモクさんの三つ巴。

まだ朝の8時だというのに、時間帯を間違えた「8時だョ!全員集合」が陽気にスタートだ。


モクモクさんがすごい勢いで「ばばんばばんばんばん」と迫れば、マムートさんが「ハァー、ビバノンノン」と陽気に激痛で合いの手を打つ。

後方から迫り来るモクモクさんに対し、観客席の子供達からは「マゾー!うしろ、うしろー!」という必死のかけ声。

そして急登ワールドをグヘグヘと逃げ登る4L担いだ変なおじさん。


そしてついに変なおじさんは力尽きた。

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彼はそっとこの場で水を1.5L捨てた。

結果的に一番キツい急登区間を、重量マックスで登って「水を運んだだけ」という不毛な作業となったわけだ。

一体私は何をやっているのだ。


しかしそんな胸突き八丁も残り後わずか。

見上げれば常念岳への素敵な稜線が見て取れる。

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一方で下を見れば、ものすごい勢いでモクモクさんが下から「ずおおおおっ」っと浸食して来ている。

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急がねばならない。


水を捨てて多少身軽になったが、ここまでのダメージの蓄積がハンパない。

何やら眠たくて生あくびも止まらない。

それでも渾身の力で胸突き八丁を登りきり、ついに常念乗越の稜線上が見えてきた。

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一歩一歩その瞬間に近づいて行く。

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おお...あのとんがった先っちょは...。

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槍ヶ岳さんじゃないか!

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見える、見えるぞ。

いつもの真っ白な空間で空想する景色じゃない。

紛れも無くモノホンの槍ヶ岳だ。


ああ、さらには奥穂山荘もあられもない姿を見せているし、

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左を見れば常念岳へと続く道のり、

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右を見れば、この後で目指す大天井岳へ続く稜線が。

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素敵すぎる。

間違いなく僕はこの時点で、感動のあまり再び1.5Lほどのお小水を垂れ流してしまっていた事だろう。


さあ、ここからそのまま大天井岳に向かえば随分と行程は楽になる。

しかしここまで来て常念岳のピークを目指さないのはマゾの名折れ。

もちろん僕は重いザックをこの場にデポし、常念岳への「余計なピストン」を開始した。

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この決意にて「往復2時間」が行程に加算され、男は新たなる追い込みタイムへ突入。

この選択が後々まで彼を苦しめる事になるが、この時はまだそれを知る由も無い。



やがてノッシノッシと常念岳山頂目指して進んで行く男。

その途中。

僕は山人生で初めての体験をする事になる。


よくテレビとかでタレントが登山して、やがて絶景を見て涙するなんて光景を観る。

しかし山でそこまでの感動に包まれた事の無い僕にはどうにも嘘くさいものに見えていた。

でも、ふいに槍ヶ岳を眺めながら登っている時。

なんと急に僕の目から涙がポロポロと流れてくるではないか。

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まだ頂上でもなければ、初めて槍ヶ岳を見たわけでもない。

しかし快晴の槍ヶ岳を見ていたら、ふとあの辛すぎた8月・9月の情景が走馬灯のように頭を駆け巡ったのだ。


暗い室内から快晴の窓の外を眺めながらのオムツ替えな毎日。

やがて9月になっても無念の病欠塩見岳に、悲しみの乗鞍岳雨天中止。

そんな悲しく辛い日々の出来事が一気に脳裏を駆け抜けて行った。


すると突然鼻の頭がツーンとなって、いきなりの「涙そうそう状態」に。

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僕の心の声なのか、それとも槍ヶ岳の囁きなのか?

「よくやった。お前はよく頑張ったよ。」という声が聞こえた気がした。


ついに報われる時が来たのだ。

あの苦悩の日々は無駄ではなかったのだ。


そう呟きながら、目をまっ赤にして登って行く情緒不安定男。

もちろんそんな彼の姿に、親友も感激して駆けつける。

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みるみる飲み込まれて行く常念小屋。

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ついに追いついたモクモクさんが、僕を慰めようと優しく抱きしめに来てくれたようだ。

やがて容赦なく僕の視界から槍ヶ岳を奪い去り、

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辺り一面、地獄絵図と化した。

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ほんの一瞬の出来事。

涙そうそうが一転、あっという間に「マゾそうそう」へ。


やはりこうなるのか。

しかし槍ヶ岳の祝福は男に味方する。

光輪をまとった太陽が、神々しくモクモクさんを追い払ったのだ。

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「ぎゃああああ」という叫び声と共に切り裂かれて行くモクモクさん。

ついに報われない男に愛の奇跡が舞い降りる。

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再び訪れた快晴絶景タイム。

かつて激闘を繰り広げた槍ヶ岳の粋な計らい。

かつての敵は今日の友。

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ありがとう、槍ヶ岳。

芽生える友情。

だからといって、もう怖いからお前には二度と登らないけどね。



やがて二年前の「マゾ男登頂記」の時、運命の分かれ道となった三股分岐へ到達。

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あの時は散々悩んだ挙げ句に、僕は三股方面を選んでマゾの極みの世界に吸い込まれて行った。

この先に待っていたものが「脱水地獄」とも知らずに。

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あれから二年が経ち、僕も随分と成長した気がする。

当時よりもハードに踊ってマゾれるアイドル「マゾ色苦労人Z」として今なお現役を貫いているぞ。


そして、かつて僕を恐怖のどん底に引きずり込んだ前常念岳を横目で見つつ、

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槍の力で浮上出来ないモクモクさんの雲海を堪能し、

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痛む足を引きずりながら登って行くと、やがて常念岳の山頂が見えて来た。

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ついに二年ぶりの再会。

前回とは逆方向からの登頂。

黒い三連星の一角「常念岳(2857m)」を撃破です。

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薄い雲があるとはいえ、山頂で青空バックに写真を撮ったのは一体いつ以来だろうか?

今頃下界では「マゾ野郎in青空」という号外が駅前でばらまかれている事だろう。


そして山頂からの360度の大絶景。

正面にはバシッと槍ヶ岳さん。

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時計回りに、今から進んで行く大天井岳への稜線。

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そして前常念岳とモクモクさん。

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で、来月戦う予定の奥穂高岳。

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最高だ。

もう強がらない。

認めてしまおう。

やっぱり景色は想像するもんじゃなく、生で見てなんぼだと。


「登山って楽しいものだったんだ」と久しぶりに感じた男。

いつしか彼の中で「登山とは白い修行の世界だ」と思い込むようになっていた。

どうやら8月9月を頑張った僕は、多少神に浮かれる事を許されたのかもしれない。

浮かれるって素晴らしい。

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そうしみじみと浮かれる幸せを噛み締めるマゾ野郎だった。


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マゾ野郎がささやかな幸せに浮かれていた頃。

チェリーボーイズ達も能天気に浮かれていた。

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年中浮かれている小木Kが、合戦小屋名物のスイカを食べながら絵に描いたように浮かれている。

そして浮かれながら大好物のうまい棒を貪り食っている。

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なんと彼は「行動食」に大量のうまい棒をチョイスした模様。

BCAAやアミノ酸入りのものでもなく、ナッツなどのハイカロリーなものでもなく、あえて何の体力回復効果も見込めない「うまい棒明太子味」を行動食に持って来たという無謀さ。

まさにチェリー野郎が冒しがちなミスチョイス。

そもそも40近いおっさんの大好物がうまい棒ってあたりも浮かれ過ぎだ。


これにて彼はうまい棒を食うたびにたちまち口の中の水分を奪われ、それを補う為に大量に貴重な水をガバガバ飲み続けるという負の連鎖の住人と化す事になる。

そんな状態で彼らはこれから北アルプス三大急登のひとつ、「合戦尾根」に挑むのだ。


彼らには彼らの戦いがあるのだ。


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まさかうまい棒を行動食にしている奴がこの同じ常念山脈にいるとは思いも寄らないマゾ野郎。

予定通りここで昼メシを食らい下山開始。

相変わらずの絶景を堪能しながらの勝利の下山だ。

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あまりの嬉しさに己撮りしまくって浮かれまくる男。

しかし身の程をわきまえず、少々浮かれすぎてしまったのか?

下の写真を見ていただくとお分かりの通り、背後から忍び寄る白い影が。

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まるで僕がスタンド使いみたいになっているがさにあらず。

実は目に余る僕の浮かれっぷりに、ついに槍ヶ岳さんもそっぽを向いてしまったのか?

そう、ついにモクモクさんが槍ヶ岳の結界を突き破って侵入して来たのだ。

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そのあまりの勢いに、焦って最後の槍ヶ岳を写真に収め、

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いそいで槍ヶ岳さんとのツーショット写真を撮るべくセルフタイマーをセット。

そして10秒後に撮影されたものがこれ。

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わずか10秒で槍ヶ岳はモクモクさんにかき消され、マゾとモクモクのツーショット写真が完成した。


これを皮切りに、いよいよ泥沼へ転がり落ちて行く男。

もうわずかばかりの幸せタイムは終わった。

ここからはいつもの男がいつもの世界に堕ちて行く。

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何者かの悪意に満ちた声が霧の中に妖しく響く。

「お前ごときがご褒美で快晴なんてちゃんちゃらおかしいわ。8月9月の頑張りの報酬なんてこの2時間の快晴でもう十分だろう。さあ、ここからはいつものようにショータイムを始めようじゃないか。」と。

すると先ほどまでの快晴が、もはや遠い過去の記憶になってしまったかのような光景に。

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そして長い長い下山を経て、常念小屋に辿り着く頃にはこんな事に。

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もう数メートル先の人間の姿すら確認出来ない。

そもそもデポした己の荷物すら発見するのが困難な状況だ。


もうこの頃には、常念岳山頂での出来事はすべて「幻覚」だったんじゃないのかって思い始めていた。

まあいいさ。

収まるべき男がいつもの場所に収まったってだけの事。

あれが幻覚だとしても、ほんの少しの間浮かれる事が出来てとても幸せだ。

所詮僕には白い世界がお似合いだという事だ。


こうしてすっかりやさぐれてしまった男。

そんな自暴自棄な男の前に、魅惑的な官能の使者が光臨。

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なんてものを買っちゃってるんだ。

いかんぞ、まだまだ先は長いんだ。

この段階でこの快楽に溺れてしまったら、たちまち体がだるくなってやる気も無くなるぞ。

ダメだダメだ。

これ以上自分を追い込んでどうするんだ。

やめろ。

やめろぉぉーーー!

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


男が悪魔の誘惑に抵抗出来なかった頃。

北アルプス三大急登で合戦中のチェリーボーイズ。

彼らにも限界が近づいて来ているようだ。

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ゲリMがゲリ便をひねり出しているかのような踏ん張り顔になっている。

いよいよ奴らもヤバい状態だ。

果たしてこのチェリー達は無事に燕岳山頂に辿り着けるのか?


彼らには彼らの戦いがあるのだ。


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そして。

ついに悪魔の媚薬を飲まされてしまったマゾ野郎。

これにより、見事なまでにすっかり戦意喪失。

「もうかなりしんどいし、足も痛いからここ(常念小屋)でテン泊して明日下山しちゃうかしら」と弱音が飛び出す。


じつは本気で翌日の撤退を考えた。

こんな激痛の足を抱えて、天候が悪くなる一方の常念山脈を北上するなんてマゾの酔狂にもほどがある。


しかし燕岳で仲間が待っている。

ここで僕だけ引き返すわけにはいかない。


男は再び重い荷物を背負い歩き出す。

次に目指すは、すっかり白雲に飲み込まれているが、常念山脈最高峰の「大天井岳(おてんしょうだけ)」だ。

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こうして男は真っ白な世界に突入して行った。

この霧の先には珠玉のマゾが手をこまねいて待ち構えている。

足の痛みはもう「怪我人」と言ってもいい状態だ。


さあ、お遊びはここまでだ。

旅は靴擦れ世は情け。

まだまだこの旅は始まったばかり。


男のマゾが加速する。



常念山脈北上野郎2〜大天井岳編へ〜 つづく



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