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紅葉挟撃作戦7〜完結編・新時代かっぱ橋宣言〜

Posted by yukon780 on 01.2013 前穂〜奥穂〜涸沢/長野 4 comments 0 trackback
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時は来た。

今こそ積年の恨みを晴らす時。

北ア維新完結へ向けての最終侵攻。

今こそモクモク幕府に引導を渡し、我らの手に快晴を取り戻すのだ。



激闘に次ぐ激闘の末、ついに紅葉挟撃作戦「赤きマゾの血」を成功させた男達。

さらには「前穂高岳」「奥穂高岳」「涸沢岳」の3つの3,000m拠点も制圧。

もはや誰もが「快晴奉還」の瞬間はすぐそこだと確信していた。


しかし悲願達成まであとわずかという所で、まさかの「涸沢カールの変」勃発。

涸沢陽動部隊のセンセーショナルな裏切り行為により、ついに崩壊したハママサ同盟。

これにて挟撃作戦自体が不可能となり、ついに孤立する奥穂奇襲部隊。


しかし諦めたらそこで試合終了だ。

我々は安西先生からボールを受け取ると、勝利の瞬間を信じて下山を開始。

奇跡の「大快晴・大紅葉・大絶景」に向けて、男達の最後の戦いが始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ついに涸沢カールへ攻め込む下山戦線に突入した奥穂奇襲部隊。

ここまではじっと息を潜めていたが、いよいよ敵の背後に攻め懸かる時。


「突撃ー!」というB旦那の大号令。

そして奇襲部隊の荒武者達が敵の本陣めがけて、義経以来の怒濤の「逆落とし」だ。

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そしてその馬群から、真っ先に飛び出したのはまさかのバターN。

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昨日までの「ミスター高山病」とは思えない、実に機敏なる動き。

そう、彼は標高を下げるたびに高山病から解放されて元気になって行くという、「下山に強い男」として横浜で名を馳せる男。

やっと彼が本領を発揮する時がやって来たのだ。


目指す標的は涸沢カールのテント場。

あそこで涸沢陽動部隊の面々が、今か今と我々の到着を待っているはずだ。

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しかし実はもうすでにこのテント場に奴らはいない。

もちろんこの時点では、自分たちが「劇的な裏切り行為」に遭遇しているなんて思ってもいない奇襲部隊。

結果的に本能寺の火の中に突っ込んで行く事になっているが、奇襲部隊はただただ愚直に任務を遂行するのみだ。


そしていよいよここからは「重太郎」「吊り尾根」に次ぐ、最後の難関「ザイテングラート」の下りに突入。

岩の支稜をひたすらに急降下して行くのだ。

奇しくも昨晩の挟撃作戦成功により、見晴らしが素晴らしくて高度感も半端ない。

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このザイテングラートがあるせいで、登山初心者は奥穂高岳までの到達を諦める人も多いという難関だ。

でも僕は少しだけ心の中で、「ひょっとしたらあいつら、高い所から涸沢の紅葉を観る為に下から登って来てるかもしれないな。途中で会えたら面白いな。」なんて事を考えていた。

裏切られているとも知らずに。

実にめでたい男だ。


そしてザイテングラートに突入すると、とても爽やかな光景が展開。

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連日の変態攻撃に、さすがに「もういいよ...」と高所恐怖症の僕はウンザリ顔で呟く。

しかし急速に高度が下がるにつれ、どんどんスピードを増して行く下山マスター・バターN。

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一方で、昨日は最も元気だったB旦那の勢いが弱い。

実は彼は膝に爆弾を抱える男で、「下山時に勢いを失う男」として横浜で名を馳せる男。

バターNと入れ違いで失速して行くミスター下山病。

このチームは「常に誰かが問題を抱えている」という、実にバランスの取れたチームなのだ。


そして岩を這い上がる地獄の亡者達のような状況は続いていく。

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やはりモクモクを蹴散らしたとは言え、敵の本丸までの道は実に険しい。

しかも下りだから、変な恐怖と膝への負担が実に心地よいではないか。

そして目的地がずっと見えているのになかなか近づかないと言う、富士下山にも似た耐久戦も楽しめるのだ。

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だが、やはりそこは天下の北アルプス。

景色はやっぱり最高で、僕が一番好きな形の常念岳もずっとこっち見てる。

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思えば3週間前、僕はこの常念岳山頂からこっちの方を眺めて「ああ、来月は奥穂に登るんだなあ」と思ったものだ。

そう言えばあの時もチーム・マサカズメンバーと途中で合流する作戦だったな。(参照記事:常念山脈北上野郎


あの時、あいつらは雨でずぶ濡れの僕を置き去りにして先に下山してたよなあ。

あの時の裏切り行為はショックだったね。

でも今回は雨も降ってないんだし、まさか先に下山してるなんて事はないだろう。

むしろ今こっちに向かって登って来てるかもしれないし。

そろそろ仲間を信じてみてもいい頃だろう。


そう。

僕たちの友情は永遠なのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃、涸沢裏切り部隊。

早々と仲間を見捨てた男達が、すでに本谷橋まで下山を完了していた。

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何の迷いも無い足取りで、橋を渡って行く小木Kの勇姿。

何も荷物を背負ってない所を見ると、大方矢作Cに「いい写真撮れそうだからあの橋渡って」とでも指示されたんだろう。

こんなおっさんが橋を渡る不毛な写真撮ってる時間があるのなら、もう少し涸沢で我慢できなかったのだろうか?


そう。

僕たちの友情は、この吊り橋のように脆くて不安定なのだ。


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そうとも知らず、早く合流を果たそうと必死で駆け下りて行く哀れなピエロ部隊。

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いよいよザイテングラートの核心部をくぐり抜け、敵の本陣間際にまで下降して来た。

もうこのくらいの標高ともなれば、バターNが見違えるようなパワーみなぎる風貌に変化している。

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すっかり肌艶もよろしく、弾ける笑顔が爽やかだ。

ちなみに昨日の3,000m付近での高山病マスターの勇姿がこれだ↓

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人はたった数百m標高が違うだけでこうも変わってしまうものなのか?

そもそも何故彼はこうなる事が分かっていながら高山ばかり登り続けるのか?

高山病マゾプレイという新ジャンルを切り開いたパイオニアの心中は、我々のような一般マゾには到底窺い知る事ができないようだ。


やがてザイテングラートの区間を突破した奥穂奇襲部隊。

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これにて全ての難関を突破したぞ。

三大拠点の「前穂高岳」「奥穂高岳」「涸沢岳」を制圧し、三大難関の「重太郎新道」「吊り尾根」「ザイテングラート」も突破した。

もうここからは維新達成に向けたビクトリーロードの始まりだ。

ただこの先には、日本の歴史上で明智光秀・小早川秀秋に次ぐ「三大裏切り野郎」でお馴染みの「チーム・マサカズ」の面々はもういない。

挟み撃ちが出来ない奥穂奇襲部隊にとって、勝算などはもうないのだ。


しかしどういう事か、ここから晴天の中で素晴らしい絶景区間が続いて行くではないか。

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紅葉も始まり、いよいよ敵の本丸に侵入した感がある。

これには裏切られた事に気付いていない奇襲部隊も、涸沢陽動部隊との挟み撃ちが大成功した結果だと大喜び。

完全なる北ア維新達成はもうすぐそこだとばかりに、早くも勝利目前の記念撮影。

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このあり得ない大快晴と絶景に、これまでの地獄のような行軍が報われたと涙する3人。

そしてちゃんと待っていてくれた涸沢陽動部隊への感謝の念がこみ上げてくる。

早く彼らと涸沢カールにて大合流し、お互いの健闘を称え合ってガッチリと握手を交わしたい所だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃、涸沢裏切り部隊。

彼らは後ろ髪を一本も引かれる事も無く、一直線に横尾までの下山を完了していた。


もはや写真すら撮られていないが、周囲からの目撃情報が寄せられている。

その情報によると、何やらメガネをかけた40手前のノッポと小太りのおっさん二人が、シュワシュワしている黄金の液体を体内に流し込んでいる姿が目撃されたらしい。

恐らくそいつらは、早朝の涸沢で目撃された二人のワインおじさんと同一人物と思われる。

もしそうだとするならば、彼らはこの北アルプスをただの巨大な居酒屋と勘違いしている可能性が高い。

何もはるばるこんなとこまで来なくても、近所の和民にでも行けばよかったんじゃないのか?


色んな意味で突っ込みどころの多い涸沢裏切り部隊。

下山時の写真を全く撮ってない従軍キャメラマンにも多くの謎が残る所だ。



このように絶望的な状況で挟撃作戦を放棄したチーム・マサカズメンバーたち。

それではなぜこの3人が裏切ったにもかかわらず、この時奇襲部隊に快晴がもたらされているのか?

もう孤立無援の奥穂奇襲部隊と挟み撃ちできる者などは存在しないはず。

まさか別の誰かがこの挟撃作戦に加わってくれているのだろうか?


残りのチーム・マサカズの初期メンバーは、今回参加できなかったゲリMとアゴ割れMの2名。

その内ゲリMに関しては、前回の燕岳で僕を置き去りにした裏切り男の一人。

結果的にチーム・マサカズは、僕を除く初期メンバー5人の内4人がすでに裏切り済みという「背信集団」だという事が判明した。


そんな中で、ただ一人僕を裏切っていない男がいる。

それは「アゴ割れM」。

しかし彼は仕事により、今回の1泊2日の登山には参加していない。

この時点での彼の消息は不明だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そんな中、奇襲部隊の快進撃が続いていた。

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いよいよ勢いを増す絶景ワールド。

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一歩一歩標高を下げるごとに、周囲が紅葉に包まれて行くという素敵すぎる世界。

赤・黄・緑に染まるその美しき肢体を節操もなく見せつけてくる涸沢さん。

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汚い文章と白い写真ばかりのこのブログで、かつてこれほどカラフルに彩られた美しき世界をお送りした事があったろうか?

ついに我々はモクモク幕府の居城に無血入場し、憧れの「大奥」の絶景の中にその身を置く事に成功したのだ。

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いつもは「真っ白」な世界の住人だから、僕もバターNもただただ挙動不審にうろたえるばかり。

もう気分は突然ニューヨークに連れてこられたマゾ原人。

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あまりにも青空と紅葉が輝き過ぎていて、白に慣れた目も焼けてしまいそう。

まるで数万人の水着プレイガールに取り囲まれて、もう一体どこに目をやっていいかも分からないような錯乱状態の奇襲部隊。

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この大絶景に対する感動は、昨日の厳しい道のりがあったからだけではない。

今まで負の歴史を繰り返して来た彼らだからこそ、誰よりも深く味わえた大感動なのだ。

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高山病に苦しめられ地獄の3,000mを味わったバターN。

そろそろ色彩感覚を忘れそうになっていた悪天候男の僕。

そしてそんな二人のお守をし続けて来たB旦那。


今、長い長い大迂回路を経て、我ら奥穂奇襲部隊が堂々と涸沢カールへ勝利の進軍。

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さあ「約束の地」はもうすぐそこだ。

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ついに涸沢山荘を越えて、

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涸沢陽動部隊の仲間達が待つテント場に到達。

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しかし見渡す限り奴らの姿が見えない。

そうか、さては涸沢ヒュッテのテラスで我々を待っているんだな。

まさか「おめでとう!お疲れ様!維新達成!」なんて横断幕とか用意してたりして。

実は周りにいる人たちはみんなエキストラさんで、その瞬間に拍手喝采なんて事もあるかも。

そんな粋なサプライズが用意されているのかな?


しかしテラスに行っても、横断幕どころか奴らの姿すら見えない。

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そしてここにいる全員は明らかにエキストラでもなんでもなく、誰一人クラッカーとか持ってる奴もいない。

携帯も繋がらず、連絡も取れない。


この時、ふと僕の脳裏に3週間前の「置き去り事件」の悲劇が浮かび上がった。

そしてにわかに脳内でビジュアル化されて行く「裏切り」というワード。

まさか一ヶ月の間で、私は二回も置き去りにされてしまったのか?


しかし振り返ると、そこには「大快晴・大紅葉・大絶景」の世界が広がっている。

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思いがけない形だが、見事にここに「北ア維新」達成。

とてつもない喜びと、置き去りにされた切なさが入り乱れて複雑な感情。


しかし形がどうであれ、これにてモクモク幕府からの「快晴奉還」が成立。

ハママサ同盟の挟撃作戦というか、これじゃただ単に横浜の友達と登山しただけと言った競演もクソも無い結果に。


だがこの時はまだ知らなかったのだ。

この維新達成は、間違いなくハママサ同盟による「新・挟撃作戦」に他ならなかった事を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃。

北アルプスからはるか250km南方。

三重県・鈴鹿山脈。

ある一人の男が「竜ヶ岳」をさすらっていた。


その男の名は「アゴ割れM」。

チーム・マサカズ初期メンバーの中で、唯一裏切っていない最後の男だ。


彼は今回の革命戦には参加せず、たった一人で別動部隊として鈴鹿から太平洋に睨みを利かせていた。

そう、彼こそがチーム・マサカズの切り札「鈴鹿陽動部隊」。


奥穂奇襲部隊が大快晴に包まれている時、彼はこの竜ヶ岳で孤独なゲリラ戦を敢行。

太平洋から北上するモクモクの援軍を食い止めていたのだ。

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そして美しいまでの白い世界の中で、彼はエクスタシーにひたっていた。

一人だからその時の彼の写真は残っていないが、過去の写真から抜粋すると恐らくこのような表情だったに違いない。

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そして重要な役目を果たし、こんな感じで大満足で下山した事だろう。

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まさにしてやったりのアゴ割れMの壮大な作戦。

隠密行動すぎて、現場の誰一人彼の活躍に気付いている者はいない。


そう、決裂したと思われたハママサ同盟はまだ生きていたのだ。

これぞ奥穂〜鈴鹿間という壮大なスケールで展開した、ハママサ同盟による「新・挟撃作戦」の真相。

そしてこの「新・挟撃作戦」にはさらにもう一人の革命児が関与する事になる。

アゴ割れMが中岡慎太郎だとするならば、もう一人の革命児は...。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


思いがけない維新達成に沸く奥穂奇襲部隊。

もちろんまさかはるか遠方の鈴鹿山脈で、孤軍奮闘してモクモクを食い止めてるイボ痔部隊がいるなんて想像もしていない奇襲部隊。

何はともあれ「大快晴・大紅葉・大絶景」と「大裏切」まで堪能してしまった。


ひとまず、何故こんなに晴れているのかよく分からないまま下山を開始する。

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ひたすら紅葉に包まれながらの幸せすぎる下山タイム。

今まではいつも敗北感に包まれながら、うつむいて唇を真一文字にして下山するのが常だった男達にとっては珠玉の時間だ。


振り返れば、雲間から差し込んだ陽光がスポットライトのように紅葉を照らし、

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もう何の文句もつけようが無い世界が続く。

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これにはいつも急登の世界でしか「ニヤリ」としないこの男も、ついに人間らしい感情を取り戻して笑っている。

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一体何年ぶりに思い出しただろうか?

いや、初めての気付いた感情かもしれない。

登山はマゾるもんじゃなく、楽しむものだったという事を。


そしてひたすらに爽快な景色の中を、涸沢陽動部隊に追いつくべくひたすら下山して行く奇襲部隊。

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いつもの絶望ため息とは違う、「幸せため息」が漏れてしまう絶景の数々。

快晴が奉還された世界とはかくも素敵なものだったのか。

あの吐く程しんどかった前半とのギャップが凄まじすぎる。


そしてやはり涸沢までの登山道はしっかり整備された歩きやすい道で、昨日までの変態道と違って快適に歩いて行ける。

しかしこの快適登山道で涸沢陽動部隊はヘロヘロになった挙げ句、反省会で「悪いのは全てあのマゾ野郎」だと言い放ったのだから、いかに無駄で重い荷物を背負って行ったかが伺える。


やがてすっかり標高が下がって、いよいよ脱高山病の下山マスター・バターNの勢いが止まらない。

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彼は元気になり過ぎたあまり、ついに走り出してしまった。

昨日の3,000m付近で牛歩戦術を決め込んだ男とは思えない、猛烈なダッシュ下山がスタート。


それにつられて膝に爆弾を抱えるB旦那も走り出す。

そして僕もその後を追う。


せっかくの快晴絶景を素直に楽しめばいいものを、なぜかマゾの方マゾの方へとシフトして行ってしまう奇襲部隊。

彼らはあまりにも不器用過ぎて、素直に幸せを受け止めきれないのだ。


バンバン他の登山者を追い抜きながら、ほぼトレラン状態で駈け下る奇襲部隊。

あっという間に本谷橋も越えて、屏風岩を横目で見つつ、

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やがて横尾に到達。

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すっかり足を痛めた僕はここでかなりグロッキーになったが、こんなに急いだにもかかわらずここでも涸沢陽動部隊の姿は無かった。

もちろん彼らがここで黄金水を補給していたなんて事は知る由もない。


で、こっからは地味な時間帯。

ただただ平坦な道を上高地目指して突き進むという耐久戦に突入だ。

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やがて徳沢に到達したが、もちろんここでも陽動部隊の姿は見当たらない。

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一体いつになったら彼らと合流できるのか?

それでもきっと彼らは挟撃作戦の役目を果たしているはずだ。

だってこんなに晴れているし、いつもなら溢れかえってくるモクモクさんも見事に上部で食い止められている。

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いくらなんでもこれはいつもの感じじゃない。

もううすうす気付いているが、涸沢陽動部隊が任務を放棄しているのは明らか。

ではなぜこんなに晴れが続いているのか?

いくら「鈴鹿陽動イボ痔部隊」が南方で頑張っているとはいえ、さすがに距離が遠すぎる。


何者かが我々との「挟撃作戦」を、この北アルプス内で実行しているに違いない。

そしてその仮説はやがて確信に変わった。


フラフラと長い上高地までの道のりを歩いて行く奥穂奇襲部隊。

すると前方からこちらに向かって来る見覚えのある顔。


なんと変態マゾ超人「レボリューションI」ではないか。

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彼は今朝、我々とは逆方面の岩の中に消えて行ったはず。

そして長大な北アルプス最難関ルートを越えて上高地に降りるルートだったはず。

彼がここにいる事は到底あり得ない事なのに...。

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話をしてみると、その謎が解けた。


彼はあれから滑落必至のジャンダルムを軽々と越えて行き、西穂高岳までの最難関ルート(通常登山タイム6時間40分)を2時間半で駆け抜けたという変態さ。

さらに西穂高岳から上高地までの通常登山タイム5時間の道のりを、なんと2時間で駆け下りて来たというハレンチぶり。

そしてゴールに着いたにもかかわらず、彼の歯止めのかからないマゾ魂がかっぱ橋でスパーク。

なんとそのまま我々の方に向けて余分すぎる延長戦に突入し、徳沢付近まで我々を出迎えに来てくれたのだ。


恐らく彼は途中で涸沢陽動部隊と出会っているんだろうが、彼らとはハツラツさの温度差が激しすぎる。

しかも例の我々が聞いた「大落石音」は彼の前を行く人が発生させたもので、彼は数mの差でその落石の直撃を免れたという。

しかもそんな強烈エピソードを、笑顔全開で話すという飾りの無いマゾヒスティックさ。

まさにマゾ界の革命児「坂本龍馬」だ。


ちなみに彼の変態さを地図で現すと以下の通り。

青色=涸沢裏切り部隊、黄色=奥穂奇襲部隊、赤色=レボリューション

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これはあくまでも一泊二日のお話。

分かる人には、このハレンチさをご理解していただけることだろう。


彼のこの弾け過ぎたマゾ出迎え行為が、結果的にとてつもない壮大なスケールでの「挟撃」となったのだ。

これが鈴鹿イボの中岡慎太郎と、変態マゾ神の坂本龍馬による「新・挟撃作戦」の全貌だ。


そしてそんな龍馬を自軍に加えて、意気盛んにかっぱかっぱ橋を目指す奥穂奇襲部隊。

完全にタイミングを失ったモクモクも、ただただ明神岳後方でうろたえるばかり。

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さあ、ここまで来たら間違いなく涸沢裏切り部隊はかっぱ橋でくつろいでいるはず。

こうなったらかっぱ橋でのハママサ同盟大合流をもって、勝利の「新政府樹立宣言」と行こうではないか。


やがて明神館も越えて、いよいよラストスパート。

ついにゴールのかっぱ橋を視界に捉えた。

それと同時に、バターNが歓声を上げる。

「あ、いた!」

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彼の視線の先には、矢作C・ビビるS、そしてベンチで熟睡している小木Kの姿が。

ついにハママサ同盟の大合流の瞬間だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして涸沢裏切り部隊。

すっかりかっぱ橋でのんびりしていると、何やら前方から重々しい加齢臭。


矢作Cがふと見上げた先には、「あ、いた!」と叫ぶバターNと脇から匂いを放出するマゾ野郎の姿が。

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そしてその後方にはB旦那と見慣れない男。

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何やら人が増えているぞ。

ただ小木Kと矢作Cとしては、前回の燕岳の時も合流時に人が増えてたから特に気にしない。

いつもの事だ。


こうしてマゾ革命児によって引き合わされたハママサ同盟。

そしてこの歴史的な大合流を呆然と眺めている奴がいる。

ここまで何度も裏の裏をかかれ、「紅葉挟撃作戦」に翻弄されて最後まで実力を発揮できなかったモクモクさん。

実に悔しそうに、穂高の峰々の上から苦々しく我々をを眺めているではないか。

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しかし今回ばかりは、味方ですら欺かれる事しばしばのギリギリの作戦だった。

これが我々革命軍の「赤きマゾの血」の目指した終着点なのだ。



時は2013年10月6日。

龍馬の立ち会いのもと、無事に調印式を終えた「横浜組」と「チーム・マサカズ」。

ここでついにモクモク知らずの快晴軍団「ハママサ新政府」が誕生したのだ。

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これが世に言う「かっぱ橋宣言」。

新たな時代の幕開けだ。



こうしてあまりにも長過ぎた革命戦は終焉を迎えた。

もはや何もやり残した事が無い男達は、心地よい達成感に包まれながらバス乗り場へ向かう。

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しかし冷静に考えて欲しい。

当初「横浜組とチーム・マサカズの夢の競演」と大々的に言っていたが、実質彼らが行動をともにしたのはほんの一瞬。

スタートとゴール時の、この「かっぱ橋〜上高地バスターミナル間のみ」の数百mだったという事実を。


競演もクソもないわずか数百mだけの共同時間。

へたすると、その辺の観光客よりも短い競演時間。

どう考えてもそれぞれがそれぞれの登山を楽しんだだけという、ただの「普通の登山」だったという説もある。


しかし彼らが自分たちで負の力をはねのけた事には変わりはない。

ただビール飲んでただけの奴もいるが、紛れも無くこれは歴史的な革命戦だったのだ。


いつかハママサ新政府が本当の競演を果たす時。

そこから新しい歴史は始まって行くのである。




紅葉挟撃作戦  〜完〜



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜おまけ〜


革命を成功させ、興奮状態で帰宅したマゾ男。

彼はこの勢いを借り、一気に二つ目の革命を成功させようと企てた。

その革命の相手は不落の砦「嫁幕府」だ。


今回撮影した美しすぎる涸沢の紅葉写真を嫁に見せて、「わあ、ステキ!私もこういう所に行ってみたい!」と言わせて、嫁を少しでもアウトドアの世界に引きずり込もうというのが真の目的だ。

かつて何度かこの嫁幕府に対して同じような革命戦を挑んで来たが、そのことごとくが「無感情マグロ無言」という名の強烈な迎撃ミサイルでことごとく打ち負かされて来た。


しかしどんなに無感情・無感動の女だろうと、この写真を見て感嘆詞が飛び出ないわけが無い。

僕はパソコンで写真を表示し、嫁に見せつけた。

食らえ!

これがマグロ粉砕紅葉アタックだ!

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この写真を見てしばらく動きが止まる嫁。

恐らく感動して言葉も出ないんだろう。

じっと嫁を見つめて、「わあ!ステキ!」という言葉が発せられるのを今か今かと待ちわびるマゾ男。

そしてそんな僕の視線に気付いた嫁が振り返る。

そして彼女はその重い口を開く。

いよいよ革命達成の瞬間。

彼女は言った。



「象の尻みたいな顔してこっち見てんじゃないよ。」と。




しばし時が止まるマゾ男。

大紅葉の絶景写真を背にして解き放たれたまさかの言葉。

まるで事態が把握できずに、その場にただただ立ち尽くすマゾ男。

そもそも象の尻みたいな顔とはどんな状態なのだ?


それでもめげない象尻男は、必死で「もうあり得ない光景なんだよ。行ってみたいと思わないのかい?」と攻撃の手を緩めない。

しかし彼女は強烈な上から目線で、「綺麗なホテルとコンビニと服屋さんがあるなら考えてもいい。車から徒歩5分くらいのね。」と言い放つ。

決定的に話が噛み合ない異種格闘技戦。


そしてノックアウト寸前の僕に対して彼女は言った。

このあまりにも意外すぎる一言を。


「それよりさ、ドラゴンズの谷繁監督ってさ、名字が谷で名前が繁なの?気になってさ。」と。



もはや紅葉や北アルプスから8万光年程それまくった話題になっているぅぅッッッ!


あまりの衝撃にガタガタと震えながらその場で膝をつく革命軍。

圧倒的な敗北。

調子に乗って革命を挑んだ私が馬鹿だった。


一体どうしたら彼女を感動させる事が出来るのか?

この後何故か「目が合ったら殺す」とか言われたし...。

もうこれはジャンダルムよりも陥落不可能な事なのか?

それとも僕が吊り尾根あたりで滑落でもしていれば、「わあ!ステキ!」と感動してくれてたんだろうか?



男の革命はまだまだ道半ばなのである。



〜完〜




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紅葉挟撃作戦6〜涸沢岳編・革命児と裏切りのワイン〜

Posted by yukon780 on 29.2013 前穂〜奥穂〜涸沢/長野 0 comments 0 trackback
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ついに炸裂した紅葉挟撃作戦「赤きマゾの血」。

北アルプスに激しく響き渡ったモクモクさんの断末魔。

上と下からの見事なる挟撃作戦に、してやったりのハママサ同盟。


長年、モクモク幕府の圧政に苦しんで来た貧民マゾ達。

いよいよ大快晴を手に入れる為の革命の総仕上げに突入だ。


奥穂奇襲部隊は維新達成の万全を期すべく、3つ目の3,000峰「涸沢岳」の拠点制圧を目指す。

そして最後の難関「ザイテングラート」を駆け下りて涸沢カールに攻め込むのだ。


一方涸沢陽動部隊は涸沢カールにて待機し、下って来た奇襲部隊と合流して北ア維新の総仕上げ。

大快晴の大紅葉を前にして、「もう我々は晴れ男だ」と天下に号令するという新政府樹立宣言を待つばかり。

いよいよ歴史的な瞬間が近づいて来たのだ。


それでは挟撃作戦成功直後から振り返って行こう。


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見事にモクモクを蹴散らしてご満悦の奥穂奇襲部隊。

B旦那も放心状態ですっかりエクスタシーに到達。

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ここまでの激戦もあってすっかり脱力状態。

長年我々を苦しめたストーカーのモクモクさんを、ついに追い払ったのだから無理も無い。


さああとは一夜かけてじっくりと大快晴の時を待つのみ。

明日に向けて英気を養う必要がある。


そして我々は挟撃作戦本部の「穂高岳山荘」へ。

今回は行程のハードさを考慮して、重いテン泊装備を回避して山小屋泊という軟弱路線をチョイスしていたのだ。

しかし基本的にテントでしか寝た事が無い奇襲部隊は、いまいち勝手が分からずにオロオロするばかり。


案内された部屋の名は「笠ヶ岳」。

窓から名峰笠ヶ岳が眺められるという、なんとも贅沢なお部屋だ。

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いつもなら眺めが真っ白だから、この部屋も「精神と時の部屋」になりかねない場面だが今日は違う。

モクモクを撃破した我々には、空想しないでもちゃんと肉眼で笠ヶ岳が確認できている。

もうそれだけで十分な幸せに包まれてしまうという、幸の薄い3匹のマゾ。


しかもこの紅葉シーズンまっただ中の繁忙期に、一人につき一つの布団が確保されたという幸運。

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この日の涸沢の小屋の方は「布団1枚に4人が押し込められる」という奴隷船状態だと聞いていたから、ホッと胸を撫で下ろすB旦那。


さあ、いよいよお楽しみの夕食のお時間です。

食堂には美味しそうな夕食と、楽しげな登山者が沢山溢れている。

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なんとも平和的で暖かなる光景。

しかしこの明るさと温かさは、我々のような薄幸マゾにはまだ刺激が強すぎる。

マゾはマゾらしく、分相応に外で自炊でもしていればいいのだ。

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たった1,800円の夕食代をケチったばかりに、寒風吹きすさぶ3,000mの稜線上で自炊を余儀なくされた男達。

せっかくの小屋泊なんだからとことん甘えればいいものを、己に厳しいマゾ達は他人に対する甘え方が分からない。

こんな形でしか夕食を食べれないという、実に不器用な男達なのである。


そして寒さでガタガタ震えながら、身を寄せるように一つの小さな鍋で作った棒ラーメンを分け合う。

山荘の窓からは、哀れな乞食でも見るかのように宿泊者が我々を眺めている。

これが世に言う「穂高岳山荘前・一杯のマゾそば騒動」の顛末だ。


そして残り汁にご飯を投入して、わかめの味しかしない雑炊をすする。

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気分は漫画家を目指して上京して来た男達のトキワ荘的風景。

しかしみすぼらしくても夢だけは十分にその胸に抱いている。

目的は豪華な晩飯ではない。

あくまでも明日の大絶景が全てなのだ。


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一方、涸沢陽動部隊。

こちらはあくまでもこの日の晩餐が目的で来ている男達だ。


こちらも見事に紅葉ジェットストリームアタックに成功し、すっかりご満悦のペアルックおじさん達。

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ビビるSに至っては、もうこの時点でおでん食ってビールを数本空けてご機嫌状態。

何故か登山前よりかなりふっくらしている気がするのは僕だけだろうか?

顔がパンパンになっているのは気圧のせいじゃない気がするがいかがか?


そして奇襲部隊が「一杯のマゾそば」を細々と食っている時。

ビビるSの夕食は以下の通り。


デミグラスハンバーグ、ロールキャベツ、ポテトサラダ、リゾット、etc...

もちろんおでんも食っているし、チーズやお菓子などの大量の酒のつまみも持参している。

そこに500mlの缶ビール4本と1Lワインの合わせ技。


彼は登りでフラフラだったらしいが、明らかにこの辺に大きな原因が潜んでいる気がしてならない。

確実に余計な荷物を持ってき過ぎている感が否めない。

そして残念ながら、せっかく頑張って消費したカロリーをここで必要以上に大量オーバー摂取。

そしてたらふく酒を飲み、みるみる顔を赤らめて行くセルフ紅葉男。

これが世に言う「涸沢カール・紅葉堕落男」の顛末だ。



一方で小木K。

彼は矢作Cから「まるで生麺」でお馴染みの「マルちゃん正麺(乾麺)」を持って来るように言われていたのを、手違いによりマルちゃん製の「生麺」を持って来たというまさか。

彼はまるで生麺どころか、本物の生麺を担いで来てしまったのだ。

しかもわざわざ自分の奥さんにスーパーを3軒も回らせてマルちゃん製の生麺を探してもらったらしい。

恐らく大量にいた涸沢テント泊の人の中で、生麺を持参した人間は彼一人だったはずだ。


そして驚く事に、彼が持って来たガス缶の中身が空だったという「追いまさか」。

小木Kは「水」と「ガス」という、二大ライフラインをあえて空の状態で担いで来たという革命児。

そして特記すべきは、矢作Cのガス缶を本人がいない時に勝手に使ったという傍若無人ぶり。

これが世に言う「涸沢カール・理不尽生麺男」の顛末だ。



一方でガスのみならず、ここまでポカリやらコーヒーやらをことごとく小木Kに奪われて来た矢作C。

何故か彼は、自分のテントの中に大量のニンニクが投入されていたというミステリーに巻き込まれる事になる。

よくよく問いただすと、やはり犯人は傍若無人男・小木Kの仕業だ。


小木Kはニンニクを焼いて食うつもりだったらしいが、なんと矢作Cが焼き網を持参してくると「勝手に」思っていたらしい。

当然矢作Cは頼まれてもいない焼き網を持って来ているはずが無い。

それを知った小木Kが「だって臭いもん」という理由だけで、そのニンニクを本人がいない隙にそっと矢作Cのテントに投入。

しかも荷物の奥の方に入れるという実に手の込んだ犯行。

結果的にそれを発見して怒った矢作Cが、小木Kのラーメンに大量のニンニクを投入。

これが世に言う「涸沢カール・悪臭ニンニク男」の顛末だ。


こうして涸沢陽動部隊の夜の戦いは続いて行く。

全ては明日の大快晴紅葉に向けた彼らなりの苦しい戦い。

維新前夜の水面下で行われた激しい同士討ちの夜は、こうして更けて行くのである。


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その頃、奥穂奇襲部隊。

眼下の涸沢カールを見ながら雑炊を食い終わる頃。

遠くの涸沢テン場には、星のようなテントの灯りがポツポツと灯り出す。

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空はまだ曇ってて星空は見えないが、これはこれで十分に美しい。

しかしこの灯りのどこかで「紅葉堕落男・理不尽生麺男・悪臭ニンニク男」の汚らしい中年達が戦っていることはもちろん知らない。


すっかり外は寒いので、山荘内のロビーにて他の登山客の人を交えて談笑。

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小屋泊というものは初体験だったが、ここでは色んな人とすぐに仲良くなれるからとてもいい時間が過ごせる。

これはストイックなテント泊には無い良さで大変よろしい。


そんな中、我々の同室に現れたこの男。

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この時はまだただの「同室の人」だったが、後に彼が我々の維新達成の運命的な役割を演じる事となる。

まさにハママサ同盟が「薩長同盟」であるとするならば、彼は「坂本龍馬」。

もはや彼はマゾという言葉だけでは語れない、マゾ界の大革命児。

その名も「レボリューションI」という名の変態マゾ超人なのだ。


なんと彼は僕が初めて出会った本物の「トレイルランナー」。

僕のような育児の合間に無理矢理やってる「早朝育児トレイルランナー」とは訳が違う。


彼はまず通常登山タイムが10時間くらいかかる槍ヶ岳までを「4時間半」で駆け上がり、そこから大喰岳・中岳・南岳と3,000m峰を次々に撃破。

そして日本屈指の難関ルート・大キレットをガシガシ進み(これだけでもすごい事)、北穂高岳・涸沢岳を越えて奥穂高岳山荘へ到達。

上高地のかっぱ橋を出てから、通常なら18時間半かかる難関ルートを実に「10時間半」で駆け抜けて来たと言う変態さ。

もう我々のマゾ等は、ダルビッシュを前にした野球少年のようにもろくはかないものに感じてしまう程の見事なマゾっぷりだ。


この変態マゾ超人・レボリューションIとの邂逅が、今後の維新の吉と出るのか凶と出るのか?

維新の歯車はいよいよ大きく動き始めたのである。


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そして夜も更けて涸沢陽動部隊。

写真を撮らない従軍キャメラマン矢作Cが、この局面に来てやっと動き出したのだ。

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涸沢に咲いたテントが織りなす素敵な紅葉。

さすがの美しき光景だ。

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しかしあまりテントを離れて写真ばかり撮っていると、例の傍若無人男にまたテント内に変なものを投入されてしまう。

あの男がいる限り、矢作Cとしては結局落ち着いて写真を撮る事なんてできはしないのだ。


一方その迷惑男小木K。

彼はさすがにテントで大人しく音楽でも聴こうと、スマホで音楽再生。

しかしヘッドフォンが本体に刺さっておらず、大音量で音楽が放出。

たちまち涸沢テント場に響き渡る大音量の音楽。

しかも再生されたのは「ももいろクローバーZ」だったという悲劇。


40手前の中年が巻き起こした「大音量ももクロ騒動」という羞恥プレイ。

そんな中でも、チーズ片手にまだワインを飲み続けてる男もいるというカオスな世界。

もはやこれは「二重遭難」と言ってもいいのではなかろうか?

いよいよ涸沢カールが大変な事になって来たようだ。



そしてこの後、一応色んな事を反省したのか彼らはささやかな「反省会」を開いたらしい。

やれこの荷物が重かった、この荷物が余分だった、やれ水分が足りなかった、etc...

そして最終的に彼らが導き出した答えは、「全てあのマゾ野郎が悪い」という驚きの結果に。


彼らの見解によると、どうやら僕が計画段階で彼らの事を「涸沢平和組」と言っていた事が今回こんなにしんどい結果になった事の原因だと言うのだ。

平和組って言うから、ピクニック気分で重い荷物や余計な荷物を担いで来てしまったというのが彼らの言い分。

そして最終的に自らの敗因を僕に押し付けて反省会が終了したと言うまさか。

さすがはチーム・マサカズと言うほか無いだろう。


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二日目の朝。

維新達成の朝が来た。


まだ暗いうちに外に出ると、なんと昨晩は見る事が叶わなかった星空がご登場。

そして流れ星も流れてると言う素敵なスタートだ。

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実はこの写真は命がけで撮ったもの。

この時点で三脚もレリーズ置いて来た僕は、岩に体とカメラを固定して十数秒間息を止めて撮影している。

結果的に流れ星に対して、一言もお願いごとが言えなかったばかりか死ぬ所だった。

モーニングマゾとしてはまずまずだろう。


そして空が白み始めてくる。

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下の方ではキラキラと涸沢のテントの光。


やがて常念岳方面が暖かな光に包まれ始め、

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前穂高岳方面には素敵な雲海が現れ、

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その常念と前穂の中間から、「勝利」という名の日輪がご登場し、

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ついに維新達成の朝がやって来たのだ!

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完璧なる朝。

今までの苦しい戦いがあってこその勝利の朝だ。

昨日出会った坂本龍馬ことレボリューションIと共にご来光を眺め、みんなで「マゾの夜明けぜよ」と言ったとか言わなかったとか。

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感動に打ち震えるご来光慣れしていない奇襲部隊の面々。

そう、これは想像でもCGでもない。

紛れもない事実なのだ。


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その頃、涸沢陽動部隊からは位置的にご来光は見えない。

しかし徐々に上の方から穂高の山が陽光に照らされて行くと言う新種のご来光体験。

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これはこれで、ここでしか味わえない素敵な勝利の瞬間だ。

そして昨晩、痛々しい二重遭難を見せつけた二人も優雅な朝のひと時。

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しかしいかにもモーニングコーヒーを楽しんでいるかのようなこの光景だが、なんと彼らが飲んでいるのは「ワイン」だったという衝撃。

堕落への滑落っぷりが凄まじすぎる。

もう誰も彼らの勢いを止めることは出来ないようだ。


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マゾの夜明けを堪能した奥穂奇襲部隊。

上から眺める涸沢のテン場もいよいよ日光の恩恵を受けそうな勢いだ。

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もちろん、あそこで朝っぱらからワイン飲んでる奴がいるなんて微塵も思っていない奇襲部隊。


太陽はぐんぐん上がって行き、オレンジだった空がいよいよ突き抜けるような蒼穹の世界へ。

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もうここからは何もマゾる必要なんて無い。

ただただこの世界を楽しめばいいだけなのだ。


そして浮かれた爽やかさん達で、これから目指す涸沢岳バックに記念撮影。

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注目すべきはここに山ガールさんがいるという浮かれプラスポイント。

もう覚えてる人は少ないだろうが、彼女は行きの天然クーラーで出会ってから一度も抜きつ抜かれつが出来ずに、結局山荘でやっと追いつけたという「くノ一奇襲部隊」のメンバーだ。


そしてここから我々は涸沢岳を目指すが、一方で変態超人・レボリューションIはさらなる革命戦線に向かって旅立つ。

前日に我々が「この先はマゾが神の領域になったら行こう」と言っていた、滑落必至の「奥穂〜西穂」の変態ルートに向けて旅立って行くのだ。

そんな彼の生前の最後の1枚を撮ろうと、山荘前で送別撮影。

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そしてこの写真を撮り終えると、彼は「ほいじゃあ、ちょっくら行って来るきにの。また会おうぜよ。」と言ったとか言わなかったとか。

ふらりとコンビニにでも行くような感じで奥穂方面に進み、

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風のように岩の中に消えて行った。

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実に美しきマゾマスターの後ろ姿。

縦横無尽に、そして自由闊達に北アを駆け抜ける革命の風雲児だ。


そして負けじと我々も涸沢岳目指して出立。

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奥穂方面を振り返ると、早くも中腹まで到達している米粒のようなレボリューションIの勇姿が見て取れる。

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思いっきり拡大してみると、こっち見てガッツポーズしている。

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これから日本屈指のマゾルートを攻める男と思えない、悲壮感ゼロの陽気なマゾ男。

まだまだ我々の知らない、奥深いマゾの世界が存在しているようだ。


しかもそのマゾマスターは、わずかに残ったモクモクの残党までしっかり引き連れて行ってくれた。

彼のいる所だけが見事にモクっている。

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そしてこの直後、彼がいるあたりでものすごい落石音が発生。

これは人が落ちたんじゃないかってくらいの大音量の落石音が、重々しく山間に響き渡った。

我々は「レボリューションIが滑落したぞ!」と真っ青になったが、彼がどうなったかはモクモクのベールに包まれて確認が出来なかった。

果たして彼は生きているのか?

しかしこれはまだ彼の革命の序章にしかすぎなかったのだ。


レボリューションIが消えて行ったのを確認した我々も、頑張って涸沢岳を目指していた。

しかし前日の難関をくぐり抜けて来た我々にとっては、涸沢岳は全く敵ではなかった。

あっという間に、この最終拠点の制圧に成功したのだ。

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ついに3つ目の3,000峰「涸沢岳(3,110m)」を制覇。

そして今までの2峰と違うのは、ここからの眺めが「白くない」という事実。

ついに我々は絶景の展望と言う憧れの舞台に立つことにも成功したのだ。

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このあまり経験が無い出来事に慌てふためくバターN。


南方には昨日撃破した前穂高岳の勇姿と、太陽と雲海。

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東方には、昨日レボリューションIが駆け抜けて来たと言う大迫力の北穂〜涸沢間の変態ルート。

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そして奥には因縁の相手槍ヶ岳さんがどっしり。

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さらに北方を見れば、昨晩のルームメイト笠ヶ岳。

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そして西方は、昨日の激戦のお相手奥穂高岳とモクモク残党引き連れ中のレボリューションI。

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まさに360度の大絶景。

これには溜まらず、ここまでモクモクに辛酸をなめさせられ続けて来た僕のガッツポーツが弾けまくる。

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しかしこんな時でもしっかり逆光で、もはや本人かどうかすら分からない写真になるのはさすがと言った所。

快晴の富士山頂の時も同じような状態で「本当に本人なのか?」と疑われたものだが、紛れも無くこれは私です。

※参考資料:富士山頂の本人疑惑写真↓

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やがて奥穂高岳山頂付近のモクモク残党が、レボリューションIによって蹴散らされた模様。

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これにてついにその姿を現したサドボス。

日本屈指のサディスティックロックマウンテン「ジャンダルム」がご登場だ。

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フランス語で憲兵を意味するこのジャンダルム。

拡大すると数人の登頂者が見えるが、それがレボリューションIであるかはわからない。

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B旦那達は「いずれ落としてみせる」と息巻いていたが、極度の高所恐怖症の僕としては想像しただけで涙ぐんでしまう恐怖。

なんせここは生半可な技術と度胸で挑んでいい場所ではない。

事実このジャンダルムで、不幸にもこの1週間後に滑落死亡事故があった模様。

しかしそんな場所に向けて笑顔全開で突っ走って行ったレボリューションIは、本当にステージの違うマゾ神だ。

いつか僕の子供達が立派にが巣立った時、僕もこのジャンダルムに挑戦して人間界から巣立って行こうと思っている。


さあ、今は目の前の戦いに集中だ。

一旦穂高岳山荘まで下山し、いよいよここから涸沢カールに向けて攻め入って行くぞ。

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待っていろよ、涸沢陽動部隊の仲間達よ。

悲願の維新達成まであと少し。

ハママサ同盟の合流にて、大快晴の大紅葉というこの北ア維新は達成されるのだ。

感動の瞬間はすぐそこだ。


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その頃、涸沢陽動部隊。

この段階で、ワインにまみれたビビるSが歴史的な名言を吐く事になる。


2013年10月6日午前8時頃。

ビビるSは言った。


「もう下山しちゃおうぜ。あいつらなら追いつくやろ。」と。



実に431年前の名言「敵は本能寺にあり」以来の衝撃的な裏切り発言が炸裂。

後の小木Kの証言によると、ビビるSの表情には一点の迷いも見受けられなかったという。

ここに涸沢組によるまさかの革命返し「涸沢カールの変」が勃発したのだ。


これから陽が射して涸沢カールの大紅葉が本番を迎えるというのに。

奴らの目的は紅葉よりもビールとワインだったのだ。


まさかの亀裂分裂を迎えたハママサ同盟革命軍。

このままでは「挟撃」という作戦が瓦解し、大快晴・大紅葉・大絶景の北ア維新達成は不可能だ。

かと言って他にこの奇襲部隊と挟撃作戦を実行できる奴なんていやしない。

もはやここまでなのか...。


この絶望的状況。

それでも維新達成に向けて諦めない奥穂奇襲部隊の運命は?



その模様は次回お送りして行こう。

というか、前回は「次回はザイテングラート編」と言っておきながら、結局ザイテングラートにまで辿り着く前に記事を終わらせてしまった。

急遽タイトルも「涸沢岳編」に変更した事をお詫びいたします。

中々完結しなくていい加減疲れて来ているが、いよいよ次回は完結編のはず。

なんだか無理矢理連載を伸ばそうと苦心する終了間際のドラゴンボールみたいなあがきっぷりだが、もうしばらくお付き合いを。



さあ。


次回は涸沢裏切り部隊に変わる「救世主」が出現する事になる。

しかもその新たな挟撃パートナーは「二人」も出現する。

あまりにも意外すぎる男二人による「新・紅葉挟撃作戦」の発動だ。


果たして悲願達成なるのか?

大紅葉を堪能する事は出来るのか?

そして次回無事に完結できるのか?



あなたは歴史の証人になる。




紅葉挟撃作戦7〜完結編〜へ  つづく


紅葉挟撃作戦5〜奥穂高岳編・逆襲のマゾ〜

Posted by yukon780 on 23.2013 前穂〜奥穂〜涸沢/長野 0 comments 0 trackback
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天に拳を突き上げる志士達。

ついに革命達成の瞬間が訪れたのか?

それともラオウ的な絶命の瞬間を迎えてしまったのか?


あまりにも長過ぎてマゾ過ぎたここまでの道のり。

北アルプス屈指のわんこマゾルートを乗り越え、ついに吊り尾根戦線も佳境に。

目指す北アルプス最高峰・奥穂高岳(3,190m)の頂まであとわずか。


奥穂高岳は北ア維新達成の為の最重要拠点。

ここを陥落させる事により、北ア維新への土台は完成する。


そして奥穂高岳の先にある穂高山荘に「奥穂奇襲部隊」を配置。

その真下の涸沢カールに待機している「涸沢陽動部隊」と呼応。

このハママサ同盟二軍による必殺の「紅葉挟撃作戦」で、二軍の中間に鎮座するモクモク幕府を挟撃。

そして見事に「快晴奉還」を達成し、最高の大紅葉を満喫する為の革命戦。


いよいよ大詰め段階に突入した作戦コード「赤きマゾの血」。

男達の反撃が、今始まろうとしている。


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ついに吊り尾根最終ステージに辿り着いた奥穂奇襲部隊。

いよいよ天空の岩壁決戦が始まった。

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凄まじきスケール感。

後方にはこれまで吐き気をこらえながら撃破して来た、禍々しい吊り尾根の道のり。


限界という言葉では足りないほどの疲労感。

果てしない頭痛と、信じられないほどのワイルドな体臭に包まれた瀕死のおっさん達。

もうここまで来ると恐怖感は消え、ただただ無心で登るだけのマゾマシーンと化す。


そしてそこにはひたすらに無感情な岩の世界が展開し、聞こえるのは男達の荒く太い息づかいのみ。

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まるで終盤の加藤鷹のような荒い息づかいが天空の世界に響き渡る。

多くの人が終盤の加藤鷹のやり過ぎ息づかいに対して不快感を感じているだろう。

しかし奇襲部隊のこの息づかいが炸裂したと言う事は、まさにこの長い旅路のフィニッシュを視聴者にお知らせしているという彼らなりの優しさなのだ。

そう、まさにここが昇天間際の攻防戦だ。

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一歩一歩が激しく重く、誰もが無言になる時間帯。

正直、朝の上高地付近での出来事なんて思い出す事も出来ない。

もう本来の目的も忘れて来て、ただただ刑に服しているような気分だ。


そして何度も何度も山頂の幻を見ては「あ...あれ、頂上じゃない...?」と誰かが呟き、それがただの岩の影だと分かるとその場に倒れ込みそうになるの繰り返し。

その度に精神と体力は削られて、さらに体が重くなると言ったマゾ循環。

これは永遠に終わる事無い、奥穂と我々の壮大なるSMプレイだ。


そんな中、遠くにまたしても何度目かの山頂らしき幻。

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あれがもしまたニセ山頂で山頂手前の「南稜の頭」だったら、恐らく我々は二度と立ち上がる事は出来ないだろう。

そしてその場で最後の力を振り絞って、遺書を書く事が精一杯だろう。

せっかくだから嫁への溜まりに溜まった苦情も書き添えてやる。

そして三河武士らしく前のめりで死んでやるまでだ。


そんな悲壮な覚悟で、その場にあった本日何本目か分からない鎖をよじ登ると、

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なんと「南稜の頭」と書かれた標識が。

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やはり先ほど見たものは幻ではなかった。

ここが南稜の頭ならば、この先にあるのが真の山頂。

ついに奥穂高岳の頂をこの目に捉える事が出来たぞ。

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この時のホッとした感が想像していただけるだろうか?

永遠に終わらないと思われたこのマゾ過ぎた戦いが、やっともうじき終わるのだ。

この安堵の表情を見ていただければ、この時の喜びが伝わるだろう。

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背景が白いのに、こんなに嬉しそうなこの男の顔を今まで見た事が無い。

いつもならグッタリ肩を落とす場面なのに、もう景色なんてどうでもいいという心境にまで追いつめられていたのだ。


そして大分前から精神が破壊されているこの二人も、狂ったように「ジャンー!ジャンー!」と叫んでいる。

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しかし彼らが叫んでいる方向は真っ白な世界。

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ついに気が触れてしまったのか?

どうやら本来晴れていれば見えるはずの「ジャンダルム」に向けて叫んでいる模様。

ジャンダルムの姿は全く確認できないが、彼らには見えているんだろう。

ここまでの長い修行によって、彼らの心眼はさらに強化されたのだ。

そう、もう今の我々にはモクモクカーテンによる景色シャットアウトなんぞ通じない。


マゾが極まった我々にはもう怖いものは無い。

高山病の頭痛も受け入れるし、この時点で絶景なんていう浮かれたものも望まない。

欲しいのは明日の「快晴大紅葉」のみ。

その大革命の為なら、今日一日を完全マゾ日にする事もいとわない。

絶対に泣かないぞ。


しかし、そんな荒みきった我々に「あなた達はよく頑張ったわ」と囁く声。

ご雷鳥さんの優しきツイートだ。

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このボロボロの段階でのこの優しすぎる存在感。

我が嫁にも、1mmでもこの雷鳥的な優しさが欲しいものだ。

マゾに汚れ過ぎた我々には、この時のご雷鳥は天使のような美しさに感じた。


さあご雷鳥が出たと言う事は、いよいよ最後のビクトリーロード。

最重要拠点制覇まであと少し。

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振り返れば、信じられないほどのフラフラな姿を惜しげも無く見せつけるバターNの勇姿。

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かつてこれほどのギリギリ感で登頂を果たした男を見た事が無い。

24時間マラソンよりも、よっぽど国民の感動を呼びそうな程のフラフラ登頂。

会場のみんなも涙ながらに「負けないで」を熱唱。

うなぎのぼりに上がって行くチャリティーバター募金の額。


やがてバターNがついに武道館に入って来た。

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歓声とサライに包まれる奥穂チャリティー会場。

バターを先導するサポートの坂本さんも、いよいよ奥穂の山頂をその視界に捉えた模様。

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そして一歩一歩その重い足を引きずりながら、日本国民1億2000万人の夢を乗せて突き進む奥穂奇襲部隊。

やがてついにゴールテープを切り、

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本日二番目の3,000m峰、最重要拠点、

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奥穂高岳を占拠だ!

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もはや芸術的と言っていいほどの白すぎる背景をバックに、果てしない達成感に包まれる修行僧達。

今まで見た山頂からの絶景の中でも、群を抜いて白い。

さすがは北アルプス最高峰の白だ。

もはやスタジオ撮影のような完璧なるホワイトバック。

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高山病ブラザーズも頭痛と歓喜に包まれて、ご機嫌でご危険な状態。

まさに今我々は北アルプスで最も高い場所にいる変態になったのだ。


そして前方には、いつか行くであろう「本物の世界への入口」が怪しく雲の中へ伸びている。

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ここが日本登山最難関ルート「奥穂〜西穂」の地獄の世界への入口。

この先は選ばれたマゾしか足を踏み入れては行けない領域。

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漂っている魔のオーラが凄まじい。

これはまだまだ我々レベルの草野球程度のマゾの叶う相手ではない。

しかしいつか我らのマゾが神の領域に踏み込んだ時。

この先の世界の扉は開かれるのだ。


今はまだそっちの世界で死ぬわけにはいかない。

今回の目的はあくまでも紅葉挟撃作戦の成功。

最重要拠点を占拠した我々は、一路作戦決行の地「穂高山荘」を目指して下山して行く。

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やがて霧の中に亡霊のように出現して来た穂高山荘発見。

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まさに切り立った稜線上に作られた天空の城。

いよいよこの長過ぎた一日が終わる。


しかし気を抜いた我々に最後の追い打ち。

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ちょっと何やってるのさ?

もう普通にゴールさせてくれないだろうか?

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実は何気にここを降りて行くのが今日イチで恐ろしかったりする。

結局我々はスタートからゴールまで、徹頭徹尾マゾることに成功したのだ。

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そしてこの時点で、初めて我々は涸沢の様子を知る事が出来た。

まんまと我々の迂回作戦は功を奏し、見事にモクモクの上部に回り込む事にも成功したのだ。

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そしてはやる気持ちを抑えながら、ついに挟撃作戦決行本部「穂高山荘」に到達。

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実にスタートから10時間以上。

本当に辛くて長い道のりだった。


しかしここでのんびり休んでいるわけにはいかない。

とても面倒くさいが、我々は急いで作戦成功祈願の為の儀式を執り行う必要があるのだ。

その表情からも、この儀式のうっとうしさが伺える事だろう。

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本当はこんな事はしたくないんだが、これも作戦を成功させる為だ。

仕方あるまい。


そして眼下に何も知らないモクモクを見下ろしながら、いよいよその瞬間を待つ。

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見事挟撃作戦を成功させて、この涸沢に溜まったモクモクを蹴散らしてくれるわ。


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同時刻、涸沢ヒュッテ付近。

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奇襲部隊の穂高山荘到着をジッと待っていた涸沢陽動部隊。

もちろんこの時点で彼らの頭上は、相変わらずモクモクに包まれている。

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ビールとワインにまみれて浮かれている陽動部隊に夢中のモクモクさん。

もちろん背後にいる奇襲部隊の存在には全く気付いていない。


見事に上と下からの挟み撃ちの形が整った。

時は熟した。


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モクモク上部・奥穂奇襲部隊。

今こそ陽動部隊に合図を送って作戦決行。

奇襲部隊は渾身の「負の力」を集結させ、ワキからの加齢臭とともにマイナスイオンパワー放射。

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溜めに溜めたマイナスの力がモクモクに降り注ぐ。


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モクモク下部・涸沢陽動部隊。

上空から降り注ぐマイナスパワーを受信。


すかさず戦闘服に着替えて、下からもモクモクめがけてマイナスシャワー放出。

必殺の「紅葉ジェットストリームアタック」が放射状に炸裂。

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偶然持って来たダウンジャケットが同色だったという悲劇。

おっさん三人の痛すぎる、この「ホモイスティック」な赤い光線がモクモクに襲いかかる。


上から「加齢臭マイナスイオンシャワー」。

下から「紅葉ジェットストリームアタック」。

ついにここに「紅葉挟撃作戦」が発動したのだ。


山間に響き渡る「ぎゃああああああッッッ」というモクモクさんの断末魔。

完全に不意をつかれた見事なる挟み撃ち。

ついにモクモクさんが「ぱああああ」っと切り裂かれ、ついに涸沢紅葉の全貌が現れる。

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その模様は上空の奥穂奇襲部隊からも確認できた。

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みるみる眼下のモクモクが切り裂かれて行く。

そして我々の目からもハッキリと涸沢陽動部隊のいる場所が確認できるようになった。

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随分離れているが、ついに11時間ぶりに再会を果たしたハママサ同盟。

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この壮大な北アルプスを部隊に発動させた渾身の「紅葉挟撃作戦」は、素晴らしい連係プレイによって今見事に実を結んだのだ。

これにより強力なマイナスの結界が張られる事になり、モクモクさんは這々の体で常念岳方面へ流れ逃げて行った。

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慌てて逃げるあの情けない姿よ。

ついに悲願のモクモク退治に成功したぞ。


しかし肝心の「快晴奉還」に関しては、まだあと一晩置く必要がある。

夜の星空は諦めるしか無いが、一晩かけてじっくりと負のパワーで挟み込み、この北アルプスを強力なプラス世界に変える必要がある。

本当の意味での維新達成は、明日の「快晴」によって成されるのである。


さあいよいよ明日、我々の紅葉挟撃作戦も総仕上げ。

恐らく明日はモクモク幕府から「快晴奉還」が発表され、北アルプスは大快晴に包まれる予定。


そして奇襲部隊はさらに万全を期すべく、三番目の3,000m峰「涸沢岳」を陥落させる。

涸沢岳を落とせば、前穂高岳・奥穂高岳を含めた全ての拠点の制圧に成功。

そして盤石の体制にて一気に涸沢陽動部隊の待つ涸沢カールへと攻め込むのだ。


そこでついに大快晴で大紅葉で大絶景の中、「ハママサ同盟」が夢の合流。

その時に初めてこの革命は完結を迎えるのだ。


しかしその合流への道に立ちふさがるは、最後の難関「ザイテングラート」。

何だか重太郎や吊り尾根と違って、横文字になるだけで妙にミステリアスで危険な匂いが立ちこめてくるネーミング。

ザイテングラートとはドイツ語で「岩壁の側面の支稜」とある。

この「岩壁の側面」というワードに、非常に抜き差しならないサディスティックな予感を感じずにはいられない。


しかしここまで来たからには必ず陽動部隊との合流を果たし、完全勝利の雄叫びを上げるのだ。

もう勝利は我々の手中にあるも同然。

このまま事を順調に進めれば負ける事は無い。


そう。


誰も裏切らなければ...。




紅葉挟撃作戦6〜ザイテングラート編〜へ  つづく



紅葉挟撃作戦4〜吊り尾根編・瀕死のドリフターズ〜

Posted by yukon780 on 23.2013 前穂〜奥穂〜涸沢/長野 0 comments 0 trackback
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北アルプス山中に転がる一体の死体。

現場は天下の変態一本道「吊り尾根」。

ついに革命奇襲部隊に一人目の犠牲者が出てしまったのか?



思いがけない作戦変更によって、過酷な挟み撃ちに遭う奥穂奇襲部隊。

それでも彼らは死力を尽くし、第一の難関・変態急登「重太郎新道」と、第二の難関・恐怖岩壁「前穂高岳」を撃破した。

そしていよいよ彼らは、奥穂高岳登頂に向けた最後の難関「吊り尾根」へとのその足を踏み入れる。


吊り尾根とは前穂高岳から奥穂高岳へと続く、まったく笑えない「お笑いマゾ道場」。

ついにここで「マゾ吉・バタミのおマゾコーナー」が始まってしまうのか?


一方で、ついに涸沢カールに到達した涸沢陽動部隊。

彼らの会心の逆陽動作戦「おでん・ビールまみれ作戦」が功を奏し、見事に本来の囮の役目から脱出。

彼らは彼らで新たなる戦いにその身を投じ始めた。


そろそろ書いてて疲れて来たこの「紅葉挟撃作戦」。

その終わりはまだまだ見えそうにない。


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前穂高岳との激戦も束の間。

わずかな休憩を経て、フラフラの男達が「吊り尾根」という名の地獄に吸い寄せられて行く。

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そしてこのマゾ道場の入口には「俺を越えて行け」と語る、男らしい矢印と○マーク。

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もうこの手の変態的手口を散々重太郎で味わって来た奇襲部隊。

もはや誰もこのわかりやすいボケにツッこむ事なく、ただ黙々と己の運命を受け入れて岩場に突入して行くのみ。

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この時点で誰もが気付いていた。

もうすでにここは限界だと言って引き返せるような場所ではなく、生きたいのであればこのまま突き進むしか道はないと。

この先にどんな変態的なボケが待ち構えていようと、我々には維新達成か死あるのみ。

ここからは実にシンプルな、生死の境を舞台にした消耗戦の始まりだ。


入口の岩壁を越えると、もう何がどうなってるのか分からない程の喧噪感。

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もちろんこのホリケン的な意味不明なボケに対しても、まるでツッこまないB旦那。

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その佇まいからは、前穂高岳までのハイテンションから一転して若干うんざり感が滲み出ている。

先ほどの一人プチ遭難で、彼のクライマーズ灰の効果は消失した模様。

これにて奥穂奇襲部隊の全メンバーが廃人化するという、抜き差しならない状況へと突入して行った。


そしてここの高度感たるや、まさに吊り橋を歩いてるかのような恐怖度。

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僕のケツの穴は終止「*」な感じでキュキュッと絞られ、イチモツも柿の種サイズに縮小傾向。

もうわざわざモロッコまで行かなくても、吊り尾根にいれば局地的性転換を楽しめるようだ。


そしてその気になれば、一歩足を横にずらすだけで「永遠に楽になれる」というエスケープルートがそこらじゅうにある。

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人生に疲れた人や嫁のサドに耐えきれない人にはお勧めしたい、滑落に持ってこいの変態トラバース道。

いつでも人生の途中下車が可能のこのルート。

そんな素敵な道が延々と続くので、人生を考え直す時間が沢山あるというのもおすすめだ。

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どこまでもどこまでも続く革命への道のり。

かれこれスタートから7時間程急登を登り続けて来た者からすると、この長大な距離感から来る絶望度は圧倒的なものがある。

その絶望感を例えるなら、やっと倒した重太郎ベジータの戦闘力が2万だったのに対し、吊り尾根フリーザが「53万」だと知ったときの絶望感に近い。

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今ここでこいつにフルパワーで向かってこられたら、軽いデコピンだけで我々は粉々に吹っ飛ぶだろう。

そしてそんな突然のフリーザの出現を前に、呆然と立ち尽くす戦闘力「1」の高山病男。

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しかし例え相手が宇宙一の強敵だろうと、我々は革命を成功させて神龍に「快晴の紅葉をおくれー」と叫ばねばならんのだ。


そんな悲壮な覚悟でさらに進んで行くと、「最低コル分岐」と書かれた場所へ到達。

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他に道もないし、地図にも分岐らしき場所は無い。

恐らくここが生と死の分岐点なのだろう。


そしてこの時点で、吊り橋で言う所の橋がたわんだ最下部に到達した事を意味する。

ここからは延々と緩やかに登って行くという、長い長い岩壁ロードの始まり。

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そして時折稜線上に出れば、逆側のエグレっぷりが放送禁止レベルのきわどさ。

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モクモクすぎてよく分からないが、この雲の下には間違いなく死神の大群が待機しているに違いない。

そしてその逆方向に、何やら巨大な悪魔の視線を感じて振り返る。

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あれはまさか、父さんが言ってた「竜の巣」か?

もはやそれは「中でラピュタ浮かんでます」と言った威圧感で、じっとこちらを見つめる巨大モクモク。

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ついにモクモク幕府の本隊、「モクモク将軍」がご登場だ。


あんなのに巻き込まれたら、落雷地獄に巻き込まれる事は間違いない。

そしてあっという間に感電滑落死。

最終的には「あの言葉」を呟いてしまうこと必至の絶望的状況だ。

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いよいよもう時間がないぞ。

午後の北アルプスの落雷はほんとにシャレにならん。

何とか1秒でも早く穂高山荘に辿り着かないと、ほんとに我々はリアルな吊り尾根ドリフターズ(漂流者達)になってしまうぞ。


しかしそんな切羽詰まった状況でも、相変わらずあの男の失速ぶりが素晴らしい。

ミスター高山病・バターNが再び長い長い牛歩戦術タイムに突入してしまったのだ。

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このままでは法案の成立は不可能だ。

一歩一歩の遅さはASIMOのスピードを遥かに凌駕しているぞ。


そしてかく言うヘルメットマゾおじさんも、果てしなく限界に近い場所まで到達していた。

一旦は落ち着いた高山病だったが、再びその勢いを盛り返してきた大頭痛。

その症状を分かりやすく例えるならば、かき氷を大量にかっ込んだ時のマックスの「キーーン」という状態がずーっと続いて、常時絶望が楽しめると言ったお得感。

そしてそんな涼を感じ過ぎて、ついにあえなく倒れ込む瀕死のマゾ。

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もうダメだ。

一体我々は何時間こんな事を続ければ救われるのか?

B旦那も放心状態で心がどこかに行ってしまっている模様で、感情が見当たらない。

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バターNなんて槍ヶ岳以来の苦悶の表情で、またしても人相が変わってしまっている。

いつもは笑顔の絶えない爽やかな男だが、彼は3,000m付近ではアシュラマンの様に表情を一変させるのだ。

※参考資料:槍ヶ岳時のバターN・限界の面↓

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しかしあの頃のバターNとは違う。

彼の高山病もマゾ魂も日々進化しているのだ。

彼はこの苦しみにまみれた段階で、なんと不敵に「ニヤリ」と笑ったのだ。

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この瞬間、ついに彼のマゾレベルがさらなる高みへ到達。

この悲惨な状況ですら愉悦に浸れてしまうという、本意気マゾの危険な領域へ。

ついにバターNの最終形態「ニヤリ高山マゾバター」が炸裂したのだ。


これにより、おおいに勇気づけられた奥穂奇襲部隊。

最後の火事場のマゾ力を奮起させ、ヨロヨロと進んで行く瀕死のドリフターズ。

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苦しいのは我々だけじゃない。

本来であれば、涸沢陽動部隊がテントを貼る涸沢カールが眼下に見下ろせるこの場所。

しかし涸沢カールはとてつもないモクモクに塞がれていて、この吊り尾根からは全く陽動部隊の姿を確認する事は出来ない。

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このモクモクの中で涸沢陽動部隊は頑張って戦っているんだ。

今我々が弱音を吐いてどうする。

今頃彼らもモクモクの中で苦しい時間帯を過ごしているに違いないんだ。

さあ、頑張って吊り尾根を越えて行くぞ。


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一方、涸沢陽動部隊。

奇襲部隊が「陽動部隊もモクモクの中で頑張っている」と信じていたその時。


そこにはすっかりビールとワインで浮かれまくった、ビビるSと小木Kの勇姿が展開していた。

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何故か頭上に大量のモクモクがいるが、見事に周辺は見通しが良くて紅葉も綺麗。

モクモクの中で必死に戦っていたのは「奥穂奇襲部隊だけ」という、思いがけない光景がここには広がっていたのだ。


ちなみに奥穂奇襲部隊の現在位置はここ↓

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この圧倒的な理不尽さは何事か?

同じ北アルプス内の同時刻の出来事とは思えない。

見下ろしているのは奇襲部隊の方なのに、明らかにこっちの勝ち組感のがずば抜けている気がする。


かつて無い笑顔で酒にまみれる男達と、かつてない苦行でマゾにまみれる男達が織りなす革命共同戦線。

この温度差は、さすがにハママサ同盟解消の絶対的ピンチだ。


しかしとある1枚の写真によって、そんな同盟解消の危機は回避された。

涸沢陽動部隊にもちゃんとマゾッてる男がいたという真実。

それは疲弊感たっぷりで、まるでテン場に迷い込んだ涸沢の猿みたいな矢作Cのこのグッタリフォトだ。

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突如涸沢に現れたフォトグラファー猿。

ここまでの登りで見事な「マゾ包み」を成功させてのテントインワン。

この姿を見れば、奇襲部隊としても納得のマゾ状態だ。


それにしてもこの時点でさすがの涸沢カール。

日が射していなくてもこの美しさだ。

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これは快晴になったらどんなに美しい事になってしまうのか?

いよいよ維新達成の瞬間が待ち遠しいばかり。

しかし奇襲部隊は、まだまだ彼らの頭上でモクモクと激戦中。

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この段階で、涸沢カールにいる人たちがこんなに紅葉を満喫中とは思ってもいない奇襲部隊の3人。

彼らは陽動奇襲部隊として、まだまだ「モクモク吊り尾根挟撃作戦」の真っ最中なのだ。


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すっかりモクモクの囮と化したその奇襲部隊。

もちろん彼らは紅葉に包まれる事無く、相変わらずハードな高揚感に包まれていた。

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何気なくダイエットで始めた登山だったが、いよいよ来る所まで来てしまったという感じがする光景。

先の方を見ると、米粒の様な人間が黙々と岩の中を彷徨い、

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上の方を見ると、岩壁をよじ登ってる亡霊のような登山者達が見える。

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僕はただ痩せたかっただけなのに。

一体どこから運命の歯車が狂ってしまい、このようなマゾランドの軌道に乗ることになってしまったのか?

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まあ来てしまったものはしょうがない。

登山を始めたきっかけがダイエットだったとは言え、今や立派に革命軍の奇襲部隊メンバーに選出されたのだ。

形は違えど、何気に現時点で随分とゲッソリして来たし。

ダイエットも出来てマゾも出来た挙げ句に革命まで起こせてしまう。

こんな幸せな人生が待っていたなんて僕は果報者だ。

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頭も割れんばかりに痛いし景色の90%はモクモクだけど、しみじみと山って良いなあと思う男。

こうして過酷な状況を無理して楽しもうと思ってしまうから、登山者はみんなマゾ野郎になっていくのだ。

一般的な目線で見れば、十分に哀れな人たちなのに感覚が麻痺して行くんだね。


そんな感じの哀れな男達が、ここまでの大量の汗による加齢臭を周囲にまき散らしながらせっせと岩壁を登って来る。

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で、ついに上を見上げると鎖付き大急登のスタート。

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ここに来て吊り尾根も最後の総仕上げに入って来た。

重太郎と前穂高岳の急登感に、吊り尾根の高度感がミックスしたスペシャルマゾミックスタイムが始まるのだ。


改めて振り返れば、奇襲部隊が虫の息で突き進んで来たここまでの道のりが見て取れる。

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あまりにも長大で変態すぎた吊り尾根さん。

幾度も心が折れかけ、バターも溶けかけてしまった地獄のマゾ一本道。


しかしそんな長過ぎた吊り尾根ともここからが最後の戦い。

もう我々は北アご入店から9時間近くこんな変態達と戯れて来たが、そろそろもうお腹一杯だ。

前菜からデザートまで、全て肉が出て来たと言ったフルコース満足感。

何度吐いても、次の肉が皿に盛られてしまうという絶望的な「わんこマゾ」。

それが我ら奥穂奇襲部隊が選んでしまった道のりなのだ。


さあ、それでも北アルプス最高峰の頂まであと少しの所まで来た。

何度口にしたか分からないが、もうあと少しでこの苦行から解放されるぞ。

もう一踏ん張りだ。


しかしそんな24時間マラソンで言う所の「26時間目の限界男達」の前に立ちはだかる、重々しい黒光りの鎖と急登と高度感たっぷりの岩の城。

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彼らは見事に最後の吊り尾根の難関を突破できるのか?

そして3,190mの奥穂高山頂にて勝利の大絶景に包まれる事が出来るのか?

それとも脱出間際で死んでしまった、ポートガス・D・エースのような大惨事が待っているのか?


さらにその先の穂高山荘では、真のマゾ革命家「坂本龍馬」が待ち受ける。

そして北ア維新の瞬間は刻一刻と近づいてくる。


マゾの夜明けは近いぜよ。



紅葉挟撃作戦5〜奥穂高岳編〜へ  つづく




紅葉挟撃作戦3〜前穂高岳編・絶望ワンダーランド〜

Posted by yukon780 on 16.2013 前穂〜奥穂〜涸沢/長野 2 comments 0 trackback
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各地で激戦の火蓋が切って落とされた北アルプス紅葉戦線。

絶望的な戦いの中に身を投じて行く6匹のマゾ達。

いよいよ疲れ果てた中年の肉体が崩壊し、北アルプスに漂い始めた苦渋の加齢臭。

男達の戦いはまだまだ始まったばかりだ。


奥穂奇襲部隊では、「失速高山病男」「精神破綻ハイテンション野郎」「歯痛ヘルメットおじさん」など、各人が正気を失う壊滅状態。

それでも維新達成を信じて、ただただ愚直に重太郎新道を駆け上る手負いのマゾ3匹。


一方で涸沢陽動部隊も初歩的なミスの乱発で、「失水うまい棒男」「ワイン歩荷野郎」「置き去りキャメラマン」などの目も当てられない自滅状態。

それでも彼らも維新達成のため、ひたすら囮となって涸沢カールを目指す。


しかし陽動部隊の異変に気付いたモクモク幕府が、ついにその本隊を出撃させる。

果たしてモクモクは涸沢陽動部隊に引きつけられるのか、それとも奥穂奇襲部隊の追撃に打って出るのか?


ひしめき合うそれぞれの思惑。

広大な北アルプスの各地で激戦の銃声が響き渡る。

男達の怒号が飛び交う北ア維新革命戦。

快晴奉還の大紅葉に向けて、血で血を洗う乱戦がここに始まった。


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岳沢パノラマの大絶景を堪能した奥穂奇襲部隊。

しかしまだまだ重太郎軍との戦いは終わっていない。

小休止の後、再び動き出すフラフラの男達。

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ここまで散々にネチネチとした急登地獄を提供し続けて来た、金融庁の黒崎重太郎。

しかしこの時点でもまだ彼は本気を出していなかったのだ。


ここからは「紀美子平」と呼ばれる分岐までの最後の急登世界。

そう、いよいよここから重太郎軍との最終決戦が始まるのだ。

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高度計バターNの失速でお分かりの通り、いよいよ森林限界を超えて壮大な世界での急登レジャーランドご入場。

この変態アトラクションのスケール感と高度感は、これまでの急登とはひと味違う乗り心地だ。

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今までの密林ゲリラ戦から打って変わった最終野戦会場。

見上げる先には吐きそうな光景が。

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誰だ、こんなとこに「○」って書いた奴は?

ちっとも○じゃないじゃないか。


振り返れば、いよいよ「北アルプスに来ました」って風景。

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今にもあのヨレヨレの二人に対して、大急ぎで島崎三歩が救助に駆けつけてしまいそうな光景だ。

そして笑顔で「よく頑張った」って言ってくれそうだが、まだまだ我々はここで救助されて牧さんのヘリで搬送されるわけにはいかない。

なんせまだ本日の全行程の半分くらいの段階なのだ。

維新達成の為、そして仲間の為にも必ずこの重太郎を越えてみせる。


しかし何やら様子がおかしいぞ。

さっきまで絶景を見せつけていた岳沢のお椀の中に、大量のモクモクが流れ込んでやしませんか?

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まさか涸沢陽動部隊の囮がばれたのか?

ものすごい勢いでモクモク本隊がこっちに向かって来ているぞ。

このままでは逆に我々が重太郎軍とモクモク本隊の挟み撃ちにあってしまうではないか?

まずいぞ。


必死で逃げ惑う高山病男とハイテンション男。

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しかしさすが天下の北アルプスのモクモク本隊。

奴らはものすごい勢いで重太郎新道を駆け上がり、あっという間に二人がモクモク雪崩に飲み込まれて行く。

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仲間が飲み込まれて行くのを、ただただ呆然と見る事しか出来なかった歯痛ヘルメットおじさん。

やがてそのおじさんも、なす術もなくその身をモクモクに飲み込まれた。

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しかし彼はこの時、モクモクとは別の次元で苦痛と戦っていた。

歯痛かと思われたこの痛みがどんどん進化し、やがてその激痛はこめかみに移動。

やがてその痛みはエスカレートし、まるでボブサップに全力で「こめかみグリグリ」をされているような絶望的な痛みへ。

鎮痛剤のロキソニンを投与してても、一向にその痛みが和らぐ事が無い。

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何事だ?

これは歯痛ではなかったのか?

急登・モクモク・激痛という、マゾの海もお手上げの三所攻め。

突然始まったマゾエースの本気のマゾプレイ。


絶望的な頭痛と吐き気、そして猛烈な倦怠感。

これはまさか...。

僕まで「高山病」になってしまったのか?


かつて木曽駒ヶ岳で軽い高山病は経験済みだが、本格的な高山病は初めての経験。

高山病とはこんなにも苦しいものなのか?

今まで散々ミスター高山病のバターNの事を書いて来たが、まさか自分までその世界に足を踏み入れる事になろうとは。


バターNは毎回こんな苦しい世界で登り続けて来たのか...。

ある種、とんでもないマゾ野郎だ。

僕のようなにわか高山病野郎の歯が立つ相手じゃない。

彼は尊敬に値するリアルマゾだ。


その憧れのリアルマゾがフラフラ状態で後方からやってくる。

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僕も目が錯覚を起こし始めているのか、ハシゴがグニャグニャに見えてくる始末。

地獄だ。

もうここは地獄なんだ。


ついに二人目の高山病患者を抱える事になった奥穂奇襲部隊。

そんな壊滅状態の傷病兵達の眼前には、ツッこむ気力すらなくなるような世界が広がる。

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助けてくれ。

そんな男達の悲痛な叫び声も、空しくモクモクの霧の中に消えて行くばかり。

ここに来て重太郎軍とモクモク本隊の強烈な挟み撃ち。

もはやこれまでなのか?


もう頭痛と重い体で考える気力も奪われて行く。

もちろんそんな我々の弱り切った状態を見て、いよいよ無情な変態サド野郎の黒崎重太郎が「鎖の鞭」をバシバシ振り下ろす。

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頭上から叩き付けてくる黒光りの鎖の鞭。

サディスティックなアンドロメダ瞬のネビュラチェーンが弱った男達に絡み付く。

それでも必死で駆け上がると、またしてもネビュラチェーンの嵐。

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「もう勘弁してくれ!」

そう叫ぶのは、高度を上げる程に名前が長くなって行く「高所恐怖症高山病頭痛ヘルメットマゾおじさん」。


さらにアンドロメダ瞬の背後に、今度はなんと三蔵法師が出現。

そして突然お経を読み出す三蔵法師。

それによって頭の中の輪っかがキリキリと締まって行き、いよいよ限界の頭痛で絶叫するヘルメット孫悟空。

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「もう悪い事はしません!お許しくださいお師匠様!」


しかし悟空の思いは聞き入れられず、三蔵法師の容赦ない呪文が収まる気配がない。

よくよく三蔵法師の顔を覗いて見ると、なんだか嫁にそっくりじゃないか。

ついに夫への憎悪の念が、モクモク筋斗雲に乗ってはるか北アルプスにまで到達してしまったのか?


いよいよこれは幻覚と幻聴が織りなす絶望ワンダーランドに入り込んだのか?

熾烈を極める重太郎軍との最終決戦。

後方からは高山病の大先輩が、悲壮感たっぷりの表情で這い上がってくる。

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果たしてこの戦いに勝ち目はあるのか?

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我々はただただ快晴が欲しかっただけなんだ。

我々のような負の人間達が快晴を求めると言う事はこんなにも過酷な事なのか?


世の中の、何も考えずにアホみたいに快晴の山ばっかり楽しんでいる晴れ男晴れ女達よ。

彼らのこの痛々しい姿を見て、自分の生まれ持ったその幸運に精一杯感謝するがいい。

アンダーグラウンドの世界では、このような悲しい男達が必死でうごめいている事をしっかりと認識するのだ。

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そしてリアルな限界を迎えて、とてつもない失速っぷりを披露しているバターN。

この最終決戦の地で我々の速度は極端に落ち、いよいよ予定時間をオーバーして来てた。

何とか本日の宿泊地、穂高山荘に15時までに着かないとほんとに笑えない状況に陥ってしまう。


しかし必要以上にアンドロメダ瞬の小宇宙(コスモ)が爆発し、登れども登れどもネビュラチェーンの嵐。

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何度も言うが、こんな所に陽気に「○」なんてつけるんじゃない。

さてはこの「○」書いたのは嫁じゃないのか?

我々は知らず知らずのうちに死の淵に誘導され、多額の保険金が嫁にもたらされるシステムではないのか?

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それでも我々はその足を止めない。

ただただ前だけを見て、ただただ愚直に難関を登りきって行く。

もうここまで来たら根性一発。

男ならなにがあろうと黙って直登あるのみ。

もはや気分は男塾名物の「直進行軍」だ。

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あらゆる障害を乗り越えてこそ男は磨かれてゆくのである。

例えそこに壁があろうが葬式中であろうが、その屍を越えて行かねばならぬ。

迷いや逃亡は死を意味する。

我々の名は魁!奥穂奇襲部隊。

見さらせ、革命のマゾ魂。


そしてついに。

実に長かった重太郎新道が終わり、分岐の「紀美子平」に到着した。

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もうここまで来ると景色が全く見えないなんて事はどうでもいい。

そんな事はいつもの事だ。

それよりも、我々はついに第一の難関「重太郎軍」を撃破する事に成功したのだ。


そしてここからは重太郎軍のボス「前穂高岳(3,090m)」との一騎打ち。

紀美子平に荷物をデポして、空身でのピストン撃破を目指すのだ。


しかし。

重太郎軍との激戦の結果、我々は大きく時間を浪費。

さすがにこのペースではまずいぞという会議が開かれた。

これが世に言う「紀美子平会議」だ。

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明らかにここまでで一番のダメージを負っていたのがバターN。

このまま彼に無理をさせては、リアルにこの先の吊り尾根で彼の体が動かなくなる気配が漂っていた。

歩くペースもだんだん牛歩戦術のような遅さになって来ていたし、これ以上彼に疲労を蓄積させるわけにはいかない。


僕とB旦那はここで苦渋の選択を迫られる。

「バターNよ、無念だろうがここで横になって体力回復に努めてくれ。その間に我々が前穂を落としてくるから。これ以上無理したら、ほんとに日没までに山荘に辿り着けないから。」と、あまりにも辛すぎる決断を促す。

ここまで一緒にがんばって来た戦友に対してこのような事を言うのは実に厳しい事だったが、登山とは時に無情な決断をしなくては行けない時が来るのだ。

(まさかこの時点で、涸沢陽動部隊の矢作Cが早々と置き去りになっている事はもちろん知らない)


一瞬の沈黙の後、ミスター高山病の目がシッカリと上を見上げた。

そして「いや、行きます...。僕は行きます!」と力強く宣言。

もはや根性という名のマゾ神が憑依したかのような力強い眼差し。

これが教科書にも載っている、歴史的な「紀美子平の決断」である。


そして全身に悲壮感をまとった赤き革命家が動き出す。

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しかし彼のやる気とは裏腹に、実に重々しい足取り。

そして前穂高岳への道を見上げると、信じられないほどの大急登岩壁ワールド。

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あまりにも変態すぎる「お下劣!ザ・ワールド」。

今までの重太郎が可愛く感じる程の超ど級のサディスティックファンタスティック。


これには全員ひるみまくったが、行くと言った手前引くに引けないバターN。

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取り付きから早くも虫の息と言ったギリギリ感。


そして人の事は言ってられないこのプリケツ男。

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何気に紀美子平で待機していた方が良かったのはこの高所恐怖症の頭痛男の方だったかもしれない。

実はこの時点でも彼の頭痛は進化を続けており、一歩一歩標高を上げる程に頭の輪っかが「ぎゆゥぅぅっ」と締まりに締まる状況。

しかし辛いだの痛いだの言ってられない。

後ろからはあまりにも美しすぎる高山病マスターの勇姿が迫って来ている。

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さすがに先を行ってもらい、先輩の背中から高山病の何たるかを学ばせていただく事に。

もうその気怠い感じは、さっきまで「行きます!」と眼光鋭く言っていた男とは思えない疲弊感。

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ジャケットを脱いだり着たりの郷ひろみ的な挙動不審感も見事。

それでも決して弱音を吐かず、黙々と高度を上げて高山病を悪化させる姿の美しさよ。

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さすがは「高山病の世界にこの人あり」と謳われた男だ。

彼から学ぶべき事は非常に多い。


一方で、破竹の勢いでガシガシ登って行くハイテンション男。

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二人の病人の世話をしているうちに、みるみる精神が破壊されて「クライマーズ灰」になってしまったB旦那だ。

彼の快進撃のおかげで、なんとか重太郎軍のボス・前穂高岳の牙城を切り崩して行く奥穂奇襲部隊の面々。


バターNは「高山病のくせに高い所が好き」という不思議な矛盾を抱える男だけに、だんだんと元気が出て来た様子。

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一方で後方でピクリとも笑っていないのが「高い所が大嫌いで高山病な男」の追いつめられた姿。

なんとかモクモクのおかげで、下界の風景が見えないから救われているといった状況。

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これでもし絶景快晴だったら、間違いなく2リットルくらい漏らしていただろう。

しかも頭痛が酷すぎて高度を感じている場合じゃない。

ある意味、この男が前穂高岳に登頂する為のベストな条件が揃っていたようだ。

こうでもしないと前穂に登れないこの男にも色々な矛盾を感じる所だ。


そしていよいよ前穂の穂先が見えて来た。

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標高もついに3,000mを越え、高山病患者にとって地獄のデスゾーンへ。

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限界を超えた最終決戦。

頭痛・吐き気・倦怠感・高度恐怖・疲労・加齢臭。

あらゆる難関を乗り越えて来た奥穂奇襲部隊。

ついに3つある内の一つ目の3,000m峰の頂に到達。

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男はフラフラと一歩一歩、そして最後は這うように前穂高岳のてっぺんに近づく。

ついにヘルメットおじさんが3,090m地点で、前穂高岳と頭痛のピークに到達したのだ。

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いつもこのような写真の時はヤラセが多いんだが、この時ばかりはリアルな倒れ込み。

もう頭がカチ割れんばかりの鈍痛に支配されている。


そして次々と病人が運び込まれる前穂高岳山頂。

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この壮絶すぎるマゾに恍惚の表情のヘルメット野郎と、ミスター高山病のベテランらしい落ち着いた佇まい。

この時初めて知ったが、こうしてしばらく横になっていると結構頭痛が回復する事を知った。

もっと早くこうするべきだったが、そんな事はミスターは教えてくれない。

その渋い表情からは「高山病は治すものではなく楽しむものだ」という独特の哲学が伺える。

さすがはミスターと呼ばれるだけの男だ。


そしてある程度回復した時点で、やっとこさ記念撮影。

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もはや当たり前のように背景は見事な真っ白だが、彼らの表情にはとてつもない達成感が漂っている。


こうして一つ目の3,000m峰「前穂高岳」を制圧。

いよいよ維新達成に向けた重要な拠点を確保したゲリラ奇襲部隊。

残す3,000m拠点は「奥穂高岳」と「涸沢岳」の二峰だ。


しかし一発目の山にしてこの限界感。

果たして我々は維新を達成するどころか、生きて北アルプスから脱出する事が出来るのだろうか?


そして再び次なるステージを目指して紀美子平へと下山。

書くまでもない事だが、またあの急登を急下降して行くという恐怖。

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そしてヒイヒイ言いながら無事に紀美子平に帰還。

高度を下げる程に元気になって行くバターN。

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しかしおかしいぞ。

ここまでクライマーズ灰でハイテンションをキープしていたB旦那がいつまで経っても降りてこないぞ。


次第に戦慄が走り出す病人二人。

さてはテンションが上がり過ぎて滑落したんじゃないのか?


しかし10分後くらいにB旦那は無事に帰還。

よほど二人の高山病マゾプレイが羨ましかったのか、なんと道を見失ってとんでもない崖で遭難を楽しんでいた模様。

苦しむ我々を見て、よっぽど悔しかったんだろう。

この時点でセルフマゾをかましてくるあたり、彼も関東屈指のマゾと言われるだけの事はある。


で、やっとこの時点で落ち着いて昼飯。

実に「おにぎりだけ」という、行動食の延長のような簡素な食事。

我々には時間がないのだ。

のんびりと飯を食ってる場合ではない。

涸沢で仲間が今か今かと待っているんだ。

贅沢はしていられないぞ。


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一方、涸沢陽動部隊。

ついに彼らは涸沢カールに到達。

もちろん、そこに到達するまでの写真は残っていない。


涸沢に到着するなり彼らがした事。

奥穂奇襲部隊が、悲壮感たっぷりにみすぼらしい食事をしているまさにその時。

小木KとビビるSは、早々に涸沢ヒュッテ名物「おでんセット(おでんと生ビール)」をご購入。


そもそも昼飯も担いで来ているにもかかわらず、おでんを買った挙げ句にビールまで現地調達してしまう無駄っぷり。

そしてヒュッテのテラスで優雅におでん宴会。

これ以降、彼ら(特にビビるS)はビールとワインにまみれた堕落生活に突入して行くことになる。


そして彼らがテラスで宴会中に、矢作Cがボロ雑巾のようなフラフラ状態で涸沢到着。

そこで撮影されたのがこちらのお写真。

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まるで振る前のドレッシングのように、モクモクと紅葉が均衡を保っているではないか。

もしくは入れたてのビールと泡のような均衡感だ。


これを見てお分かりだろうか?

本来なら、この涸沢でモクモクさんを足止めしておかねばならないこの涸沢陽動部隊。

僕だけだろうか?

どう見ても囮になっているのは我々奥穂奇襲部隊の方で、涸沢陽動部隊はビール片手に紅葉を楽しんでいるように見えるのは。

(解りやすくこの時の奇襲部隊の現在地を記載しておく↓)

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見事に奇襲部隊がモクモク本隊を引きつけている。

そう、これこそ実は起死回生の我々の大作戦。

敵の裏の裏をかいた「浮かれおでん・生中まみれ作戦」の全貌だ。


実は囮だったのは奇襲部隊の方だったというこの大作戦。

どう考えても、涸沢組の方がお得な気がするが仕方ない。

全ては確実に革命を成功させる為の深慮遠謀。

まさに「死せる奇襲部隊、生ける陽動部隊を走らす」といった、孔明もビックリの作戦だ。

そしてこれは、我々奇襲部隊もビックリの展開でもあるのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いつの間にか作戦内容が変更されていたという事を一切知らされていない奥穂奇襲部隊。

陽動部隊がおでんとビールを楽しんでいる時に、もさもさとおにぎりのみで昼飯終了。

そしてその時。

まさにこれから向かうネクストステージが雲間からその姿を現した。

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あまりにもハレンチすぎるこの大迫力。

いよいよ戦いは「真上に向かう戦い」から「真横に進んで行く戦い」へ。


ついに我々は重太郎新道、前穂高岳に次ぐ第3のマゾステージへと突入して行く事になる。

前穂高岳から奥穂高岳までを結ぶ、逃げ場の無いマゾの一本道。

その名を「吊り尾根」と呼ぶ。


過去に何度も遭難滑落事故を巻き起こして来たという悪魔が棲む一本道。

ついに我々はこの限界疲弊状態でその尾根に挑戦する事と相成った。


快晴奉還までの道のりは長く険しい。

目指すは吊り尾根のはるか先にそびえる、北アルプス最高峰の岩の山「奥穂高岳」。

富士山・北岳に次ぐ日本三番目の山。

命がけの奇襲部隊の真価が問われる変態ステージ突入だ。


もう戻る事は出来ない。

進むか死ぬかのシンプルなる戦い。

さあ、イッツ・マゾショータイムだ。



そして涸沢陽動部隊。

涸沢に到着してからが彼らの本当の勝負。

彼らは彼らで、宴会という名の命がけの戦いが待っている。



戦いはいよいよ佳境に。

やたらと長いが、まだ初日の昼。

ブログ書いていても吐きそうな程に長い長い行程。


さあ。

まだ見ぬ限界の先の世界へ。




紅葉挟撃作戦4〜吊り尾根編〜へ  つづく



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