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僕らのルーズヴェルト・ゲーム〜矢作製作所の挑戦〜

Posted by yukon780 on 04.2014 長良川/岐阜 0 comments 0 trackback
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ここ最近、僕の川下りは変化球が続いていた。

パックラフトを買ったおかげで、より清流度の高い山深い渓谷へのチャレンジが続き、川のマニアックさに歯止めがかからない状況だった。

これはこれで冒険的な色が濃くて面白いが、さすがにここまで変化球を投げ続けると肩を壊してしまう。


そこでここらで、王道直球勝負。

ステージは天下の名川「長良川」。

久しぶりに薄暗い渓谷から飛び出し、5月の太陽のもとで開放的な川下り。

適度な瀬と穏やかな流れが続く区間を、子供や仲間達とお気楽に漕ぎ抜けるのだ。


もちろんいつものようにご主人様(嫁)に外出許可を願い出る男。

彼はもみ手をしながら「今回はお子様参加の平和な川下りでございます。りんたろくんもきっと楽しいのであります。」と懇願。

彼は「自分が川行きたいから」というそぶりを微塵も見せず、「あくまでも子供の為である」という勇者の剣を振りかざす。


さらに「アゴ割れMの為にも今シーズン中に1回は一緒に下ってあげたいのです。彼にカヌーをあげた者の責任として、正しい漕ぎ方を教えてあげなきゃならんのです。」と追い懇願。

彼はそこでも「自分が川行きたいから」という気配を出さず、「あくまでもアゴ割れMの為である」という勇者の盾でガードを固める。


この勇者の剣と盾の前では、さすがの嫁も行くなとは言いにくいようで渋々川に行く事を承諾。

しかし素直に遊びに行かせるのがよほど悔しかったのか、彼女は突然こう言った。

「その代わり、今ここでアナと雪の女王を歌え」と。


なぜ毎度素直に遊びに行かせてくれないのか?

なぜ川下りに行くのに、アナ雪の歌を歌わねばならんのか?

色々と納得できない部分があるが、川に行く為ならしょうがない。

男とは時に勝負に出ねばならん時があるのだ。


僕は恥辱にまみれながら嫁の前でアナ雪を歌わされ、なんとか貴重な長良川行きの切符を手に入れた。

もちろん渋々「ありのぅ〜ままのぅ〜」と歌う僕を見て、嫁はヒャッヒャッヒャと悦んでいる。

もはや気分は土下座する時の大和田常務の心境だ。


サドな嫁を持つと何かと大変なのである。

でも遊びに行けるなら、僕は嫁の靴だって喜んで舐めてやる。

出来る子持ちアウトドアマンになる秘訣は、いかに人間としてのプライドを捨てられるかが重要なのである。


それではそんな屈辱の上で手に入れた、のんびり長良川。

あくまでも建前上は「りんたろくん」と「アゴ割れM」の為の川下り。

ほんわかと振り返って行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今回、何気に僕は気合が入っていた。

実は前日の根尾川カヌーのあと、りんたろくんは容赦なく「ボク、カヌーきらい」と言い放ったからだ。

その理由として「冷たくて寒かったこと」が嫌だったようだ。

そもそも彼が初めて「カヌーきらい」と言った時も、5月の冷水を浴びて寒さに震えた事が原因だった。


そこで僕は、数々の散財の末に限界に達してしまった個人貯金から、勝負の1万円を抜き出す。

そしてついにモンベルにて、キッズ用の水遊びウェア&シューズ一式を買ってやったのだ。

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強い決意の上のプレゼントだったが、りんたろくんはふ菓子を食うばかりで当然感動はゼロ。

まあおもちゃじゃないから感動が無いのは分かるが、どうかこの父の1万円分のアツい思いを受け取ってもらいたい。

今日こそは快適な川下りをして、彼に「カヌーだいすき」と言わせてみせるのだ。


そして本日のもう一人のキーマン「アゴ割れM」。

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実は彼はこの時点で、なんと足を猛烈に負傷中。

嫁には「アゴ割れMの為に」と言って出て来たが、肝心の彼は歩くのもやっとの状態で、もはやカヌー漕いでる場合じゃないという怪我人だったというまさか。

それでも彼は「せっかく俺の為に企画されたカヌーだから...」と、足を引きづりながらただ「見学」しに来たのだ。


絶倫ホルモン男のまさかのカヌー欠場。

恐らく、溢れかえる精力が足に溜まって爆発でもしたのだろう。

しかしそんな状態でも彼に来てもらったのは、いつもの恒例行事をやってもらうためだ。


彼はいつものようにいそいそと準備を始める。

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カヌーはしないのだが、すでに下準備は出来ている模様。

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そしてお馴染みの現場ヘルメットを装着し、

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川下りの安全を祈願する「国交省の役人」が登場だ。

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「さあ、がんがんダム作って、土建屋との癒着で私腹を肥やしてやるぞ。」と言わんばかりの表情。

もはや彫刻のような迫力で迫り来る絶倫の怪我人。

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今にも「俺が極上の風呂を建設してやる」と言い出しそうなテルマエロマエ感。

なぜこれが恒例行事になったかはもう思い出せないが、我々は彼のこの姿を見ないと川下りを始められないのだ。


これで本日の役目を終えた彼は、再びいそいそとズボンを履く。

彼はこの「テルマエ国交省」をやるためだけに、遥々1時間以上かけてここにやって来たのだ。

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そしてそんな彼の後方にいる三人。

一人はお馴染みの矢作Cだが、女性と子供は初登場。

そう、なんとあの「独身おしゃれ貴族」と謳われた矢作Cについに彼女さんが出来て、今回「カヌーやってみたい」と子連れで参加して来たのだ。

彼らのなれそめをここで語ると、恐らく全12回くらいの長編物語になるので今回は割愛する。

ざっと書くと、彼女は僕とも面識があって矢作Cとコンビを組む小木Kの同級生だ。


彼女さんの名は、とりあえず三度の飯よりビールが好きなので「ビアーN」としておこう。

そして彼女の子供の方は、その子供らしからぬ風貌から「社長H」としておく。

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まるでダメなホルモン社員をかばっている社長のような落ち着き。

営業上手なえびす顔の笑顔で、「社員のホルモンは私の責任です」と言わんばかりだ。


そしてもう一人初登場の男がいる。

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一瞬「ゲリMか?」と思った人もいるだろうが、単純に顔がキツネ顔なだけで別人である。


彼の名は「営業Y」。

実はリアルに僕の会社に来る資材屋の営業の男。

しかし彼と僕は会社で一切仕事の話をした事が無い。

彼は学生時代を高知県で過し、勉強もせずにひたすら川に潜っていたという根っからの川野郎だったからだ。


僕はすっかりこの青年を気に入り、ゴエモンを買ってから出番が無くなっていたハイビックス艇(別名ぬめりカヌー)を彼に与えた。

すると瞬く間に彼はカヌーの魅力に取り憑かれ、ついに自分のダッキー(NRSアウトロー)を手に入れたのだ。

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僕のゴエモン(NRSバンディット2)の後継ダッキーのアウトロー。

彼のようなアウトローな営業には持って来いの名艇だ。


しかし川野郎の彼は「膨らます時間も惜しいです」と言わんばかりに、気づいたら川に潜りに向かっている。

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もはや川中毒者。

日本の若者もまだまだ捨てたもんじゃない。


で、準備もできてカヌー教室開講。

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しかし独学でカヌーやって来た挙げ句人に教えるのが苦手な男は、ある程度教えると「まあ、難しい事考えずに漕ぐべし。なんとかなるさ。」と強引に話を終わらせてしまう。

このいい加減なレクチャーのおかげで、過去にはこんな大惨事もあった↓(参考記事:板取事変〜警察のちクレーン時々竜巻〜

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彼は教えるのに徹底的に向いていないのだ。


そしてそんないい加減男の遺伝子は、しっかりとその息子にも受け継がれている。

矢作Cペアのカヌーに、実に独創的な乗船方法で乗り込むりんたろくん。

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自由な彼にはマニュアルなんて通用しない。

そしてまだ付き合って日の浅い矢作Cペアは、お互いに夢中なのか後方のりんたろくんに一切気づかずそのまま出発。

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「正しいカヌーの乗り方」をレクチャーした直後に繰り広げられた、画期的な光景。

やはり僕はガイドには向いていないのか、それともなめられているのか?


やがて川の上で息子を回収。

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まるで国境の川で秘密裏に執り行われる「奴隷売買」のような光景。

無事に僕は奴隷商人から息子を奪い返す事に成功だ。

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しばらくこの静水域で練習タイム。

しかしここで突然、りんたろくんのテンションが謎の急激ダウン。

ここまではものすごくご機嫌だったのに、カヌーに乗ってからすっかり抜け殻みたいになってるぞ。


僕が「どうした?」と聞けば、彼は「ボク、テンションが下がっちゃったの」と4歳児らしからぬコメント。

どうやら彼曰く、最初に川原ではしゃぎ過ぎたせいで「テンションを使い果たした」らしい。

彼のテンションは一体どんな構造なのか?


結局彼は「カヌーしない」と言い放つ。

仕方が無いから、僕は「じゃあ、アゴ割れおじちゃんと一緒にいるか?」と聞くと、力なく「うん...」と言うだけ。

こうして息子はホルモン社員に連れられて行った。

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これにてアゴ割れMとりんたろペアが、車で追走していく形に。

嫁に対して「子供のため」「アゴ割れMのため」と言って出て来た末に待っていた、このまさかすぎる状況。


良く考えたら、アゴ割れMは僕からカヌーを貰って以来まともに川を下っていない。

去年の板取事変の時は2分しか漕いでないし、今回はもはや漕げてすらいない。

そして僕がりんたろくんのために苦渋の1万円で揃えた「川遊びウェア一式」は、あの「奴隷船ごっこ」だけでその役目を終えてしまったようだ。

まあ、色んな意味で「いつも通り」な感じだね。


で、やっと落ち着いて川下りスタートです。

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なんだか最近は渓谷ばっか漕いでたから、この開放感は久しぶりで実に気持ちがいい。

そして何より、幸せそうな矢作Cを見るのも実に良い。

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今まで彼を見続けて来た僕としてはとても感慨深い光景。

ふいに今までの矢作Cの孤軍奮闘の勇姿が脳裏に蘇る。


テクノメガネだったあの頃や、

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オヤジ狩りにあったあの頃、

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そして車で柱に突っ込んだ自損時代があったり、

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燕岳で石像になってた事もあったっけ。

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時にはホモ疑惑まで浮上する事もあったね。

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それでも負けずに、前だけを見つめ続けた矢作C。

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しかしもう君は一人じゃない。

今、君の前で光り輝く笑顔を見せているビアーNが君をサポートしてくれるだろう。

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しかし彼女のこの笑顔は、ひょっとしたら「こりゃあ帰ってからビールがうまいぞ」と想像してニヤケている可能性が高い。

まだまだ矢作Cの正念場は続きそうだ。


一方、青空のもとで営業社員にひたすら漕がせて、己は水鉄砲で悠々自適な社長のお姿が。

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営業Yもここが出世チャンスだとばかりに「いやあ社長、見事な水鉄砲ですねえ。カヌーの乗りっぷりもさすがでございますね。」とヨイショをかかさない。

しかし社長が水鉄砲に夢中になってると、後方で「やってらんねえ」とばかりにおにぎりを食っている。

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社内営業も中々大変なのである。


そうこうしていると、本日の目玉である魚道の瀬が登場。

まず一発目は、若手社員が一人で現場調査に向かう。

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爽快に漕ぎ抜けると、彼は「社長!問題ありません!お通り下さい!」と後方に向かって叫ぶ。

それを聞いた一族経営のビッグカンパニー「矢作製作所」の舟が動き出す。

社会人野球部エースの現場調査の報告を元に、一発逆転を狙った起死回生のルーズヴェルト川下りの始まりだ。

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執拗な瀬で吸収合併を企てるナガラ電機の攻撃。

しかしそのピンチを、矢作製作所自慢の秘書ビアーNが笑顔で切り裂いて行く。

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しかしこの笑顔の弾け方から察するに、恐らくもうすっかりビールの中にいる気分なのだろう。

そしてその秘書がのどごし鋭く切り開いた所へ、社長Hと矢作専務も突入。

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矢作製作所の逆転に次ぐ逆転の川下り。

ついに彼らは起死回生の団結力で、ナガラ電機の瀬を越えて行った。


こんなのを見せつけられたら僕も黙っちゃいられない。

僕も一発逆転を信じた勝負の営業活動。

先回りで見学していたりんたろくんを誘い、ここで「接待ダウンリバー」を敢行だ。

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これにはあれ程取引に難色を示していたりんたろ社長もご覧の笑顔。

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やはり子供にはのんびり川下りよりも、このようなアクティビティ要素が必要だったのだ。

そして瀬を越えると、りんたろ社長は「もう一回!もう一回!」とおかわりを要求。

見事に我が床営業ならぬ川営業が成功だ。


この素晴らしき営業手腕に感動した営業Y。

興奮の止まらない彼は、ついに己の身一つで瀬にダイブして行った。

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若手営業マンのまさかの行為。

しかし若いうちに社会の荒波にもまれる事は大事な事。

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これで彼は今後も立派な営業マンとして頑張れる事だろう。

しかし彼は間違いなくアピールする場所を間違えているようだ。

相変わらずその後も、彼とは会社で川の話以外した事が無い。


そんな彼に「営業とはどうやってやるものか見ていなさい」とばかりに、先輩営業マンがおねだり社長2名を引き連れて行く。

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そして再び銀座の名店クラブ「長良川」へとご入店。

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そして営業スマイルを爆発させながら、パワフルなヨイショ攻撃。

「社長、例の業務提携の件...

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お願いしますよー!」

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これにて取引確定。

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出来る営業接待とは、一度落としておいてから突き上げるに限る。

そんな剛腕営業マンの姿を、ひたすら遠方から悔しそうに眺める男がいる。

この交渉の場にすらつけなかったダメホルモン社員だ。

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本日の彼はひたすら裏方に回って、日の目を見ない「写真撮影」という業務に従事している。

しかし何気に結構動き回らないといけないから、はっきり言ってカヌーするより怪我してる足に負担がかかっている。

この男のように、努力しても報われない社員がいるからこそ、剛腕営業マンは光り輝くのである。


しかしこの瀬が終わってしまうと、再びりんたろ社長のテンションが途端にダウン。

結局また業務提携の話は白紙に戻ってしまったので、彼にはまたホルモン社員の車へ。

こうしてまた矢作製作所のご一行はのんびりと流れて行った。

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やはり晴れた日の大河は単純に気持ちがいい。

たまにはこんなのんびりした川下りもいいではないか。

営業Yなどは、もう漕いでる場合じゃないぞとばかりに潜りたくてウズウズし始める。

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しかし彼の会社の社長はこの若手社員に厳しい。

社長Hは、私を引っ張って行きなさいと命令し、

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これに逆らえない営業Yは必死で残業して漕ぎ続ける。

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しかしいよいよ彼の我慢も限界に達した。

彼は「こんなブラック企業、もう辞めてやる!」と叫んだかと思うと、会社(カヌー)を飛び出して行った。

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若さ故の過ち。

それでも彼は途中で社長の偉大さに気づき、再び社に戻って来た。

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一度社外の空気を吸って一回り成長した彼の姿に、社長Hも「これが私の狙いだったのだ」と目を細める。

美しき社員教育。

これにて一致団結した矢作製作所。

無事にゴールに付いた頃には、社長Hとりんたろ社長による呉越同舟の業務提携が発表された。

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裏方に徹したホルモン社員も、安堵の笑顔。

若干りんたろ社長はテンションが戻らずに納得してない表情だが、一応業務提携記念写真。

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こうして男達の逆転に次ぐ逆転の物語に終止符が打たれた。

スコアボードを見れば8対7。

ルーズヴェルト・ゲームの完成である。


結果的に本来の目的だった「アゴ割れMとカヌー」「りんたろくんのカヌー大好き発言」はどちらも達成されなかった。

しかしどんな名投手でも負ける事はある。

最終的に楽しかったんだからそれでいいではないか。


りんたろくんも、この後行った温泉ですっかりテンションが戻っていたし。

まあ彼にとってはこの温泉が目的地であって、川下りは温泉に行く為のめんどくさい前座に過ぎないんだけどね。

まだまだお父さんは逆転を繰り返して行かないと彼に「カヌー大好き」とは言ってもらえないようだ。

お父さんのルーズヴェルト・ゲームはまだまだ終わらない。


そして5月のカヌー強化月間もまだまだ終わらない。

鮎釣り解禁まで残り後わずか。

剛腕営業の僕は、嫁に必死の交渉。

しかし彼女は「ハゲたことぬかしてんじゃないよ。乳首拡大させるぞ。」と、取りつく島も無い。

そもそも「乳首拡大させるぞ」とは一体何をされてしまうんだろうか?


しかし剛腕営業と言われる私にはまだ秘策がある。

どんな手を使ってでも5月は川に行きまくる。


今シーズン、残す所「神崎川・武儀川・亀尾島川」の3本。



絶対に諦められない戦いがそこにある。





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長良疲労宴〜筆おろしの延長戦〜

Posted by yukon780 on 24.2012 長良川/岐阜 0 comments 0 trackback
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彼の貪欲さには脱帽だ。


富士川での壮絶な日帰りカヌードラマの翌日。

あの男は早くも長良川に出没していた。


あれ程に己の体を酷使して、もはや燃え尽きたかと思われた病み上りのジャックバウワー。

しかし何度も言うが今は5月。

カヌー野郎のゴールデン期間の休日を、体力回復なぞに費やすはずが無い。


今回は嫁がエステに出かける13時までのわずかな午前中の時間を拝領することが出来た。

そのわずかな時間で、チーム・マサカズのアゴ割れMと矢作Cのド素人二人を長良川に連れて行く。

前日のドラマ「22」を遥かに凌ぐわずか4時間のスピードドラマ。

「過M死」一直線の男の休日はまだ終わらない。


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朝目覚めた僕は、異様に重たい体で起き上がる。

すごい疲労感だ。


そして、昨日の夜に見た「赤い妖精」の事を思い出す。

あれはさては夢だったんじゃないだろうか?

随分疲れていたから幻を見てしまったんじゃないだろうか?


しかし枕元にはしっかりと妊娠検査薬が置かれており、改めて赤い陽性のシャアを確認。

ああ、やはり僕は二児のパパになるのだね。


これは今後益々頑張って行かないと。

立派なお父さんにならないと。


というわけで僕は早速川に遊びに行く準備を始める。

パパは頑張って立派に川でのお勤めを果たして来るぞ。

そんな我が背中を見て立派に育てよ、子供達よ。


男は「わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい」と渋く呟いて、家を飛び出して行った。



家を出てすぐにコンビニに立ち寄り、栄養ドリンクを買って体に流し込む。

体よ、あと少しだけ持ってくれ。

こうして僕はフラフラの体を引きずって、長良川に向けて移動して行った。


ほんと、やめときなさいよ。


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曇り時々晴れの予報だったが、晴れる気配は微塵も感じない。

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まあ、正直あんまり晴れてもらっても「犠牲」を払う事になるから丁度いいか。


最近どうも濁った川ばっかり下ってたから、この静謐な雰囲気の清流長良川がとても優しく感じる。

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シーズンに向けて、鵜飼の若い船頭さんが朝練でもしてるんだろうか?

なんて絵になるんだ。


集合時間より早く来た僕は、しばしその静けさを楽しんだ。

そうそう、本来川ってのはこんな感じでゆったりと嗜むものなんですよ。

しかし残念ながら僕にはあと4時間しか時間はないんですがね。


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アゴ割れMと矢作Cと合流。

変態風工事現場男がアゴ割れMで、操り人形みたいになってるのが矢作C。

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二人とも川でのカヌー初体験の川童貞コンビ。

ゆえにあり合わせの格好になるので、このような変態の雰囲気が醸し出される。

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しかも顔に塗った日焼け留めクリームがおしろいみたいになって、よりその変態度が際立っている。

晴れ間なんて一切出そうにないのに日焼け留めクリームを塗るあたりもよく分からない。


完全にカヌーは初めてなので、僕が優しく脱童貞レクチャー。

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川の口説き方から、デートスポットやここぞと言う時の決め文句などを伝授して行く。


そしてコンパ前の出陣記念撮影。

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しかし彼ら二人はまだ何も知らない。

「まずはコンパから」と思っていた彼らだが、実は僕によって強制的に「プロによる筆おろし」へと突入させられる事になる。

未体験の人にこの短時間で満足してもらうには、手っ取り早く激流に突入させるのがマゾ塚カヌースクールの指導方針だ。


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何も知らずにカヌーに乗り込む現場監督。

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この人達はダム建設予定地の視察にでも行くつもりだろうか?

彼のヘルメットにはちゃんと血液型まで記載されている。

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これで万が一の大出血時でも素早い輸血が可能だ。

しかし彼も立派な「大痔主」なので、もうこの時点で輸血しておいた方がいいかもしれない。


こうして彼らはプロが待つ泡の世界へとその一歩を踏み出した。

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僕は懐かしい気持ちで彼らを見守った。

くしくも彼らが乗るキウイ3は、僕が初めて買った相棒艇。

実は今回、これを機にアゴ割れMに贈呈する運びとなった。


僕同様、このカヌーで彼らもまた新たな歴史を刻んで行くんだろうな。


まあ、このカヌー。

穴空いてるんだけどね。


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やがて魚道の瀬が見えて来た。

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突然こんなお店に連れて来られて、アゴ割れMもこの表情だ。

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どうやら想像以上の「現場」だったようだ。

しかもこの日は渇水気味で、いつもある「チキンコース」が全く下れない状態。

必然的に、行くならこの「男前コース」のみ。

そう簡単には大人にはなれないんだぞ。


まずは僕がお手本を見せる。

入店は颯爽と男らしく。オドオドしてはいけない。

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とにかく大切な事は「笑顔」だ。

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はやる気持ちは分かるが、ここはグッとこらえてお互いに会話を弾ませよう。

万が一相手が知り合いだった場合は、このように顔を隠す方法もいいだろう。

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この先は心をフリーに解き放つのみだ。

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こうして僕は彼らに道を示した。

何も恐れる事は無い。

思いっきりその身を委ねて来るんだ。

全てお任せすればいいのだよ。



こうしてプロの瀬に強制突入させられる事になった川童貞の二人。

早速彼らは僕の教えを破り、まったくのノースマイルでのご入店だ。

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あれ程オドオドするなと言ったのに、パドルをばたつかせる現場の男と後ろでフリーズする男。

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言わんこっちゃない。

泡だらけじゃないか。

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そして彼らは観念して大人しく川にその身を委ねた。

そしてお店から出て来た時の、彼らの突き抜けた姿がこれだ。

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よかったなあ。

これで君たちはもう立派な大人だぞ。

僕も役目を果たせてホッとしているよ。

今後は自信を持って生きてゆけよ。


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すっかり激流にはまってしまった彼らは、その後も次々とお店をハシゴして行く。

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誰しもが通る猿の惑星。

いい加減にしとかないとお小遣いが無くなっちゃうぜ。


僕はもう瀬はお腹いっぱいなので、のんびりと彼らの蛮行を見守った。

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正確に言えば、もう僕にはあまり体力が残されていなかった。

栄養ドリンク程度では回復するはずも無い疲労が僕を蝕んでいた。


そしてここは自分で選んでおきながらも、午前中だけで下りきれるわけが無い7キロほどの長いコース。

後半のトロ場は僕にはまさに拷問だった。

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もはやこれは部活動だ。


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そして、無事に我々はゴールした。

水抜きをするアゴ割れMは、まるでずっとここにあるオブジェのようだ。

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まるで「人という字は支えあって出来ているんだよ」と語りかけて来るようではないか。

遠目で見ると、何やら前衛的なアートに見えるから不思議だ。

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やはり一皮むけた男は、その雰囲気すら逞しく見えるものだ。


一方で矢作Cは素人らしいミスを犯す。

川童貞を失った感動から、ついにおもらしをしてしまったのだ。

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これは素人が犯しやすい「乾いたと思ったパンツの上からズボンを履いて大惨事」の一コマだ。

いい大人がこの姿でうろつけば、たちまち方々から黄色い悲鳴が上がるだろう。

君たちはまだ所詮「素人童貞」だという事を忘れるな。

浮かれるんじゃない。


と言ってる自分が一番やばいことになっていた。

この時点で13:30。

見事にタイムリミットオーバー。

三人の中で最も余裕が無かったのは自分でした。



こうして男は一目散に帰宅して行った。

そしてこの二日間ですっかり汚れて、全く新車の面影が無くなった車の洗車指令を食らう。

午後からは失いそうになる意識を必死でつなぎ止めながら、りんたろくんの面倒を見ながらの洗車プレイ。

人生で一番ハードな洗車となる。


後に彼は呟いた。

「本気で疲労で死ぬかと思った」と。

そして翌日は原因不明の頭痛と倦怠感に支配され、男は軽く嘔吐することとなった。

もちろん、洗車後の車に雨が降った事は言うまでもない。


しかし何度も繰り返すが今は5月。

まだ最後の週末が残っている。


男の無理が止まらない。


養子奥義“エキゾチック・マゾバック”

Posted by yukon780 on 02.2012 長良川/岐阜 2 comments 0 trackback
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養子の立場で田舎に暮らすという事。

そこには避けては通れない道がある。


オリンピックのように4年に一度の町のビッグイベント。

それは公民館の「ペンキ塗り」だ。



なぜ、わざわざGWの晴れた日に開催されなければいけないのか?

世が大型連休で浮かれてる最中に、なぜペンキを塗らねばならぬのか?

そして、僕は役員でもないのになぜ参加させられるのか?


本来であれば役員はお義父さんだから、僕は行く必要はない。

しかし嫁の「ポイントを稼いで来い」という指令が炸裂。

ご両親は「別に来なくてもいいよ」って言ってくれているが、嫁に言わせればどうやら僕は地域とご両親に「試されている」とのことだ。


家庭内での腹の探り合い。

僕は養子として、この家を継いで行く素質があるのかをアピールして行かねばならない。

「来なくてもいい」というご両親に対して、「是非行かせて下さい」と僕は答える。

全く行きたくない上に、なぜ寄りによってGWなんだと突っ込みたいのをグッとこらえる。

こうして僕の白髪は一本、また一本と増殖して行く。

さあ、宿命を受け入れるのだ。




DSY漕行記の翌日の朝。

てっきり朝早くからペンキ塗りかと思っていたら、午後の1時からだという事が判明した。

外を見たら快晴じゃない。

そしていつものようにハーツオンファイヤー。


これは午前中のわずかな時間、遊べるチャンスじゃないか。

すかさず嫁との攻防戦の末、僕の大技「土下座」が炸裂した。

昼までに帰って来るという条件で、外出を勝ち取ったのだ。


わずかな時間ですら、男は遊びに貪欲だ。

ここから一気にスペクタクルなタイムアタックが始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

AM8:00


早送りのような凄まじい勢いで準備を済ませ、意気揚々と長良川に向けて出発。

そしてスタート15分後にして、いきなりの大渋滞に巻き込まれる男。

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なんて事だ。

残酷なる神の仕打ち、大幅なるタイムロス。



AM9:00

随分余計な時間を費やしてしまったが、なんとか関観光ホテル前の川原に到着。

相変わらず、長良川は本日も美しい姿を露出しまくっている。

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ああ、やっぱり最高だ。

ペンキなんて塗ってる場合じゃないぞ。

ここでのんびり出来たら最高なんだが、本日の僕に時間はない。

ここに回送用のMTBを置いて、スタート地点を目指す。


AM9:30

スタート地点の美濃橋下の川原にて、ゴエモンを目覚めさせる。

全力のポンプアップで、全身の筋肉がパンプアップし、痛めている腰もアップアップだ。

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自慢のプリケツがプルプルと揺れて、この時点で汗ビッチョリだ。


前回は水郷巡りの静水だったから、本日が我が相棒「ゴエモン」ことNRSバンディット2の本当の意味での激流デビュー戦だ。

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こんな慌ただしい中での長良デビューとなってしまってゴエモンには悪かったが、本日は「初の一人乗り」「初の川下り」「初の激流」でしっかりとお前の力量を見せてもらうぞ。

急いで帰らないと、僕が嫁に釜茹での刑を宣告されてしまうからな。頼むぞゴエモン。


時間がないくせに、さらにテスト。

数年前にワゴンセールで買って全く使わなかったパドリングジャケットと、最近全く出番がなかったウェットスーツを装着。

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今まで激流を避け続けてきたチキン人生に本日は終止符を打つのだ。

戦闘準備は万端。

激流ロマン窃盗団「ゴエモン&マゾ」の船出だ。



AM9:50

スタート直後から凄まじい向かい風だ。

分かりにくいだろうが、川は右が進行方向だ。

向かいにあるのぼりがバタバタと逆方向に激しくばたついているのがお分かりだろうか?

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時間がないというのに、出だしからモリ漕ぎじゃないか。

しかし、晴れた日に激しく逆風が吹くっていう現象はいつものことだ。

圧倒的に軽い船体のゴエモンの「風テスト」には持って来いだった。

正直軽いから風に流されると思っていたが、軽い分一漕ぎ目の初速が重くないから結構突き進んで行ける。

やるじゃないか、ゴエモン。


そしてそのまま、快適な波立ち区間。

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うああ、楽しーなー。

やっぱり晴れているとカヌーってゲロ出るくらい楽しいな。


実はここでもテスト。

一度西表島の仲間川でも使っているが、初めて激流での「一眼レフカメラ」使用という別の意味でのハラハラテストだ。

もちろん使用するのは、かなり初期の頃に紹介した一眼用防水ケースDiCAPacα WP-S10だ。(参考記事


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正直使い勝手はあまり良くなかったり、水滴が写真に入り込みまくったりで微妙ではあるが、その安心感はハンパない。



AM10:05

前方から凄まじい轟音が聞こえてきた。

一発目の難関「魚道の瀬」の登場だ。


まずは手前で上陸して、瀬の下見に向かった。

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やや渇水気味かな?

魚道の瀬は、手前の水路のような魚道の「チキンコース」と、その奥の「チャレンジコース」(僕はこれを男前コースと呼んでいる)に別れる。

今までの僕は、迷う事なく「チキンコース」を選んでいた。

チキンコースと言っても、最後の大波で以前ビビるSが撃沈している場所だ。


しかし本日の僕は男前だ。

ゴエモンという相棒を手に入れた事で、ついにあの男前コースを下ってやるのだ。

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写真では大したことないように見えるけど、相当な轟音で正直かなりビビっている。

しかし、今日に限って2名ほどの観客が堤防に座っている。

我々窃盗団の血がたぎったのは言うまでもない。


ゴエモンの所に戻って、突入前に神に祈る。

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以前紹介した「長良川の悲劇」が脳裏に浮かぶ。

死に直面した当事者の一人として、この時の恐怖を分かってくれるのは引退したシャクレYだけだろう。

この時の胸のドキドキは、過去に好きだった子に告白しようとして黒電話のダイヤルの最後の数字を回して指を離した瞬間に似ている。

自分で望んで来たんだが、正直逃げ出したい気持ちで一杯だ。



覚悟を決めて男前コースに突入。

途端に前から横から1mクラスの大波がガンガン攻めて来る。

しかし怪盗ゴエモンはそんな捕物十手攻撃にはビクともせず、波を破壊して突き進む。

大波を被っても、穴の空きまくったセルフベイラーが続々と排水していく浮沈艦。


笑いが止まらない。

思わず声を出して「うおおッ」と叫んでしまう。

溢れまくるアドレナリン。

楽しくてしょうがない。

こんなに笑顔になったのはいつ以来だろう。


やがて圧倒的安定感を存分に発揮して、魚道の瀬を見事に突破。

僕はついに男前になった。

このどや顔がすべてを物語る。

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男前というかひげを剃る時間もなかったただのおっさんだが、この表情が激しい緊張から解き放たれた快感を表現している。


AM10:30

ここからはしばしのんびりと流されて行く。

緊張の瀬を抜けた後の、至福の瞬間だ。

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もう漕がずに、寝そべって流されて行く。

ゴエモンに一人で寝ると、実に調度いい感じで横になれる事が分かった。

別で買ったAIRE社のシートがちょうどいい枕になり、ダッキーでフロアが沈んでいない分「寝ながら漕ぐ」という新たな技を手に入れた。

まったく、最高の相棒だ。


周りから見るとこんな感じ。

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おや?と思われた方も多いだろう。

そう、これはセルフタイマーの己撮り。

ついに己撮りのエキスパートになってきた僕は、「カヌーで寝ながら流れて行く私」という難易度の高い写真の撮影に成功したのだ。


わざわざ上陸して高台にカメラをセットし、インターバルタイマーで5秒に1枚という設定をして、ダッシュでカヌーに戻り急いで立ち位置(漕ぎ位置)まで全力で漕ぎ上がり、そして優雅に寝そべって流れて行く「ふり」をしながら流されている状態だ。

なので、やがてこのように流されてフレームアウトして行き、

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再び必死で漕ぎ上がって来るという情けない舞台裏もバッチリ記録される。

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単独行はいつだって、このようなセルフマゾの世界に満ちている。

そしてこの馬鹿な行為によって、大幅に時間を費やしてしまった。



AM11:00

やばいぞ。もう11時じゃないか。

どう考えても昼までに帰れやしない。

もう割り切って、今は先の事を考えるのはやめよう。


前方の方から、またしても凄まじい轟音が聞こえてきた。

再び上陸して下見に向かう。

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祭りだねえ。

随分と大賑わいじゃないか。


もちろん、ここもゴエモンのパワーで突き抜けて行きました。

ここでも、改めてゴエモンの力を再認識。

これはいいテストになった。

今後、新たな川に向けて一気に視野が広がった瞬間だ。


美濃橋〜関観光の区間は、ほんとに気持ちいい区間だ。

出来れば夏場に下ってみたいが、鮎釣り師達に占拠されてしまうので残念です。


AM11:20

大満足のツーリングを終えて、関観光ホテル前の川原に到着。

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いやあ、ほんと大満足だった。

本来はペンキ塗ってるとばかり思っていた午前中に、まさか長良川を下っているとは思いもよらなかった。


そしてeTrex20で取ったログがこんな感じすね。


より大きな地図で 長良川 を表示


しかし、感動に浸っている場合ではない。

残り時間はわずか40分。

釜茹での刑までたったの40分しかない。

大急ぎで回送作業を済ませて帰らねばならない。


ここでもゴエモンの威力が発揮される。

ゴエモンを選んだ一番のポイントはその「軽さ」。

なんと片手でひょいと持ち上げられるのだ。

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さすがは盗賊の軽い身のこなし。

随分と尻の軽い野郎だぜ。

そしてその軽さは僕に「新しいカヌー回送法」を発明させる。


今までの僕はこのままカヌーをゴールに置きっぱなしにして、MTBで車を取りに行って、またゴール地点に戻るというやり方だった。

しかしこのやり方だと、いつもカヌーが盗まれるんじゃないかというスリルを味わいながらなのであまり気持ち的によろしくないし時間もかかる。

しかしゴエモンは軽い。

カヌー一式を背負って、MTBに乗って行けば戻る必要も盗まれる心配もいらないではないか。

という画期的な発想で本日最後のテストです。

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いつものように力づくでゴエモンをバッグの中に押し込めて、パドル、シート、ポンプ、ライフジャケットを括り付ける。

いくらゴエモンが軽いと言っても、総重量は20キロ以上。

果たして、無事に車まで戻っていけるのか?


巨大な荷物を背負ってMTBに乗車。

周りのBBQで来ている人達が、明らかに異質なものを目撃した時のような顔で僕を見ている。

この回送法でまず大事な事は、「人の目を気にするな」という鉄の心を持つ事が重要だ。



凄まじい勢いで、僕の肩にめり込んで行く荷物一式。

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この男は新手のアメリカンヒーローなのか?

それとも姨捨山にババアを捨てに行く所なのか?

明らかに積載オーバー気味だ。


このバッグは腰で止められないから、全重量が全て僕の双肩にのしかかる。

しかし、こちとら養子の重圧を常に両肩に背負って生きているのだ。

この程度の重みなど気にするものか。


頑張っていたが、15分ほど漕いで行くとある重大な問題が発覚した。

その重みで僕はMTBのサドルに押し付けられる格好となり、僕の股間の血流が止まるという事態に。

結果、僕の「マグナム」さんの頭が強烈にしびれ出す。

実際はマグナムというより銀玉鉄砲程度の威力しかない銃口だが、このしびれは新しい感覚だ。

あの「正座して足がしびれる」って感覚が、僕の尖閣諸島に凝縮して襲いかかる。



これは凄いカヌー回送法を編み出してしまったようだ。

肩にめり込むほどの重量で筋トレを楽しみつつ、新鮮な感覚を下半身で噛み締めながらの汗だくサイクリング。

僕はこの回送法を「エキゾチック・マゾバック方式」と名付けた。

いずれはオリンピック競技になってくれると期待している。



PM12:18

フラフラになりながら、なんとか美濃橋まで戻ってきた。

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渾身のマゾバックもむなしく、ついに12時を過ぎてしまった。

こんな所でマゾってる場合じゃないぞ。


まあ、一応自転車回送する人用にログ載っけとくね。


より大きな地図で 自転車回送ルート を表示

載っけるまでもなく、ただ単に川沿いなんだけどね。ご参考までに。



そして、僕は猛烈な勢いで帰っていった。

家に帰ると嫁の目は据わっており、アシュラマンの冷徹の仮面へと変貌を遂げていた。

もうすでにお義父さんは公民館に行ってしまったようだ。

大急ぎで準備して、公民館に13:20着。


集合時間13時に対し、無念の20分オーバー。

明らかに、あの無駄なセルフタイマー撮影が原因だ。


この遅刻は地域の皆さんの手前、そしてお義父さんの手前非常にヘビーで僕の居心地の悪さは群を抜いていた。

肩で息を切らせながら、大人しくペンキ塗りを開始。

朝、家を出てから一切の休憩なしでここまで突っ走ってきて、ペンキ塗る前から汗だくだ。

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何度も言うが、どうしても今日じゃなきゃダメだったの?

しかし文句一つ言わず、最高の笑顔で僕はペンキを塗る。


地元のおっさんが「ムラにならんようにな。若いからってムラムラしちゃいかんぞ。ガッハッハ。」などと言って来る。

本来であればこの手の言動は激しく無視するんだが、立場上そうも行かない。

かといって変に同調して愛想笑いをかますのもプライドが許さない。

結果、「うぅああ」という、うめき声のような相づちを打つのが精一杯だ。


そして3時間、快晴の空の下でペンキを塗り続けた。

この日の夜、僕は泥のように眠った事は言うまでもない。



これが養子カヌーイストの日常的な風景だ。

男は常に何かしらの重い責任を背負って生きて行く生き物だ。

GWの前半に家族サービスに徹した(?)男の二日間がこうして終わった。

なんだかんだと結果的にカヌーしちゃっている自分に乾杯したい。


仕事も家庭もカヌーも充実してこそのダンディズム。

情熱と冷静と嫁と養子と近所付き合いの狭間で、男は今日も逞しく生きて行く。


さあ、そのフラストレーションをぶつける時はもう間近に迫っているぞ。

いよいよGW後半の四国カヌー遠征が近づいてきた。

しかし気持ちとは裏腹に、全身の疲労感が凄まじい。


まだまだ僕のGWの戦いは終わらない。




ナガラデイズ 後編 〜さよならシャクレ野郎〜

Posted by yukon780 on 26.2012 長良川/岐阜 0 comments 0 trackback
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さて、引き続き長良川の日々を振り返る「あん時のアイツ」シリーズ第20弾の後編。

前回は「地獄への門」「モテないずぶ濡れ野郎」「極寒の美白メンズ」の3本でお送りしました。

今回の後編では、いよいよシャクレYの「引退の秘密」が明らかになります。

さりげに僕も同時に死の恐怖に直面しております。

思い出すのも怖かったから今まで書いてこなかったけど、これはちゃんと書いておかないとね。



まずは再び、少しづつナガラデイズを振り返っていこう。


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2005年4月。

この時はビビるSが僕と同じハイビックスのカヌーを買ったので、進水式をかねてのツーリングだった。


スタート地点の美濃橋の川原での進水式。

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本日の旅の無事をバッチリと祈願した。


新艇でのツーリングは実に楽しいものだ。

ビビるSも、いつにも増して輝いた笑顔でホクホク顏で下っている。

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「陰の男」の僕としては、いつもこのように順風満帆なビビるSが羨ましくてならない。

なんとかこの男をギャフンと言わせられないものだろうか?


どうやらそんな僕の「陰」の力が長良川に浸透し、見事に長良川がその期待に応えてくれた。



魚道の瀬に向けて、相変わらずのホクホク顔で突入して行くビビるS。

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そして、アッパーな魔力に突き上げられるビビるS。

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たちまち横倒しに沈するビビるS。

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ここで僕のガッツポーズが炸裂したのは言うまでもない。

すっかり笑顔を失くしたビビるSが流されて行く。

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進水式で安全を祈願してから、わずか10分後くらいの惨劇だった。


ああ、スッキリした。

奴もたまにはこれくらいの洗礼を浴びとかないと「幸せボケ」してしまうからな。



やがて我々は関観光ホテル前の川原へゴール。

実はこの日はビビるSの彼女さん(後の奥さん。BONNIE PINK似なので以下ボニーYと呼ぶ)も来ていた。


僕がカヌーを片付けていると、二人の後ろ姿が何とも眩しかった。

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なんて幸せそうな二人の姿だろうか?

長良川も、そんな二人を優しく包み込んでいるし。


当時の僕は、長い長い彼女いない氷河期の真っ最中。

マシンガンで撃たれた後みたいに心に風穴が空きまくっていた頃だ。

とてもじゃないが、僕は輝いている二人を直視することが出来なかった。

ビビるSが沈したぐらいで喜んでいた僕が余りにも惨めな存在に思えてしまった瞬間だ。


振り返れば、そんな僕に同情して猫がすり寄って来る。

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「まあ、そんなに落ち込むなよ。そのうちきっといい事あるさ。」と言っているようだ。

しかし、そもそも「黒猫」がすり寄ってきている時点であまり縁起のいい話ではない。



長良川も、たまにこのような変化球で人の心をえぐって来る事がある。

荒瀬を乗り切ったからといって油断してはいけないのだ。


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そしてその一ヶ月後の5月。

今度はそんな僕の彼女いない氷河期を支え続け、一時ホモ説まで浮上した山田(仮)との長良川だ。

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やはりビビるSがいた時に比べて、非常に重い空模様だ。

所詮僕にはこの程度の天気と山田がお似合いなのだ。


この日は若干渇水気味で、川底の岩がむき出して怖いし漕ぎづらい。

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激流好きの山田だったが、わざわざ彼は静岡からはるばるやってきてこの有様だ。


こんな時はメシに力を注ぐのが吉だ。

長良川の川原は豊富に流木があるから、焚き火パラダイスだ。

こういうちょうどいい息吹き棒なんかも落ちていて、実に男らしい調理が可能だ。

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別にこんな事する必要は何もないんだが、川の状態が悪いとこの様な事に無駄に時間をかけて楽しむのがこのコンビの対応力だ。

作るのはうどんなんだが、山田シェフはわざわざほうれん草は別で煮るというこだわりぶり。

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そして、ここに「餃子」を投入するのが当時二人の間で大流行していた食べ方。

みんなもやってみ、餃子うどん。ウマいから。


あとはカヌーそっちのけで、山田は昼寝で僕は釣り。

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見事に何も釣れない。


彼女も出来ず、魚すら釣れない男。

振り返れば餃子臭い男が川原で昼寝している。

ひと月前のビビるSカップルとのこの落差は何事か。


この時僕は「いつかきっと、晴れた日にステキな彼女さんと川を下ってやる」と固く誓ったものだ。

この時の誓いは、結婚した今でも達成されないままだ。


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そしてその4ヶ月後の9月。

だったら、ステキな女性が沢山いる場所にこちらから出向いて行ってしまえ。

再び僕と山田コンビで向かったのは、長良川上流でのラフティングだ。


この時が、僕も山田も初ラフティング。

そして、ラフトじゃないと僕らの技量では下れないであろう初の長良川上流部。



ラフティングで一番驚いた事は、若い女性がわんさといることだ。

男よりも女性の数のが圧倒的に多い。


過去何年も川旅を続けていたが、ほとんど川原で女性を見る事はなかったがこんな所に密集していたのか。

今後ラフティングに行く事を「ディズニーランドに行く」と言い直してもいいほど、カヌー野郎にとっては夢の国だ。

自然と僕と山田にも笑顔がこぼれてしまう。

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そして本題のラフティングは、やっぱり凄まじい流れの中を進んで行く。

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やはりこれぞ本来の長良川。

すごい激流だが、ラフトだから全然平気で突き進んで行ける。


激流だけじゃなく、上流ならではの山深い雰囲気も気持ちがいい。

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岩場から飛び込んじゃったりして。(飛んでるのは山田です)

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なんて浮かれてやがるんだ。

今までの川旅って、なんかいつも眉間にシワを寄せて気難しい顔して下ってた(下らざるを得なかった)んだけど、これがラフティングの世界か。

恐ろしきディズニングワールド。



まあ、なんだかんだと純粋に楽しめた。

しかしこの時の浮かれたディズニングが、後の悲劇への伏線となっていく。


この時はラフトだからこそ軽々と瀬をこなして行けただけのこと。

勘違いした僕と山田は、「意外と僕らだけでもこの上流部を下れるんじゃないか」という恐ろしい暗示にかかってしまった。

ナガラランドの魔女に呪いの魔法をかけられてしまったのだ。

やがて僕らは、ファンタジーのカケラもない世界へと突入して行く事になる。


(ちなみに書くまでもないが、ここで彼女が出来る事はやっぱりなかった。その手の魔法は僕には無縁のようだ。)


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夢のディズニングから一ヶ月後の10月。

勘違いの魔法にかかったままの僕と山田は再び長良川上流へやってきた。

そしてその時はもう一人シャクレYも参戦した。


というのも、この頃シャクレYは忙しくて随分長い事カヌーから遠ざかっていた。

そこで僕と山田は、そんなナヨッてしまったシャクレYを「リハビリ」という名目で連行してきたのだ。

すっかりなまってしまったシャクレYに、何も情報を与える事なく激流に突入させて目を覚まさせようというのが狙いだった。

それが全ての悲劇への始まりだった。

まさか彼を「リハビリ」を通り越して「引退」まで追いやってしまう事になってしまうなんて。


山田は2回目にトライするという事で、1回目は僕とシャクレYのコンビ。

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出発前から、何やら顔に「死相」が浮かんで見えるのは僕だけだろうか?

シャクレYには「ちょっとだけ激しいけど、全然大丈夫だよ。お気楽だよ。」と言ってあるから、彼はまだこの時は優雅な気持ちで出発準備をしている。


そして、彼らは「地獄」に向けて旅立って行った。

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山田が撮ったこの写真が、彼が「現役」でカヌーを漕ぐ最期の後ろ姿となった。

まだ昼なんだが、二人の頭上にはしっかりと死兆星が輝いていたという。


山田は車で平行して移動。

途中の大きな瀬がある所で二人が下って来るのを待った。

そして、ここが山田によって撮影された運命の場所だ。

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川の流れが凄まじい勢いで集中して大波を発生させ、その先には岩の壁が立ちふさがる。

ラフティングではなんて事のない場所だったが、我々のカヌーと技量では非常に厳しい。


やがて何も知らない男達がやってきた。

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上から見るのと、実際に下るのとでは大違いだ。

この時点で目の前の大波はハンパない恐怖を僕らに与え、その先にある岩の壁なんて全く見えていない状況。


ここに突入前にシャクレYが僕に「うそやろ?本当にここ行けるの?」と不安一杯に聞いて来たから、僕は「全然大丈夫だから。怖いのはただのブランクだよ。」等と言って無理矢理突入して行った。

ハッキリ言って僕も凄まじい恐怖に取り付かれていたが、まだ魔女の呪いは解けていないから強気に突き進む。


そして、僕らの目の前に「波の壁」が巨大に立ちふさがる。

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まさに「白い壁」に追突して行く感覚。

もうこの時点で頭の中には「後悔」の二文字だけが乱舞していた。


カヌーごと凄い勢いで壁にめり込んで行って、ズバッと壁の向こう側へ抜け出した。

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「やった、抜けたぞ!」

と思った我々の眼前に、今度は本物の「岩の壁」がそびえ立つ。

一回ホッとさせておいてからの、絶望的な光景が二人の脳裏に焼き付いた。


完全にパニックに陥って行く二人。

本来は左方向に抜けて行けばよかったんだが、思いっきり岩壁方向へ突き進む二人。

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もうだめだ。

見事に我々は岩の壁に向けてロックオンした。


しかもこの岩の壁にぶち当たった水流が、壁に跳ね返されていない。

これが何を意味するか僕は以前に本で読んで知っていた。

「アンダーカットロック」だ。


アンダーカットロックとは、岩の壁の下側がえぐれている状態で、水流が底に吸い込まれて行くという大変恐ろしい岩の状態。

吸い込まれた水流は、その岩の下でぐるぐると回り続けるのだ。



まず僕らは、カヌーが横を向いた状態で岩に張り付けられた。

もの凄い力で壁に押し付けられて、全くカヌーを動かすことが出来ない。

次第に水流の勢いで傾いて行くカヌー。


その時、見事に世界がゆっくりと斜めになっていくのが見えた。

本当にスローモーションのような感じで、僕らは川に飲み込まれた。


一瞬。

まさに川に落ちたその一瞬だった。

僕らは凄い勢いで川底に向けて吸い込まれた。

もう何が何だか、脳の理解力が追いつかない。


体が全く浮上して行かないばかりか、もうどっちが上でどっちが下なのかも皆目見当がつかない。

まさに「人間洗濯機」状態で、完全にアンダーカットロックの水流の中で回転する体。


この時僕の脳裏には、本で読んだアンダーカットロックの分かり易いイラストが浮かんだ。

目が××で、口が〜なイラストの男性がクルクル回って抜け出せませんっていう絶望的な図解。

まさしく今の僕がそれだった。


呼吸も限界で、思わず息を吸ってしまう。

もちろん容赦なく体内へは川の水が流れ込んで息なんて出来ない。

解っていてもそれを3回もやってしまっても、まだ浮上しない。


「走馬灯のように」とはよく言ったものだ。

色んな事が脳裏に浮かんでは消えて行く。

「ああ、ニュースでよく見る川で溺れ死んだ人の見ていた光景ってこんなんなんだな。こうやって人は死んで行くんだな。」ってしみじみと思う事まで出来た。

そして思ったのは「僕のせいでシャクレYを殺してしまったかもしれない」という激しい不安感。

すぐ近くに彼がいるはずなんだが、全く分からなかった。


そして一瞬「本気で死を覚悟」して力も抜いた時、何となく目線の先にぼやけた光が見えた。

僕は最後の力を振り絞って、その光に向かってがむしゃらに突き進んだ。

光は徐々に広くなって行き、やがてザバッと水中から抜け出した。


その瞬間体が急速に酸素を欲しがったのか、僕は自分でもビックリするような声を発していた。

まるでオットセイのように「ヴアッ!ヴヴグァッ!」と、人間じゃない声というか「音」を発し続けた。


やがて僕は岸に到達すると、そこの岩の上にシャクレYが打揚げられていたのを確認した。

フラフラになりながら「大丈夫か!」と聞くと、何とか彼も生きていた。

良かった。

しばらくは、僕もその場にグッタリと倒れ込んだ。



流されたカヌーとパドルは、たまたますぐ下流にいた他のパドラーによって回収されていた。

あまりにも壮絶な沈だった。

シャレにならない経験だった。


ふと、山田の存在を思い出し上を見上げた。

すると信じられない光景がそこに展開されていた。

なんと山田が腹抱えて「大笑い」しているではないか。


なんて男だ。

こっちは長良川から三途の川へ合流する所まで行ったって言うのに。

どうやらこの水中での地獄ぶりが奴には全く伝わってないようだ。

(後で山田に聞いて分かった事だが、我々的には水中で5分くらいもがいていた感覚なんだけど実際には20秒程度だったらしい)


当たり前だが、我々二人の心はバキバキに折れてしまってもはや原形をとどめていなかった。

もう終わりたいんだけど、まだもうちょっと進まないと上陸出来ない。

仕方なく回収したカヌーに乗って再び下流に向かって漕ぎ出した。

しかしもうちょっとしたパシャパシャの小波でさえ、我々を恐怖のどん底へ落としめた。


濡れて震える小動物二匹はやっと上陸ポイントまで到達して、無事に生還した。



改めて、その後で「現場」を確認するシャクレY。

DSC04735.jpg

思えば彼は「最近付き合いが悪かった」というだけの理由で「リハビリだ」と嘘をつかれて連れてこられた挙げ句、無理だと訴えても「怖いのはただのブランクだ」などと言われてそのまま人間洗濯機の長良川飲み放題コースへと突入する羽目になった悲惨な男だ。

出川ならおいしい場面だが、シャクレにはシャレにならん世界だったはずだ。

事実、この後温泉に行ったんだが、彼は「水が怖い」と言って湯船につかる事にさえも激しく恐怖を感じていた。

中にあった「ジャグジー」を見て、彼は今にも卒倒しそうになるほどのトラウマを抱え込んでしまった。


以来、彼は静かにこの世界から姿を消した。

僕にしても、これ以降しばらくはさすがに流れのある川での川下りは心的に無理だった。




これはあるシャクレの引退の物語。

彼は心の中のステージにそっとパドルを置いて、後ろを向いて闇に向かって消えて行く。

惜しみない拍手が彼に降り注ぐ。

しゃくれたアゴの先に光るは頬を伝った涙の行方か?


そしてこの時からもう7年の歳月が過ぎた。

彼もそろそろ「水」の恐怖が抜けてきただろうか?

久しぶりに「リハビリ」を兼ねて、彼を長良川に誘ってみようかな。

多少ブランクがあるから怖く感じるかもしれないけど、きっと大丈夫さ。

何の根拠もないけど、きっとうまく行くさ。


あ、あと今度はちゃんとお金も持って来るように言わないとね。

渡し賃が必要だからね。

六文銭って今のお金だといくらなのかな?



ナガラデイズ 〜完〜


ナガラデイズ 前編 〜濡れろ いい男〜

Posted by yukon780 on 24.2012 長良川/岐阜 0 comments 0 trackback
DSC02582.jpg


長良川。


日本三大急流にして、全国のカヌー野郎たちの憧れの川。

そして僕の中で、気田川、熊野川とともに「三大ホームリバー」として数多くの川旅をさせていただいたこの川。

岐阜に養子として嫁いで来て以来、最も近い川として今後も大いにお世話になる川だ。


そこで今回は「あん時のアイツ」シリーズの記念すべき第20弾として、過去の長良川の日々を2回に分けていくつか簡単に振り返ってみよう。

そこには、あるシャクレ男の悲しみの物語も綴られている。



僕はカヌー人生の前半に何度もこのシャクレ男と共に川を下ってきた。(※今後は「シャクレY」と表記する)

川を下る度に足から酸っぱい匂いを出す問題児だったが、今後もこの男と川旅を続けて行けると思っていた。


しかしそんな彼も、この長良川でカヌー人生を「引退」するという事態に追い込まれる事になる。

川が一人の人間の心をバキバキにへし折った現場に僕も居合わせ、山田(仮)も目撃者となった。

その後シャクレYは「長良川」という言葉を聞くとガクガクと震え出し、定まらない焦点で虚空を見つめてから頭を抱えて発狂するといった日々を過ごす事になった。


そんな「元カヌーイスト」シャクレYを偲びつつ、ゆっくりと長良川の日々を振り返って行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


実は長良川の最初の印象は酷いものだった。

いつだったかは覚えていないが、僕は川下り中に何度か鮎釣り師に石を投げられた事がある。

この川は日本で屈指の「本気」と書いて「マジ」と読む、なんだか必死すぎる鮎釣り師が多く残る川。

さすがに「本気」と書いて「マゾ」と読む日本屈指の変態の僕でも、そんな石攻撃に快感は見いだせなかった。

今の僕なら石どころか嫁の「言葉の鉛玉」を浴びせられ続けてタフになっているからいいものの、当時はガラスハートの好青年だったので泣きそうになりながら下った記憶がある。

だから、鮎解禁から秋にかけては中々下れないのがこの川の辛い所なんです。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さて、まずは2003年の10月。

相当古い記録だね。

新美濃橋〜関観光ホテル前川原までの初中級者のゴールデンコースを僕とビビるSコンビで下って、関観光ホテル前川原〜藍川橋までを僕とシャクレYコンビに交代して下った時のものだ。


ここがこのコースで一番賑わっていた「魚道の瀬」。

DSC00481.jpg

鮎がスムーズに遡上出来るように、川の右側に鮎用の水路があってそこを下って行った。

当時、カヌーを独学で始めて間もない頃の僕らには大冒険の瀬だった。

なんせ、静水用のレクリエーションカヤックだっただけに、中々勇気のある挑戦だったな。


その後もこんな感じのストレートな気持ちのいい瀬が何度も味わえる。

DSC00486.jpg

この区間が楽しいのなんのってなかったな。


関観光ホテル前の川原でビビるSからシャクレYにチェンジ。

DSC00496.jpg

在りし日のシャクレYの後ろ姿だ。

この頃は無邪気に楽しんでいた彼も、まさか数年後にこの川で生死を彷徨う事になるなどとは想像もしてなかったろう。


しかし「予兆」はこの頃からあったようだ。

僕はシャクレYに「関観光から下は穏やかで大した瀬もないから」と言ってこの川下りに誘っていた。

関観光から下流はこの時初めて下ったんだが、僕の下調べミスが発覚。

直前でなんとか回避出来たが、危うく地獄への入口に突っ込んで行く所だった。

DSC00502.jpg

流れが一カ所に集中し、激しい流れが落ち込んだ先には無数のテトラポッド。

テトラポッドは激しい水流を吸い込む役目があるから、カヌーで突っ込めばたちまち大破して人間は絡めとられてバキバキになるという、カヌー野郎達の大天敵だ。


間一髪で事前に上陸して難を逃れたが、シャクレYはただ呆然とその地獄絵図を眺めていた。

DSC00504.jpg

彼はこのとき僕に「殺す気か!」と息巻いたものだが、この数年後にも同じセリフを僕に吐く事になる。

この時から、僕とシャクレYは一歩づつ「その時」に向かって動き出す事になる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2004年の4月。

シャクレYの友達と、関観光ホテル前の川原でBBQをしようという事になった。

当時全く彼女の出来ない僕に、シャクレYが地元の女の子を連れてきて一席設けてくれたのだ。


もちろん、僕は前乗りしてBBQ前に軽く一発一人で下った。

BBQしている所に、カヌーで登場するという荒々しい「男っぷり」を見せつけてやるのだ。

たちまち女達は打ちのめされること請け合いだ。



この日の長良川は大増水。

「魚道の瀬」も水の下に埋もれてしまっている。

DSC01175.jpg

DSC01176.jpg

逆にここまで増水すると男の血がたぎる。

しかも増水の川からの女性陣の前への登場が可能で、そのワイルドさにさらに磨きがかかるってもんだ。


あまりの激しさに、カヌーの中はもはや水風呂状態。

DSC01184.jpg

水に滴るいい男。

悪魔超人アトランティス以来の水の似合うワイルドボーイ。

BBQと言えど、気分的にはコンパなのにずぶ濡れになって行く勘違い男。


DSC01188.jpg


さあ、みんなが待つ川原まであと少し。

彼女がいない日々との決別まであと少しだ。



やがて壮絶なワイルドさで、激流から関観光ホテル前の川原に華々しく上陸。

しかし、川原にはまだ誰も到着していないじゃない。



川原に立ち尽くすびしょ濡れ野郎がひとり。

青春の切ない1ページ。

その男はその後四年以上、彼女が出来る事はなかったという。



30分後くらい後のすっかり体が冷え込んで来た頃にみんな到着してBBQ。

ビールですっかり気持ちよくなってしゃくれてしまっている男がシャクレYだ。

DSC01196.jpg

酔って赤くなって随分と楽しそうだが、彼はこの数年後に真っ赤な顔で随分と苦しそうに「死を覚悟した」と呟く事になる。

ただ、その時もしっかりシャクレていた事は言うまでもない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2005年。

当時勤めていた会社の後輩を無理矢理連れてきた事もあった。

しかもなぜか「2月」の極寒カヌー。

初めてカヌーをやる人間に対して、一番チョイスしてはいけない季節だ。


「僕の祖先は村上水軍なんスよ」が口癖の海賊Iくんが、過剰なまでの防寒対策でやってきた。

DSC02585.jpg

クソ寒い中、キンキンに冷えきったビール片手にブルブル震える後輩。

「寒いっすよ。本当に川下るんすか。死んじゃいますよ。」などと言い出し始める。

村上水軍の末裔として、彼も随分と血がたぎっているようだ。


武者震いの海賊I君を乗せて、いざ出陣。

DSC02588.jpg

当たり前だが、信じられない寒さと水の冷たさ。

瀬で豪快に水を浴びる度に、次第に二人の唇は妖艶に紫色へと変化して行く。

いつものようにカヌー内は水風呂化し、我々を保冷する事を忘れない。

DSC02590.jpg

ついには二人の顔から色が消えて行った。

美白効果バッチリで、真っ白な顔をして紫の唇をした美しい男二人が流れて行く。


そして冷やされ続けた僕らは鮮度を保ったままゴール。

DSC02591.jpg

この後焚き火でうどんを作って食ったんだが、海賊Iくんが泣きそうな顔で「人生で一番ウマいうどんっス」と噛み締めていた。

よっぽど身も心も冷えていたんだろう。


その後僕一人自転車で上流の車を取りに行って再び戻ってきた時、川原で焚き火にすり寄って震えて待っていた後輩のけなげな姿を今でも忘れない。

きっと、変な先輩がいる会社に入社した事を激しく悔いていたに違いない。


彼はこの数年後に会社を辞めている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


このように長良川は多くの人間の心をへし折ろうとあの手この手を仕掛けて来る。

次回の後編でも、多くの人間が悲しい出来事に遭遇する「魔の川」。


次回、ついに僕とシャクレYがガップリと長良の悪魔に飲み込まれる事になる。

シャクレYもそうだが、僕の人生の中でもあれほどの死の恐怖を味わった事は後にも先にも存在しない。

人間なんてモノは、川の自然の前ではあまりにも無力な存在だ。

そんな事を身をもって体験出来る、日本の誇るサディスティックリバー。


シャクレYのカヌー業界引退を含む、その後の長良川の様子は次回の後編でお送りします。



〜後編へつづく〜


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