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マゾ男登頂記〜限界の先の世界へ〜

Posted by yukon780 on 20.2011 蝶ヶ岳〜常念岳/長野 0 comments 0 trackback
結局前回記事で書ききれなかったので、今回でマゾ男登頂記は最終回です。

基本、カメラのシャッターを切るだけの体力すらなくなって行くので写真は少ないです。

M男の最後の男塾っぷりを文章にてご堪能ください。

長文なんでお暇な人だけどうぞ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


僕はわずかばかりの水だけを命綱とし、三股に向け下山を始めた。

地図を見ると今度は前常念岳まで再び稜線を歩き、そこから急降下で一気に高度を下げて行く感じだ。

明らかに等高線の間隔が短い。相当急な下りを予感させる。


まずは前常念岳を目指す。

名前からして常念岳のオプション的な感じかとなめてかかっていた。

出来れば「臥龍岳」とか「閻魔岳」とか重々しい名前であったなら、もっと気持ちの持ちようは違っていたのに。


実にヘビーな稜線歩きが始まった。

IMGP0131.jpg

写真では伝わらないが、出だしから恐怖感たっぷりだった。

この直線ルートが稜線なんだが、雲に吸い込まれて行って先が見えないばかりか、足場はひどく不安定で両サイドの崖っぷりがハンパない。

まるで綱渡りのような稜線歩きで再び僕の足はガクガクと震えだす。

早速僕の喉はカラカラになっていく。

しかし貴重な水だ。我慢できるまで我慢だ。

それでもすぐに限界が来るから飲んでしまう。

これはやっぱり最後まで持ちそうにない。



実はこの時点で僕の足の靴擦れは絶望的な様相を呈して来た。

特に踵と親指の外側が激しくズルむけて、そこからさらに水ぶくれにまで発展しそうな勢い。

一歩一歩の痛みが女王様のムチのように僕をじわじわと痛めつけて行く。


1時間くらい歩いたところで前常念岳の山頂らしき場所に着いたが、なんの標識もないので達成感もくそもない。

足も限界だったのでここで靴も靴下も脱いで足を休ませ、昼飯を作る事にする。

しかし、この昼飯を作るのに160mlの水を使用しなくてはならない。

非常に悩んだが、何も食わずにこのまま進めば必ず動けなくなってしまう。


僕はアルファ米のわかめご飯だけを食い、みそ汁は作るのに水がいるし喉が渇いてしまうからやめておいた。

喉がカラカラで飯が喉を通って行かないが、水は飲まずに食い進める。


寂しくわかめご飯を食っていると、4人組の登山チームもここで昼休憩を始めた。

その中のおばちゃんがおもむろに僕に近づいてくる。

寂しい食事を不憫に思ったのか、2cm厚の分厚いハムを4切れくれた。

非常にありがたく、とても嬉しかったが今は通常の状況ではない。

こんなものを食ったらたちまち水分は奪われて喉が渇いてしまう。

でもおばちゃんの行為を無碍にする事はできない。

こんな状況でも気を使ってしまう僕は、おばちゃんの前で美味しそうにハムをむさぼる。

案の定、急速に僕の口の中の水分が失われて行った。

すごい吸水効果だ。サラサーティーか。

もはや乾きを通り越して、喉が痛い。結局ここでも水を飲んでしまった。


この時点で水は残り300mlくらい。体力ゲージは残り15くらいのオレンジ色になっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後も稜線は続き中々下降して行かない。

ゴールはまだまだはるか雲の下だ。

IMGP0135.jpg

もうこの時点で結構しんどくて辛い気分が続く。

しかし、ここで一瞬の安らぎを運んで来た粋な奴が現れる。ライチョウだ。

IMGP0134.jpg

これには一瞬だが、疲れも忘れて見入ってしまった。

あの、よく長野土産の箱に書いてある絵の奴だ。

ライチョウが見られるなんてとてもツイている事なんだが、この旅が全体的にツイてるかどうかは疑問が残る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

稜線は突然終わりを告げ、とてつもない急降下ルートが姿を現した。

IMGP0137.jpg

覗き込まないと先が見えない。

こんな所下れるのか?崖じゃないか。

再び急速にケツの穴がキュキュッと締まっていく。

心臓がバクバクする。激しく喉が渇く。

それでもなんとか一歩一歩僕は下降を始めた。

IMGP0138_20110819153446.jpg

すごく怖い。すごい高度感。

しかもこの下山道、岩の間の砂地が強烈に滑る。

全神経を研ぎすまし下っていく。

この写真を最後に、僕はカメラのシャッターを切る事はなかった。



なんとか慎重に下っていくが、ついにその砂地で僕は足を滑らせた。


死を覚悟した。


1m程滑り落ちていき、全力で岩にしがみつく。

この時の恐怖は忘れられない。

しばらく体も顔も強ばって身動きが取れない。


これはもう下山というより懺悔だ。

いったい僕が何をしたっていうんだ。それとも前世の報いなのか。

しかし、そもそもここに望んで来たのは自分だから誰のせいでもないが。


その後も僕は2度滑り落ちた。

もう精神はズタズタだ。

フェニックス一輝の鳳凰幻魔拳を食らった聖闘士の気分を味わえた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やがて森林限界地帯を抜けて、やっと木が生えてる登山道に達した。

視界が開けてないから非常に安心感がある。

しかしこの時点で水は100mlほどしか残っていない。

体力・精神力もともに5くらいしか残っていない。

もはやスライムの一撃で死んでしまう程に限界が近づいていた。


でもここまで来たら後はもう一踏ん張りだろう。

しかしそこからが一番長く感じた下山となった。


急な下りは続き、僕の足の筋肉は常にパンプアップ状態。

登りに比べて、下りは荷物の重みもモロに着地点に集中するので足腰への負担はハンパない。

足の靴擦れも、もはやよくわからない痛みに変化している。

さらには高度が下がっていくにつれ、気温もぐんぐん上がっていき貴重な体内の水分が滝のような汗となって蒸発していく。

しかしもう水はほとんどないから、一回の吸水は1、2滴の水で口の中を湿らせるのが精一杯だ。

そして僕はみるみる脱水症状に陥っていく。


そんな時、下の方から川のせせらぎの音が聞こえて来た。

水だ!この先に水があるんだ。


僕は期待に胸を膨らませて、思わず早足になる。

しかし、川の音は聞こえるが進んでも進んでもその姿を現さない。

「次の角を曲がれば」「次の角を曲がれば」「次の角を曲がれば」

何度もそう期待しながら下っていくが、風景は変わる事なく一向に川が出て来ない。

この期待して裏切られるという行為が何度も続いて、報われない時間が長引くほど精神は破壊されていく。

犬が竿をつけて餌をぶら下げた状態で、その餌を追い続けるかのような悲しい徒労感。


早足で下ってしまったおかげで体力ゲージも残り1だ。

休憩しなくてはならない。

岩に腰を下ろすが、荷物はおろさない。

一度下ろしてしまうと再び背負う事が出来ない気がしていた。

さらには禁煙中の僕は休憩の仕方が分からなくなっていた。

じっとしてると落ち着かなくなって再び歩き出してしまう。

結局僕は時折10秒程の立ち休憩程度で、この後も休憩する事なく下っていった。


意識も朦朧としだした時、ずっとずっと下の方に木の橋のようなものが見えた。

橋だ!きっとあそこが川なんだ。


僕は最後の力を振り絞り、急いで下降していく。

足はもう棒のようで、動きはカクカクのロボットダンス状態。

今メイクを施せば、スリラーのバックダンサーとしても十分通用するだろう。


どれだけの時間下降しただろう。

何度もめげそうになりながら、期待だけを胸に木の橋を目指した。

やがてそこに辿り着いた僕に「絶望」の二文字が目に写る。

木の橋に見えたものは、とても大きな倒木だったのだ。


僕はその場に静かに倒れ込む。

まるで明日のジョーの力石徹が、死ぬ時にゆっくりとマットに沈んだように。


体力ゲージはついに0となり、ピーーーーーーーという病院的なサウンドが聞こえた。


目を閉じると、暗闇の中に「GAME OVER」の文字が浮かんで見えた。

終わった。

僕はその場を完全に動く事が出来なくなってしまった。


しばらくその状態で倒れていたが、僕は一つの覚悟をする。

1分進まなければ、1分ゴールは遠のき水を飲む事は出来ない。

僕はかろうじて残ってた水をすべて飲み干し、最後のサブ電源を起動させた。

ふらふらと立ち上がり、僕は再び動き始める。


もう完全に水はない。体力もない。

わずかに残った精神力だけで歩き続ける。


そこから20分くらい歩いていった所についに渓流が現れた。

僕は狂ったように飲んだ。

五臓六腑に染み渡るとはこれの事を言うんだろう。

初日の神の黄金水を遥かに超える、超神水がここにあった。


そしてその場所から少し行った所で、あの入山届けを出した小屋が見えて来た。

この時の感動は忘れられない。


僕は下山届けを殴り書きで書いて投函した。

文字はグチャグチャで、ほとんどダイイングメッセージのようで解読はできないだろうが。


行きは気にもかけなかったが、実はここから駐車場まで10分かかる。

このたった10分すら歩くのがやっと。

トレッキングポールで体を支えるように歩く僕は、生まれたての子馬のようだった。


そして車にゴール。

これぞ完全燃焼。


車で温泉に向かった。

体重計に乗ったら4キロも痩せていた。

その後水分補給をしっかりして、家で計ったら2キロ戻ってたからそれだけ体内の水分が失われてたという事か。


今回の旅は実に壮絶なものだった。

基本ツイてなかった部分もあったが、ただその原因の大半は自分の体力と経験の無さから来るものだ。

本にはここまでしんどい登山とは一言も書いてなかったし。

ただ、どんなに経験積んで体力つけて装備も充実しても、初心者の頃の辛さや感動は二度と得られるもんじゃない。

それはカヌーで経験済みだからわかるんだ。


この旅で一皮も二皮もむけた気がする。


なんか山は恋愛と似てるな。

憧れて登り始めて、結ばれて素晴らしい景色見て、ボロボロになって下山して。

もう二度と恋なんてしない!

なんて言わないよ絶対 って感じでまた登っちゃうんだろな。

大変なのは分かってるのに。


きっと僕はまた山に登るんだろな。

Mですから。


マゾ男登頂記 〜完〜


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーおまけー

ボロボロの体で4時間のロングドライブ。

嫁から電話があり、そのまま駅へ迎えにいく。

ちょうど僕が駅に着いた時、嫁の電車が到着。

今朝の5時のご来光から歩き続けて、長野からジャストタイムで到着するとはなんという忠犬ぶりだろう。


普通、「どうだった、山?楽しかった?疲れてない?」的な話になると思っていたら、車に乗り込んで来るなり嫁の第一声。

「くさっ!」

その後も特に山の事は聞かれず、肩が凝ったから整体まで送れという。

僕は疲れてるからいち早く家に帰りたいが、忠犬なので整体まで送り届ける。


帰宅後マスオの僕は、義父さん義母さんに余計な心配をかけさせないように「とても楽しい登山でした。」と愛想笑いをかます。

すぐに子供を風呂に入れ、着替えさせ、歯を磨かせ、寝かしつける。

桃太郎の朗読も2周目に入ったあたりで、やっと子供が寝る。

急いで僕は整体まで嫁を迎えにいく。

帰宅後やっと落ち着いた僕は、このブログの生還報告の記事を書いたのだ。


北アルプスは終わったが、これからまた日常の北ストレス登山が始まる。

中でもストレス三名山の縦走エンドレスコースだ。


大分登りやすくなったが、夜中に何度も起こされる「育児岳」。

慣れない足場ですごく気を使う、「マスオ岳」。

そして最大の難関「嫁ヶ岳」。

この嫁ヶ岳、別名鬼ヶ岳ともいうが相当ハードだ。

登山道は激しいドSカーブが続き、頭上からは落石や雪崩がひっきりなしに発生する。

時にちょっとしたミスを犯せば落雷が命中する事もある。


でもめげないぞ。だってM男だもん。


僕は再び日常の三名山を登り始めた。


ーーおまけ 終わりーー


長々とご愛読に感謝!


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マゾ男登頂記〜運命の分かれ道〜

Posted by yukon780 on 19.2011 蝶ヶ岳〜常念岳/長野 0 comments 0 trackback
IMGP0120.jpg

常念岳への稜線は高度を一度がっつり落として森に入り、最鞍部から再び森林限界を越えるパワー登山だ。

この区間が非常に長く感じ、どんどん体力も奪われて行った。

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目的地が見えてるのに、何時間も歩くのは堪えるものがある。全然近づいてる感じがしない。

この区間、しんどくて写真なんか撮っていない。

実に長くストイックなトレッキングが続いた。

僕の体力MAXが100だとすれば、この時点で60くらいまでそぎ落とされた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やがて森林限界を越えて、目の前に迫力ある常念岳が重々しく姿を現した。

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真っすぐ直登で伸びる急峻な登山道。その両サイドの斜度も凄まじい。

上の方に豆粒よりも小さな人間が、山にへばりつくように登っているのが見える。


まじか?こんな所を登って行くのか。

急だとは聞いていたが、想像以上だ。


ここから再び高度を下げて、いよいよこの挑発的な山に取り付いて行く。

足場はゴツゴツの岩だらけで、まともに一歩一歩進んで行けない。

上を見上げればここを登るのかとゾッとする光景が目に入り、

IMGP0096.jpg

下を見れば、ケツの穴もあっという間に針の穴程まで萎んでしまう。

IMGP0095.jpg

写真でこの恐怖が伝わるだろうか?


実際まだなんとか写真が撮れるのがこの程度で、激しい所はとてもじゃないがカメラを取り出す勇気はない。

万一足を踏み外せば、10秒後にご先祖様との対面を果たす事になるだろう。



ここで言っておくが僕は激しい高所恐怖症だ。

脚立の一番上にも立てない男がなぜこんな事をしているのだろう。

急とは聞いていたがここまでとは思わなかった。ロッククライミングじゃないか。

初心者が20キロ近い荷物を背負って登っちゃダメじゃないか。

僕はおちんちんをポークビッツ並みに縮小させつつも、とにかく下を見ないように慎重に登って行く。


前方の切り立った岩場をおばちゃんが下ってくる。

IMGP0097.jpg

ヒョウ柄帽子に紫色の髪の毛。絶対関西の人だろう。

なぜだ。なぜこんな大阪のおばちゃんみたいな人は軽々と下って来れるんだ?

怖いもの知らずなところはさすがだと感心する。


やがて山は雲に覆われ始め、突風が吹き始める。

IMGP0099.jpg

ここに来てそれは勘弁願いたい。

僕は一応楽しい登山をしにここに来てるんです。


必死でしがみつくように登って行く。

ほほを濡らす一滴の水滴。相棒が追いついてきやがった。雨だ。

この足場で雨と風はないだろう。

ほんと怖いからやめて。お金払うからやめて。


IMGP0101.jpg

雨は5分程で止んだが、岩場を滑りやすくするには十分な時間だった。


リスキー度が上昇した常念岳をひたすらに足下だけを見て登って行く。

すると何やらあり得ない程巨岩が入り組んだ場所に出てしまった。

コースを見失って、僕はとんでもない所に入り込んでしまったんだ。

もはやどこから足場が崩れて滑落するか分からない、滑落黒ヒゲ危機一髪。

やむなく元来た道を戻るが、下りなので今は見たくもない絶景が広がっている。


怖い。怖いよ。

足はガクガク震え、目は涙目。

家族や友達の顔がちらつきだす。

テレビのニュースが平和なお茶の間に流れる。

「無謀な初心者登山者が常念岳山中で滑落した模様。先ほど1体の死体が病院に搬送されました。長野県警では只今身元の確認を急いで・・・」

ああ、悪い事ばっかり頭に浮かんでは消えて行く。しっかりしろ。



そしてどれほどの時が経っただろう。

ついに常念岳の山頂が見えて来た。

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生きてる。僕はまだ生きてるぞ。

力を振り絞り頂上を目指す。

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着いた。

達成感というより安堵感。

もう怖い思いしたり、妄想の世界の住人でいなくていいんだ。

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頂上にて記念撮影。笑っているが足もまだ笑っている。


頂上からの眺めは中々素晴らしい。素晴らしくなきゃ困る。

IMGP0105.jpg

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この時点で僕の体力ゲージは残り30といったところ。

思いのほか消耗してしまったが、どちらかというと体力よりも精神が随分削られてしまった。


沢山水も飲んでしまった。残りは少ない。

この先に常念ヒュッテがあるから、余裕かましてかなり頻繁に大量の水を摂取していた。

まあ常念ヒュッテで水は補給すればいいし、あとは下ってくだけだし大丈夫さ。

そんなことより早くヒュッテに行って、ビールだ、ビール。


僕は常念岳を下り始めたが、山頂付近にあると思っていた常念ヒュッテの姿が見えない。


やがて登山道が二つに分かれている。

表札には片方が常念ヒュッテ、もう一方が三股(僕が目指すゴール)となっている。


その時常念ヒュッテ方向から登山者が来たので、ヒュッテまでどれくらいかかるかと聞いてみた。

5分から10分くらいで着くと思っていた僕に対して彼は言った。

「往復で2時間くらいやね。」




しばし、時が止まる。

ここから三股まで3時間半もかかるのに、ここで上乗せ2時間はとてもじゃないが体力・時間共にキツいものがある。

さらに話してみると、僕が当初予定していた常念ヒュッテから三股への登山道は現在は閉鎖しているという。

ということは今この道を三股方面へ下山しなくてはならない。

しかし残りの水はわずかしかない。3時間半を600mlほどで乗り切れるか?

かと言って常念ヒュッテまで往復2時間水を補給しに行って、そこから下って行ける程の体力も残っていない。


もはやビールがどうこうという世界ではない。

目の前には絵に描いたような2本の運命の分かれ道。

単独行。

選ぶのは自分自身。

すべての責任が己にのしかかる。


過去に屋久島でプチ遭難した時に、脱水状態で山を彷徨う厳しさを嫌という程味わっている。

しかし僕の足は三股脱水コースへと向かい、魅惑の黄金水のある山荘へ背を向けて歩き出す。


天使が僕に囁く。

「だめだ、そっちへ行っちゃ行けない。君は脱水症状がどんなに辛いか知ってるじゃないか。」

しかし僕は「お前は間違っていない」と呟く悪魔の言うがままに進む。

だって僕はMだから。


M界のドラフト1位候補は、脱水状態で9回完投勝利を飾るのことができるのか?

体力的には4連投後の甲子園決勝のマウンド。

「権藤、権藤、雨、権藤」の再来なるか?投げ過ぎなのか?


今回で完結の予定だったけど、書ききれんかったから次回持ち越しです。


-つづく-


マゾ男登頂記〜ひとときの幸せ〜

Posted by yukon780 on 18.2011 蝶ヶ岳〜常念岳/長野 0 comments 0 trackback
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前日の記事が悲惨すぎて、これから山に行こうという方のテンションを下げてしまったかもしれない。

なので今回は2日目の前半の素晴らしい部分をお伝えし、後半の地獄は次回お届けする事にする。

今回の2日間の延べ40時間に渡る旅の、わずか1時間半だけの幸福な時間。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕はまだ生きていた。

携帯のアラームで朝4時半頃目を覚す。

くそ寒いのは相変わらずだが、昨夜の突風は大分収まっていた。


あの後、何度も夢と現実の間を彷徨い長い夜を越したんだ。

内容ははっきり覚えていないが、随分壮大でヘビーな悪夢を見ていた気がする。

妙な疲労感だけが僕の体を支配していた。


外を見ると厚い雲に覆われたままで、ご来光は拝めそうにない。

いつのまにか僕のテントが風上最前線に立っていた。

みんな夜のうちにテント移動させたんだね。

僕は一晩中最前線でTMレボリューションのように風を受けていたわけだ。


今日は昨日の倍近くの10時間程歩かなきゃ行けない長丁場だ。さっさと出発しよう。


朝飯を済ませ、そそくさとテントをたたんでいると僕の背後に光が差し込んで来た。

先ほどまでの分厚い雲が、まるで劇場のカーテンがサーッと横に開けて行くように流れて行き、ご来光が姿を現した。

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その時点で太陽はすっかり全身を出してしまっていたが、そのニクい演出のおかげでとても感動した。

慌てて見晴らしの良い場所に移動して、しばし千両役者ご来光さんを観劇。

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地獄の一夜を乗り越えた者へのご褒美か。

今日はいい一日になりそうだ。(彼の予想は半分が当たり、半分は予想以上に裏切られる事になる)


荷物をパッキングし、山荘で水を補給していざ出発。

その頃にはすっかりいい天気になって来ていた。

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憧れてた稜線歩き。

そう、これだよ。これなんだよ求めていたものは。

アップダウンのそれほど激しくないなだらかな尾根を歩けば、自分の視界の両サイドは全く別の絶景を同時に見ることが出来る。

一方では悠然たる穂高山脈を眺めつつ、

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もう一方では、朝日に包まれ眠りから覚め始める松本の町を一望出来るのだ。

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最高だ。

やっぱ僕は登頂登山よりも縦走登山のがグッとくるよ。

昨夜の惨劇もこれで報われた気がする。


ただひとつ残念な事は穂高連峰のTSUBAKI女優陣たちが、相変わらず雲に覆われてその美しい顔を拝ませてくれないのだ。

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ちょうど山頂だけを覆う雲。

この見えそで見えない感じが実にいじらしい。

全裸のアンジェリーナジョリーが目の前に寝そべっているのに、何も手出しが出来ない男のような悶々とした気持ちが募る。

くそぅ、M心を刺激しやがって。


そんな僕の気持ちを察してくれたのか、広末が一瞬チラ見せをかまして来た。

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あのザ・魔雲天のようなフォルム!(キン肉マン参照。7人の悪魔超人の一人)

名峰槍ヶ岳ではないか。

20年程前、母さんと登った山槍ヶ岳。

中学生だった当時、どんな場所かもよく分からずに連れて行かれ、鎖やハシゴを使って登るこの山に「殺す気か」と思ったものだ。

母さんは畳一畳分くらいしかない頂上で、ワンカップ大関を飲んで酔っぱらって中々下山出来なかったというのを覚えている。

20年のときを経て、今僕は槍ヶ岳をチラ見している。感慨深いものがある。


槍ヶ岳はあっという間に再び雲の中へ。

それでもこの稜線から見る穂高連峰は忘れられない思い出となった。

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しばらく進んで行くとポッコリとしたお山が出て来た。

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地図を見ても特に名前は書いてなかったので、この手の山の宿命として「もっこり山」と命名した。

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もっこりの頂上には実に絵になる見知らぬおっさんが立っている。


僕はもっこりを登り始める。

遠目ではふんわり感のある見た目のもっこりだったが、実際取り付いてみると非常にいかついもっこりだった。

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なんてゴツゴツしたもっこりなんだ。

このもっこり、登りだすと結構急峻にそそり立っている。

僕は慎重に、優しく、時に激しくもっこりを攻めて行く。

そして汗だくになりながらもっこりの先っちょに辿り着いた。

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もっこりからの眺めは中々に素晴らしいものがあった。

いいもっこりだ。


そこで先ほどの見知らぬおっさんも休憩してたのでしばし話をする。

テントを担いでいたので聞いてみた。

僕「昨日の夜は突風がすごかったですね。僕は登山経験があんまりないので、あれが普通なのか異常なことのかも分からんくて怖かったですわ。結構あんな感じなんですか?」

おっさん「昨日はほんとすごかったね。10年以上山やってるけどあそこまで酷いのは記憶にないわ。さすがに夜中にテント移動させたよ。」

やっぱりか。

旅の神はいつだって僕に残酷だ。

初心者に対していきなりハイレベルな試練を与える事はないだろう。

思えば僕が熊野川で初めて一人でテント泊したときは、ものすごい土砂降りで翌朝テントの中はプール状態。耳まで水につかっていた思い出が僕のアウトドア経験の記念すべきスタートだった。

できれば最初くらいは素敵な思い出を作らせてほしい。

旅先でのファーストキスはいつだってアブノーマルなものなので、たまに天気がよくて普通のキスをしてしまうと僕はどうして良いのか分からなくなる。


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1時間半程素敵な稜線歩きをしていたが、次第に稜線は下降を始める。

僕はてっきり常念岳までこんな感じの素敵な稜線が続いて行くと思っていたが、どうやら一度高度を下げて、再び常念岳に向けて登って行くようだ。

その時の僕には聞こえなかったが、今ならその時旅の神が呟いた言葉がはっきりとわかる。

「昨夜を乗り越えたからと言って調子に乗るんじゃない。

さあ、ひとときの祭りはもう終わりだ。お前にはもう十分だろう。

これからが本当のマゾの世界への入口だ。」


いつだってこいつのやり方はこうだ。

ツライばっかならさすがの僕だってこんなに旅はしていない。

時折織り交ぜてくる数滴の素敵な体験があるからツライと分かっていても旅立ってしまう。

やり方が女を餌にするヤクザのようだ。

時折優しい部分を見せておいて、なついて来たと分かればぶん殴って泡の世界へ送り込むようなやり方だ。


何も知らない鼻歌まじりの僕は、森林限界ラインを下降し森の中に吸い込まれて行った。

ここから己の精神・体力限界ラインを遥かに超えて行くとも知らずに。


-つづく-



マゾ男登頂記〜地獄の四重奏〜

Posted by yukon780 on 16.2011 蝶ヶ岳〜常念岳/長野 0 comments 0 trackback


神の黄金水でやっと落ち着きを取り戻した僕は、その後早速テントの設営に向かう。

テント場にはすでにいくつかのカラフルなテントが並ぶ。

どいつもベテランチックな猛者どもだ。

いつも川では一人きりでテントを張りたい僕だが、さすがにこういう状況では人がいると心強い。

一番眺めのいい場所はすでに占拠されていたから、そこからやや下の位置をテン場とした。

しかし僕が設営を始めたあたりから激しい突風が巻き起こる。

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さっきまで穏やかだったのにどういうことだ。

この状況で一人でテントを張るのは実に骨が折れる。

1カ所ペグで固定して逆側に回れば、その間にテントは突風にあおられ飛んで行きそうになる。

誰かに片側抑えていてほしかったけど、恥ずかしがり屋の僕は容易に声をかけられない。

それでもなんとか頑張って設営完了。

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真ん中の黄色いテントが僕のテント。

よし、とりあえずこれで腰を据えて頂上探索に出かけよう。


2分程歩けば蝶ヶ岳山頂だ。

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思いのほかサッパリした標識なのね。

でもそこからの眺めは素晴らしかった。

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明日僕が目指す常念岳と、そこに至るまでの稜線がよく見える。

こうして見ると、すぐそこって感じがするけど4時間強歩いてあの山頂まで辿り着くらしい。


一方反対側を見ると、ついに奴らがふてぶてしく姿を現す。

穂高岳、槍ヶ岳などの錚々たるジャパンオールスターズな山達。

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資生堂TSUBAKIの女優陣が目の前にズラッと並んだ感じだ。圧巻。

雲間から注ぐ日の光が、よりその神々しさを際立たせる。

と言っても、全ての山の頂上が雲で覆われててどれが広末涼子でどれが鈴木京香なのか皆目分からない。

僕に対しては顔出しNGという事か。明日に期待するしかない。


その後も付近をプラプラする。

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なんかこのテントを張った後のもう何もしなくても良い、何も考えなくて良いって時間がとても好きだ。

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僕が神の黄金水を飲んだ最強のビアガーデンでは、他の登山者もまったりくつろいでいる。

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このビアガーデンから少し奥に行った所に三角点(と言えばいいのか?よくわからない)がある。

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そしてこのあたりから猛烈に寒くなって来た。

さらに風は勢いを増し、急激に山頂は分厚い雲に覆われて一瞬で辺りは霧に包まれる。

「お前のような者にまったりされてたまるか」とばかりに、北アルプスが牙を剥く。

せっかく辛い山登りから解放されて、ここからという時になんて事だ。

あっという間に僕の周りで、お馴染みのグレイッシュな光景が広がって行く。


寒い!信じられない寒さになって来たぞ。

風が強すぎてテントが斜めにひしゃげている。

とにかく僕は逃げるようにテントに潜り込んで、急いで着替えて、持って来た防寒具を全て身に付けた。


そこで晩飯を作って食って少し落ち着く。

でもあまりの寒さと風でとてもテントの外に出る気がおきない。

僕のささやかな予定では、沈み行く夕日を切ない表情で眺めて、その後訪れる静寂の夜は満天の星空を眺めながら最高の暖かいコーヒーをすすって、今後の人生を模索したりなんかしちゃったりしてたはずだったのに。

いつもの僕の決め台詞が飛び出す。

「こんなはずじゃなかったのに。」



そして今回チョイスしたテントがまたよろしくなかった。

軽さ重視で選んだもんだからMSRのハバを持って来たんだけど、このテント、上部が若干メッシュになっており喚起を良くしたり、夏場でも涼しく快適に過せるというテントだ。

今はその快適喚起機能がアダとなり、寒風を見事にテント内に導き入れてテント内の気温はグングン下がって行く。

テントを設置した場所も悪かった。

こういう場所では、景色よりも少しでも風をさけられる場所を考えて張るべきだったんだ。

おまけにテントの真横にモロに風が当たるような向きになってるから、余計タチが悪い。


意を決して外に飛び出し、風に耐えながらテントの向きを必死で変える。

ペグを抜いた途端、テントが遥か彼方へ飛ばされそうなので、テントにしがみつくようになんとか向きを変えた。

他の人も場所を変える人、向きを変える人がいた。


だめだ。もうさっさと寝るしかない。

防寒着を全て着てしまったので枕になるものがない。

枕がないと眠れない意外と繊細な僕は、悩みに悩んだ末に本日苦楽を共にして来た汗だくTシャツ・靴下・パンツ・スポーツタイツ達を袋にくるんで枕とした。

多少臭うのはしょうがない。寝れないよりはマシだ。


そして禁煙のお薬(禁煙野郎参照)と睡眠薬を飲んで寝袋に口だけ外に出してくるまった。

僕は旅先でどんな苦痛の夜でもさっさと眠れるように、いつも睡眠薬を持参しているのだ。


突風はどんどん勢いを増してきて、もはや台風の中でテントを張っているみたいになって来た。

万が一テントごと飛ばされた日にゃ、20mくらい先の崖からそのまま1000m滑落のグッバイコースだ。


怖い。すごく怖い。

一度死の恐怖に取り付かれた者は容易に平静を保てなくなる。

風はとても複雑な流れでテントを襲う。同一方向からとは限らない。

なので、テントの中にいると、テントの前後左右がババババババと激しい音をたて続ける。

離陸直前のヘリコプターの真横でテント張ってるようなものだ。

その音が外の風の爆音と激しく混じり合い、恐怖を増長させる。

まるで屈強なムキムキの男ども複数人にテントを囲まれ、延々とテントを激しく叩かれてるような気分だ。

男どもは雄叫びを上げながら、僕を殺そうとしてるんだ。

今の僕なら、桜田門外の変で散った井伊直弼の恐怖がよく分かる。

目を血走らせながら迫り来る水戸浪士たち。

駕篭の中で外の乱闘騒ぎに耳を立てて恐怖におののく井伊直弼。

僕はそんな変な妄想に苦しむ。

蝶ヶ岳、錯乱Mガイの変の勃発だ。


そんな時、ふと吐き気を催した。

いよいよ気持ち悪くなり本気で吐きたい感じになる。

なんだ?高山病なのか?それとも禁煙の薬と睡眠薬の相性が悪かったのか?

しかし、バッチリ効いてきた睡眠薬のせいで体が動かない。吐きに行けない。

外に出てこの風の中で吐いたら、僕のゲロはオーロラのように美しく空に放たれる事だろう。そもそもこんな寒風の中で外に出たくはない。


夜になるに連れ、寒さはみるみる増してくる。

そんな時あの懐かしくてお馴染みの音が僕の耳に入って来た。

ポツリポツリとテントを叩く音。
悪天候の花形役者、僕の旅のパートナー。雨だ。


さらにはなにやらとても異臭に包まれて来た。

僕の枕の中の異臭オールスターズ達がここにきて本気を出して来た。


さむい・・・つらい・・・こわい・・・くさい・・・はきたい・・・


やがて山荘の方からアナウンスが聞こえて来た気がした。

「テント泊の方、危険です。本日は山荘の方にお泊まり下さい。暖かい毛布と暖かいお飲物をご用意しております。部屋の中は風の音も聞こえないですよ。さあ、早く・・・こっちは・・・天国ですよぅ・・・」

やばい。幻聴だ。

いよいよ僕は駄目らしい。ああ、りんたろくん。ごめんよ。ごめんよ。


夢と現実でまどろみながらも眠りにつけない僕は、冷蔵庫のような寒さ・吹き止まない突風・己の分身達の異臭・原因不明の吐き気などと戦いながらドロドロと浅い眠りに沈んで行く。

蝶ヶ岳苦痛の四重奏は死への恐怖のメロディーを高らかに奏で続ける。

それは「永遠」という言葉が現実に感じられる苦痛の調べ。


ドM男は眠りに落ちる前にポツリと呟く。


「ああ・・・、最高や。」


孤高の変態が誕生した瞬間だった。


-つづく-


マゾ男登頂記〜蝶ヶ岳の黄金水〜

Posted by yukon780 on 15.2011 蝶ヶ岳〜常念岳/長野 2 comments 0 trackback


最近、めっきりカヌー野郎から山野郎になりつつあるが、決して山が好きなわけじゃない。

川は暑くて晴れた日なんか最高の遊び場だし、圧倒的な楽しさがある。

一方、山はあまりにもストイックすぎる。

でもカヌー人口に比べて、山やってる人は圧倒的に多い。

正直すごくしんどいだけだし、僕の場合登頂してもさほど達成感を感じないからとても疑問だ。

シニアの方々の登る姿なんてとても信じられない。みんな死にたいのか?


では、なぜ今回山の素人が一人で北アルプスに登ってしまったのか?

それは僕が生粋のドMだからに他ならない。

高所から低所に水が流れるがごとく、M男の宿命として導かれたのだ。

予想通り、今回の旅も(登山だって旅なんです)すこぶる僕を痛めつけ、激しく罵倒してくれた。

蝶ヶ岳〜常念岳、1泊2日テント泊縦走単独行〜マゾ男登頂記〜の始まりです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

出発前日の夕方にこの旅に行く事を決めたもんだから、準備やら調べもので寝たのは遅かった。

とにかく朝の4時くらいの暗いうちに自宅を出て、遭難防止の為に早めに入山して早めにテント場に辿り着こうという計画を立てた。

しかし朝、6時起床。

いきなりの寝坊スタートだ。

寝起きとともに計画が頓挫し、いきなり追いつめられる波乱の幕開けとなった。

まあ寝坊しても単独行だから誰にも迷惑はかけないが、ミスはすべて自分に跳ね返ってくる。

そこから休憩無しの4時間ロングドライブ。

登山前に僕はかなりの疲労感を身にまとう結果となった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

IMGP9794.jpg

三股の登山口駐車場はぱんぱんの満車状態で、車を置くスペースがない。

出遅れた僕をあざ笑うかのような結果だ。

道路の脇で一応準備を進めていたら、ちょうど1台車が出て行ったから慌ててバタバタと車に乗り込みその場所への駐車に成功した。

慌てすぎて、持参のカロリーメイトがバキバキに砕けるというアクシデントはあったが、これでなんとか入山出来そうだ。

準備も完了し、10時頃張り切っていざ出発だ。

駐車場脇にあった登山道らしき場所を登って行く。

IMGP9795.jpg

すると、この先。ベンチとイスがあってその先の道がないじゃない。

僕は登山開始1分にして途方に暮れた。

1分前はあんなに張り切って登り始めたのに、2分後には下山。


あらためて、駐車場奥にちゃんとした道を見つけたから進んで行く。

翌日の夕方に同じこの道を、新橋のサラリーマンのようなフラフラの状態で下山してくる事になるなんてこの時は知る由もなかった。

IMGP9796.jpg

登山届け所が出て来たから、登山届けを提出して、隣の案内板をチェック。

現在地の三股登山口から5時間半かけて蝶ヶ岳へ。そこが本日のテント場。翌日常念岳方面へ稜線を歩き、再び下山する予定だ。

IMGP9797.jpg

しかし、この時の僕は蝶ヶ岳の方で頭が一杯で、常念小屋から前常念岳への「×」「廃道」の文字が頭に入っていなかった。

これが翌日の下山時、脱水野郎になって地獄を見るはめになるのだが、この時の彼はそれを知らない。

IMGP9801.jpg

出だしは非常に順調に進んで行った。

今までりんたろくんと行った、ヒルまみれ笹まみれの山々を思えば軽々と僕は登って行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しかし、1時間経っても2時間経っても延々とこんな感じが続く。

さすがにしんどい。汗は滝のように溢れてくる。

もちろん登れば登る程道もどんどん急坂になって行き、いよいよMモード全開になって行く。

IMGP9800.jpg

そして腹が減って来た時に気づく。

昼飯のおにぎり買ってくるのを忘れてるじゃないか。

初日の昼飯以外の自炊するメシは持って来ているが、約2ℓ持って行った水も少なくなっているのでここで自炊は厳しい。

昼飯休憩ポイントと見込んでいた「まめうち平」もいつまでたっても現れない。

しかたなく微かな登山道の脇へ腰掛けて、砕けたカロリーメイトやミックスナッツを昼飯代わりに惨めにほおばる。

しかしこいつらすごい勢いで僕の水分を奪って行く。
結果的にに沢山水を飲んでしまった。

さらにここからわずか3分くらい歩いた所で「まめうち平」が登場。

IMGP9803.jpg

あんな惨めな場所で食わなくても、あとちょっとだったんだね。


さらにひたすら進んで行く。

もう大分体力的に厳しい状態で、追い討ちをかけるように足の踵に靴擦れが発生。実につらい。

IMGP9804.jpg

「そこを登って曲がれば、景色が開けてくるはず」って何度も思っては裏切られてまた登る。
非常に精神的に堪える登山が続く。

でも登り始めて2時間半くらい。
やっと景色が開けて来て、常念岳が雲間から姿を現した。

IMGP9806.jpg

下を見れば、豊科の町が広がっている。

IMGP9811.jpg

いやあ、登って来たねえ。

そこからは一気に森林限界を超えて、見晴らしの良い「いかにも」な感じになって来たぞ。

IMGP9812.jpg

IMGP9813.jpg

さらにズンズン登って行く。
常念岳も雲が晴れて、大変よろしい姿を見せつけて来た。

IMGP9817.jpg

お花なんかも咲いちゃったりして、いい感じになって来たぞ。

その後もひたすら登り続ける。気持ちはカネミ食品の社員だ(わかるかな?)。


蒼穹の空に向かって登って行くような感覚。

IMGP9819.jpg

しかし、景色の良さとは裏腹に酸素濃度はどんどん薄くなって行くのが分かる。

息が切れまくって、ゼヒゼヒ言いながらも一歩一歩全身で登って高度を上げて行く。

IMGP9825.jpg

水もなくなりそうになって、喉もカラカラの状態に鳴った時蝶ヶ岳ヒュッテが見えて来た。

IMGP9826.jpg

やった、着いたぞ。ビールだ!

その頃の僕は頂上に着いた感激よりも、ビールの事しか頭になかった。

ほんとの蝶ヶ岳頂上は歩いてすぐの所だが、僕は一目散に山荘を目指す。

今の僕の頂上はビールなんだ。

IMGP9847.jpg

IMGP9846.jpg

一体誰がこんな2600mを越える所までセールスに来るというのか?

そんな突っ込みにも力が入らない。

いち早くビールを飲むんだ。


山荘の中に入ると老夫婦が宿泊の手続きをしていた。

その人達と山荘の受付の人とえらく話が盛り上がっていて、僕は何分もその場に待たされる。

待たされている間の僕の顔は阿修羅の様な顔だったことだろう。

やっと老夫婦が去り、僕は早口でテント設営代300円を払い、500mlのビール700円を支払う。

ビールの値段が高いだの、設営代のが安いだのと文句は一切浮かばない。むしろ700円では安いくらいだ。

ビールという文明が作り出した最高傑作を手に、頂上まで我慢出来ないから山荘裏の景色のいい所に移動。

IMGP9839.jpg

常念岳に向かって高らかに乾杯!
まるでアサヒビールのポスターのようではないか。

IMGP9834.jpg

そしてついにビール注入。

IMGP9845.jpg

突き抜ける快感!めくるめく爽快感!

これはもう人間の作ったものじゃない。神が作り賜うた黄金の聖水だ。

ストイックな世界に投じられた一滴の快楽の雫。

この為に5時間登って来たんだね。


僕はしばらくその快楽に身を委ねた。

その日の夜、地獄の一夜を過ごす事も知らずに。

-つづく-


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