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富士6苦フェス〜エピローグ〜

Posted by yukon780 on 18.2011 富士山/静岡 5 comments 0 trackback
みんなと別れ、僕は岐阜を目指し動き出した。

ここからは家までの、5時間ロングドライブ地獄が待っている。

30時間以上不眠不休の体調で、それは結構なハード登山に等しい。

タイムリミットはりんたろくんのお風呂の時間(8時半頃)までに家に帰らねばならない。

基本的に僕が子供を風呂に入れなければ、僕は嫁から恐ろしい仕打ちを受けるのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

運転を始めてわずか10分程。

強烈な眠気が僕を襲う。

何度も意識を失い、ビクッと起きては急ブレーキ。このままでは事故ってしまう。

限界だ。次の路肩駐車スペースが出てきたら、仮眠をとろう。


最初のスペースには車が止まってた。

次のスペースにはなぜか救急車が止まってた。

次もなぜか警察の車が止まってた。

次は事故直後のバイクと携帯で電話をする男が。


止まれないじゃないか。

しかも全体的に良く分からない状況になっているぞ。何が起きてる。

そんな事よりも、目を開けているのがやっとの状態だ。

頼むから休憩させてくれ。


結局、そのまま町まで出てしまって手頃な休憩場所がない。

とりあえず腹も減ってきたので、飯を食おう。せっかくだから富士宮やきそばでも食ってみるか。

富士宮やきそばののぼりが立っていたので、体をふらふらさせながら一件のお店に入る。


やきそばを注文してから、実に30分程が経過した。

なぜだ。焼きそばだぞ、なんでこんなに時間かかるんだ。

僕の他に客は3人程。別に混んでる訳じゃない。

だめだ。もうここで寝てしまおうか。

そう諦めた時、やっと焼きそばが出てきた。

しかし、出来立てのはずの焼きそばがなぜかぬるいじゃない。

でもつっこむ元気もないので、もさもさと焼きそばを食す。


店を出て、見上げるとそこには富士山が。

IMGP1046.jpg

あそこを登ってきたんだね。

でも油断はしない。家に帰るまでが登山だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お腹も満たされて眠気モードは最高潮だ。

延々と東名高速を走らせる。

恐らく、何度か白目になって運転していたはずだ。

愛知県に入ったあたりで限界の限界が来てしまったので、嫁に電話して一つの提案を試みてみた。


「さすがに事故りそうだから、岡崎(僕の実家)で泊まって明日の朝帰るじゃまずいでしょうか?」

すると嫁は「自分で考えな。」と言って電話を切った。

限りなく「NO」に近い言い草だ。

僕が提案を押し通したら、「育児よりも遊び」「ご両親に迷惑をかける」「家庭を顧みない男」のレッテルを貼られる分、たちの悪い言い方だ。

なんて女だ。本当に事故ってやろうか?

僕は苦渋の表情で岡崎インターを通り過ぎ、そこからさらに2時間のドライブを余儀なくされた。


やがて意識が朦朧としてきた。

実に朝起きてから36時間程が過ぎようとしていた。

さすがのジャックバウアーでも、36話目ともなれば意識は混濁となるだろう。

僕はサービスエリアで泥のように仮眠をとった。


1時間程の仮眠の後、再び走り出す。

フロントミラーを見た僕はビクッとする。

僕の目の白目部分は、その90%が充血で真っ赤になっていてまるで悪魔のような目になっている。

限界を超えた人間が辿り着く、ギリギリのラインだ。


僕は何度か「ああ、ああ」と奇声をもらしながらも、ついに8時30分頃家に到着した。

間に合った。りんたろくんのお風呂に間に合ったぞ。

荷物も置きっぱなしにして、家に入ると驚愕の光景が目に入る。

そこには風呂上がりのりんたろくんの姿があった。

夕方草むしりを終えたお義父さんが、汗を流すついでで入れてしまったとのこと。


だったら。 だったら岡崎で泊まってきてもよかったんじゃねぇぇ。


そう嫁に言うと「クサッ!近寄らんといて」という始末。

僕の中では富士山を遥かに凌ぐ、5000m級のS山だ。

そんな事言われても、もはや僕は風呂に入る気力さえも残っていなかった。

「りんちゃんかわいそー」という嫁を尻目に、僕はりんたろくんを抱えて2階へ。

生還報告の記事を書いて、エンターのボタンを押した時、この富士登山のすべてが終了した。

実に朝から42時間の時が経過していた。


僕はりんたろくんとともに泥のような眠りに落ちて行った。


富士6苦フェス 〜完〜


ーおまけー

この夜のりんたろくんは、よほどお父さんが臭かったのか、いつにも増して何度も激しく夜泣きをした。

その度に僕は起こされてあやす。

彼のドラマはシーズン2へと突入して行った。


そして一週間後。

本来僕が富士登山の日だと思っていた日は、バッチリ雨が降った。


そして僕の腰痛はあれから日々酷くなっている。

フェスティバルは終わらない。



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富士6苦フェス5〜熱狂の下山ライブ〜

Posted by yukon780 on 16.2011 富士山/静岡 0 comments 0 trackback
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我々は下山を開始した。


しばらく降りて行くと、見覚えのある別ルートが姿を現した。

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まさに僕が登りの時に、プチ遭難へのきっかけとなった別道だ。

足下を見ると一応ロープが張ってあったみたいだが、僕は全く気づかなかったんだ。

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もう少ししゃんと張っとていてよ。

この1本のロープに気づかなかった事で、僕は剣ヶ峰で切ない夜を越す事になったわけだ。

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昨夜は真っ暗だったから分からなかったが、やっぱり景色が開けていると気持ちいい反面高度感があってちょっと怖い。

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しばらくはのんびりと下って行く。

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しだいに、本日の朝出発の登山者たちと沢山すれ違うようになる。

基本、下り側の人間が道を譲って待機しなくてはならんので、しだいに僕らのペースは遅くなって行く。

途中、登山道とブルドーザー道との分かれ道があり、僕らは二手に分かれた。

最短距離だけど足場は悪くて人が邪魔な登山道を、僕とB旦那さん、横綱Kさん、元美のKさん。
距離は長いが歩きやすくて人がいないブルトーザー道をバターN君、タオラーSさん、ジャバS君、女優Eちゃんが進む。

同ルートの横綱Kさんは、早くも先行してすごいスピードで下って行った。

彼はトレッキングポールなどという軟弱なものは使わない。

彼が使うのは太い「金剛杖」一本。実に男らしい。


僕らの視線はまだまだ雲の上だ。

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この辺までは快調に下って来た。

僕のクライマーズハイ状態もまだまだ続いているのか、疲れてはいるんだがまだまだ全然元気だった。


しばらく進むと、なんとMTBを担いで登ってくる奴らがいる。

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どんだけマゾなんだ。僕も交ぜてくれないか?


下っていると、いろんなタイプの登山者とすれ違う。

MTBマゾトリオの他に、短パン一丁上半身裸のムキムキ筋肉じじぃや、高山病でひん死状態のトレイルランナー、りんたろ登頂記を彷彿とさせるベビーキャリアで子供背負って登る人、「山、なめてます」といった感じの軽装の若造たち、山ガールから山ババァまで実に多種多様なる人間交差点。

見ていて飽きないが、登ってくる人が増える程にどんどんペースは落ちて行く。


そこで僕とB旦那さんは「弾丸下り野郎」スイッチを入れて、一気にペースアップを図る。

まさにムササビのように登山道を駆け下りて行く二人。

トレッキングポールを巧みに駆使して、走るように下って行く。

登りの人がいれば急ブレーキか、鮮やかに避けながら下って行く。

ここにきて僕のナチュラルハイ状態は最高潮の時を迎え、ノンストップでトレイルランナーのように富士山を駆け抜けた。

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数十分後、「富士6苦フェスティバル」が高らかに開演の時を迎えた。


快調に飛ばしていた僕は、トレッキングポールで体の勢いを殺す事に失敗。

挙げ句、左足首をグネり激しく横転。

横滑りで回転し、頭を下にした状態で停止。

凄まじい横転っぷりに、他の登山者は僕に釘付けだ。

とても恥ずかしいので、すぐに起き上がろうとしたが、とても足首が痛い。


6苦のトップバッター「左足首捻挫」が華々しく登場し会場を盛り上げる。

三日前の平地グネり、そして富士山頂記念撮影の昇竜拳の時のグネり、そして今回の横転野郎でこの左足首は決定的な爆弾を抱えてしまった。

先ほどまでムササビのような快調さをキープしていた僕は、とたんに鈍牛の動きと化す。


そして「左足首捻挫」とハイタッチして新たなアーティストがステージへ上がる。

6苦の2番目アーティスト「全身疲労」が観客を煽りだす。

待ってましたと歓喜するドMな観客達。

ここに来て、唐突にクライマーズハイの状態が終了した。

スターで無敵状態だったマリオが、突然元に戻ってクリボーに当たって小さくなってしまったかのような脱力感。

どっと体に押し寄せる疲労感と各種痛み。

思えば、朝起きてから30時間近く不眠不休なんだ。疲れない方がおかしかったんだ。

鉛を背負ったかのような、重厚感あふれる体を引きずって僕はさらに下って行く。


2組のアーティストがひとしきり会場を暖めた所で、静かに3組目のアーティストが登場する。

6苦の3番手は「まめ&靴擦れ」の夢のコラボレーション。

普段はソロで活動しているが、このフェスの為にスケジュールを合わせて来た。

じわじわと会場を重い空気に引きずり込む美しいハーモニー。

足裏はすり切れたような痛み、踵も予防シートをしているにも拘らずやはり痛い。親指と小指の外側もじんじん痛み、人差し指の第二関節の頭ににはまめができて痛い。

珠玉のバラードはやがて熱を帯び始め、ハードなナンバーへと転換して行く。

そして気づく。

靴の中用ホッカイロが入れっぱなしで、なにやら低温火傷的な気配。

靴擦れにムレや熱気は御法度なのに、僕は火に油を注ぎ続けていたのだ。

ホッカイロを取り出そうとも思うんだが、ゲーターを脱いで靴を脱いでとかやる事すら億劫になっていた。

もう少しでゴールだろうからって放っておいたら、彼らは素敵なバラードからハードメタルへと進化していた。


そして6苦の4番手がステージに乱入して来た。

「両膝の痛み」だ。

正確にいえば、両膝の外側の激しい痛み。

正直立ってられない程の痛み。

瞬く間に僕はお馴染みの下山スタイル「産まれたて子馬」と化した。

一歩一歩がズシズシと骨に響いてくる。

両膝にヤン車のウーハーを搭載してしまい、会場にものすごい重低音が響き渡る。

狂喜乱舞する会場のドM客たち。


しだいに、膝の痛みをカバーすべくトレッキングポールへの負担が激しくなる。

6苦の5番目のバンド「両腕筋肉破壊」が舞台下からドライアイスのスモークとともに登場だ。

先週の無謀なボルダリングジムにて破壊された僕の両腕の筋肉へ、体重の全ての負荷が襲いかかる。

きしむ筋肉。そしてまだ完治していない指のむけた皮がさらにズルむけて血が滲む。


そしてついに大御所が登場。

トリを飾るのはやはりコイツだ。

6苦のラスト、苦痛のカリスマアーティスト「THE 腰痛」だ。

重い荷物を背負ってのトレーニングの日々で、かなりな状態まで来ていた我が腰痛。

ここにきてその痛みは最高潮の時を迎え、THE 腰痛は宙づりロープで会場高く舞い上がる。

会場のドMなファンの奴らも失神者続出の痛みだ。

今くしゃみでもしようものなら、その場で僕の腰はぎっくり腰になるのが自分でも分かる。


凄まじいまでのマゾの祭典。

富士山のすべては、この下山時に凝縮されていた。

基本的に富士山が悪いわけではない。

すべて己の体調管理の問題。

ただのセルフSMプレイだ。


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富士6苦フェスが始まってから、下山までは随分時間がかかった。

あまりの膝の痛みに後ろ向きで歩いたりしてた程だ。

やはり、人間の体は坂を下るようにはできていない。


フェスのステージには6組の出演アーティストが勢揃いして、ハードな「昴」を大合唱。

奇声を上げる者、ヘッドバッキンを繰り返す者、客席にダイブする奴、火を噴いてる奴、中には殴り合いを始める者もいる。

もはや僕の体のフェス会場はグチャグチャの無法地帯。


フラフラと6合目を越えた所で、B旦那さんと合流。

彼も僕と同様、スターウォーズのカクカク「C3PO」状態だった。

富士山の荒野をさまよう二人のC3PO。

二人とも人間の動きをしていない。

数時間前まで、あれほどかっ飛ばしてムササビのように駆け下っていた二人の哀れなる姿。

じいちゃんばあちゃんハイカーの長蛇の列に遭遇し、一人一人に哀れみの視線や言葉をかけられる僕ら。

「大変だったのねえ」「後ろ向きだと楽だよ」「がんばれ、あと少し」

逆に惨めさが増すからやめて。ほっといておくれ。


ゴールが近づいて来た。

あれほど他の下山者をごぼう抜きしていた我々だったが、最終的には老夫婦に抜かされるという惨状。

そして二人は崩れ落ちるようにゴール。


伝説のフェスティバルが終わった。

完全燃焼。

観客もだれもアンコールの催促をしない程の完全燃焼だ。

その時の惨状を後世に残すべくB旦那さんが撮影したものが、生還報告時に使用した下の写真だ。

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随分時間が経ってから全員が生還。

ここで劇的ビフォーアフター記念撮影だ。

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↑出発する時の記念写真はこんなにみんな笑顔だったが、

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↑なんということでしょう。すっかりみんなおっさん的な深い疲れがにじみ出ている。

しかしさすが女優。ただ一人変わらぬ笑顔を保っているのはさすがのプロ根性だ(自称だが)。



みんなでメシ食って温泉行こうという話になったが、僕は方向が逆なのでお先にドロンだ。

みんな、ありがとう。後半を除けば、とても楽しい登山だったよ。

もう、しばらく富士山はいいかな。これ以上の天気も無かっただろうしね。

またみんなでなんかやりたいものだ。

その時はまた、1週間ずらしでお願いします。


こうして僕の富士登山挑戦は終わった。

9日の朝起きてから、31時間が経過していた。

これからさらに岐阜に帰らねばならん事を考えると、それだけで吐きそうだ。


〜富士6苦フェス エピローグへつづく〜

富士6苦フェス4〜ガンダーラ巡り〜

Posted by yukon780 on 15.2011 富士山/静岡 0 comments 0 trackback
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僕は不安のまま剣ヶ峰を下り、頂上から見えていた富士館へ向かった。

はたしてみんなはそこにいるんだろうか?

もしや僕という存在は、もうみんなの中で「過去の人」のカテゴリーに入ってしまってないだろうか?


富士館が近づくにつれて、誰かが僕を発見した。みんながいた。手を振っている。

よかった。忘れられてなかった。

ましてや5合目の特設モニターで僕を観察していたわけでもなかった。

感動の再会。

僕は一番早く登って来たのに、一番遅く合流するというよく分からない結果となったわけだ。

みんなの認識としては、ここが山頂集合場所だったようだ。

(山頂手前で遭難しているので、この場所を見つけることが出来なかったのだ)


B旦那さんがウイスキーを飲ませてくれた。

長く孤独と寒さに震えていた僕の体が温まっていく。やっぱりビールよりもウイスキーだ。

単独行ばかりの僕だが、やはり仲間の存在はウイスキーのように心を温めてくれる。


やっとみんなで記念撮影が出来た。

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これだ。これこそ華やかな登頂記念写真だ。

あんな心霊写真のようなものでもなければ、全身真っ黒で写るものでもない。

実にいい笑顔だ。

もし僕が合流出来なかったとしたら、写真右上辺りに楕円形にくりぬかれた僕の顔写真が入る所だった。そんな寂しい結果にならずに本当に良かった。


みんなのカメラでも記念撮影。

B旦那さんのカメラで撮影した際に、僕は無理をして回転しながらジャンプをして昇竜拳を放ちながら写真におさまった。

そのとき、着地した左足首にピリッとした痛みが走った。

つい数日前に普通の道でグネッて痛めた場所を、さらに痛めてしまうアクシデント。

記念撮影では、はしゃぎすぎてはいけない。

またひとつ教訓ができた。

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富士山頂でのお楽しみと言えば、ご来光後の「お鉢巡り」だ。

富士山の火口を起伏に添って歩いて、1周するというもの。

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なんだかんだ、ここを回ると2時間近くかかるらしい。

なので、ご来光を見たらお鉢を巡らずに帰って行く人が結構いたりする。

我々メンバーの中にも、「お鉢巡りはしたくないなあ」という顔をした人が何人かいる。

まあとりあえず荷物をここに置いて、行けるだけ行ってみようということに。

何故か僕だけは荷物を背負って行った。富士山頂だって、燃やせ!脂肪肝だ。


そして、みんなで剣ヶ峰を目指した。

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僕個人としては本日二度目の登頂アタック。そう一日に何度も剣ヶ峰にアタックする物好きな奴はいないだろう。


観測所下に着くと、僕がいた時は想像も出来ないくらいの人だかり。

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9月と言えど、やっぱり頂上渋滞は起きるんだなあ。

寒かったけど、先に登っておいて良かった。


みんなはやはり違いの分かる人達だ。

わざわざ渋滞待ちをする剣ヶ峰登頂にはこだわらず、観測所下にて満足の記念撮影会。

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決して月刊サブ9月号の表紙ではない。

達成感に満たされた男達は、快晴のもとで素敵な笑顔を見せるのだ。


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休憩中の女優を背後から覆面のファンが襲いかかろうとしている一コマに見えるが、決してそんなわけではない。

ここでは誰もが充実した笑顔になるのだ。


ふと、下を見るとグッタリとした赤い彗星が登って来ている。バターN君だ。

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彼は見事に高山病男と化してしまって、大変つらそうだ。

非常につらそうだったが、容赦なく彼もお鉢巡りに同行する事に。

彼にとっては「お鉢巡り」というより「どM祭り」だ。

ちょっと羨ましいじゃないか。

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ジャバS君と横綱Kさんが先行して、ハイペースで消えて行く。

後で聞いたら、なぜか政治の話で大盛り上がりだったようだ。なんて渋い男達なんだ。


僕らはのんびりとお鉢を歩く。

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雨乞いを祈祷する山の仙女のようだが、彼女は決して下界に向けて天津飯ばりの気功砲を放とうとしてるわけではない。

ただデジカメで風景を撮影しているだけなのに、実に絵になる女だ。さすが女優だ。



稜線ではないが、絶景が続いて僕のテンションも向上の一途だ。

ほんとにこれだけ晴れるなんて信じられない。僕は夢を見ているのか。

僕の中の辞書から「快晴の旅」という言葉が消えかかっていたから、改めて僕は「快晴」を噛み締める。

これから僕を誘おうって思ってる方は、1週間予定をずらして僕を騙してから誘ってほしいものだ。

今この富士山の中にいる人間の中で、一番感動しているのは僕だろう。

登頂の喜びよりも、晴れた事に対する喜び。

悪天候男は晴れるだけで、果てしないヨロコビに包まれるのだ。

一般の人には分かるまい。僕だけの快感。

ただ、調子が良すぎて不安もつきまとう。

噴火しないよな?


そんな幸福感に包まれながら歩いていると、大沢崩れの辺りでちょっとした人だかりが出来ている。

みんなが崖の下を覗き込んでいる。

さては誰か滑落してしまったのか。

僕らも覗き込んでみると、思わず「うおっ」と声を出してしまう。

影富士じゃないか!

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予想もしていなかっただけに、結構驚いた。

なんて事だ。気分良すぎる。絶対噴火するぞ。

僕は晴れているだけでチビリそうなのに、もう失禁ものだ。

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今日来て良かった。

予定外だったけど本当に良かった。

旅の神は今頃、僕が行く予定だった乗鞍岳で地団駄踏んでいる事だろう。

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弱りきった赤い彗星、バターN君が追いついて来たので影富士と一緒に記念撮影をしてあげた。

しかし彼はこの時点で影富士の存在に気づいておらず、撮り終えた後に下を見て「うおっ」って驚いてた。

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やがて周りは西遊記のロケ地のような、荒涼とした雰囲気になって行った。

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悟空(B旦那)「お師匠様、休んで行きましょうよー」
沙悟淨(バターN)「もう、へろへろッスよー」
三蔵(女優E)「勝手にしなさい。おいて行きます。」

といった会話が聞こえてきそうな雰囲気だ。

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勇ましく、敵のアジトに向かう悟空。手には如意棒だ。

しかし、実際はトイレに行くと言って岩陰に消えて戻ってこないバターS君の捜索に向かう後ろ姿だ。


当の沙悟淨(バターN君)はどこにいたかというと、

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遠く後方で猪八戒(元美のKさん)と一緒に道ばたに倒れ込んでいた。

サディスティックな三蔵法師(女優E)は「オルァッ!行くぞぅ!」と悟空をせかす。

天竺への道は遠く険しい。

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お鉢巡りも半分をすぎた辺り。

絶景の山中湖だ。

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フルカラーの水墨画のような光景が眼下に広がる。

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元気そうにポージングしているが、この辺りでみんなそろそろ体の疲労感を認識し出す。

ちょっとしたハイキング的な気分でこのお鉢巡りを始めたが、結構こたえるものがあるのだ。


若干疲労感が漂い出した三蔵法師ご一行。

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沙悟淨(バターN君)が写っていないのは、グッタリして追いついて来ていないのだ。

新たに写ってる、何故か一人荷物を背負っているマゾ野郎は玉竜(三蔵の馬)といった所か。

物欲しそうな玉竜(僕)。三蔵法師から罵られるのを待っているのか。

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やがて、山梨県側の吉田口の登山道が現れた。

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今登って来た人も、お鉢を巡って来た人も満足感に包まれる。

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こちら側にも富士頂上の石碑がある。

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もはや剣ヶ峰だろうが富士館だろうが山梨側だろうが、どこが頂上でもいいさ。

お鉢まで来れればみんな頂上だ。(でも頂上で集合という曖昧な約束をすると、一人ばかり剣ヶ峰で孤独な夜を送る奴も出てくるので注意が必要だ)


沙悟淨(バターN君)が追いついて来たので、記念撮影だ。

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見よ。この全ての煩悩から解放されて幸福に包まれている男の顔を。

彼は高山病と激しい疲労によって、いち早く天竺に辿り着いてしまったようだ。


勇ましく下界を見下ろす三蔵法師。

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次に罵倒すべき男を捜しているのだろうか?

お師匠様。玉竜(僕)はここにいますよ。

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山梨県側のお鉢はなにやら全体的に荒々しい。

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体力的につらくなってくるのもこのあたりだ。

この辺りまで来ると、正直「もうお鉢巡り、いいや」って気持ちになってくる。

結構距離も長く感じて、意外と時間がかかる。



三蔵法師様はズンズンと進んで行く。

必死で僕も追いついて行く。

すると結構な幅の狭い崖の道で、ふいにお師匠様の帽子が風にあおられてフワッてなった。

帽子が飛ばされたと思ったお師匠様はすごい勢いで振り返り、「あ!帽子!」と叫ぶ。

その声にビクッとして、僕は反射的にお師匠様の視線の先に体を反転させて、飛ばされた帽子を取ろうと素早く動く。

足下はすぐそこが崖。

恐ろしすぎて、一瞬口からエクトプラズムが飛び出すほどだ。

僕は命がけでお師匠様の帽子をキャッチするのだ。

そして、ミスして罵られるのだ。


と思ったら実は帽子なんて飛ばされていなかった。

「ごめんなさい。」とあやまる三蔵法師様。

でも口元はニヤリと満足げな微笑みを浮かべていた。

師匠と馬の束の間のSM行脚。

天竺までの道は長く険しい。

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我々はヘトヘトになりながら、お鉢を一周して元の場所に戻って来た。

素晴らしくも、中々ハードなるお鉢の旅だった。


しばしの休憩の後、下山を開始した。

みんなが行きに登って来た登山道とは別の道で降り始めた。

混乱する僕。

僕はこの時点で、やっと登りの時にプチ遭難していた事を知ってぞっとした。

一体僕はどこを登ってお鉢に出れたんだろうか。

とりあえず生きてたから良しとしておこう。



そしてここからが実は「本物の富士登山」の始まりと言っても過言ではなかった。

富士山のサドっぷりは下山時にこそ集約されていたのだ。

小田和正、マイケルジャクソン、坂本九、ゴダイゴと繋いで来た前夜祭ライブはもう終わった。
(分かりにくいだろうが、記事のサブタイトルが全て音楽繋がりだったんです。)

マゾの祭典「富士6苦フェスティバル」がいよいよ開演の時を迎える。

僕は意気揚々と駆け下って行った。


〜富士6苦フェス5へつづく〜


富士6苦フェス3〜ひとりぼっちの夜〜

Posted by yukon780 on 14.2011 富士山/静岡 2 comments 0 trackback
寒い。

やっぱり頂上はとても寒い。

早く風のない場所に避難しなくてはならない。

しかし僕にはこの頂上でやらなければいけない大事な儀式が残っている。

僕はザックの中から、ゴソゴソとアイツを取り出す。

そいつは真のゴール、真の頂上。

人は何のために山に登るのか。

その答えがここにある。

それは「アサヒスーパードライ」だ。


缶のプルタブを開けると「ボシュッ!」と破裂。

気圧でパワーアップした黄金水は、すごい勢いで僕に降りかかる。

極寒の中での意図せぬシャンパンファイト。

ハンパなく冷たい。


そして僕は一気に黄金水を体内へチャージ。

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驚きの冷たさ。

突き抜けたのは爽快感ではなく、必要以上の寒気。

たちまち体内の温度はキリリと冷やされ、僕は瞬く間に体の芯からの寒さに打ち震える。


間違いなくミスキャスト。ここはやはりウイスキーが妥当だったか。

僕はわざわざこんな余計に重くて、体を一気に冷却してしまうものを4時間近くも背負って来たのか。

しかし、これは聖なる儀式だ。途中でやめるわけにはいかない。


結局ビールなのにちびちびと飲み続け、なんとか飲み干した。

飲み干した頃には、僕は鼻水をたらしながらガクガクと震えていた。

いったいこの儀式は何だったのか。

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そして僕はこの寒さを少しでも凌げる場所を探した。

「蝶ヶ岳突風ナイト」の教訓を生かし、景色がいい場所よりも、とにかく風を凌げる場所にいる事が重要だ。

結局、塹壕のようなゴミ捨て場のような堀の中に身を隠した。

IMGP0744.jpg

今、山岳救助の人が通りかかったら、僕は救助されてしまうかもしれない。

風は凌げるが、なにやら実に惨めになる場所だ。


防寒着を着込んで、あとはただただ逃亡者のようにジッと身を潜める。

足先も冷えて来て、とってもつらい。

靴の中用ホッカイロをセットしたが、まるで暖まらない。

冷え性の僕はご来光まで生きていられるだろうか。


とにかく食事をとる事にする。

まずは暖かいものを食べよう。


おや?

ガスストーブが点火しない。

何度パチンパチンやっても火がつかない。

高山ではつきにくいというのは本当のようだ。

しかし、こんなときの為にライターを持って来ている。

禁煙したからといって、そこはぬかりはない。


なぜだ。

ライターがつかない。


今になって思えば、電子ライターだったのがいけなかったんだろうか。

必死で何度もライターをカチカチする。

むなしく響くのはガス缶のガスの音だけ。

この時の切ない気持ちと言ったらどうだ。

堀の中に「カチカチカチカチカチカチカチ」という悲しい音が響き続ける。


寒い。切ない。お腹すいた。孤独だ。


みんなはまだだろうか?

頂上で集合という事になっているからそろそろ誰か着いても良さそうなものなのに。

携帯を取り出してみるが、やはりソフトバンク。見事に圏外だ。

連絡手段がない。

狼煙を上げようにも、火さえ着かないこの無力感。


ひょっとして何かトラブルでもあって、みんなで引き返してしまったんだろうか?

誰かが高山病に冒されてしまったんだろうか?

それとも、実は僕は隠しカメラで撮影されていて、みんなは登ると見せかけて5合目の駐車場特設モニターで僕を観察して笑っているのではなかろうか?

僕はまさかはめられてしまったのか?

やっぱり本当の登山日は来週で、今日はみんなで僕をだましているんではないか?

きっとみんなで「アイツほんとに登っちゃったよ」「うわっ、鼻水たらしてる」って言いながら笑ってるんだ。ポテチとか食いながら笑ってるんだ。

そのうち、そこいらの物陰からヘルメットをかぶった人が出て来て「ドッキリ大成功」の札を持って現れるんじゃないのか?


いかん。しっかりしろ。

目まぐるしく被害妄想の渦の中に引きずり込まれて行く僕。

寒さと孤独は人を惨めな存在に変えてしまう。

みんな。疑っちゃってごめんよ。ごめんよ。


そうこうしてると、何十回目かのカチカチでガスに火がついた。

やっと暖かいものが食べられる。

正直、この時に飲んだみそ汁がビールよりもはるかにうまかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

メシを食って一息ついた辺りで、次第に夜が開ける気配がしてきた。

IMGP0747.jpg

僕は即座に荷物をまとめ、塹壕から這い出た。

しまった。

僕が避難して被害妄想の世界にいた間に、後続で登って来た人にすっかりご来光のベストポジションを取られてしまっている。

仕方なく、頂上直下の奥まった崖に移動。

スペースがあまりない場所だったので、とても写真が撮りにくい。

IMGP0773.jpg

優雅にご来光待ちしている僕をセルフタイマーで撮っているが、実際僕は崖のギリギリの所に立っているのですごく緊張していたりする。


ふいに頭上を見上げて驚いた。

IMGP0761_20110911181054.jpg

なんだあのUFOは。何事だ。

ついに奴らも、一般的な人体実験が大方終わって、「マゾの生態」というマニアックな分野に進出して来たのか。

このままではキャトルミューティレーションされてしまう。

などとは少しも思わなかったが、実に不思議な雲だ。

笠雲ってやつで、富士山頂によく出現するやつだ。

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なんだかとっても得した気分だぞ。

だんだんテンションが上がって来た。


次第に空は明るくなり始め、眼下に目をやれば雲海が広がっているではないか。

IMGP0790.jpg

今まで、ひたすら暗闇の中を這い回っていただけに、実にしびれるものがある。


ご来光間近のオレンジ色と、宇宙に近い夜の名残の深い群青が混じり合いとても幻想的な光景が広がって行く。

IMGP0800_20110911181202.jpg

ああ、なんかやっと実感がわいて来たぞ。

僕は富士山の頂上に登って来たんだ。

17時間前くらいまでは普通に仕事してたのに、なぜか富士山頂な現在の自分の状況が中々面白く思えた。

人間やれば何とかなるもんだ。


頂上山荘の富士館が見える。

そこから数十人の人がみんなでご来光がまだかまだかと見ている。

IMGP0812.jpg

さては、みんなあそこにいるんじゃないだろうか?


さあ、そしていよいよ「その時」がやってまいりました。

IMGP0804.jpg

来るぞ来るぞ。

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来マシター。

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ついにこの瞬間を迎える事が出来た。

悪天候男にとって、ご来光なんて伝説上の絵空事かと思っていたが、今確かに目の前に完璧なご来光が姿を現した。僕にとっては珍事だ。

一人で喜びを噛み締める。

そう、なにせ一人だから「うおー」とか「すげー」とか言う相手がいない。

僕は静かに少しうなずくことしか出来なかった。

でも、これはこれで好きだったりする。

IMGP0859.jpg

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山荘付近の人たちは、歓声を上げたり、抱き合ったり、握手してたり、ガッツポーズしてたり。

なるほど。

いいじゃないか。富士山。

たまにはこんな旅もアリですな。


火口のお鉢周りでも人がいる。

IMGP0897.jpg

なにやらシルエットが美しい。シルクロードのようだ。


そして僕は改めて、山頂の石碑に行った。

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数時間前に撮った写真は暗闇で、あまりに華が無かったから改めて登頂写真を撮るんだ。

すでに数人の人がこの剣ヶ峰山頂にいた。

僕は一番写真を撮るのがうまそうな奴を見定めて、撮影を依頼した。

位置的には、ご来光、頂上石碑、笠雲、そして「満面の笑み」を浮かべる僕が写るはずだ。

そして撮られたのがこの写真。

IMGP0883_20110911181344.jpg

強烈な逆光で、僕の「満面の笑み」が見事にシルエットの中に埋没している。

もはや僕なのかどうかも分からない。


再度撮影のチャンスを待っていたが、続々と人が登って来たので退散です。

IMGP0896.jpg

IMGP0899_20110911181343.jpg

再び剣ヶ峰を降りて行く。

結局みんなは頂上に来る事は無かった。

果たして僕はみんなに会えるんだろうか?


〜富士6苦フェス4へつづく〜

富士6苦フェス2〜マイケルな野望〜

Posted by yukon780 on 14.2011 富士山/静岡 0 comments 0 trackback
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PM11:15 富士山5合目

ここから頂上までの参考タイムは5時間10分(休憩含まず)と地図には書いてある。

最悪なコンディションの僕は、どれくらいで登れるのか?そもそも登れるのか?
まさかの過労死という結果もありえる。

不安を抱えながらも、ヘッドライトの灯りを頼りに登山道に入って行った。

(※ちなみに今回は夜なんで写真少なめです。ご了承下さいませ。)


やはりこの時期でも、そこそこ登山者はいるので安心感はある。

道もゴツゴツした砂利道といった感じで、今までの登山を考えたら夜でもそんなに苦にはならない。

おまけにヘッドライトの明かりくらいしか視界はないので、目の前の一歩一歩に集中できて結構楽だ。

あんまり先が見えていると、気持ちが焦って逆に疲れてしまうんだよね。

おまけに、寒いけど行動中は結構涼しいぐらいの感じで登りやすい。

結構風はあるが、「蝶ヶ岳地獄の突風ナイト」の時の事を思えばそよ風だ。


「どうした、富士山。こんななもんじゃないだろう。」

いつもと勝手が違い、Mゲージも溜まっていかないのでついそんなことを呟いてしまう程に楽だ。


そんな感じで口笛気分で登っていたら、徐々に道が荒れて来てひどく足下が急になってきた。

斜面は次第に鋭さを増し、足下も滑りやすくて、とてもじゃないがヤバい状況になって来た。

「うそだろ。みんなこんな所登って行っているのか?」

と思って周りを確認したら、ガッツリ登山道から外れた所を歩いていた。

ライトの明かりに集中しすぎて、登山道を見失っていたのだ。

あぶない。まだ6合目を過ぎた辺りなのに早くも遭難する所だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しかしその後は実に快調に高度を上げていく。

ここでは僕が登山時に意識して効果の高かった事をご紹介しよう。


今回から導入したプラティパスのリザーバーが絶大な効果を上げた。


Platypus(プラティパス) ビッグジップSL 2L  25021Platypus(プラティパス) ビッグジップSL 2L 25021
(2011/03/08)
Platypus(プラティパス)

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これなら、こまめな吸水をしながらも立ち止まる事なく歩き続けられる。

今時のザックにはたいがい、こいつを入れるスペースとチューブの取り出し口がついている。

これでチューチューと水分をこまめに取る事で、披露も軽減し高山病予防にもなった。

今後の登山ではマストアイテムになる事間違いない。

難点を言えば水の残量が分からない事くらいだろうか。


そして呼吸法は「三浦式呼吸法」を取り入れた。オギノ式とはひと味違う。

これは勝手に僕が命名した呼吸法だが、高山病対策に抜群の効果を上げたと思っている。

何か良い呼吸法はないかと考えながら登っていたら、エベレスト最高齢登頂の三浦雄一郎氏が、サントリーセサミンのCMで披露していた呼吸の仕方を思い出したのだ。

息を吸う時はソバをすするような感じで、口をすぼめて一度吸って、さらにもう一度吸う。
そしてふ〜と吐く。

スムーズに子供が産めてしまいそうな呼吸法だが、酸素濃度が薄い場所ではこの方法が酸素を効果的に体に浸透してくれる事が分かった。

これはいいぞ。うろ覚えのCMだったけど、僕にとってはセサミン以上の効果を上げた気がする。


あとはとにかく「LSD」。

決して麻薬のLSDではない。ビートルズの曲でもない。

最近結構言われだした「Long Slow Distance」。とにかくゆっくりと長い距離を歩くという事。

これを意識しないと、ついついハイペースになってガス欠になってしまうのだ。

歩幅も出来るだけ短く。足裏は地面に対して接地面積を大きくとる。

登山の基本だ。(これをちゃんと下山時も守っていればあんな事にはならなかったんだが)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな感じで進んでいると、元祖七合目あたりでバターN君を追い抜いた。

参考タイムよりもかなり早いペースで登っている。

というか、なぜかまるで疲れない。ほぼノンストップでガシガシ登っていく。

さては、これが世に言う「クライマーズハイ」というやつなのか。

それともただのナチュラルハイなのか?


なんだかすごく楽しいぞ。

疲労も負傷もすべてピークを越えて、無感覚ゾーンに突入してしまったのか。

12キロザックを背負って毎夜さまよった効果か出ているのか、ザックがとても軽く感じる。

まるで黒い鉛の服を脱いで、スピードアップしたの孫悟空のような感覚だ。


八合目を過ぎた辺りから、次第に僕の前に他の登山者のヘッドライトの明かりが見えなくなって来た。

後ろを見ても誰かが追いついてくる気配がない。

最高だ。

あのアホみたいに人だらけのイメージだった富士山で感じる孤独感。シビレる。


九合目に着いた時尿意を催した僕は、誰も来る気配がなかったので小屋の裏の崖に立って放尿。

ヘッドライトを消すと、頭上には満天の星、眼下には富士宮の夜景、視界を遮るものは何もない。そんなパノラマ絶景を僕の黄金水が切り裂いていく。


快感だ。


この時の感動は忘れられない。ユーコンでのパノラマうんこを超える快感だ。

と思っていたら、諸葛孔明が祈祷でもしたかのように急に風向きが変化し、崖下からの突風が襲いかかる。

突如、シャケのようにふるさとに帰ってこようとする僕の黄金水。

慌てて避けたが、危うく崖から落ちる所だった。

もし落ちていたら、翌朝にちんちん丸出しの変死体が発見された事だろう。

なぜ彼は丸出しだったかというミステリーだけを残して。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

頭が痛いぞ。

ついに高山病の症状が出て来たのか?

確かにもう3500m付近の未知の領域。高山病になってもおかしくはない。

しかしいろいろ検討してみると、頭痛の原因はヘッドライトだった。

ネットで買ったやつが、今日帰宅時にちょうど家に届いた滑り込みセーフな一品。

来週使うと思っていたから、一度もテストもしておらず箱のままこっちへ持って来たやつだ。

なので、ろくにベルトの調節もしないで使っていたから、顔デカの僕の頭を締め続けていたのだ。

調整し直そうにも、ヘッドライトを照らすライトがないので、真っ暗で調整できない。灯台下暗しだ。

使い慣れていないから、手探りで調整する事も出来ない。

結局その後も、西遊記「おしおき悟空」状態。

三蔵法師に呪文を唱え続けられ、締まり続けるヘッドライト。

しかし、ここまで来たら一つぐらい痛い箇所が増えた所で、クライマーズハイの僕には屁でもない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

快調に続く一人旅。

しかし快調すぎてひとつの不安がよぎる。

5時間で登る予定が、頂上まであと40分程なのにまだ3時間しか経っていない。

素晴らしいタイムなのはいいんだが、このままだとクソ寒い頂上で2時間くらい待機しなければいけなくなる。

寒がりで、野郎のくせに冷え性の僕にはそれはヘビーだ。

まさかこんなにスムーズに登って来れるなんて思ってもいなかった。

僕は仮想富士山として1ヶ月半で10山登るなどの随分過剰なトレーニングをして来たが、さてはやり過ぎてしまったのか。

男塾風に言えば「壱月半十山怒得無連覇」を勝ち抜いて来たのだ。(民明書房刊参照)

中にはヒル男爵、笹眼鉄、脱水鬼などの鎮守直廊三人衆の厳しいドM難関も突破してきた。

おかげで江田島平八並みの体力を身につけてしまったのは喜ばしいが、極寒の中で二時間待機はいただけない。


しかしここまで来たら、ひとつの野望がふつふつと顔を出す。

「今日富士山を登っている人の中で、トップで頂上に立ちたい」というもの。

基本「人と争う事は旅ではない」という信条の僕だが、この時は頂上を独り占めしたいという願望が僕を支配した。

それはいつも混んでるディズニーランドを独り占めできるという、マイケル的な満足感に浸れる絶好のチャンスだった。


僕はLSDをやめ、足早にひたすら頂上の剣ヶ峰を目指す。

(※この時彼は気づいていない。下山時に発覚する事だが、彼はこの時登山道を外れて軽く遭難しているのだ。)


さすが、頂上直下の急登ルート。実にハードだ。(遭難してるから)

道は複雑で、どこが登山ルートなのか分かりづらい。(そこは登山道ではない)

足場はかなり悪い。最後の難関だ。(そりゃしんどいよ)

そしてやっと火口の淵に出て来たぞ。(本ルートならゴールの鳥居をくぐる感動を味わえたのに)


いよいよ3,776mの剣ヶ峰、富士山の頂が見えて来た。

周りには誰一人いない。

剣毛峰は最後の急坂ルートだ。(ここも日が出てから気づいたが、ルートを外れてハードコースを直登していた)

グハグハ言いながら登っていくと旧富士観測所が見えて来た。

やった。誰もいない。

1位で登頂だ!独り占めだ!マイケルだ!


と思って行ったら、1位の人がヘッドライト消して体育座りで座ってた。

僕の達成感は一瞬にして崩れ去り、せっかくの富士山登頂はガッカリ感に包まれてしまった。

こんな事なら無理して変な野望に突き進まなければ良かった。普通に達成感を味わえたはずなのに。

蓮舫に詰問された人の気分だ。2位じゃダメなんです。


それでもやはり登りきった自分を褒めてやりたい。

5時間の参考タイムのところを、休憩ありで3時間40分で登ったのだ。

あの特訓の日々は間違っていなかったんだ。

他に人がいるからと言って、日本最高峰での独占感は実に味わい深いものがあった。

僕はその時点で、日本一高い場所に立つマゾ男となったのだ。


そして寒さで震えている1位の人にお願いして、登頂記念撮影。

IMGP0712.jpg

なんか登頂記念写真ってもっと華やかなイメージだが、いやに地味だ。

なにやら墓を撮影した心霊写真のようで、僕が亡霊に見える。チャクラ光ってるし。

同じマイケル気分でも、これではスリラーだ。


正直、これだけ登って来たが体がほとんど疲れていない。

いつまでこのクライマーズハイ状態がが続くのか。


そしてご来光に向けて、これから2時間にわたる極寒と孤独との戦いが始まった。


〜富士6苦フェス3へつづく〜


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