西伊豆男塾 後編〜九死に一生スペシャル〜

Posted by yukon780 on 05.2015 西伊豆/静岡 5 comments 0 trackback
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廃人田沢うどんのショックから立ち直るため。

お気楽気分で向かった西伊豆シーカヤック。


しかし優雅な砂浜ビーチツアーを夢見ていた田沢の前に立ちふさがったのは、鬼の訓練教官「乱坊少佐」。

シーカヤック経験が2回しかない田沢を、ハイパー難所に置き去りにするというまさかを炸裂。

だが田沢は何とかその難関を必死で乗り越えた。

しかし安心したのも束の間、その先に待っていたのは暴風に10時間晒され続けるという苦行だった。


そう、ここは西伊豆男塾。

死の淵まで己を追い込み、そこから自らの男道を切り開く訓練道場。

そんな訓練も2日目のメインディッシュへ突入した。


そのメインディッシュの名は、男塾名物「絶望狂尽愚(ぜつぼうくるーじんぐ)」。

海は前日のうねりを遥かに越えたうねり祭りで、なおかつ強風もプラスされて大フィーバー。

西伊豆で最も波と風が不安定な難所に、最悪の悪天候状態で突っ込む事になったシーカヤック3回目の田沢。

それは2回風俗行っただけの素人童貞が、いきなり3回目で「峰不二子を満足させてこい」と言われるに等しい難問だ。


それでも田沢は突き進む。

自分の中に、「男」を取り戻すために。


しかしその先に待っていたものは、リアルに死にかけた男の真実。

これはそんな死の縁から生還した男の、奇跡のドキュメンタリーなのである。


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2日目の朝が来た。

昨日のアホみたいな暴風は深夜に収まり、実に穏やかなる朝がやって来たのだ。

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今日は早い時間に出て、復路を戻ってスタート地点に戻ってから温泉&海鮮メシ三昧の予定。

天気も良いし、見た感じ海も昨日より落ち着いているように見えるから、今日こそノンマゾで優雅に楽しめそうだ。

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談笑しながらサクッと朝飯を済ませ、長くお世話になったこの浜ともグッバイ。

昨日は「10時間TMレボリューションコース」で風に晒され続けてツラかったが、いざグッバイとなるとやはり寂しいものである。

次ここに来れるのは何年後か。

その時はもっと穏やかなときに子供らと来て、磯遊びにでも興じたいものである。


やがて出艇準備が整った頃。

空はグレイッシュに変化し、急に波が立ち始めるというまさか。

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最初から大荒れならこっちも「やめよう」となるが、毎度スタート時は行けるか行けないかの微妙な状態。

そしてある程度進んで、のっぴきならない状態になった時に荒れ狂うのがいつものパターン。

田沢は己のそんな運命を痛いほど分かっているだけに、喉元まで「やっぱやめません?」と言いかけるが、この状況に対して乱坊少佐の目は爛々としているから言い出せない。


そして運命の出航。

田沢の予想した通り、結構早い段階から大きくうねり出す伊豆の海。

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ほんと、この写真見る限りはなんて事ないように見えるけど、実際の感覚はもっと「ぬわあああん」とか「ぬらああああ」って感じで気持ち悪い&超怖い。

進行方向的に常に横や背後からからのうねりを受けるから、艇も不安定にグラッグラ揺れる。


もちろんそんな中、早速そんな不安一杯の田沢をぶっちぎって置き去りにして行く乱坊少佐。

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田沢は必死で「ちょっと待ってくださーい!遅れてまーす!」と叫ぶが、乱坊少佐は聞こえてるのか聞こえてないのか漕ぐ手を一切休めない。

次第に恐怖に取り付かれて行く田沢。

昨日は無理矢理「あはは、たのしーなー」と自分を鼓舞して乗り越えたが、今日は完全に恐怖という魔物に心を支配されてしまった。


そう考えると、田沢得意のネガティブシンキングが冴えに冴え渡る。

岩壁に吸い込まれて大破....

沖に流されて漂流....

深海に沈んで土左衛門....


彼の頭の中で100通りくらいの死のリズムが刻まれる。

今ここで絶対に沈しちゃいけない...

絶対に沈しちゃいけないぞ...

絶対に沈しちゃいけないぞ!


神はこれを「押すなよ押すなよ3回目」的なフリと捉えたのか。

横波と風と岩壁からの跳ね返りのうねりが同時に田沢を襲う。

そしてグラッと...

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慌ててパドルのブレードで水面を叩いて体制を整えようとする。

しかし見事にパドルが縦に刺さって、スカッと空振り。

その勢いのまま完全に傾いてしまい、

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田沢は「やったー!」と大きく叫んだかと思うと、

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ついに伊豆の海に放り出されてしまった。

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こんな場所で沈した恐怖と、この漆黒な感じが一気に田沢の精神を破壊する。

慌てて「ぶはあっ」っとカヤックにしがみつく。

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遥か前方には点のような乱坊少佐。

少佐の背中は「そのピンチ、己で切り抜けてみるがよい」と語っているようだった。


田沢はとにかくパニックにならない事に集中。

正直急いで再乗艇しないと、どのくらいの時間で岩壁に吸い寄せられて大破するのか分からない。

でも深呼吸して、青木湖で一回だけ練習した再乗艇の手順を必死で思い出す。

あの時は静水だったが、現在はうねり祭りのセンターだ。

正直出来る気がしない。


それでもやらないと死んじゃうから、落ち着いてパドルフロートにパドルを突き刺す。

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これの浮力を足がかりにして、パドルをカヤックに引っ掛けて再乗艇するのだ。

乱暴少佐からは「パドルフロートだけは何があっても失くしてはダメです。マジでそれは死を意味します。」とキツく言われている大事なアイテムだ。


しかしそこは田沢。

パドルフロートをパドルにしっかり固定が出来てなくて、気づいた時にはパドルフロートが沖に流されて行ってるじゃないのさ。

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この時の衝撃がお分かりだろうか?

失くしたら死ぬと言われているアイテムが、今まさに田沢の元から去ろうとしているのである。


田沢は必死で泳いだ。

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カヤックからも離れられないからおもいっきり取りに行けない。

何度も指一本差で取り逃がすというデッドヒート。

それでも根性でギリギリキャッチ。

首の皮一枚で命が繋がった。


次は落ち着いて手順通り進めてエイヤッと再乗艇。

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でもさっき慌てて泳いだせいで思った以上に体力が無くなってる。

もちろん即座にバランス崩して最沈。

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まずは一回呼吸を整えないと。

田沢はあえて脱力して空を見上げながら流される。

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こんな事やってる間に岩壁が迫るかもしれない恐怖はあったが、今は体力の回復が最優先だ。

ここからいよいよ長い長い戦いが始まる。

(※っと、ここまでの記録が以下の動画。ヒマな人だけ田沢の気持ちを察しながら観てください。 沈/0:20 パドルフロート喪失/1:40 再乗艇アタック/3:08)




そしてこの厳しい局面で、ついにメシア(救世主)が現れる。

異変に気づいて引き返して来た乱坊少佐である。

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しかし乱坊少佐はそのままその場から再び消えた。

実はうねりが激しいのと、艇のコントロールが大回りなため中々近づけないのだ。

田沢はてっきり「少佐は私の根性を試しておられるんだ」と思い、再び自力での再乗艇を目指す。

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もう艇内に溜まった水のせいでグラッグラな上、前からは強烈なうねりの山。

体勢を整える間もなく、再び転覆。

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もの凄く厳しい。

やった人なら分かるだろうけど、うねった海での再乗艇は1回トライするだけで猛烈な体力を消耗する。

孫悟空の必殺技みたいに「打てて二発が限界だ」的な、そう何度もやれる作業ではないのだ。


そんな感じですっかり疲弊して浮かんでいると、再び波間からメシアの姿が。

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しんどすぎて声は出ないが、田沢は「頼むから通り過ぎないで!置いて行かないで!」と涙目で訴える。

すると乱坊少佐は勇ましく艇をコントロールしながら、見事にマッスルドッキング成功。

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少佐の力を借りて、なんとか再乗艇成功。

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少佐は「いやあ、凄い体験でしたね。深呼吸して。」と語りかけてくれるが、田沢はもう頷く事しか出来ないほど疲弊している。

それでもうねりは酷くなるばかりだから、そうのんびり掴まってると二艇とも沈して伊豆の藻くずコースまっしぐら。

田沢は急いで再出発の準備をして、呼吸を整えてからいざ再出撃。

しかしわずか数十秒で再び轟沈。

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苦労して救出した乱坊少佐も「ちっ...この早漏野郎が...」といった表情で田沢を見下している。

もちろんこれによって再び乱坊少佐は大回りで戻って来なきゃいけないから、少佐はすぐに助けられない。

もうほとんど体力は残ってなかったが、田沢は再び自力での再乗艇に何度もトライ。

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もちろんうまくいかない。

それどころか、足に紐が引っかかって動けなくなるという奇跡的なアクシデントにも見舞われてパニックに。

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それでも歯を食いしばって、失敗しても何度も再乗艇を試みる。

2回もやればヘロヘロになる再乗艇アタックを、すでに6回くらいやっている。

でもやらなきゃ死んじゃうからやらざるを得ない。


実は後で気づく事になるが、この時田沢は文字通り致命的なミスを犯していた。

なんとフルドライスーツのチャックが5mmだけ開いていたことが後に発覚。

実はこの時点でスーツ内に浸水が始まっており、すでに両脚に大量の水がたまった状態。

言ってみれば両脚に合計8ℓくらいのペットボトルの足かせが着いている状態。

そんな状態で再乗艇のために足が上がるわけがないのだ。


でもそんな足かせがある事に気づいていない田沢は、「リアルに体力が無くなって来ている。きっと低体温症だ。こうなったらなんとしても再乗艇してやる。」と根性だけで這い上がろうとする。

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足の筋肉をブチブチに破裂させながら、根性の再乗艇。

GoProは頭の上だから表情は撮れてないが、この時富樫の顔を借りるとこんな顔をしていたと思われる。

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体中の穴という穴から血を噴き出しながら、なんとか乗り込む。

しかし海のうねりはそんな小さな人間の根性など、無情なほど簡単にひっくり返してしまう。

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じ...地獄だ...。

リアルに頭の中に「死」という文字が煌煌と輝き出す。

だがそれを認めたくない田沢は、なんとかして無謀な再乗艇にトライする。


極度の緊張と極度の疲労。

するとやがて人はどうなるか?

そう。


吐くのである。

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何度も何度も吐くのである。

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田沢慎一郎 39歳。

時には2,725mの山頂で。

時には海抜0mのまっただ中で。

今日も彼は吐き続ける。

誰よりも雄大に。

そして誰よりも美しく。


(※そこまでの動画がこちら。ゲロシーンはモザイク入れてますが心して観てください。 再乗艇からの再沈/1:00 メシア登場/1:50 マッスルドッキング/2:27 足絡ませ/4:37 嘔吐/4:56)




これにて「山頂嘔吐マン」に次いで、ついに「洋上嘔吐マン」の称号までも手に入れた田沢。

船酔いならぬ己酔い。

自分のボディをうねりの中でムーブさせる事によって、己に酔っちゃうという究極奥義。

そして必要以上な筋トレ再乗艇のせいで、吐き気の威力も倍増。

これぞ男・田沢の真骨頂である。


文章だとあっという間だが、この時点で最初に沈してから40分ほどの時間が経過している。

ドライスーツ内に浸水した水のせいで低体温症も始まっており、手の痙攣も始まって体中がガタガタしている。

もしこのまま浸水が酷くなれば海の中に引きずり込まれる。

この体力ではもうそれに抵抗する事なんて不可能。

出来るだけ体力を温存させ、最後の再乗艇アタックに全てを賭ける。


そんな田沢の覚悟を受け取った乱坊少佐が、うねりを乗り越えて再び田沢の元へ。

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これはこれで命がけ。

なんとか回り込んだ少佐と再びマッスルドッキング。

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そして最後の力を振り絞って、ど根性再乗艇。(この時点で両脚10キロくらいの重さ)

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乗った!


もう過呼吸が止まらないほど息も絶え絶えで、疲弊度は過去最大級。

もう絶対に落ちたくない。

というか「落ちる=海上保安庁救助要請」という選択肢しか無くなってしまう。


田沢ははやる気持ちを抑えながら、バランスを安定させるために必死で排水ポンピング作業。

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このポンプがまた、引く時に排水されるもんだから二の腕へのパンプアップ感がハンパ無い。

ここはゴールドジムなのか?


この猛烈筋トレ作業で、再び田沢の胃に火がつく。

もう乱坊少佐からの借り物のカヤックだと分かっていたけど、とても理性を尊重出来る状況じゃない。

田沢はカヤックの中に吐いた。

心行くまで吐いてしまった。

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乱坊少佐は「大丈夫です。気にせず吐いてください」と言いながら、実に切ない表情になっている。

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彼は彼で今回のシーカヤックを楽しみに来ていたはずだが、結果的にパートナーが勝手に沈して漂流し、助けてやっても沈してもがき、また助けてやったら自艇に吐かれるという踏んだり蹴ったりさ。

一蓮托生。

男塾の塾生はいつだって助け合い、マゾり合いの関係性でなくてはならないのだ。


田沢自身も「俺こんなに食ったっけか?」と思ってしまうほど、ゲロが止まらずに驚いている。

その気になればいつまでも吐けそうだ。

それでもなんとか落ち着かせて、排水作業を終わらせてスプレースカート装着。

そして別れ際に「最後にもう一度だけキスさせて」と言い寄る男のように、「すいません...最後にもう一度だけ吐かせて....オロロロロロロロッッッッ!」と最後っぺ。

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こうしてひとしきり胃の中の内容物が空になった田沢。

内容物と一緒に「諦める心」も吐き捨てた。

絶対に生きて帰るぞ。


(※ここまでが以下の動画。 嘔吐/2:00 マッスルドッキング2/2:30 ゴールドジム/4:25 嘔吐/4:27 最後っぺ/4:56)




そしてついに少佐から離脱。

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次こそは絶対沈しない。

沈したらもうそのまま救助要請だ。

行き先も変更して、今日スタートした場所に戻る事にした。

なんとしても生きて帰るんだ。

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もう緊張からか全身に力が入り、艇はフラフラして漕ぎ方がド素人のようにバシャバシャと水面を叩いてしまう。

自分でも情けないが、体の硬直がどうにもならない。

とにかく一漕ぎでも前へ。

もし沈したとしても、1mでも前に進んでから沈してやる。

浮かんでは消えて行く子供達の顔。

お父さんはこんなとこで死ぬわけにはいかない。


そんな戦うお父さんの前には最後の難関が。

それは潮の流れ的にそこを通らざるを得なくなった「千貫門」。

ちょうど昨日、ステキな夕焼けを提供してくれたあの門だ↓

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乱坊少佐が「あの門は荒れてる時には入らない方がいいと本にも書いてあります」と言っていた所。

そんな所に、この荒れ荒れの状態で先に突っ込んで行った乱坊少佐。

田沢も同じように、安全地帯への最短距離はこの門をくぐるしかない。

というかそこに吸い込まれて行く。

もはや生きた心地が1ミリもない。


しかも門が近づくにつれ、いよいようねりフィーバーはマックスに。

海底の複雑な岩のせいで、沖よりも沿岸部のがうねりは激しくなるのだ。

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怖い。

もう頭の中はその感情で一杯。

まるで怒った嫁の前に正座しているような気分だ。

でも行かないといけない。

千貫門周辺は、もう前後左右わけ分からん感じで盛り上がってはうねってる。

狭い門からわずかでも進路がそれれば、うねりの勢いで岩壁に叩き付けられる事は必至。

それでもなんとかラダー(舵)を操作して、門のセンターを突っ切って行く。

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門の中は海面全体が隆起し、沖からのうねりと沖へ押し戻す流れがぶつかって中々進まない。

もはや田沢は「生きて帰る!生きて帰る!生きて帰る!」しか頭にない。

体力はとうに尽き果てていたが、渾身の「マゾ場のくそ力」を発動。

喉はカラカラすぎて血を吐きそうだ。


そしてついに千貫門突破!

陸が見えた!

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沈してから実に1時間。

地獄のような男塾のシゴキがもうすぐ終わるぞ。


(※ここまでの動画です。 バタバタ素人漕ぎ/0:00 ぶっちぎり少佐/0:39 うねる海/1:00 千貫門突入/1:56)




田沢は最後まで気を抜く事なく、全身を硬直させながら漕ぎ続ける。

やがて陸に乱坊少佐の姿が。

「絶対に田沢は沈してる」と思っていた少佐は、陸に到着するなり漁船に連絡を取って救助要請しようと本気で思っていたらしい。

しかし千貫門の中から、昨日の夕陽よりも神々しく田沢が登場したので大喜びで駆けつける。

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これでほんとに助かったと思った田沢は、急に全身の力が抜けてその場に倒れ込んだ。

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まさに限界ギリギリの脱出劇。

激しい緊張から解放された田沢は「死ぬかと思ったっー!」と叫んだ。

正直泣きそうだったほどだ。

かつてグレートトラバースの田中陽希が、荒れた海に投げ出されて再乗艇して危機を乗り切った時、涙目で「死ぬかと思ったっー!」って叫んでたが、今の田沢にはそのキモチが痛いほど分かった。


しかし波の勢いは激しく、いつまでも感傷には浸らせてくれない。

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ヘロッヘロの体を何とか起こし、クソ重いカヤックを陸に上げる。

もちろん何度も豪快に転んでは全身を強打。

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しかし油田級にアドレナリンが大放出されてるから、全く痛みを感じない。

そうこう奮闘しながら、やっと安全な岸に倒れ込んだ。

そして乱坊少佐も、「これでお前も男だ」と健闘を称えてくれた。

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生き残った。

私は今確かに生きている。


西伊豆男塾。

なんて壮絶な道場なんだ。


(※これが最後の動画。 九死に一生の瞬間/0:05 ヘロヘロ転倒/1:18 生きてて良かった/2:03)




しばし放心状態の田沢慎一郎。

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漕ぎも漕いだり、吐きも吐いたりの壮絶な戦い。

完全に彼は真っ白に燃え尽きた。

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彼は静かな声で言った。

今はただただ子供の顔が見たい...と。

抱きしめてやりたい...と。

あと、温かいうどんが食いたい...と。


そしてこの時初めてドライスーツが大量浸水してて、本気でヤバかった事を知ってゾッとする。

排水してみると、大失禁かました変態潮吹きマシーンとなる田沢。

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もし最後の再乗艇に失敗していたりしたら土左衛門コース間違いないしだった。

いや、ドライスーツを着た土左衛門だから、危うく「ドラえもん」になる所だったぞ。


そしてスタート前に「長くお世話になったこの浜ともグッバイ。次に来るのは何年後か」なんて感慨に耽ってた1時間半後には、また同じ場所で焚き火して体を乾かしているというまさか。

そこでじっくりと体と心の回復を待った。

するとどうだろう。

あれ程荒れ狂ってた海が、妙に穏やかになっているというお約束が展開。

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かと言って、もう今日は二度と海に漕ぎ出す気にはなれない。

そしてここでリタイヤってことが何を意味するのかというと、初日にスタートした浮島海岸まで何とか戻って車を取って来なくてはならないってことだ。


ヘロヘロの体のまま山を越え、

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長い下りを経て里に下り、

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バス停を求めて国道を彷徨い、

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ロードムービーの一コマのように長時間バスを待ち、

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大きな街に出てからも乗り継ぎがうまく行かずに、フルドライスーツのまま散々待たされるという羞恥プレイとなり、

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すごい時間かけてやっと浮島海岸で車を回収。

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浜に戻ればすっかり夕方で、

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乱坊少佐は中東の武器商人のようになり、

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田沢はゴミ拾いじじいと化して、

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30キロほどの超重量荷物を肩にめり込ませながら山を越えて行く。

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これが信じられないほどハードで、瞬く間に全身が汗でビショビショになって行く。

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しかし地獄はまだまだ続く。

この山をカヤック持って越えなければいけないという現実が待っている。

しかも何回も往復するのがイヤだったから、一度に二艇担いでの山越えアタック。

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これが信じられないほどキツかった。

そもそももう体力使い果たした状態からの、謎の「シーカヤック登山」。

やってる本人達も「俺たち一体何やってんだ?」と自問自答が止まらない。

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田沢に至っては、またしても嘔吐寸前の表情で青くなっている。

それでも頑張って山越えしないと、駐車場まで辿り着かない。

まさにマゾがマゾを呼び、マゾでマゾを洗う修羅場の訓練道場。

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陸に上がった乱坊少佐はすっかり虎丸に戻ってグッタリしている。

田沢の早期リタイヤのせいで、とんでもないマゾアタックに巻き込まれてしまったのだ。


それでも最後の最後の最後の力を振り絞って、汗だくになりながら駐車場へゴール。

見事、この西伊豆男塾を生きたままご卒業であります。

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壮絶なる戦いだった。

なんだか色々あったが、今回の旅で得た教訓は二つ。

「生きてるって素晴らしい」ってこと。

そして「虎丸の大丈夫ですはやっぱり大丈夫じゃない」ってことだ。


こうして二人は休塾宣言したにもかかわらず、結局今回も勝手に男塾してしまった。

所詮蛇の道は蛇。

マゾの道はマゾ。

我々の男度はいつだって冒険を求めて止まないのである。


次回虎丸から海へのお誘いがあった時。

その時田沢は姿をくらますかもしれない。

松尾を騙して向かわせるかもしれない。

それでも最終的には「楽しかった」と言えてしまうのが西伊豆の魔力。


なんだかんだで、結局毎回求めてしまう自分が恐ろしい。


そしてこの今後この吐き癖をどうしよう....。



そう思った田沢慎一郎であった。




西伊豆男塾 〜完〜


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今回はさすがに悲惨まみれでしたね。

さすがにこんな事やってりゃいつか死んでしまうよ。

というか田沢は穏やかな海で優雅なシーカヤックを期待して行ってたんだけどね。

所詮田沢は田沢なんですね。


それではおまとめ動画であります。

海に向けた冒険と言ったらこれでしょう。

今日も塾生達はsame ol’(飽きもせず)で冒険に向かうのであります。


さあ、男達よ


自分より強いヤツを倒せ!









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西伊豆男塾 前編〜乱坊少佐のサバイバル訓練〜

Posted by yukon780 on 29.2015 西伊豆/静岡 2 comments 0 trackback
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田沢は落ち込んでいた。

その原因は、先月に行われた「小太郎男塾」にある。


この時田沢は鬼のAV監督松尾に徹底的に追い込まれ、小太郎山山頂にてついに「リアル嘔吐」をかましてしまった。

そしてその後逃げ込んだ小屋では、まさかの「廃人田沢うどん」になってしまうという屈辱も味わった。

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この時、田沢は激しく己の「老い」を突きつけられて意気消沈。

下山後には同い年の虎丸と共に、ついに男塾へ休塾届を提出。

田沢は「私は暫く年相応なノンマゾアウトドアに身を捧げます。」と宣言し、男塾を去っていってしまったのである。


そんな田沢が心の傷を癒すために選んだ遊びのステージ。

それは「海」。

さすがにここなら変態黒乳首男に追い込まれる事なく、優雅にアウトドアを楽しめるはず。

もうゲロ吐いてヒイヒイ言うマゾな遊びとはオサラバなのである。


そしてそのステージの案内人を買って出てくれたのが、同期休塾生の虎丸。

彼は最近、西伊豆でかなり優雅な海上散歩&洞窟探検を楽しんでいるという。

田沢は彼の「西伊豆でシーカヤックやりましょう。そして楽しいビーチで豪勢な焚き火メシ食いましょう。」という誘いに乗った。

若干天気予報で、「海上にある台風25号の影響で太平洋側は大シケの可能性」という不安な一文が気になったが、経験豊富な虎丸が「問題ないです。大丈夫ですよ。」と言っていたからきっと大丈夫なんだろう。

シーカヤック経験が2回しかなく、海の無い岐阜県在住の田沢は、もう全てを虎丸に委ねるしかないのである。


しかしである。

山には山の追い込み人がいるように、海には海の追い込み人がいた。

田沢は知らなかった。

虎丸は海に出ると、途端に男塾訓練科教官「乱坊少佐」へと豹変してしまうという事を。

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男塾三海魔王の一人で、グリーンベレー出身の金鬼島島主。

塾生に向けていきなり発砲し、授業では本物のダイナマイトや地雷を用いるのでお馴染みの海の鬼教官である。


通常のシーカヤックツアーなら台風の影響で中止になる局面でも、乱坊少佐に言わせれば「絶好の命のやり取り日和」。

そんな事を何も知らない田沢は、ただただ優雅な海での浮かれタイムを夢見て伊豆に向かった。

どこまでも広がる静かな海、ステキな砂浜のビーチ、ゲロと無縁のシーパラダイス。


だがそんな田沢を待っていたのは、過去最高レベルの「死への絶望感」。

2日目に待っていた生き地獄は、リアルな海難事故と言ってもいい壮絶なシゴキの世界だった。


そんな田沢こと「伊豆のマゾり子」が、本気の死線を彷徨うことになる前日の模様。

まずは初日の訓練の様子をゲロりと振り返って行こう。


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西伊豆の浮島(ふとう)海岸駐車場。

途中で鹿と正面衝突しそうになりながらも、岐阜からはるばるここまでやって来た田沢。

ここで虎丸と合流し、ワクワクしながら準備を進める。

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この西伊豆というステージは、全国のシーカヤッカー憧れの場所。

しかし気のせいか、周りには一人もシーカヤッカーがおらず、どことなく漁船の数もまばらだ。

一瞬田沢は「ほんとに大丈夫か?」と不安になったが、虎丸は「大丈夫ですよ。午前中は安定してますし、難所はすぐに終わりますから。」と言って田沢を安心させる。

基本的に虎丸が言う「大丈夫です」は大概大丈夫ではない状況が多いが、海の勝手が分からない田沢はその言葉を信じるしかない。


一抹の不安はあったが、いざ楽しい楽しい夢のビーチに向けて意気揚々と出航である。

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先月青木湖で軽く練習はさせてもらったが、やっぱうねる海の上では猛烈に不安定だ。

でも思ったより波も高くなく、次第に落ち着いて来る田沢。

虎丸ガイドも、「この先難所があるんで、まず慣れるまでここで暫く練習しましょう」と優しく声がけをしてくれる。

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やっぱどこぞの追い込み若手AV監督に比べて、老い友である同年代の仲間は優しいな。

この調子なら今回は追い込まれずにじっくり楽しめそうだ。


で、ある程度慣れた頃にこのような洞窟をくぐり抜け、

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虎丸ガイドの「ここがなんとかって場所です。名前は忘れました。」というファジーすぎる説明を聞きながら、その難所へ突入。

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狭い水路内を波が通り抜け、複雑に隆起してうねっている。

結構怖かったが、最近川どころか沢でパックラフトのちょい漕ぎばっかやってる田沢としては中々新鮮な体験で面白い。

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そして難所と言われた場所も、楽しい気分で難なく通過。


しかし難所はむしろその先にあった「タイミングが良ければ漕ぎ抜けられる」という場所。

もちろんタイミングの悪さが代名詞のような田沢は漕ぎ抜けられない。

ゆえに荷物満載大重量のカヤックを、両腕の筋肉をはち切らせながら運ぶ事に。

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そしてお約束のように、磯のヌルヌル岩に足を取られて転倒して臀部打撲する田沢。

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さらにカヤックに乗り込む時、カヤック搬送で体力がヘロヘロになってて乗り沈。

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勝手に繰り広げられる田沢劇場。

しかしよく見るとガイドである虎丸も沈している。

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基本的にこの老人二人は、重い荷物や激しい運動をするとヨロヨロになってしまう。

悲しいけどこれが現実だ。


しかし、なぜ無理して干潮時にこの場所を進んでいったのか?

それはこの「天窓洞(てんそうどう)」という洞窟に侵入するためである。

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この天窓洞は朝早くじゃないと観光遊覧船がどんどこ入って来るから、シーカヤックで堪能するためにはこの時間に突入するのが吉なのである。

そしてこの洞窟内は、その名の通り天井にでっかい窓があったりするのである。

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下の方にいる点のような虎丸と比べれば、その迫力を感じていただけるだろうか。

田沢は「そう!これこれ!こうゆうの求めてたんですよ!」と、うどん食ってた頃とは全く違う笑顔の表情で喜んでいる。

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ホクホク気分の田沢。

急登地獄で10秒しか休ませてくれない松尾の追い込み登山と比べたら、今回はなんて優雅な旅なのだろうか。


洞窟から出てもホクホク気分は止まらずこの笑顔。

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虎丸ガイドの「あれがなんとか岩で...。あそこにあるのが...なんとか岩です。多分カメ岩とかクジラ岩とかでしょう。」という相変わらずファジーな解説を聞きながら、優雅なクルージングが続く。

そしてカメラを落としたらしたら即アウトのこの状況ですら、根性の己撮りをしてしまう強気さも。

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すっかりロマンティック浮かれモードになる田沢は、「いやあ、海って楽しいっすね。伊豆っていいっすね。」と浮かれが止まらない。


しかしである。

光あれば影がある。

浮かれあればマゾがある。


徐々に海の表情と虎丸の表情が変わって行く。

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虎丸はニヤリとしたかと思うと、田沢を置いてどんどん先に進んでいく。

それと同時にだんだん海のうねりが大きくなり始める。

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この急な展開に「怖いから一人ぼっちにしないでくれ」と必死で漕ぎ出す田沢。

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そしてこの段階で、だんだん体の中に異常を感じ始める田沢。

この懐かしい感じ。

首元まで異物が遡上して来るこの感じは...。

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き...気持ち悪い...。

これはあれか?

まさかの船酔いってやつか?

それともハードな盛り漕ぎによる胃酸の逆流なのか?

これじゃ小太郎と変わらないじゃないか。


なんにしてもこんな所で吐いてたまるか。

でも、だめだ。

本気でやばい。

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そもそもデッキにGoProを移動させたのは、カッコ良く己が漕ぐ姿が撮りたかったから。

決して己の嘔吐へのカウントダウンを刻々と記録するためではなかったのに。


だめ。

もうだめ。

なんとかこの場で吐けんかな。

でもこのカヤックもスプレースカートも虎丸からの借り物だし、そこに吐くわけにはいかない。

なんとか首伸ばしてマーライオンみたいに吐けないものか?

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だめ、無理っぽい。

何とかして上陸までこぎつけないと吐けない。


一生懸命漕ぐ田沢。

またこのまま廃人うどんコースなのか?と不安が頭を駆け巡る。

頼みの虎丸はそんな田沢を置き去りにして遥か彼方へ。

田沢は気づいていないが、この頃には虎丸はすっかり乱坊少佐へと変化しているのである。


そしてどれほどの時が経過しただろう。

そこにはもはや漕ぐ事すら出来ずに、必死に己の遡上物と戦う田沢の姿が。

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しかもあれほど雲一つない快晴だった空が、やたらとモクモクにまみれてグレイッシュに。

まるで今の田沢の心情とリンクしているかのようなどんよりさ。


すれでも踏ん張って漕いで行くが、一漕ぎする度に胸が圧迫されて喉元まで酸っぱい感じがスプラッシュ。

そのあまりにも苦しすぎるのどごしを堪能しつつ、かろうじて上陸を果たした田沢。

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この田沢の姿を見て、乱坊少佐は満足げに大爆笑。

小太郎山の時もそうだったが、基本的に男塾の塾生達は「大丈夫か!」とか言って駆けつけてはくれない。


しかしそんな事に構ってられない田沢は、生まれたての白ブタのようにヨロヨロとカヤックから脱出。

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そして首を締め付けて嘔吐サポートをしてくるフルドライスーツを大急ぎで脱ぐ。

しかしそこで無理な体勢になってしまったことで、激しく右上腕部をツッてしまう田沢。

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デッキ上のGoProはそんな地味なマゾも見逃さない。


そして田沢は大急ぎで浜の奥へダッシュ。

そこで見事、「二ヶ月連続リアル嘔吐」という偉業を達成したのである。

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ここまで来るともはやプロオーター。

しかも嘔吐前にしっかりカメラをセットしてから吐いているあたり、彼の職人魂を感じてならない。

いつか全日本嘔吐選手権が開催されたら、間違いなく彼はぶっちぎりの嘔吐をかます事だろう。


ひとしきり胃の中をスッキリさせ、多少動けるようになった段階で再び出艇。

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目の前に見える「烏帽子岩」をぐるっと巻いて行った先に、次の休憩地点があるらしい。


それにしてもなんだかやたらと海がうねり始めて来たぞ。

というか、かなりうねって来てないか?

どんどんうねって来てるぞ!


そして烏帽子岩手前の段階で乱坊少佐が叫ぶ。

「こっから先が西伊豆で最難関の場所です。心してかかってください。」と。

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ちょっと待て。

スタート直後に、このルート上の難関は越えたと言ってたよね。

そっから先はお気楽だと言ってたじゃないか!


騙された。

よくよく聞いてみれば、ここから先は北アルプスで例えるなら「大キレット」に匹敵する超難関である事が判明。

シーカヤック3回目のビクビク男に突きつけられた絶望的真実。

それを「もう後戻りの出来ない場所」で突然告げられるというまさか。

田沢も思わず「それ、今言うのー!」と本気叫んだほど。

そして平常時でも波のうねりが複雑で突風が吹く区間だというのに、折からの台風25号が発生させたうねりも絶賛増量中。

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猛烈に怖い。

写真や動画では全く伝わらないだろうが、4mほどの大きなうねりが横から後ろからモワアアアアッッっと迫ってはカヤックを持ち上げて翻弄。

「波」って感じではなく、海面が広い範囲ごとドゥワアアって隆起したり凹んだり。

気持ち悪いを通り越して、圧倒的な恐怖しか感じない。

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しかも岩壁に近づくほどうねりは複雑化し、そのまま壁に引き寄せられれば座礁&大破間違いなし。

かと言って沖に流されすぎると、そのままどこまでも沖に持って行かれて海の藻くずに。

絶対に沈してはいけないという、強烈な緊張感が田沢に襲いかかる。


そんな中ふと乱坊少佐の方を見てみると、焦点の合わない目で「こんな激しいの初めてですよ!コーフンしますね!ゾクゾクしますね!」とよだれを垂らして喜んでるではないか。

そして彼は「うへへへへ」と笑いながら、またしても田沢を置き去りにして凄いスピードで去って行く。

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なんてガイドだ。

ここで沈したら誰も助けてくれないぞ。


そう思った田沢は、死んだ気になって漕ぎに漕ぎまくる。

恐怖に取り付かれた瞬間全てが終わってしまいそうだったから、無理矢理「あはは!楽しい!たのしーなー!」と強引に自分を鼓舞する。

だってラリった乱坊少佐は、素人をぶっちぎってもうあんな所にいるんだもの。

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まさか最難関の場所で見捨てられるとは...。

確かに過去に松尾(ジョンボーA)が、初めてパックラフトやった時も早々に置き去りにされていたな。

こいつはとんでもないガイドさんに身を任せてしまったぞ。


そこからはもう記憶がなくなるほど全身の筋肉をバッキバキにしながら漕ぎ続けた。

どんなに喉が渇いても、水を飲む隙もない。

風もどんどん強風になって行き、パドリングをやめて水筒を取ろうとした瞬間即転覆しそうな気がして水分補給が出来ない。


それでも田沢は顔面蒼白になりながら漕いだ。

結局山でも追い込まれ、海でも追い込まれている。

もう私に普通のアウトドアは許されないのか?


そして数十分後。

田沢は激しい波と共に、強引に陸に打ち上げられていた。

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まさに地獄だった。

しばらくはとてもじゃないけど立ち上がれるような状態ではなかった。

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そして素人シーカヤッカーを死の恐怖に追いやった乱坊少佐は、散々気持ち良くなったのかすっかりイッてしまっている。

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田沢が事前にあれほど「台風の影響ないですかね?」と言ったのに「大丈夫ですよ」と言い切っておきながら、「いやあ、さすがに危なかったですね。これ相当荒れてますよ。さすが台風です。普通のツアーなら中止ですよ。」と嬉しそうに言っているではないか。

ただただ楽しく優雅なシーカヤックを夢見ていた田沢に突きつけられた真実。

前半はあんなに楽しかったのに、後半はハッキリ言って生き残ることしか考えられなかった。


それでもやはりそこは天下の西伊豆。

やっっとこさ周りの景色を見る余裕が出て来ると、中々壮大な世界観に身を置いているではないか。

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こうなって来ると、どんなにしんどくても「男の血」が騒ぐもの。

ここで乱坊少佐が「ふっふっふ。グリーンベレー時代...、よく血の気の多い連中たちとヒマをもてあましてやっていたもんだぜ。」と言いながら「ナイフ・ザ・タイトロープ」の勝負を挑んで来た。

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...ように見えるが、実際は海岸にアホほどある流木を集めての焚き火場製作風景である。

本当はもっと先のポイントまで行くつもりだったが、全く風もうねりも収まる気配がないから本日はここまで。

もう腹をくくってテント立てて落ち着こうってことに。


しかしここで「うっかり田沢」の本領発揮。

あれほど「ええ、今回は忘れ物ないですよ」と自信満々で言っていた彼だが、テントのポールを忘れて来るというハイパーミスを炸裂。

モノポールテントのシャングリラ3においてポールがないのは、ポール・マッカートニー不在のビートルズのようなものなのである。


だがここは乱坊少佐のサバイバル訓練場。

田沢はすかさず流木の竹をノコギリでカットし、(ポールは忘れても何故かノコギリは持っている)

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見事「現地調達竹ポール」をMYOGる事に成功。

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現地調達こそ究極のUL志向。

伊豆の海では命すらULになりかねないが、これはこれで笑けるからオールオッケーである。


そして猛烈な風の中、ブリザードステイクで無理矢理テント固定。

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正直田沢は穏やかな砂浜ビーチを想像していたからブリザードステイクを持って来ていたが、石にガツガツ当たって全く突き刺さらない。

それどころか石でペグ打ちしながら、勢いで自分の親指の爪を強打してしまい悶絶する追加自傷行為。

なんだか全然落ち着かないぞ。


そして風はいよいよ暴風となり、シャングリラのバタバタした動きはテンションMAX時のふなっしー状態に。

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奥にいる乱坊少佐も髪型がスネ夫みたいになってて、とっても楽しげなテント場になって来た。

もはや3,000mの稜線上でシャングリラを張ってる気分だ。

色々落ち着かせるために張ったが、はっきり言っていつテントが天に羽ばたいて行くのか気になって何も手がつかない。


そうこうしていると、あんなに頑張って作った焚き火場が、満潮の波に押し寄せられて浸水していたというまさか。

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ヘロヘロの体ですげえ頑張って作ったのになんて事だ。


すかさず別の安全地帯で、再び肉体労働に従事する少佐と田沢。

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おかしいな。

素敵ビーチで優雅でのんびりっていうイメージと随分遠い所にいる気がしてならない。

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絵面が、もはや「シベリア強制労働」の一コマにしか見えないのは気のせいか。

死ぬ思いでここまで来て、なぜに石運びや暴風テント張りという苦役ばかりを強いられているんだろうか?

しかも乱坊少佐は「夕方になるほど風は収まりますよ」と言っていたが、夕方が近づくに連れてハイパー暴風になって来ているし。

あまりにも酷い風だから結局テント畳んじゃったし。

一体何のために苦労してテント立てたんだ?

せっかく休塾したのに、結局今日も男塾じゃないか。


そして1円の稼ぎにもならない強制肉体労働が終わり、やっと焚き火場設営完了。

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実に男らしい荒々しく荒涼とした世界観。

田沢が想像していたイメージとは随分かけ離れている↓

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しかしこれでこそ男塾。

暴風吹きすさぶ荒くれた世界で、口を真一文字にして黙って耐えるのが男の美学。

乱坊少佐はそれを田沢に伝えたかったのである。


その証拠に、ここで乱坊少佐がおもむろに「ワインでもどうぞ」と言ってくれたパックワインには「楽園」の文字が。

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そう、ここは男の楽園。

小洒落た砂浜や、穏やかで快晴の空なんて用は無い。

男は黙って耐風楽園ワイン一献。

そして仕事終わりの海女さんのように、黙々とその場でメシの準備をする。

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おいそこ、「なんだかかわいそう」とか言うんじゃない。

田沢と少佐は心からこの状況を楽しんでいるのだ。


そして風に当たりすぎて調子を崩した田沢が低体温症まっしぐらの時。

ついに乱坊少佐が焚き火に「怒りのアフガン着火」。

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折からの暴風にあおられ、火の勢いはメラゾーマクラス。

瞬く間に「これ、刀打てちゃうぜ?」ってくらいのマグマ的な焚き火へ。

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ここは鉄工所なのか?

焚き火ってもっと穏やかな気持ちでじっくり眺めるもんなんだが、熱すぎて近寄れない。

火の粉や爆ぜた木片が散弾銃のように「バンッ!」ってなるから、まるで戦場にいるようだ。

もちろん田沢は、遠くに畳んで置いていたテントに火の粉が降って穴を開けるという奇跡的な悲劇に見舞われている。


とあえず、ここからはこの暴風と暴火の中で男メシ。

炎が落ち着かないと何も焼けないから、とりあえずホットサンドクッカーにてエリンギやら厚揚げやらブロックベーコンを食らう。

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もちろん男・乱坊少佐は、箸なんて軟弱なものは使わず「竹」で食らう。

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絶対食いにくいだろうし、竹で厚揚げがボロボロになってたけど彼は気にしない。


そんな男の世界観が高まって来た頃、やっとこさステキなお時間がやって来た。

それがこの光景なのである。

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この場所、こんな光景が見られるとこだったってこの時初めて知った。

何も知らなかっただけに、この感動は中々なものだ。

ここはこの「千貫門」と呼ばれる穴から、何と夕陽が拝めてしまうというハイパーラブリースポットだったのである。

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これがいい感じな距離感の女の子と来ていたならば、間違いなく告白してしまうロマンティック局面。

沈み行く夕陽が、まるで消えかけたロウソクの火のように静かに揺れている。

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しかし今の我々にこのようなロマンティックは必要ない。

火は消えかけてはならない。

男の炎はいつだってビッグファイヤーであるべきなのだ。

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なんとかこの状態で肉を焼こうとするが、当たり前だが焼いて行く側から表面だけ即座に焦げて行く。

しかしそんな「表面はカリッと、中はフワッと」という、豚肉ではあってはいけない状態でも食らいつく。

そしてそんな危険な肉を食って腹一杯になって来た頃、やっと火が落ちついてきたからメインディッシュ登場。

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これを腹一杯のデザート段階で食ったもんだから、再び吐き気に襲われてしまった田沢。

それでも彼は昼間に吐いた分を取り戻すように食らい、

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乱坊少佐の「子供の頃サバイバルナイフで敵の体を効果的に切る角度を研究してましてね。自分の胸で試してみたらブシャッと血が飛び散ってさすがに親にナイフ没収されましたよ。」というチャッピーなトークを聞きながらガバガバと酒を飲む。


もちろん夜になっても暴風は勢いを増し、焚き火の炎はもはや真横に流れている。

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それでも乱坊少佐の「中学の頃なんだがやたら不良に絡まれたんですよね。僕は平和に過ごしたかっただけなのに。まあシルバーに染めたロン毛でしたけどね。」という、突っ込みどころ満載のチャッピートークは続き、田沢も飲みに飲みまくった。

やがて「ドライスーツのままテント張らずにダイレクトに大地に寝よう」となったが、フナムシくん達の大群に見舞われて断念。

真っ暗な中で、酒でフラフラになりながら無理くりテント立てて泥のように眠りに落ちた。



こうして壮大な初日の旅が終わった。

しかし翌日の「絶望の40分間」の悲劇の事を思えば、今日の出来事なんてマゾのマの字にも及ばない。

いつも田沢は、長良川で人間洗濯機になった時が一番命の危険を感じた時だったと公言しているが、翌日にはそれを越えた死線上の戦いが待っていた。


いよいよ運命の2日目へ。

本気で田沢を殺しにかかって来た乱坊少佐。

そしてうねり囃子が鳴り止まない西伊豆の舞台。


果たして田沢は生きたままこの訓練場を脱出する事が出来るのか?

まさかの2日連続嘔吐記録を樹立してしまうのか?



次回、


さよなら...



田沢慎一郎


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西伊豆男塾 後編〜九死に一生スペシャル〜へ   つづく



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