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屋久島横断野郎〜エピローグ〜

Posted by yukon780 on 27.2012 屋久島横断野郎 0 comments 0 trackback
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屋久島にいたはずの男が、なぜか霧島連山の韓国岳を見上げている。


放浪病の男は、夢遊病患者のように気づいた時には別の場所にいる事が多い。

この日も「ハッ」と気づいた時には、屋久島の遥か北方200キロのえびの高原に立っていた。



長かった屋久島横断と屋久島一周の旅が終わり、本来ならばさっさと帰れば良い話だ。

しかしわずかでも時間があるのなら、彷徨えるだけ彷徨っておきたい。

最終日の朝から鹿児島空港の夕方の便に間に合うまでどれだけ放浪できるのか?

ふとそんな挑戦をしてみたくなった。


そんな鹿児島道中を軽く振り返ってみよう。

家に帰るまでが旅なんです。


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予定では昼過ぎまで屋久島でのんびりして、あとは鹿児島空港まで移動して帰るつもりだった。

しかし昨晩あれ程痛飲してしまったにも拘らず、すごく早朝に目覚めてしまった僕。

起きて時計を見た時に僕が発した第一声は「あ、まだ遊べるじゃない」だった。



気づいた時には、早朝便の船に乗って屋久島を離れていた。

2時間ほど波に揺られ鹿児島港に到着し、鹿児島中央駅へ移動。

いよいよどっぷりとした文明社会に帰って来た。


そして屋久島を制圧した僕を薩摩の若き英雄達がお出迎え。

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幕末期に海外留学してその後活躍した面々。

僕も岐阜という異国に養子留学して、異文化に戸惑いながら日々を過ごしている。

いつか岐阜駅の黄金の信長像の横に、僕の銅像が建つほどの立派なマスオになりたいものだ。



鹿児島中央駅近辺でレンタカーを手配。

ここから空港までの間に、面白そうな所があったら寄り道して行こうって魂胆だ。


まずは「仙巌園」なるものが登場。

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島津の殿様の庭園で、桜島をバックに広大な錦江湾が広がる場所だ。

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素晴らしい庭園なんだけど、屋久島帰りの僕にはグッと来ない。

あの大自然の美しさに勝る造形は人間には無理です。


しかもこの時は大河ドラマで「篤姫」をやっていた頃だから、非常に多くの観光客で賑わっていた。

なので僕はさっさとここを退散しました。


その後も錦江湾周辺をウロウロするんだけど、事前情報が何もないから大して面白そうな場所が見つからない。

思った以上に街だったから、次第につまらなくなる。

やっぱり僕は自然に身を置いていた方が良いと判断。

ゴールだった鹿児島空港をはるかに通り越して、一路霧島連山を目指した。



山中を走っていると、ひそかに高校時代から行ってみたかった場所が唐突に現れた。

坂本竜馬とお龍さんが新婚旅行で来た「塩浸温泉」だ。

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高校の頃、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」にどっぷりはまっていた僕にはたまらない場所だ。

物語に出て来るあの憧れの温泉に自分も入れるのか。

興奮した僕は、早速今も残る二人が入ったとされる露天風呂に入るべく温泉を目指す。



人はしばしば物語の世界と現実の世界のギャップを埋めることが出来ずに立ち尽くす事がある。

この憧れの露天風呂を見た時の僕がまさにそうだった。

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すごいしょぼくて、どぶのような汚さだ。

しかも道もないから行く事も出来ず、川の手前からただ眺めるのみ。

竜馬夫妻は本当にここに入ったのか?

思い描いていた温泉とは随分とギャップがあるぞ。


もしこんな所に僕が新婚旅行で今の嫁を連れて来たとしたら、間違いなく息の根を止められていただろう。

ワガママで有名なお竜さんだが、実は思ったより寛大な女性だったようだ。



ショックを噛み締めつつ車移動を続ける。

次第にそこら中から煙が黙々と上がり出したので、敵の計略にでもハマったかと焦る。

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それらの煙は全て地中から溢れ出る温泉の煙だ。

霧島温泉郷が近づくにつれ、地獄のような光景になっていく。

中々面白くなって来た。


やがて「えびの高原」という場所に到達。

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眼前には霧島連山の韓国岳がそびえている。

そろそろ車の運転にも飽きて来たので、ここらでのんびりしよう。


のんびりしようと言いつつ、何故かトレッキングを開始する男。

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当然だがこの頃の僕にはもはや長い距離を歩く力は残っていない。

さすがに韓国岳登頂は断念したが、周辺をウロウロ彷徨う。

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まあそもそも今日は帰るだけの日の予定だっただけに、結構楽しめた。

今の僕なら迷う事なく韓国岳登頂を目指しただろうが、この頃の僕は今ほどハードなマゾじゃない。

まだそれなりに自分の限界を認識していた頃なのでこれ以上の無理はしない。


それでもたっぷり2時間くらいは彷徨い続けた。

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やっぱり旅は「早起き」「予定外」「寄り道」という流れが望ましいようだ。

それもこれも屋久島横断という大きな目標をやり終えた後なので、尚更開放的な気分で旅を味わえる。


いよいよ最後の力も使い果たしたので、大人しく霧島温泉に浸かってから鹿児島空港を目指した。

そして男は与えられた全ての時間をフルに使い果たして帰路につく。

考えられる限りの事はやりきった完全燃焼の旅だった。


そしてその代償として、翌日の職場には休養空けとは思えないほど疲れきった男の姿があった。

でもそれでいい。

精神の疲れは見事に癒されたから、こんな体の疲れなど仕事しながら回復させて行けば良いのだ。

こうして男は再び無機質な社会の森の住人に戻って行った。

まだ暫くは頑張って行けそうだ。

行かせてくれた嫁さんに感謝感謝の旅でした。

(帰宅後、特に興味の無い嫁も家族も僕に何も聞いて来なかった。普通「どうだった?」的な会話になると思うんだが。屋久島に興味がないのか、それとも僕に興味がないのか?なので未だに嫁は僕が遭難したり脱水したりゾンビになっていた事は知る由もない。)


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いやあ、何とか書き終えました「屋久島横断野郎」。

当初は記憶も飛んでたし長くてめんどくさそうだったけど、書いてるうちに当時の情景や感じた事が蘇って来たよ。

何か忘れかけてた僕の「旅のスタイル」を思い出した。


この旅以降僕は長い長い育児生活に突入して、全く旅に行けない日々が始まった。

それは今でも続いていて、連泊してどっぷりとその土地を味わうって事が出来ない日々の中にいる。


この旅の半年後くらいには激しい育児ノイローゼで非常に危険な精神状態に陥る事もあった。

そしてやっと最近になって徐々に日帰りで遊び始められた。(ブログが始まったのもこの頃)

そろそろがっつりと長期旅がしたい。


でもまあ二人目も来年1月に生まれるし、まだまだ暫くはお預け期間が続きそうだ。

そんなお預けプレイも楽しめるほどマゾに磨きをかけて行こうじゃないか。

限られた時間の日帰りだって「頑張らないけど無理をして限界まで追い込む」をモットーに今後も遊んで行こう。

そしていつか親子三人で(嫁は絶対に来ない)屋久島を旅してあげよう。


まだまだ僕は長い旅の途上であります。



〜屋久島横断野郎 完〜



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屋久島横断野郎6〜叱られ太郎と猿の惑星〜

Posted by yukon780 on 26.2012 屋久島横断野郎 0 comments 0 trackback
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前日と打って変わって、実にほのぼのとしたスクータートリップが続く。

この「屋久島一周」というものがメインイベントではなく、あくまで「予備日のついで」でやってる事だからとても余裕のある気分のいい旅になっている。


普段の生活でも目の前のものにガムシャラになりすぎて自分を見失うよりも、「生きてるついで」って腹づもりで余裕を持って行動したいものだ。

なんて事をこれ書いてて思い出しました。


でもあんまりケセラセラ的な生き方してると、嫁に「お前のそういう所が嫌いなんだ、この豚野郎」って言われるから注意が必要だ。

旅に比べたら、人生とは実に難しいものだ。

まあ、それでもなるようなるさ。



それでは話を戻して、屋久島一周野郎の後編です。


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永田川を堪能した所で腹も減ったので、通りすがりのメシ屋へ。

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どうにも普通の民家のように見えるが、メシが食えそうな場所はここしかなかった。


しかしここのメシがスペシャルヒット。

中でも「でんぷん団子」なる郷土料理が甘辛つるり食感で最高にウマかった。

ふらりと訪れた店がウマいと、何だか人生得した気分だ。


この「じゃらん亭」はおばさんが一人で切り盛りしていて、とてもフレンドリー。

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しばし談笑し、さらに屋久島の深部に浸れた気分。

屋久島に行かれる方にはおすすめだが、この店を見つけられるかどうかはあなた次第。



腹も満たされて、さらに進んで行く。

雰囲気のよろしい屋久島灯台を横目で見つつ、

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道は「西部林道」に吸い込まれて行く。

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この「西部林道」は、世界遺産登録指定地内の原生林を抜けて行く珍しい林道。

今にも道が大爆発しそうなネーミングの林道だが、ここには石原軍団はいない。


しかし、石原軍団の代わりに野生の軍団が続々と現れる。

まずはバンビ刑事が何度も僕の行く手を阻む。

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普通に道の真ん中にヤンキーみたいにたむろしているから、あまりスピードを出すと追突しそうになる。


ゆっくり進んで行くと、モンキー刑事が殉職してるかと思ってビクッとする。

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車にでも轢かれたかと思ってよく見ると、ただの毛繕い中。

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紛らわしい猿芝居に勝手にビックリする男。


その後もバンビ刑事とモンキー刑事が交互に、そして大量に現れては僕を威嚇する。

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谷底とか見ると、恐怖を覚えてしまうくらいの猿の軍団がいたりする。

この林道は圧倒的な鹿と猿の世界。

リアルな猿の惑星を体感することが出来る。



西部林道を抜けると、僕が昨日屋久島横断でゴールした近辺まで出て来た。

そして本来は横断後に訪れる予定だった「大川の滝」を目指す。

昨日の僕はほぼ「死体」の状態だったから、無念にも行けなかった滝だ。


やがて「大川の滝」が現れた。

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すごくデカくてパワフルな滝だ。

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写真ではそのスケール感が伝わらないが、この滝かなりデカい。

なんとかこのスケール感を伝えるべく、僕を入れて撮影しよう。


僕は一眼レフカメラを持っていた一番撮影が上手そうなおっさんを探し出し、撮影を依頼した。

宮之浦岳山頂では人選ミスで僕が真っ黒に映ってしまったから、今回は慎重に人を選んだのだ。

そして撮影された写真がこれだ。

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何だこれは?ドッペルゲンガーか?

またしても人選ミスにより僕は真っ黒に映ってしまった。

やはり僕はセルフタイマーしか信用できない。



その後、僕はあの感動の「栄光の黄金水」を堪能した栗生の町に到達。

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改めて見ると、この栗生川もカヌーにもってこいの美しい川だ。

実際ツアーもやっているらしく、二度目の屋久島はカヌー三昧になる事間違いなしだな。


昨日は死んでいたから、やっと本日この集落でのんびりできる。

のどかな小学校に侵入。

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校庭で遊ぶ地元の子供達を眺めながらぼんやり。

なんか凄く旅してるって感じ。

見方を変えればただの小学生を覗く変態オヤジになってしまうが、あくまでも気分は寅さんだ。


観光地だけ見て帰って行くのは粋じゃない。

こうした「地元の生活臭」を感じて初めて見えて来るもんがあるんだよ。

分かるかい?さくら。


その後も栗生の集落をプラプラ。

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で、その先の牧場まで行ってボケー。

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贅沢、ここに極まれりだね。

頭空っぽで何も考えなくていい、素敵な屋久島タイム。

金もかからん、時間も気にしない、人もいない、ただなんとなくな時間。

どう考えても人でごった返す観光地よりも良いと思うんだが。

なぜみんな来ないんだろう?

縄文杉だけ見て帰るなんてもったいないですよ。



汗もかいて来たので、ひとっ風呂浴びようと「湯泊温泉」と書いてあった方へ向かう。

協力金100円を箱に入れて突入。

ううむ、抜群のロケーション。

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実はここで、ここからさらに奥へ行く細い道を発見。

誰もいないから素っ裸でワイルドに岩場を移動して行くフルチン男。


その奥にあったのは、最強の露天風呂の姿だった。

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最高だ、幸せすぎる。

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あの四日間の壮絶な疲労が癒されて行く。

温泉ってやつは効能がどうのとかは関係ない。

ワイルドなロケーションであればあるほど僕は癒されていく。


ただし特質すべきはこの入浴シーンはもちろんセルフタイマー。

全裸で浴槽とカメラを往復するその男の姿が、ある意味一番ワイルドなロケーションだ。



そして温泉ハシゴ。

続いて「平内海中温泉」へ向かう。

ここは干潮前後約2時間のみ入れる有名な温泉。

時間もジャストタイムだ。

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この素晴らしきロケーションを撮影しようと思ったら、風呂に入っていたおっさんに激しく叱られた。

この年になって大人の人に怒鳴られるのはとっても切なくて惨めで恥ずかしい。

それでもそのまま気まずい雰囲気の中で入浴。

ロケーションは上々だったが、僕のテンションは下々だった。



さあ、屋久島一周もそろそろ大詰めだ。

一度大きく海沿いの道から外れて、山へ山へ。

やがて出て来ました「千尋の滝」。

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壮大の一言。

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荒々しさの中に、どこか人工的な感じすらする不思議な光景。

さっきの温泉ですっかりへこんでいたテンションも復活して来たぞ。


でも喜んでばかりいられない。

実はレンタルスクーターの返却時間が迫って来ていた。

間違いなく僕は各所でのんびりしすぎてしまったようだ。


あれほど「屋久島タイム万歳」とのんびりを謳歌していた男は、たちまち時間に追われる事になる。

返却時間に遅れると、1泊料金になってしまう。


そこからは弾丸スクーター。

フルスロットルで屋久島を駆け抜ける暴走ライダー。

慣れてないからか、ゴーグル着けると見にくくなるから裸眼でラン。

風がモロに目に入って来て、大人のビデオを見る中学生のように目を細めながらの思春期ライド。

Tシャツで激しく風を浴び続けて風邪も引きそうだ。


やはり結局最後はこうなってしまうのか。



やがて返却タイム15分オーバーでスクーターを返却。

まだ係の人がいたから、ギリギリ1日料金で良しとしてくれた。


本日も限界まで遊び尽くしたぞ。

こうして僕は屋久島横断に続き、屋久島一周も完成させた。

この五日間でこれでもかと屋久島を堪能した気がするよ。



その日はさすがにテント泊ではなく、ゲストハウスに止まる事にした。

バックパッカーの宿として知名度の高い「晴耕雨読」さんだ。

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素泊まり1泊3500円。

3000円以上の宿には泊まらないがモットーの僕だが、久しぶりに布団で寝たかったんです。


宿には年齢もバラバラな一人旅の男女が集う。

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もう自然の流れで仲良くなり、共に飯を作り酒を浴びるように飲んだ。

そこには僕が一周野郎の前半でみたビーチのカップルもいた。

正式にはこの宿で知り合って、レンタカーをシェアして遊びに行っていたらしい。

何の事はない、僕が嫉妬していたあのカップルも一人旅の奴らだったんだ。


意気投合した僕らはそのまま近所の居酒屋に行って、そこでも酒酒酒。

ぐでぐでの千鳥足で宿に帰って来て、再び酒。

最高のひと時。


本日も完璧な一日だった。

何も予定がなかった予備日にしては濃すぎる内容だ。

屋久島は良いね。

なんだか良いね。

理屈抜きで良い島旅でした。



こうして男は酩酊状態のまま、気を失うようにして就寝。

屋久島の最後の夜がふけて行った。




〜屋久島横断野郎 エピローグへ つづく〜


屋久島横断野郎5〜まったり犬はニカリと笑う〜

Posted by yukon780 on 25.2012 屋久島横断野郎 0 comments 0 trackback
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四日間に渡った屋久島横断トライが終わった。

歩き旅の魅力に開眼して行く中で、屋久島も壮大な自然力で僕と対峙してくれた。

しかし後半は壮絶な消耗戦となり、僕は転がり込むようにゴールの黄金水に辿り着く事となった。


そんな男の翌日、屋久島五日目。

五日目は本来「予備日」としていた日。

しかしいくら予備日と言えど、下山してしまった以上体力なんて回復させている暇はない。

僕のモットーは「限界まで遊ぶ」。

血を吐いてでも遊び通してくれる。


しかし矛盾しているようだが、もう一つ「頑張らない」という信念も持ち合わせている。

血を吐いたとしても本人に「頑張っている」という感覚がないから問題はない。

こうして「無理はするけど頑張らずに限界まで遊ぶ」という僕のお馴染みのスタンスが誕生した。



ということで、のんびりしていればいいものを僕はボロボロの体を引きずって動き出す。

屋久島横断の次はやはり「屋久島一周」しかあるまい。

さすがに歩いてなんて無理なんでレンタルスクーター借りて気ままに一周するのだ。


まあおまけみたいな旅なんで、気楽にお付き合いください。


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番屋峰キャンプ場の朝。

あまりにも美しい日の出とともに起床。

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ああ、自分は何とか今日も生きてるんだなと再認識。

昨日遭難と脱水で死線を彷徨った僕にはあまりにも神々しい日の出だった。

悲しいかな、現代人はあれほどまで己を追い込まないと生きてる感覚が味わえないのだ。

一人で冒険的な旅をする人の多くが、そんな感覚を求めて今日もどこかで彷徨っている事だろう。


バスで一度宮之浦港まで戻って、スクーターをレンタルした。

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ひそかに僕は人生でスクーターに乗った事がなかった。

何気にスクーターに乗るだけでアホみたいに楽しかったのを覚えている。


島の一周道路なので、もちろん海を見ながらの優雅な移動。

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とにかく気になる所があったら全てに寄り道してやろう。

気ままな一人旅は、全てが自分の意思次第だ。


やがて「志戸子ガジュマル公園」なるものが現れた。

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公園というより、雰囲気はお化け屋敷の入口のような閉鎖感だ。

恐る恐る侵入して行くと、やっぱりお化けが出て来た。

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しかし屋久島山中で散々この手のモンスター達とやり合って来たので、たいして驚きはしない。

それでもやっぱり本土の人間にとっては、ガジュマルの木は異質なものに映る。

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うむ、悪くない出だしだ。


その後も海沿いをケタタタタとのんびりスクーター。

結構シーカヤックの人をよく見る。

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屋久島は森のイメージが強いけど、やっぱり「海」も面白いんだろうな。

今度来る時はシーカヤックで屋久島一周だな。

そんな新たな野望を思いついてニヤリとしている僕を眺めるは、「自由」の先輩達。

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僕は飼い主に首輪や変な服を着せられても従順な犬よりも、生きたいままに自由に生きる猫が好きだ。

そんな猫に憧れる僕の嫁は猫アレルギー。

お互い歩み寄れないのはこの変にも原因があるのだろうか?


そんな事を考えていると、「おいどんに比べたらマシでごわす」という声が聞こえる。

そこは「西郷隆盛上陸の地」だった。

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よく考えたら西郷さんは自分の殿様に嫌われて「島流し」を食らっている。

奄美大島に流された際にこの屋久島に数日滞在していたのだ。


僕は今の所嫁から島流しの宣告を受けていないが、西郷さんと同じ道を辿る可能性が高い。

とりあえず先輩の西郷さんに合掌しておいた。

僕も頑張って嫁幕府を崩壊させ、家庭維新で男の威信を取り戻してみせるぞ。


その後、のんびりした雰囲気のいい漁村を見つけてはぶらりとふらつく。

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僕はこうした観光地でも何でもない、その土地の「生活」を感じる空間が好きだ。

このような島の小さな村に住む少年達の何とも言えない眩しさ。

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このような圧倒的純朴な光景を見てしまうと、ちょっとノスタルジックな気持ちになったりする。

そして随分汚れてしまった自分を思ってしまうけど、まあそれはそれで悪い気分じゃない。

それなりに生きて来たんだと、ゆったりした時間の中で感慨に耽ったりしちゃうのです。


で、地元の人しか行かないような温泉へ。

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古き良き時代の匂いが残る空間。

こうした場所が「現役」でフル稼働している姿に美しさを感じてしまう。

僕はこの温泉を「山本昌広の湯」と勝手に命名した。



道は一旦海から離れて山へと吸い込まれて行く。

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屋久島では海・山・川・空・森、全てが豊潤だ。

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ただその場にいるだけで、とても豊かな気持ちにさせてくれる。

屋久島は何一つ学術的な理屈を考える事なく、ただアホ面して彷徨うのが吉だ。


やがて「吉田地区」といういい雰囲気の集落へ。

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どうやらここはかつてNHKの連続テレビ小説「まんてん」の舞台となった場所らしい。

僕はそのドラマを全く知らなかったが、実にほのぼのとした集落だった。

第一村人も「まあ、気楽に行こうぜ旦那」とニカッと笑う。

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この頃にはすっかり僕の気持ちは伸びに伸びまくっていた。

このゆったりとした空間に心身ともに溶けて行きそうだ。

なんかもう帰りたくない。


...なんて二ヶ月後にパパになる男が呟いてはいけない。

恐るべし屋久島のまったり引力。



高度を下げて、再び海へ。

島の北側の海はとてもキレイな海だった。

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キレイな海とビーチって、なんか一人旅だとちょっと寂しくなってしまう。

こんな場所で一人旅同士の男女が出会った日には、たちまち燃え上がってしまいそうだ。

しかしそんな出会い頭のアバンチュールを期待しようにも、誰も人がいない。

鹿や猿はいくらでもいるんだが、いくらなんでも僕は安岡力也にはなれない。


そんな事を思って移動してたら、素敵なビーチに絵になるカップル。

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この二人は恋人同士なのか、それともまだ発展中なのか、はたまた倦怠期中なのか?

勝手に想像して楽しむ怪しげなおっさん一人。

この時ばかりは羨ましい気分で、青春の中にいる彼らを見守った。


そして何とこの二人とは、この日の夜同じゲストハウスで再会して酒を飲み交わす事になる。

旅ってのはこの不思議な人との縁があったりするから面白い。

それもこれも、友達同士でつるまない一人旅だから味わえる事。

やっぱり一人旅ってのは、全く寂しくない旅のスタイルなんだね。



その後、よく分からない公園でブラブラ。

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勝手に「どれだけ遠くの自分を撮影できるか?」というチャレンジを開始し、インターバルタイマーで遊び出す男。

この写真を見る限り、結局一人旅ってのは寂しい旅のスタイルなんだと思わざるを得ない。

それでも男は迷わず突き進む。


やがて永田川(多分)に到達。

カヌー野郎にとっては垂涎の光景だった。

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美しすぎる。

海水と淡水が混ざり合い、川原がビーチになっている。

次回は絶対ここを下ってやる。


こんな感じで僕はあらゆる旅先で次回の宿題を作ってしまう。

こうして旅をするほどに行きたい場所がまた増えて行き、抜け出せない旅のスパイラルに飲み込まれて行くわけだ。

好奇心旺盛と言えばそれまでだが、これは単なる病気だ。

今後もこの病人の介護をする羽目になってしまい、嫁には心より陳謝したい。

もう治らないけど。



そして病人はさらに進んで行く。

ここまででおよそ屋久島半周。

ちょっと時間がないんで今日はここまで。


のんびりとした感じが伝わってればいいけど。

「そんなのカヌー野郎じゃない。もっと激しく疲弊した姿が見たい。」というサド読者の声が聞こえて来そうだが、たまには彼にもこの様なひと時を与えてやって欲しい。



〜屋久島横断野郎6へ つづく〜


屋久島横断野郎4〜死線の果ての黄金〜

Posted by yukon780 on 22.2012 屋久島横断野郎 0 comments 0 trackback
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「花山歩道」


何やら素敵な響きのネーミングだ。

確かにそこには色とりどりの花畑が存在していた。

そう、黄泉の国へ一歩踏み入れた時に見えるあの「見えちゃいけない」お花畑だ。



屋久島にはいくつかの登山ルートが存在し、この花山歩道もその一つ。

はっきり言ってこのルートはかなりマニアックなルート。

GW中にも関わらず、実際僕はこのルート上で誰一人他の人間に出会っていない。


屋久島山中放浪四日目。

僕はそんなルートをチョイスして屋久島横断完遂に向けて動き出した。


そして僕はこの花山歩道で山の恐ろしさに直面する事になる。

そんな素人登山野郎の大消耗戦にも注目だ。

(ちなみに今回はろくな写真が撮れていない。写真を撮っている場合ではなかったから)


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本日も僕は起き抜けから疲弊していた。

ここまで溜まりに溜まった疲労が全く抜けてない。

それどころか、昨夜のリアルミッキーマウス達の度重なる夜襲と食料ベッドインによるダメージが色濃く体に刻まれている。


山を歩きなれていない人間が三日も重い荷物を背負って歩き続けると、四日目の朝の気だるさは想像を絶していた。

それでも本日は島横断予定の最終日。

一日に二本しかないバスに間に合わなければ面倒な事になる。



重い体を引きずって本日も不元気に出発だ。

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僕が選んだルートは「花山歩道」。

原生林が色濃く残るこのルートに、疲労が色濃く残る男が侵入して行く。


花山歩道は、僕が読んだ本には「原生の姿に沢山出会える屋久島で一番おすすめのトレイル」と紹介されていた。

しかしその一方で「ヒルにも負けない自己責任が負える一人旅のバックパッカーに訪れてもらいたい」とも書いてあった。

まだこの頃はヒルの脅威を知らない頃なので、その2フレーズに惹かれてこのルートを選んだわけだ。


のっけから、中々えぐい感じの登山道だ。

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なんせ訪れる人も少ないから、道は結構ワイルドに荒れている箇所もあったりする。

しかし連日の晴天のおかげで、どうやら本日は噂通りのヒル天国ではないようだ。

これなら何とか頑張って下山できそうだ。

(今思えば、もしヒルも出ていたら僕は間違いなく全精神と体力を破壊されていたに違いない。)


そして僕は原生の森に吸い込まれて行った。

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やはりどこか異質で威厳に満ちているようにも見え、今までの森の風景とはまた違った雰囲気だ。

こんな写真も残ってたんだけど、正直この写真が横向きなのか縦向きなのかも分からない。

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なんだか色んなものが濃くて荒い。

これぞ原生の森の姿か。

ただ単に疲れすぎて風景が歪んで見えているだけかもしれないけど。


時折、眼前にこんな感じのでっかい岩とか現れるからビクッとする。

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かつて水木しげる氏が戦地のジャングルで突然巨大な岩の壁に出くわし、それを元にあの「ぬりかべ」が誕生したそうだが、きっとこんな感じだったんだろうか?

太古から変わらない森の中でこのようなものに出会うと、命が宿って見えるからつい衿を正してしまう。

何か僕の後ろめたい事全てを森に見つめられているような気分だ。


道はさらに深く深く森に吸い込まれて行く。

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今までの登山道と違い、人一人分の細い道が続いて行く。

もうこの頃には重い一眼レフカメラはバックパックに入れて、サブカメラでの撮影がやっとだ。


今振り返って当時の写真を見ていると、この花山歩道分の写真がとても少なくて記憶もほとんどない。

大分僕は体力的に厳しい状態だったと想像することが出来る。


たまに己撮りで現れる男の姿には疲労感が漂っている。

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アホみたいに口を半開きにして、今にも口元からエクトプラズムが流出して行きそうだ。


そしてそんな僕の精気を吸い込む、見た事もない原生の植物たち。

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今にも「キシャッーー!」と叫んで僕に食いついて来そうで恐ろしい。


木なんかも地中からうねりながら生えて来たみたいで、岡本太郎的な世界観を演出する。

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こういう迫力ある原生の森に接していると、色んな事がどうでも良くなって来る。

バスの時間がどうとか今日中にゴールしなきゃなんて気も削がれて行く。

やがて理屈ではなく「ただここにいる」って感覚だけが自分の中に宿る。

社会の機械から動物だった自分に戻る瞬間。


しばらく僕はこの巨木の下でのんびり過ごした。

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とても神聖な時間を過ごした。

「一人旅のバックパッカーに訪れてもらいたい」というあの本の言う通りだ。

自然と対話するには一人である事が重要だ。


その後も進んで行くと、急にちょっとした広場に出る。

「花山広場」だ。

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ここまでずっと狭い道を歩いて来たから、この空間には非常に癒された。


またしても大休憩で、メシを食らい、ボケーッとし、周辺を徘徊する。

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そう、この程度でいいのだ。

僕はここでもたっぷりと休憩し、30分ほど原始の森に包まれて仮眠を取った。



やがて、この二度に渡る大休憩が僕に思わぬ変化をもたらした。

信じられない事にとんでもなく体が軽くなり、体の底から力がみなぎって来た。

あれほどあった疲労が吹っ飛んでいる。


僕はとてもテンポよく進んで行き、やがてあまりの体の軽さについに走り出す。

自分でも信じられないほどに体が疲れなく、どこまでも走って行けそうだ。

すごい、すごい。

僕は猿のように山中を駆け下りて行った。


当時の僕はこの不思議な現象を「これは屋久島の自然のパワーなんだ」と思って感動しながら走っていた。

しかし今思えば、僕はこの時いわゆる「クライマーズハイ」の状態に陥っていたと思われる。

あれだけ蓄積された疲労が、たかが30分の仮眠で取れるわけはないのだ。



そんな事も知らず、ヤクシマーズハイに侵された男は嬉々として山中を風のように走り抜けて行く。

そして男は自らを死地へ追い込んで行ったのだ。



いつの間にか道があり得ないほどにワイルドになって行った。

道はどんどん不明瞭で曖昧なものになっていき、酷い段差や倒木のオンパレード。

さすがにこれはおかしいぞと、僕は走るのをやめる。


でも一応登山道用のピンクのテープもあるし、道は間違っていないだろうし他の道もなかったように思うし。

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いやに急斜面だが、この先にもテープが見えるから進んで行く。


しかし進むにつれ、さすがの初心者の僕にもヤバい感じがこみ上げて来た。

やがて「崖」という決定的な結果となってそれは僕に現実を知らしめる。

もうどう考えてもこれ以上進めない。

「やばい、戻ろう」と思って振り返ると、風景はまるで違ったものに見えて、自分がどこを降りて来たのかも分からない。

この時、僕は初めて自分が「遭難」した事を思い知って背筋が凍り付いた。


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下って来た急斜面も、下りは何とかなってもまた登って行くとなると信じられないハードさだった。

死にそうになりながらも何とかテープがある所まで戻るが、やはりテープを見ると方向は合っている気がしてならない。

そしてまた下ってみたりしたり、やっぱりダメだと諦めてまた登ったりの繰り返し。


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そしてここで僕のヤクシマーズハイ状態が唐突に解除された。

急激に襲って来た疲労感で、体が鉛のように重くなる。

頭の中はもはや大混乱だ。



僕はその場に倒れ込んで全く体が動かなくなってしまった。

そして恐怖が僕を一気に支配する。

ここでの下り登りのハードな繰り返しで、もうすっかり飲み水も底をつき始めていた。

そして我慢できずに最後の一滴を飲み干してしまう。


分からない道、動かない体、底をついた水分。

ここは滅多に人が来ない花山歩道。

「絶望」が僕に忍び寄って来た。



激しい不安に押しつぶされそうになりながらも、僕はその場でじっと体力の回復を待った。

気持ちばかり焦るけど、ただただ待った。


次第に動けるだけの体力を取り戻し、再び登り出す。

もうとにかく分かる場所までひたすら戻ろう。

最悪、鹿之沢小屋まで戻るしかない。


テープを辿りながら、歯を食いしばりながらの急登・急登・急登。

やがてテープが二手に分かれた。

ついに正しい道が見つかったのだ。

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どうやら僕は突っ走りすぎてその方向へのテープを見過ごしていたのだ。

直角に曲がらなきゃ行けなかった所を、この手前のテープめがけて突っ込んで道無き道を突き進んでいた。

でもこの先にも確かにテープはあったので、紛らわしい事この上ないテープだった。

まあ、山を走って目測を誤った自分がすべて悪いけど。



これでひとまず助かった。

しかし体力の限界と飲料水ゼロという状況に変わりはない。

もうこの時点で軽く口の端に泡を吹いている状態だ。

ここからは脱水症状との戦いだ。


そこからの僕はもはや落ち武者状態だった。

背中に矢でも刺さってるんじゃないかというほどにフラフラになった男が、トレッキングポールだけを体の支えに下山して行く。

頭の中ではビールやコーラなどの冷たい炭酸系飲料だけが支配する。

もう気分は減量中の力石徹だ。


次第に炭酸飲料の欲も薄れて思考回路は「水」一本となり、文字通りゾンビのような状態になっていく。

ある種無我の境地だ。

随分と長い時間、その危ういお花畑の中を彷徨う。


そしてついに花山歩道を突き抜けて林道に達した。

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僕はここで全ての荷物を投げ捨てて、地面に倒れ込んだ。

もはや人間としてこの疲労と脱水症状は危険な状態だ。


しばらくこの場所で死んでから、再びゾンビはもぞもぞと動き出す。

二ヶ月後には子供が生まれるんだ。

こんなとこでお父さんは脱水死している場合ではない。


少し歩いた所で小川を発見。

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生水を飲んじゃダメなどのたわけた考えはぶっ飛んでいた。

僕がこの水に突っ込んで行った事は言うまでもない。


みるみる干し椎茸のような感覚の体に命が宿って行く。

キン肉マンの肉の字が白から黒になっていくあの感じ。

屋久島の恵みが、遮るものも何もなく僕の体に浸透して行った。


そんな馬鹿っぽい僕を、ヤジ馬の鹿が不思議そうに見ている。

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それともこいつは僕を迎えに来ていた神の使いだったのかもしれない。

悪いが僕はまだそっちの世界に行くわけにはいかない。


ここからの林道も実は結構長かった。

やがて海が現れ、僕は道路に出て下山を完了した。

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ついに屋久島横断を達成した瞬間だ。


しかしあまりの衰弱ぶりに、達成感も充実感も何も感じない。

本来であればこのまま海に降りてガッツポーズで記念撮影って所なんだが、そんな気も起こらない。

というのも僕はこの時、新たな絶望感に満たされていたからだ。

一日に二本しかないバスがもうすでに終わっている時間だったのだ。


ここから最寄りの町までかなり距離がある。

でも行くしかない。

僕はトボトボと道路を歩き出した。

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延々と、延々と、延々と道路を歩き続ける。

もう文字通り足は棒となり、引きずるように突き進む。

壮絶すぎる。

でも僕を突き動かしていたものがある。

そこには「本当のゴール」があるのだ。



やがて栗生の町まで辿り着いた敗残兵一匹。

迷う事なく第一町人を発見し、売店はないかと問う。

ボロボロの男は最後の力を振り絞って売店に向かった。


そして僕はその売店で「栄光」を購入。

メタリックな輝きに満ちたその栄光には「アサヒスーパードライ」と刻印されている。

僕は慎重にその栄光の500mlを抱えて海に向かう。

焦る気持ちを必死で抑えながら、聖火リレーの最終走者のように胸を張りながら。


いい感じの場所に腰を下ろし、一度気持ちを落ち着かせる。

そして姿勢を正し、震える指でその「栄光」のプルタブをカシュッと押し込む。

栄光の中は黄金色に輝く勝利の液体で満たされ、僕の体内に収まるのを今か今かと待っている。


屋久島横断達成万歳!


僕はその栄光の聖水を一気に体に流し込んだ。

途端、僕の体を電流が疾走し、体中の五臓六腑達がベートーベンの第九を高らかに歌い出す。

細胞から神経までが歓喜に包まれる。

のどごしという名の弾丸が爽快に喉を突き抜け、僕のハートを何度も打ち抜いた。

これこそ本当のゴールだ。



こうして僕は文明世界に帰って来た。

4日間の壮絶な屋久島横断の旅が終わったのだ。

色々と御託を並べて来たが、究極この一杯の為に僕は旅をしているのかもしれない。




栗生の町からはさすがに何本かのバスが出ていた。

屋久島は勝手に野宿できないからキャンプ場まで移動しなくてはならない。

僕は安房の町までバスに乗って行き、番屋峰キャンプ場でテント泊。

普通のキャンプ場なんだが、僕にはそこが高級ホテルにすら思えた。


こうして死線を彷徨った四日目が終了した。

屋久島横断を達成した今、翌日の五日目に僕のする事は決まっていた。

もちろん休養なんてしない。

横断の後はやっぱり「一周」だ。


こうして翌日からは屋久島一周が始まります。

と言ってもさすがにレンタルスクーターでだけどね。


「限界まで遊び尽くす」


その思いは今も昔も変わっていない。




〜屋久島横断野郎5へ つづく〜


屋久島横断野郎3〜鹿之沢の夜襲〜

Posted by yukon780 on 21.2012 屋久島横断野郎 0 comments 0 trackback
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さあ、三日目ですな。

カヌーの時もそうだけど、一人旅ってこの三日目あたりからいい案配になって来るんだよね。


少しづつ俗世の垢が取れ始めて、久しぶりに本来の自分との対面を果たす。

五感が研ぎ澄まされ、思考回路もシンプルになって行き、徐々に自分の中に潜む野生の記憶を垣間見る事が出来る最高のお時間。

普段の自分がいかに無駄な考えに支配されて、無意味にストレスまみれになっているかがよく分かるのもこの頃だ。


僕が今、日帰りの旅では満足できないのはこうしたステキな時間が三日目以降に訪れる事を知っているからかもしれない。

でもこの感覚を嫁さんに説明するのは非常に困難な事なんだよなあ。


まあ、これ以上書くと愚痴になってしまうからこの辺でやめておこう。

日帰りでも行かせてくれているだけ感謝でございます。


それでは一人愚痴&フォローが炸裂した所で、三日目を振り返って行こう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


朝、日の出とともに新高塚小屋を出立。

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一人旅の三日目の朝って、なんだか心静かに迎えられる。

二日掛けて心と体がその土地に馴染んで、いよいよがっぷり四つでその日一日に向きあえる感じがする。

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初日に比べると当然高揚感は落ち着いて来るが、体内時計が屋久島タイムに切り替わって下界とは違う心地の良い時間を漂うことが出来る。

少しづつ明けて行く空と朝の清冽な空気感を味わいながら進んで行く。

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暫く進んで行くと樹間から不思議な山が現れる。

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山の名前は知らないので、僕はこの山を「横たわったBカップ乳首山」と名付けた。

せっかく朝日のくだりからキレイな文章でまとめて来たのに、ここに来てやはりこの様なお下劣な表現が出て来てしまう。

でもそう感じてしまった自分にウソをつく事はできない。

そう、あれはAでもCでもない。断じてBカップだ。



ちなみに登山道はこんな感じの道を進んでます。

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やはり白谷雲水峡の頃と比べると、より登山色が強くなって来ている。

本人は「登山」ではなく、あくまでも「旅」の感覚で来ているので、内心「参ったな」って弱音も出てしまう。

当時は登山経験全くないから、全くもって無謀な男だよ。


いよいよ景色も開けて来る。

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意図してない展開に「あ、これはさては登山しちゃってるのか?」と今更ながら認識を始める男。

しかし「頑張らない」という基本スタンスは崩さない。

本日も出発から1時間もしないうちから、早くも大休憩が始まる。

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このようにいい感じの「寝床」を発見し次第、精一杯寝転んでダラダラする。

ただただ気持ちよろし。


思い起こせば、最近の僕は日帰りという限られた時間枠の中での無茶なカヌーや登山が多かった。

当然こんな風に「寄り道ダラダラ」をする余裕もなく突っ走って来た。

でもこれ書いてて思い出したけど、本来の僕の旅スタイルは「いかに頑張らずにダラけるか」がモットーだったはずだ。

ちょっとこの写真の中でグウタラしている男に教えられた気がします。

ただコイツ、体力無いだけなんだって僕は知ってるけどね。



それにしても天気が凄くいいぞ。

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この突き抜けるような蒼穹の空が信じられない。


これが366日雨が降るって言う屋久島かい?

これは367日目のパラレルワールドなのかい?

まるで1Q84的な世界にでも迷い込んでしまったようで、快晴慣れしていない僕はただただ戸惑うばかりだ。


そう考えてしまうと、不思議な岩など出て来ると何かのメタファーな気もしてきたりする。

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一体この岩は何を暗喩していたのか?

この数年後に訪れる「養子の重圧」を表現していたのだろうか?

このあたりから「森の屋久島」から「岩の屋久島」へと徐々に変貌して行った。


その後も進んで行くと、

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突然目の前に巨大な丸い岩のGANTZが現れた。

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インディージョーンズの名場面を思い起こさせる丸い岩。

今にも転がって僕に襲いかかって来そうではないか。


そんなインディーガンツ(勝手に命名)を越えると、広々とした稜線に躍り出る。

そして眼前にはまたしても不可思議な光景が。

IMGP1496.jpg

まるで緑のウンコに埋まる岩のトウモロコシのようなこの光景。

こう見えて、岩の一個一個は実に巨大。

こいつはいよいよ大変な所まで来てしまったようだ。


道も過酷な雰囲気になっていき、木道が作られているんだけどひたすらに急登だ。

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そして横は切り立っていて、高度感も出て来て非常に怖い。

振り返れば、高所恐怖症の僕は軽く足もすくんでしまう。

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ここからは暫く、ひたすら急な階段を登り続けるようなハードプレイ。

もちろん当時の僕は二段上がっては立ち止まりを繰り返すのでまるで進まない。


そして本日何度目かの大休憩。

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憐れなほどの猫背で、この先も続く山々をゲッソリと眺める男。


いよいよ辺りは巨岩で溢れ返り、自分が小さな虫にでもなった気がして来る。

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この山は技量こそそんなに問われない気がするが、ただただ必要なものは「体力」のみ。

もしくは強力な「マゾの意志」だ。

僕がなんとか頑張れたのも、当時もその内に秘められた潜在的なマゾの力の成せる技だったんだろう。


そして踏ん張りながら、その後も「ごつごつ」で「もこもこ」な稜線を進んで行く。

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でもしんどいって言っても、やはりこんな異質な風景の中を進んで行く事はとても幸せだ。

何度も言うが、晴れてるってことがとにかくありがたい事だって僕は知っている。


こうして神様は最初の歩き旅で僕にたっぷりの蜜をお与えになり、すっかり味を占めた僕を今後じっくりと雨で弄んで行くわけだ。

このジゴロヤクザや悪徳カジノみたいなやり方に僕はいつもやられてしまう。

こういういい時の状態を少しでも垣間見てしまうほどに、僕はまたこれを求めて旅立ってしまう。

これが旅の魔力なのか。


ゲロ吐きそうになりつつも、ひたすら登り続ける。

そしてついに「宮之浦岳」の山頂に到達した。

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実はこの宮之浦岳が九州最高峰だと知ったのは後の事。

西日本でも三番目の山で、日本百名山にも連なっているなんて事ももちろん知らない。

何も知らない初心者だからこそ登れた気もする。

それでも僕は頑に「これは旅であって登山ではない」と言い張っていた。

今となってはどっちでもいいことだ。


ここまでの長い行程を考えると、景色の素晴らしさもグッと来る。

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で、登山じゃないと言いつつ登頂記念撮影。

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人選ミスにより見事な逆光で撮影されてしまったが(富士山もこんな写真だったな)、何とか僕は屋久島のてっぺんに立ったのだ。

後はこのまま島横断を続けて、逆側の海を目指すのみ。

縄文杉同様、この山頂も通過点に過ぎない。

しかし格好良く通過点なんて言ってる割には、もうお腹いっぱいなほどの達成感に満たされたいる。

正直もう体力が残っていない。


でも当たり前だが進まないと進まない。

縦走ルートなので、まだまだ山を越えて行かねばならない。

でもここからはしんどいけども、とてもいい雰囲気の道を進んで行く。

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登山にはまった今の僕から見れば、ヨダレが出そうなほど素敵な登山道。

永田岳に向かって、アリが這うような道がクネクネと伸びている。

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写真では随分可愛らしいスケールの雰囲気だが、拡大するとそのデカさが分かる。

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左下にちっちゃな人間がいるのがお分かりだろうか。

当時の僕は気が遠くなりそうな気分だったろう。


それにしても不思議な岩が多い。

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やはりかつてここには「でいだらぼっち」がいて、岩で遊んでいたんじゃないだろうか?


途中の岩場では、ボルダリングを楽しむカップルもいたりして実にのんびりとした時間が流れる。

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そんなカップルを羨望の眼差しで僕はマジマジと見つめる。

夫婦で来られるって事は素晴らしい事なんだよ、君たち。ちゃんと噛み締めて。


いよいよ巨大美術館の石のアート会場のような雰囲気になっていく。

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ううむ、アートだ。

どんなに頑張っても、やはり自然が作るデザインには敵いようがない。


やがて永田岳山頂に到達し、パノラマの海の景色を堪能。

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堪能って言ってるけど、正直この頃の僕は薄れいく意識と戦っていたと記憶している。

とにかく体力ははるかに限界を超えていた。

あんな所に岩が乗っかっているのも幻覚に違いない。

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フラフラの意識と不可思議な岩の光景の連続に、妙に平衡感覚が狂ってた気もする。


そしてここから道は急降下。

いよいよ島の逆側に向かっているという実感が湧いて来た。

こんな先も見えないような所からロープを伝って降りて行く。

IMGP5054.jpg

肉体疲労時の急降下。

僕が「ファイト」と言っても、誰も「一発」とは応えてくれないフラフラ単独行。


急降下は続き、やがて本日の目的地「鹿之沢小屋」が現れた。

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倒れ込むようにゴール。

暫くは死んだように動けなかった。


近くに名前通りのキレイな沢があったので、素晴らしい匂いに包まれた汗まみれの溜まった衣類の洗濯。

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もちろん洗剤なんて使わず水洗いのみ。

ついでに半裸になってセクシー行水もかかさない。

実にワイルドな瞬間だ。



相変わらず僕しかいないようなので、朝露で濡れたテントなども全てぶちまけて乾かす。

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重要な道しるべも、僕によって臭い洗濯物にまみれて憐れな光景だ。

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こんな臭そうな方角には進みたくないものだ。

さあ、これでやっとこさ落ち着ける。

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のんびりメシでも作ろうかと思っていたら、なんと他の登山者がやって来た。

しかもさっきボルダリングしてたカップルじゃないか。


僕もビックリしたが彼らもこの不審物が散らかりまくった光景に驚いていた。

僕は慌ててパンツや靴下を回収し、改めて目立たない所へ移動。


その間に、カップルが顔を洗おうという事で沢に向かって行った。

先ほど僕がパンツや靴下を洗い、尚且つセクシー半裸行水をした沢で顔を洗い出すカップル。

水が流れて行っているとは言え、心の底から申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

彼らは屋久島の恵みと僕の恵みを顔いっぱいに浴びて、満足げに沢から帰って来た。

ほんと、ごめんなさい。



彼らは外でテント泊するようで、僕は白谷小屋で叶わなかった初の避難小屋泊にチャレンジ。

小屋の中は頑張れば10人ほどは寝れそうな板敷きの床があって、ちょっとした土間もある。

外に人もいるし、白谷小屋ほど怖い場所でもない。

今日もとんでもなく疲れていたので、メシを食ってさっさと寝た。




夜中。

ガサゴソと音がする。


この小屋には僕しかいないはずなのに、明らかに誰かかが僕の荷物をあさっている音がした。

小屋の中は真っ暗。

一瞬にして恐怖に取憑かれる僕。


枕元のヘッドライトを取ろうとして動いた途端、ドタドタドタと何者かが逃げいく音。

スパッと灯りを着けたが誰もいない。

誰かがこの小屋から出て行った形跡もない。

僕はその場で恐怖に打震えた。


見ると床に僕の大事な食料が散乱していた。

カロリーメイトに至っては袋が破られて、バキバキに割れて散乱している。

そこで気がつく。

この小屋は「ワイルドディズニーランド」だったという事に。


目認できないが、小屋の中はやんちゃなミッキーマウス達の巣窟だった。

追っ払ったと思って眠りにつくと、暫くして再び「ゴソゴソ」と動き出すリアルミッキー。

その度に僕はガバリと起き上がっては奴らを追い払う。


何度このアトラクションを繰り返した事だろう。

僕は諦めて全ての食料を寝袋の中に入れて、食料と一夜を共にする決意をした。

メシと一緒に寝るなんて事が、我が人生に降り掛かろうとは思ってもいなかった。


これにはさすがのミッキー達も諦めたようだ。

しかしこの寝苦しさと言ったらない。

あまり寝返りを打つと、それこそ自らの力でカロリーメイトを粉々にする結果になり、ミッキー被害と大して代わりが無くなる。


こうして僕はこの「夢の小屋」で悪夢のファンタジーを堪能し、まるで疲れの癒せない眠りに落ちて行った。


「二度と避難小屋には泊まらない」


マルタイ棒ラーメンをマイクのように口元にはべらした男はそう呟いた。


こうして体を癒すはずの夜に男は疲労を積み重ねて行く。

そして翌日の遭難脱水野郎に向かって動き出した。


屋久島横断まで残り1日。

ここからが正念場だ。



〜屋久島横断野郎4へ つづく〜



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