アラスカのバガボンド

Posted by yukon780 on 06.2012 ・読んどけ!この本 2 comments 0 trackback
写真


「君は何がしたいんだ?」

「何故旅をするのか?」

「何故いつも単独行なんだ?」

「どうして一人でアラスカの川を下ったのか?」


僕が若い時分によく聞かれた質問。

でもいつもその問いに対する最適な返答が出来なかった。

僕程度の安っぽい「コトバ」しか持ってない男には表現のしようがなかったから。

それは今でもそう。


だから今後同じような質問をされたら、名刺代わりに2冊の本を手渡そうと思っている。

1冊は以前紹介した麻生弘毅さんの「マッケンジー彷徨」。(参考記事

そしてもう1冊はジョン・クラカワーの「荒野へ」。

僕が下手なコトバでどうこう言うより、この2冊が僕の中にある言葉にならない想いを見事に代弁しているからだ。


もちろん本の登場人物と僕は同一人物ではないから相違点は多々あるけど、「この中に僕がいます」と言い切れるし「この中に“潜在的な”あなたもいるはずです」とも言える。

とかく理解されない「単独行で荒野へ向かう衝動」というものの一端が垣間見てもらえるはずだ。


今回はジョン・クラカワーの「荒野へ」を是非にご紹介したい。

実は、たまには真面目な記事も書くのですよ。

今回はそんなレアな回でございます。


事前に映画となった「イントゥ・ザ・ワイルド」は公開当時に観ていたが、正直原作本は読む事を意図的に避けて来た1冊でもある。

こんな物を読んでしまったら、押し殺していた衝動が爆発してしまうと思ったから。

結局読んじゃったんだけどね。


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1台のボロバスの前で満足げに微笑む青年。

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彼の名は、クリストファー・マッカンドレス。

この時24歳。

裕福な家庭で育ち、有名な大学を卒業して将来を嘱望された秀才。


しかし彼がこの写真を撮った数ヶ月後、彼は荒野に打ち捨てられたそのボロバスの中で餓死した状態で発見された。


一人の青年がアラスカの荒野に惹付けられ、やがて一人ぼっちで餓死するという壮絶な人生。

当時青年に対して、世間の多くの人が「無謀な若者の必然の死」「原野での単独生活に対する無知」「理解出来ない馬鹿げた行動」と批判した。


今でも良くある事だが、往々にして表面的な報道はこのような誤解を産む。

この「荒野へ」という本は、作者のジョンがアラスカで餓死するまでのクリスの足跡を追ったもの。

そして夢想家ソローやジョン・ミューア、そしてジャック・ロンドンやトルストイなどのクリスに影響を与えた先人達の文章を引用しながら、クリスという青年を構築した起源を探って行く。

同時にクリスの生い立ちや、関わった人々の証言、登山家でもある自身の経験などを元に「なぜ青年が一人で荒野に向かったか」を考察して、今は亡きクリスと向き合って行くノンフィクションだ。


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僕が最初にこの世界に触れたのは、名優であり名監督ショーン・ペンの映画「イントゥ・ザ・ワイルド」。

もちろん原作は「荒野へ」で、今でも僕の中のベスト1の映画となっている。

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もちろん映画なので幾分ドラマチックに演出されているが、クリスの意図を十分感じさせてくれる最高のロードムービーとなっている。

クリス役のエミール・ハーシュの演技なんてオスカーもんだったし、80歳過ぎの老俳優ハル・ホルブルックの涙のシーンは僕の中で歴史的な名演として今でも記憶に残っている。


ただやはり映画の時間内では「クリストファー・マッカンドレス」個人のことと「なぜ人は荒野に向かうのか」という深い部分での問題は考察しきれない。

それだけに原作への欲求は日々高まって行った。

でも結婚後に読んでしまうにはあまりにも危険な書物だったんだよね。


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良いのか悪いのか、やっと辿り着いた場所なのか目を背けているだけなのか?


幸い僕は当時に比べてある程度落ち着いて来ている。(え?と思うだろうけど)

当時はとにかく単独でアラスカの荒野を長期間彷徨いたい衝動が収まらなかった。


でも今は日帰りの旅(旅というには大袈裟だけど)でもそこそこ満足できているし、単独行じゃなくても多くの仲間とともにカヌーしたり山に登ったりする事も楽しんでいる。

だからやっとこの「荒野へ」を素直に読む事が出来たわけ。


実際に僕はアラスカを旅してクリスの軌跡と重なる場所にも行っているだけに、現場の空気感や彼の感じた「圧倒的な自由と孤独」も体と精神の奥の方にヒリヒリと感じる事も出来た。

(クリスが荒野へと分け入って行った周辺で、ちょうど僕は「クリス」と言う名のヒッチハイカーを車に乗せて共に旅をしていた。まあ偶然なんだけどね。彼は40代の大工さんだったし。)


そしてクリスが死の間際、放浪中にずっと使っていた偽名「スーパートランプ(放浪者)」を捨てて、忌み嫌っていた両親が付けた本名でサインをした意味。

「幸福が現実となるのはそれを誰かと分かち合った時だ」と殴り書いた彼の精神の旅の到達点。

きっと僕は「その答えの中にいる」と思える環境を手にして(気付いて)、この本を素直に受け入れる事が出来た気がする。



一方でクリスは老人ロナルドへの手紙で以下のように書いている。

その手紙が僕らに向けられているようで心が軋んだ。

「あなたは思い切ってライフスタイルを変え、これまで考えてみなかったこと、あるいは踏ん切りがつかずに躊躇していたことを大胆に始めるべきです。
多くの人々は恵まれない環境で暮らし、いまだにその状況を自ら率先して変えようとしません。
彼らは安全で、画一的で、保守的な生活に慣らされているからです。
それらは唯一無二の心の安らぎであるかのように見えるかもしれませんが、実際、安全な将来ほど男の冒険心に有害なものはないのです。

中略

楽しみをもたらしてくれるのは人間関係だけであるとか、人間関係を中心にそれを期待しているとすれば、それはまちがいです。
神は楽しみをぼくたちの周囲のあらゆるところに配してくれています。
ありとあらゆること、なんにでも、ぼくたちは楽しみを見い出せるのです。

中略

ためらったり、あるいは、自分に言い訳するのを許さないでください。
ただ、飛び出して、実行するだけでいいのです。
飛び出して、実行するだけで。」

この手紙を受けとったロナルドは旅立つことになる。

実に81歳の決断。

彼のことを深く知らない我々には肯定も非難もできないが、きっとそれは素晴らしいことだったに違いない。

そのことは分かる気がする。



クリスが今の「喜劇国家」日本を見たらどう感じるんだろう?

今の日本の若者の中に、一体どれだけの数のクリストファー・マッカンドレスがいる事だろう?

多分僕の頃より多いんだろうけど、「荒野への衝動」を知る術も無く悶々と戦っている人も多いと感じる。


僕はすっかりおっさんになってしまったが、できるだけ自分の感じた衝動には正直にありたい。

荒野への旅は僕にとって現実逃避ではなく自己回帰の作業。

自分が自分である限り「自分探しの旅」に答えは無い。(その事に苦悶する事が出来るのは若さの特権でもあるんだけどね)

精神を模索するバガボンドには「結局答えなんて無かった」という答えが手に入る。

そんな単純なことに気付き、とてもシンプルな思考に落ち着くことが出来て、初めて社会生活と向き合うことが出来る気がする。

とても長い回り道だったけどね。(まだ模索中だったりするけど)

きっとクリスが生きて荒野を出た時、やっと家族や社会と向き合えた気がします。


「本当の自由」を一度でも体験した人には、新たに「自己回帰の旅」という旅の観念が芽生える気がする。

それは森羅万象に溶け込んで、調和の一部であることを自覚するための大切な作業。

それが僕にとっての旅であったことを思い出させてくれた本でした。



まだまだカヌー野郎は旅の途上でございます。




「ぼくの一生は幸せだった。ありがとう。さようなら。皆さんに神の御加護がありますように!」

ーーークリストファー・マッカンドレス



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男の着火材〜マッケンジー彷徨〜

Posted by yukon780 on 31.2012 ・読んどけ!この本 0 comments 0 trackback
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この本の中に僕がいた。


正確にはもちろん僕が書いた本ではないし、そんな事を言うと筆者に失礼だ。

でも確かにそう感じてしまった。



本のタイトルは「マッケンジー彷徨〜川が空へと流れるほうへ〜」。

作者は僕とほぼ同年代の人で、10代の頃の夢を35歳で実現させた麻生弘毅さん。


僕もそうだが、彼も思いっきり野田知佑さんの影響を受けた一人。

彼は若い頃に野田さんの名著「北極海へ」を読み、マッケンジー川に強い憧れを抱き続けていた。

色んな悩みを抱えながら、35歳にしてついにマッケンジーでの単独行を開始した。

僕が野田さんの「ユーコン漂流」に憧れ続け、28歳の頃にユーコン川単独行に行ったのと同じように。

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この本の中で麻生さんが旅の中で感じた事や、旅に関する持論があまりにも僕の考え方とリンクしていて驚いた。

まあお互いに深く野田さんの影響を受けているから当然と言えば当然なんだけど。


そして陰鬱で内省的な旅の中で、もがき、自己に対する否定と肯定を繰り返していく様は、読んでいて痛々しいほどに僕の感情までも揺さぶった。

そして読み進むうちに、次第に僕は自分と向きあっているような感覚に陥った。

もちろんその感覚は野田さんの本を読んでいて感じられるものじゃなく、同世代の同じ感覚の持ち主が綴る物語だからそう感じたんだろう。


野田さんの世界は圧倒的な格好良さがあり、どこか遠い存在に感じていたのは事実だ。

その後、第二世代の堀田貴之さんやシェルパ斎藤さんや本田亮さんなどによって徐々にアウトドアや旅という世界が身近になった。

そして第三世代でホーボージュンさんや村石太郎さん、八幡暁さんや髙橋庄太郎さんなどの現在油が乗りまくっている「兄貴的」な人達が、今の若い人達に影響を与えている。

いずれも抜群のアウトドアの技量と経験を持つ突き抜けた人達で、やはり遠く憧れの範疇にいる。


でも麻生さんは僕にとっては初めて最も身近に感じられた等身大のヒーローだ。

代弁者と言ってもいいかもしれない。

それだけにこの本の世界はより深く僕の心をえぐっていった。


正直、僕は長い事この手の本を読む事を意識的に避けて来た。

仕事と家庭と子育てに埋もれる中で、こんな着火材のような本を読んでしまうのが怖かった。

でも我慢できずに読んでしまった。

おかげで現在僕の押し殺していた感情がくすぶり始めて、めちゃくちゃ旅に出たくなってしまっている。

こいつはちょっと困った事になってしまったよ。


再びカナダかアラスカの荒野で茫漠とした救いのない日々を過ごしたい。

また全力で一日を生き抜くフルライフがしたい。



きっとこの本は今若さにもがいている人々にとって、僕らが野田さんに受けたものと同様の影響を与えるだろう。

20代前半の人はもちろん、同年代のカヌーをしない人にも読んで欲しい。

そんなおすすめの一冊のご紹介でした。


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〜おまけ〜


世界は広く、そして狭い。

マニアックな世界で生きる人々の不思議な繋がり。



僕は野田さんに憧れてユーコンへ行った。

ユーコンで同じく野田さんに憧れている和田さんと出会い今でも親交がある。

僕がユーコンを去ってから、その和田さんと共に後半のユーコンを旅した人が、なんとこの前の甲斐駒ケ岳の時B旦那の友達としてやって来たDさんだったことが最近判明。

そしてそもそもそのB旦那とは黒はんぺんSの紹介で出会った。

黒はんぺんSとB旦那は南米で偶然出会った仲だ。

その黒はんぺんSは僕のカヌーパートナー山田(仮)の同僚で、ユーコンを旅した奴がいるって紹介された。

ユーコンの後、その山田と豊川の野田さんのイベントに参加した。

そのイベントでスタッフで働いていた島田さんと後にアラスカのホステルでバッタリ遭遇。

その島田さんの知り合いで、そのホステルにいたのが写真家の松本さん。

その松本さんがカヌーを贈った相手がなんとこの麻生弘毅さんでした。


なんか同じような人が同じような信念で生きて行くと、必ずどこかでそれぞれに接点があるもんだ。

これぞ縁というんだろうか。

僕がかつて偶然四万十川で野田さんに遭遇したように、いつか麻生さんとどこかで(多分荒野だろうな)偶然出会う日が来るかもしれない。

そんな日が来たら、酒の一杯でも飲み交わしたいものだ。



卵をめぐる大冒険

Posted by yukon780 on 14.2012 ・読んどけ!この本 0 comments 0 trackback
紹介せずにはいられない本に出会った。

と言っても、僕も知り合いに紹介してもらったものだけど。



実はこのブログは、旅の記録のみならず、良かった本や映画なんかも紹介していこうってんで始めたもの。

しかしどんどん方向性が偏って行って、最近はただのマゾ日記になっている。

ここらで一つ、ちゃんと本を紹介してみることにする。

読書好きの人に送る、珠玉の逸品です。




本のタイトルは「卵をめぐる祖父の戦争」。

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)
(2011/12/05)
デイヴィッド ベニオフ

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別にジジイ達が卵の取り合いをしているお話ではない。

これだけでは、全く訳の分からない邦題だ。


原題は「CITY OF THIEVES」なんだけど、「泥棒達の街」と訳さずに「卵をめぐる祖父の戦争」と邦題をつけたのは実にお見事だ。

題名を見た瞬間「うお、一体どんな話なんだ?」と一気に引き込まれた。


そして、「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」から始まる冒頭の一節。

この手の冒険心をくすぐる「含ませ方」が実に秀逸だ。


センスのある知人からの紹介と、そそる邦題と、ミステリアスな冒頭の一節。

この本を買うのに、これ以上の理由は必要無いだろう。



この本はアメリカの映画脚本家が書いたものだが、作品の舞台はナチス包囲下の旧ソ連「レニングラード」。

作家である孫が祖父に戦争当時の事を取材をし、祖父が当時の事を物語ると言った流れになっている。


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作品の出だしはちょっと読んで行けるかが不安だった。

なんせ、僕は外国の本は普段あまり読まない。

基本的に登場人物の名前がカタカナだらけで覚えられないからだ。

しかも、難解な名前が多い旧ソ連が舞台。


本の登場人物紹介の欄で、「レフ・アブラモヴィッチ・ベニオフ」やら「ニコライ・アレクサンドロヴィッチ・ヴラゾフ」などのアナウンサー泣かせのカタカナが踊っていた。

大いに不安になる。



そしてこの時代のナチスドイツとソ連の戦争の事の予備知識が全くなかった。

僕は東洋史は好きだけど、欧州史は上記の理由でどうにも馴染めない。


ナチスに関しては手塚治虫の「アドルフに告ぐ」での知識しか無く、ソ連(ロシア)に関しては井上靖の「おろしや国酔夢譚」が精一杯の僕の知識だ。


という事で最初は状況把握のためゆっくり読んで行ったから、中々進まなかった。


ただ読んでいると、当時のナチスによる「レニングラード包囲戦」の凄まじさが生々しく伝わって来る。

よく日本でも「城を包囲して兵糧攻め」なんてのがあるが、規模が全く違う。

「都市」を丸ごと包囲しての凄惨すぎる兵糧攻め。


攻城戦なら降伏開城で終わる所だが、ナチスの目指すは妥協なしの「皆殺し」。

あまりにも酷すぎる包囲戦の背景が知りたくて、ウィキペディアなんかでも調べて予備知識を得た。


包囲はおよそ900日ほど続き、その餓死者はなんと約100万人!

100万人ですよ。信じられます?


包囲中、当然食料の配給は底をつき、次第に人々は壁紙の糊や砂糖の染み込んだ土を食べ、やがてペットを食らう。

そして凄惨度は増して行き、ついには人肉を食らい出すという地獄絵図。

特に子供の人肉は美味とされたので、市内では子供の誘拐・殺人が横行したとも書いてある。


こんな凄まじい過去の歴史があったとは。

僕はこの事実に関して何も知らなかった事を恥じた。


で、この本と同時進行でこんな映画も見た。

「レニングラード 900日の大包囲戦」

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こちらはイギリス人女性ジャーナリストとレニングラードの女性警官の二人を中心に、この包囲戦を描いた作品。

この映画とセットで見れば、よりこの本の背景が分かるからおすすめだ。


最近では写真家のセルゲイ・ラレンコフって人が、一枚の写真上に同じ街の第二次世界大戦時と現在の様子をPhotoshopで加工したものを並べて作品として世に出していたりする。

20120123horrible_siege_of_leningrad20.jpeg

ここにいくつか載ってます。(参考


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話が本からそれてしまった。

元に戻そう。


そんな感じで読み進んで行くと、主人公のレフがあれよあれよとアクシデントに巻き込まれて行く。

いろいろあった末、コーリャという相棒と共に「卵」を1ダース調達しなくてはいけない状態に陥る。

もちろん、食料がないレニングラードで「卵」を探すなんて容易な事じゃない。


なんでそうなったとかは、ここでは書かないよ。

本編読んで楽しんでね。



そして、ここからが俄然楽しくなった。

もう、ページをめくる手が止まらない。


なんと言っても、このレフとコーリャの掛け合いが最高だ。

こんな悲惨な状況でも、ジョークと卑猥な話が大好きなコーリャ。

そして、どこかネガティブで常に頭の中でブツブツ呟き、性に悶々とする主人公のレフ。

この二人の掛け合いは、下手な漫才師よりも面白い。



そのユーモアさが、また一層対極にある「悲惨な戦争」を浮き上がらせる。

これはあの名作映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を彷彿とさせる。

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この映画も僕の大好きな映画だけど、この映画が好きな人には僕の言わんとしている事は伝わるだろう。



実はこのレフという主人公が結構自分に重なった事も良かったのかも。

なんだか意気地があるように見えて意気地なしのチキン野郎で、思考回路がやけにネガティブ。

女性に対してもひどく臆病なくせに、頭の中ではひたすら妄想ばっかり。

自分の容姿や才能にもコンプレックを感じまくり、まあ言ってみればどうにも情けない奴。

でも案外、大半の男ってそんなもんだとは思うけどね。


それだけにコーリャの存在が、より一層魅力的に写る。

豪放磊落でおしゃべりで明るくて、誰とでもすぐ仲良くなって、そこら中に女がいる。

とにかく1週間でも女を抱けないと気が狂う質で、行軍中でもオナニーしてしまう驚異的なアホ野郎。

でも、コイツが度々核心を突いた良いことを言ったりするから面白い。

どこまでが本気かも分からないけど、それがまたコイツのカッコいい所。


本のラストを読み終えてから、再び冒頭のプロローグ部分を読むと思わず「ニヤリ」としてしまう。

祖母は料理が出来ないんですよ。



おっと、もうこれ以上はあんまり内容には触れないでおこう。

本編で存分に楽しんでおくれ。

僕の中でこの本は、暗い戦争の話でありつつも「青春ロードムービー」のような作品だ。

「ライフ・イズ・ビューティフル」と「モータサイクル・ダイアリーズ」が合体したかのような作品。

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紹介しておいてなんだけど、どんどんどんな内容なのか分からんくなるでしょ?

それでいいんです。


「冒険」と「青春」と「友情」と「恋愛」と「愛国心」と「戦争」と「飢餓」と「笑い」と「涙」と「アクション」が入り乱れる一大傑作。

ヴィクトリノックスの多機能ナイフみたいに、次々とそんなワードが飛び出します。


僕の中で、エッセイ以外の「小説」としては新田次郎の「アラスカ物語」に次ぐ傑作との出会いだった。


是非に読んでみて。

そして「卵をめぐる冒険」に旅立ってみて下さい。




ああ、なんか久々にちゃんとした記事を書いた気がするよ。


嫁より長いお付合い

Posted by yukon780 on 27.2011 ・読んどけ!この本 2 comments 0 trackback
終わってしまった。

TBSのドラマ「JIN-仁-」が昨日最終回を迎えた。
瞬間最高視聴率は31.7%、モンスタードラマになってしまった。

この作品にはなんだか思い入れがある。

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思えばもう何年前になるだろう。

まだ嫁とも出会わず、放浪三昧の青春まっただ中にいた頃。

僕は本屋の新刊コーナーで一冊の本を手に取った。

第1巻の「JIN-仁-」だ。

僕は歴史大好きだから大抵の幕末ものは小説から漫画までかなり読んでいたが、現代の脳外科医が幕末にタイムスリップするというテーマにそそられ迷わず購入した。

幕末の医療ものとしては手塚治虫の「陽だまりの樹」で、奥医師、本道、蘭方医、緒方洪庵、適塾、松本良順などの基本的キーワードは知っていたので入りやすかった。

しかし、当初は1年に一巻くらいのバガボンド並みの発刊ペースだったから、ストーリーを頭の中で繋げていくのが大変だった。

しかも表紙のイラストがみんな似た感じだったから、同じ巻を2回買ってしまった事もある。

作者は有名な人だが、かなりマニアックな部類の漫画だったから小さな本屋では売っていない事もあった。

友達にも面白いからと言って進めても、「幕末にタイムスリップして」って言った時点で引いていたのを記憶している。おそらく戦国自衛隊の幕末版と思われていたかも。

やがてだんだんと発刊ペースが早くなって来て、何巻だったか本の下帯部分にドラマ化の文字が。

かなり信じられない光景だった。

深夜時間帯の若手俳優チャレンジドラマ的な扱いかと思いきや、堂々の日曜夜9時枠。

うれしかったなあ。しかもそうそうたる俳優人。

なんだか、有名になった歌手に対して「俺、デビュー前からこいつ追ってたんだぜ」的な内容になっているが、そのとおり。これは単なる自慢記事なのだ!


そんなこんなで大ヒットしたドラマ「JIN-仁-」。

実はドラマと原作では、結構違うエンディングなんです。

そもそも未来なんてキャラは存在しないし(最初に仁のプロポーズを断るそれっぽい人は出ていたが)、ドラマ用に大幅にカットされている名場面も沢山ある。

是非みなさんも原作の世界にも浸ってみてはいかが?


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※おまけ

ちなみに我が家の息子りんたろうくん。JINにも登場する勝海舟の本名勝麟太郎から呼び名を拝借しております。
スケールのでかい男になってもらいたいもんだ。

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