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極マゾ後悔日誌3〜醜いアヒル中年の死線風景〜

Posted by yukon780 on 10.2014 烏帽子岳〜野口五郎岳/長野 3 comments 0 trackback
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秘境の入口に立って身震いする男。

彼がここに辿り着くまでは、実に長い長い苦難の航海だった。


もはや体力は完全に枯渇し、全身の痛みはエキセントリックな状態。

子泣き爺レベルの無駄な重荷を背負い続けた事による肩と腰の破滅的シャウト。

そして信じていた登山靴の裏切りによる靴擦れパーリー。

さらにはこの時点で彼は、何故かお馴染みの「ずぶ濡れドブネズミ」へと変貌。

濡れたおっさんの放つ異臭は、もはや「歩くくさや」状態である。



一体この秘境の入口に辿り着くまでの彼に何が起きたのか?

その謎は、彼が生前に書き残した「後悔日誌」に記録されている事だろう。


一旦ここで、ここまでの後悔日誌を軽く振り返ってみよう。

彼の冒険は「国連軍豪雨モーニング」から華々しく始まり、いきなり「ブナ立尾根急登地獄絵図」「爽やか灼熱ミストサウナ」「プログロッカー&エクトプラズマー」という乱戦に巻き込まれるが、これを撃破。

そして「烏帽子岳イチゴかき氷」の恐怖に怯えつつも無駄なトレランピストンを完遂し、「灼熱棒ラーメン」で英気を養ったかと思うと、ついに「フランダース昇天未遂」で危うく天に召されそうになる。

しかし彼の持ち前のマゾ魂で「ノーと言えないラストサムライ」を演じきり、ついには「ゴロゴロ五郎」の恐怖と戦いながら「ウルトラヘビースピードハイカー」へと変身。

そして無事に野口五郎小屋に到達した彼は、ついに古代中国の秘宝「旭超乾」を手に入れた。


ここまでの記録を見る限り、まだ生きているのが不思議なほどの激戦の数々。

しかしこの時点では、彼は「秘境の入口」からはまだまだ遠い所にいる。


それでは彼が「旭超乾」を手に入れてから「秘境の入口」に辿り着くまでのその後の航海の記録。

じっくりと読み進んで行こう。


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8月23日 16:20


私は渾身の「旭超乾」を体内に注入し、やっと生気を取り戻した。

そしてヨロヨロと小屋の受付へと向かった。


実はこの野口五郎小屋にはテント場がない。

故に野宿派の私としては小屋に泊まるのは本意ではなかったが、今回は小屋泊に。

しかし今思えば、ここにテント場がなくて本当に良かった。

もしここのテント場があったら、私はこの24キロザックにさらに「テン泊装備」も追加で担いで来ていた事は間違い。

そんな事した日には、私は100%ブナ立尾根のもずくと化していた事だろう。


案内された部屋に着くと、早速同室の人に「あんた、それ何担いで来たの?」と不審者の侵入を見るかのような目で質問された。

私は「これはパックラフトと言って、まあ一言で言えばボートです。」と言えば、もちろんその人は「なぜだ?」と言った目で私を見る。

まあここは2900mの高地だし、川を下るどころか水すら貴重で1Lの天水を200円で買うような場所。

彼が「同室に変態が紛れ込んで来た」とざわついてしまったのも無理のない話だろう。


早速彼は「なんか面白い変な奴が来たぞ」とまるで大道芸人の来訪を告げるかのように、もう一人の同室の人を呼びに行った。

そして連れて来られた登山ガイドの人と、もう一人の同室人と交えて軽く談笑。

完全に私は「ビックリ人間枠」で皆さんに受け入れてもらったようだ。


やがて腹も減ったんでメシにする。

最近こーたろくんの水遊び装備一式を買ってお金のないお父さんは、もちろん「素泊まり」だ。

ほんとは小屋のメシが食いたいんだが、お父さんはこうして陰ながら己の欲望を犠牲にして君たちのために節約資金で戦っているんだよ。


故に他の登山者達の美味しそうな夕食を横目にしつつ、隙間風が入り込む自炊場へ。

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時折宿泊者の楽しそうな笑い声が漏れ聞こえて来る中での、素朴なアルファ米タイム。

ここは自炊場という名の「反省後悔場」なのだろうか?

テント泊の時は気にならないが、この様な場所でのアルファ米は何だか妙に涙の味がするのは気のせいだろうか?


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18:00


これは奇跡なのか?

それとも秘宝「旭超乾」がもたらした効果なのか?


「Mr.山に登っても報われない男」と称される私が、なんと「夕陽」という幻の気象現象を目撃できる時が来たのである。

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あれほどまでに「ゴロゴロ五郎」だったモクモクエレキテル連合軍は姿を消し、なんと空に青空が。

そして、かつて私をボロ雑巾のように翻弄した大天井岳(参考記事:常念山脈北上野郎2〜大天井岳編・おもてなしの嵐〜)が、今まさに夕陽に照らされ始める。

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かつて長大な縦走の末に辿り着いたあの山の山頂で、私は真っ白な絶景を前に号泣したものだ。

しかしあの頃の私と、「旭超乾」を体内に宿した今の私とは違う。

ついにずっと「あんなのはCGだ」と言って信じて来なかった、「夕陽」という名の黄金色に輝くお宝が登場したのである。

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素晴らしい。

冷静に立って夕陽を眺めているように見えるが、もちろん下半身は悦びの失禁でビショビショである。

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アテント無しでは直視不可能な落陽タイム。

私を苦しめたゴロゴロ五郎の雲達も、今では進撃の巨人のように夕陽に向かって去って行く。

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これは来たのではないのか?

ここまでは悲惨過ぎた行軍だったが、まさにこれを機に一気に好天に転じて、最高のパックトランピングを楽しめる時が来たのではないのか?

明日は大快晴の中、ノンマゾでラブリーな一日が始まるのではないのか?


私の胸は翌日に対する夢と希望で一杯になった。

もしかしたら我が悪天候人生の中ではツチノコよりも見る事が難しいと言われる、あの伝説の「ご来光」なる現象が拝めるかもしれない。

私はホクホク気分で眠りについた。

さあ、明日からはサングラスが手放せない航海が始まりそうだ。


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8月24日 3:30


生まれ変わった日の朝というものは何かが違うものだ。

やはり興奮しているのか、私は目覚ましよりも早く起きてしまった。


今日は私がついに「一日中晴れにまみれる」という記念すべき日。

せっかくのご来光なんだから、小屋の横で見るよりはやはり野口五郎岳の山頂で美しく堪能したいもの。

少々早い時間だったが、私はいそいそと準備を開始。

そして自炊場にて朝飯を食うべく、小屋から出ようと玄関へ。


おっと、焦ってすぐに扉を開けては駄目だ。

まずは深く深呼吸。

もう昨日までの私はいないのだ。

いきなり満天の星空を見てパニックにならないように、一度心を落ち着かせよう。


さあ、準備は整った。

この扉の先に広がる世界こそ、我が明るい未来を暗示する新世界。

いざ快晴の北アルプスへ。


おもかじイッパーイ!

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お白がイッパーイ!


そう叫ぶと、私はその場に崩れ落ちた。

そしてプルプルと肩を震わす。


他の登山者を起こしてはいけない、歯を食いしばれ。

そう思えば思う程、どうしても「ウッ...グッ...グッ...」と漏れてしまう嗚咽。

いっそ号泣できたらどんなにか楽だろう。


誰か...

誰か私を強く抱きしめてくれ...


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4:50


さっき食べた岳食カレーうどんのしょっぱい味の事は生涯忘れない。

だが私は、そのカレーうどんを食いながらこう前向きに考えた。

これはひょっとして一旦落胆させておいてからの、野口五郎岳の山頂に立った途端に雲が晴れてご来光登場っていうサプラズ演出ではないだろうか?

この絶望的な光景に対し「やはり私は醜いアヒルの子だったのだ」と嘆かせた所で、山頂で一気に「お前は実は白鳥の子だったのだよ」と示してくれるのではないのか?と。


私はそんな神の小粋な演出を信じ、野口五郎小屋を後にした。

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遠方に見えるはずの大天井岳の姿は、もはや遠い過去の記憶になりつつある。

しかしもう後ろは見ない。

前だけを見つめて進んでいくのだ。

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しかしこれが前なのか後ろなのかも分からない。

しかもここに来て、ジャパネットたかたのように「なんと今なら寒風もセットでご提供!金利手数料はいりません!欲しいのはあなたの命の一括払いです!」とばかりに寒風で殺しにかかって来た。


猛烈に寒い。

そして烈風はどんどん強くなる。

おまけに今日に限って見事にグローブを忘れて来ているという仕込みの妙。

瞬く間にお手手の感覚が薄れて行く。

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そしてどこまでも続く白いゴーロ地帯。

もうそこには夢や希望が介入する余地は見当たらない。

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やはり醜いアヒルの子は、景色すら見にくいのか?

しかし一方で、眼下の白は徐々に消えて行って少し景色が見え始めた。

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ついに神の粋な演出が始まったのか?

いよいよ白のカーテンが一気に開かれ、この壮大な大劇場に「ご来光」がご登場する瞬間。

そして「お前は白鳥の子だったんだよ」と高らかに歌い始めるのだ。


さあ、野口五郎岳の山頂が見えて来たぞ。

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何やらさっきより暗くなってる気がしないでもないが、時間的にはばっちりご来光の予定時刻。

はるばるこのようなクソ重い物を背負って、無駄すぎる大回り道をして来たのはこの瞬間のため。

なんかさらに風も強くなってるけど、きっとこれは勝利への追い風だ。


さあ、野郎ども帆を揚げろ。

ヨーソロー!

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ヨー白ー!




分かってはいたんだ。

こうなる事くらい。

いいじゃないか。

少しくらいポジティブになってみたかっただけだ。

私は白鳥の子なんかじゃない。

所詮は悪天候に取り憑かれた、ただの白豚の中年だったのだ。


さて。

いつもの景色、いつものネガティブさでやっと平静を取り戻したぞ。

冒険の航海に、ご来光なんていうくだらない妄想は必要ない。

あんなものはCGである。

先を急ごうか。


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5:20


野口五郎岳を制した私は、次なるステージ「真砂岳(まさごだけ)」に向けて進路を取った。

相変わらず私の行く手は、お先真っ白である。

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しかし私は迷わず突き進む。

幸いここの稜線は比較的歩き易く、起伏もそんなに激しくない。

この稜線からの五郎池の眺めも実にいい感じだ。

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しかしである。

この道が歩き易くて起伏が少なかったのには意味があった。

私はこの時点で気づく。

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GPSを見ると、なんといつの間にか真砂岳を通り過ぎていた事に。

実は私が歩いていた道は山頂を通らない巻き道だったのだ。


ここで我が心の中でAくんとBくんが激しく論戦を交わし始める。

Aくんは言う。

「真砂岳行くならまた来た道を随分と戻っていく事になるよ。もう別に真砂岳にこだわらなくて先に進もうよ。どうせ行っても真っ白だよ。こんな重い荷物背負ってるんだし、今は少しでも無駄に体力と時間を失っちゃ駄目だよ。」と。

確かにAくんが言う事はもっともだ。

正論過ぎて反論の余地が見当たらない。


しかしBくんはその正論に対して「フッ」と鼻で笑ったかと思うと、

「それではロマンがないじゃないか。そもそも今回の行程で真砂岳だけ踏まないってのはスッキリしないし画竜点睛を欠くってもんだ。荷物が重いだ?無駄に時間を失う?何言ってるんだ。お前はパックトランパーだろう。荷物はここに置いて走ればいいじゃないか。トレイルランニングればいいじゃないか。だめよだめよも好きのうちじゃないか。きっと真砂岳からの眺めは素晴らしいぞ。」と。

私はそのBくんのその反論に対し、ポーンと膝を打った。

答えは簡単だったのだ。

マゾればいいだけの事だったのだ。


こうしてマゾ麻痺に陥っていた私は、その場に荷物をデポして元来た道に向けて走り出した。

もう何が正しくて、何が不正解なのかも分からない。


そしてある程度走った所で気づく。

これ全部戻ってたら確かに時間がもったいない。

そこで横を見上げるとこの真砂岳までの道なき「直登」バリエーションルート。

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いよいよ冒険色が強まって来た。

行けると判断した私は、その直登ルートをガシガシ登って行く。

振り返るとこの状況。

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今ならなぜ五郎池だけ絶景が見れたのかよく分かる。

余計な高度感を演出するためだったのだ。


やがて私は真砂岳直下の稜線に到達。

そしてBくんが言ってた「きっと真砂岳からの眺めは素晴らしいぞ」の言葉を信じて山頂を目指す。

あえて苦難の道に飛び込んだ者にのみ与えられる真の絶景。

着いたぞ。


これが真砂岳だ!

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やっぱり真っ白だけだ!


何ともみすぼらしい山頂と白との見事なコントラスト。

きっと晴れてれば「無理して来て良かった」と思える絶景スポットなんだろうが、私にとっては無駄に時間と体力を失った絶望スポットとなった。

そして来た道は恐いから、大人しく正規ルートで遠回りして走って戻って行く。

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いかに無駄足を楽しめるか。

それが出来るパックトランパーの条件なのである。


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6:00


出会いがあれば別れがあり、そして再び新しい出会いがある。

私はついにこのアホほど長かった裏銀座の縦走路に別れを告げる時が来た。

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ついにここからは秘境を目指すための下山戦線。

健脚下山道と言われる「竹村新道」のスタートである。

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何気にこの竹村新道は、あの北ア三大急登のブナ立尾根よりも標高差がある道。

とにかく長くて急坂な上崩落箇所も多く、「あくまでも健脚者向きの道」とご紹介されているマゾの殿堂。

そこに何故かパックトランピングスタイルで挑む愚かさよ。

しかし猛烈な苦難の先にこそ男のロマンは光り輝くのである。


そしてズガーンと荒々しく伸びて行く竹村新道のロマン道。

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早くも吐き気を抑える事が出来ない。


竹村新道は簡単に言うと、下山道とは思えないほどのアップダウン連続の尾根を散々歩かせた上で、ひたすら長い距離の大急降下の道で下山させるという気の遠くなるようなお笑い下山道場なのである。

キックボクシングで例えるなら、12ラウンドまで延々とボディブローを食らい続けた挙げ句、延長58ラウンド目まで延々と両膝にローキックを打たれ続けるといった修羅の道。

生半可なマゾが立ち入っては行けない領域なのである。


しかし一方で、素敵なお花がかなり咲き乱れている隠れたメルヘンスポットだったりする。

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そしてふと視線を前方に移せば、雲間から光が降り注いでスポットライトのように山を照らしている。

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なんと幻想的な光景。

これはみんなが言う程、この竹村新道は厳しいだけの道じゃないのかもしれないぞ。


なんて思って前を見るとご覧の有様。

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このようにガッツリ下らせておいてまたガッツリ登らせるという、パックトランパーにはたまらない無駄足感が素晴らしい。

そんな道が延々と続き、時折崩壊箇所や痩せ尾根もあってまるで休む暇がない。

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このボディブローの嵐は地味に、そして確実に私に重大なダメージを蓄積させて行く。

とにかく長く長く辛いのである。


そんな中、本日3つめのピークハントとなる「南真砂岳」に到達。

正直3枚とも「同じ場所か?」と思える程に背景は同じである。

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しかし同じではないのが私の疲弊っぷりだ。

もはや山頂標識も見当たらなかったからここが山頂なのかも分からなかったが、もうこの頃にはそんなものはどうでも良くなっていた。

そして私が泣きそうな顔になっているのは、ここにきてついにあのお友達に掴まったからである。

「雨」である。


いよいよ満を持して現れた大御所の安定した攻撃。

私は外部からのずぶ濡れと、内部からのムンムンに弄ばれながらもひたすら突き進む。

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そして散々弄ばれた後、雨が上がる。

私はカッパを脱いでカメラを取り出す。

するとまた雨が降る。

カッパ履いてカメラザックイン。

雨上がる。

脱ぐ、出す。

雨降る。


いいかげんにしてくれないか?

なぜこんな過酷な場所で、郷ひろみみたいにジャケットを脱いだり着たりし続けなければならないのか?

この無駄に重い荷物を何度も下ろしたり担いだりする作業だけでも本気でしんどいと言うのに。


しかしそんな私をあざ笑うかのように、延々と尾根道は終わる気配がない。

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もう下山と言うより普通に縦走登山だ。

で、大概かっぱを脱いだ時に限って、このように両サイドから濡れた葉っぱ達が襲いかかって来る。

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こいつらの「歓迎びしょ濡れハイタッチ」によって、僕のサポーツタイツから靴下から靴までことごとくびしょ濡れになって行く。

雨がやんでいても、結局はずぶ濡れになるのはドブネズミの運命なのか?

しまいには濡れた靴下から水が靴内に侵入して、不快感と靴擦れの悪化を熱烈サポート。

ここまでの疲労度もどう表現していいのか分からない程にぐちゃぐちゃだ。

もはや王道の地獄である。


もう濡れた頬が雨なのか涙なのかも不明な厳しい状況だったが、とにかく進むしかない。

下山道なんだが、本日4つ目のピーク湯俣岳へのスペシャルな登りに突入。

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噂には聞いていたが、この湯俣岳までの登りが中々の大急登連続で吐き気をこらえる事が出来ない。

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何度も立ち止まっては、電源の切れたASIMOみたいにその場に立ち尽くす。

その度に何度もGPSで現在地を確認するが、当たり前だが絶望的に進んでいない。

こんなにキツい戦いは本当に久しぶりだ。


やがて8000m級の登山者と同じような限界的な動きで湯俣岳山頂に到達。

そしてこれだけの苦労、これだけの地獄の果てに現れた山頂。

この苦しみが報われるには並大抵の絶景ではすまされない。


そんな気持ちの私の前に現れた湯俣岳の山頂がこれである。

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もはや白い景色すら見えない展望ゼロの光景。

北アルプスの名のある山とは思えない程の「三角点のみ」という潔さ。

こんなに報われない人生があっていいものだろうか?


もはや三脚を出す気にもなれない。

一応記念写真を撮ったが、若干私はキレている。

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過酷なり、竹村新道。

しかしここが地獄の一丁目と言われる所以は、ここからの長過ぎる急下降タイム。

いよいよここから延長ラウンド突入で、延々と膝にローキック食らい続ける戦いの始まりなのである。


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9:00


私は泣いていた。

竹村選手のローキックが凄まじかったのもあるが、仲間であるはずのクソ重い荷物による膝への負担が尋常じゃないのである。

しかもそんな圧倒的な劣勢の中、ついに雨が「猛烈な土砂降り」へとランクアップ。

もうこの時の惨めさと辛さは言葉では表現できそうにない。

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今誰かに優しい言葉を投げかけられたら、私は人目もはばからずにその人に抱きついて号泣した事だろう。

いよいよ肉体も精神も限界を突破してしまった。

それでもそんな哀れな私に、雨と竹村選手と荷物の攻撃は容赦なく続いていく。

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そもそも、なんだかスタートした頃よりも荷物が重い。

普通2日目ともなれば荷物は軽くなるものだが、私が背負っている大半が登山と関係ない物達なのでほとんど重さが変わらない。

それどころかここまでの雨で水を吸ってるのか、体感的には26キロくらいの重さに感じる程だ。


標高も下がって暑くなって来て、ジメジメした世界が猛烈な不快感となって襲いかかる。

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もう楽しい要素が一つとして見当たらない。

これが何かの大会なら迷わずリタイヤを宣言している局面だが、当然勝手に一人でやってる事なので一切の救いの手は伸びて来ない。


途中、「ちょっといっぷく... 木かげ処」と書いてあるスポットが登場。

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しかし雨でいっぷくする余裕もなければ、木かげどころか全てが暗いかげの世界。

それでもその下の「湯股まで90分」という絶望的な数字を見て、その場で横になる。

もうどうせドブネズミなんだから、地面がビシャビシャだろうと何も気にならない。


そしてそこで最後のエネルギージェルを補給。

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本来コイツは練り砂糖みたいにクソ甘すぎて水無しじゃ飲めないんだが、その時の私は純粋に「うまい」と感じながら補給した。

それが何を意味するのかはこのジェル愛用者は分かるだろうが、体が非常に危険な状態だと言う事。

もう体のエネルギーが枯渇状態で、とにかく甘い物を欲して欲してしょうがないのである。

この時の私は「今ならこのジェルを大ジョッキでも軽く飲み干せるぞ」と言い切れる程に疲弊していたのだ。


まさに地獄。

ちなみにこの時の現在地がここ。

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ちゃんと地名も「地獄」になってるのね。

言い得て妙である。


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10:00


地獄の亡者と化した私の徘徊は続いていた。

もはやここが現世なのか黄泉の世界なのかの区別もつかない。

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この延々と終わらない長い地獄に、普段はそんなことしないけどさすがにiPhoneで音楽を流して気を紛らわせる。

とにかくこの辛い地獄が早く終わって欲しいという一心で。

あれ程嫁に「行かせてください」と懇願してまでやって来たのに「早く終わって欲しい」と言ってる時点でおかしな話だが、パックトランピングスタイルでこの状況だと誰だって帰りたくなるはずだ。

そんな後悔を全身に身にまとい、ローキック下山は続く。

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道もぬかるんだゲリ道が多く、滑って踏ん張る度に毛穴から「ブシャッ」とエクトプラズムが放出されて行く。

そんな状態でも竹村選手の追い打ちは凄まじく、ブナ立尾根以来の「ミストサウナ」攻撃。

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そんな中、ゲリに足を取られて豪快にケツから転倒。

もちろんすぐには立ち上がれない。

ただただ惨めで愚かな己をそこでしっかりと噛み締める。


「もう二度とこんな事はしない...」


ついにそう声に出して言ってしまった瞬間である。


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10:30


もう私の記憶は何度か飛んでいる。

時折子供達の笑い声とか、友達の顔とかが走馬灯のように浮かんでは消えて行く。

いよいよ現世にお別れを告げるときが来たようだ。


そのような状態に追い込まれた私を見て、さすがに竹村選手も気の毒に思ったのか水戸黄門のように「モクさん、雨さん。もうここいらでいいでしょう。」とやっとこさ雨を止めてくれたのである。

そして「これが目に入らぬか」とばかりに「展望台」と言われる場所が登場。

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地図には「槍ヶ岳の眺めが素晴らしい」と書いてあった場所。

もちろん槍ヶ岳なんて見えやしない。

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私に見えるのは槍ヶ岳ではなく、やりきれない思いだけだ。


しかしである。

この展望台から、「あの場所」は見えたのである。

ついに目指す秘境「湯俣川」をこの眼下に捉えたのだ。

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会いたかった...。

やっとあんたに巡り会えた....。


通常なら高瀬ダムからたった3時間で行ける場所を、今私ははるばる30時間くらいかけてやっと目にする事が出来たのだ。

なんて無駄な地獄だったんだろうか?


さあ、待ってろよ秘境湯俣川。

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なんか妙に白く泡立った所ばっかで増水してるように見えるけど、今はそれは見なかった事にしておこう。

音も轟々言ってるよね。

それも聞かなかった事にしておこうか。


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11:00


終わった。

竹村新道との泥仕合がついに終わった。

やっと竹村新道の終わり、晴嵐荘に辿り着いたのだ。

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ガッツリ倒れ込む。

しばしそこで気を失ってから、もそもそと動き出して濡れた荷物を乾かす。

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そしてその間、この晴嵐荘に存在するという「旭超乾」に匹敵する秘宝を求めて受付のベルを鳴らす。

すると中から可愛らしい女性が登場し「お疲れさまでした」と言って来た。

長く人の温もりに飢えていた私は、思わず「好きです」と言って抱きしめてしまいそうになってしまったがグッとこらえる。

そして彼女にそっと400円を手渡す。

彼女はニヤリとしたかと思うと奥に消えて行く。

そして中から不気味な「シャリシャリシャリシャリ」という音。


やがて外で倒れている僕の元に彼女がやって来て、笑顔でその秘宝を手渡してくれた。

それがこの古代中国に伝わる秘宝「檸檬砕氷椀」なのである。

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軽い脱水状態でこいつに挑んでも大丈夫なのか心配だったが、私はその秘宝にガッと食らいつく。

たちまち疲れきった体に、秘宝から溶け出した檸檬詩露津布がしみ込んで行く。

そして水分を求める体が、「もっともっと」と砕氷を熱く求める。

私はその要望に抗う事が出来ず、砕氷をガッツガッツと体内へ。

すると、たちまち頭蓋骨内にほとばしる電撃ネットワーク。

もだえる私。

突如食らった強烈なる檸檬砕氷椀のベアークロー。

まるでキン肉マンゼブラチームの先鋒「ザ・マンリキ」にこめかみを挟み込まれている気分。

しかしその激痛の先に待っていたのは清冽なる爽快感。

さすがは伝説の秘宝である。



こうして私は「旭超乾」に次いで「檸檬砕氷椀」までも手中に収めた。

しかしあくまでも私が目指すものは、あのひとつなぎの大秘宝「白肌パイオツ」のみ。


檸檬砕氷椀で多少息を吹き返した私は、その大秘宝を目指して再び動き出す。

晴嵐荘からこの橋を渡って、その場所を目指すのだ。

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しかしこの橋の上には、今後の激戦を予感させるメッセージが。

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まさかこんな所にアイツがいるなんて。

ここに書いてある通り、今アイツに出て来られたら私はひとたまりもないぞ。

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ひとたまりもなく抱きついちゃうじゃない。

今はとにかく優しさに飢えているのだ。


そしてこの橋の上から、初めて高瀬川源流部の流れとご対面。

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うすうすは気づいていたんだが、ものすごい流れになっているではないか。

そりゃそうだ。

昨日の国連軍豪雨からの本日の土砂降り。

増水してないわけがないのである。


私の心の中に「まさかここまでパックラフト担いで来て下れないなんて事になるのか...」と不安が大増水した事は言うまでもない。

ここまで来て下れなかったら、本当にただのセルフ拷問じゃないか。


しかしそれは反面、水量が少なそうな湯俣川は増水してちょうど良い状態になっているかもしれないという事を意味する。

私は希望を胸に、大秘宝獲得とパックトランパーとしての偉業の為に先を急ぐ。

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なんか上に行けば行く程勾配がきつくなるのか、水流の激しさと轟音が凄まじい。

写真で見る限りは「すごく楽しそう」と思うかもしれないが、私は激流派ではないしもうそんなに頑張れる体力が残っていないのだ。


やがて私は、ついに「秘境の入口」の前に立った。

IMGP5747.jpg

ちょうどこの先が、地図上に「地獄」と書いてあったズバリその場所。

いよいよこの長かった冒険の旅も総仕上げ。

その地獄の再奥にあるという大秘宝「白肌パイオツ」とはどんなものなのか?

そして湯俣川にはもう一つ「熱湯小魔亜舍瑠」という幻の場所も存在するという。

その場所では過去に何度も身ぐるみを剥がされて、多くの旅人が全裸で目撃された事がある場所らしい。

そんな湯俣川で、やっと念願の川下り。


果たして悲願は成就するのか?

それとも「Mr.報われない男」の既定路線は変わらないのか?



随分と長い長い遠回りだった。


いよいよ最後の冒険の始まり。

そしてやっと本題の始まりでなのある。




極マゾ後悔日誌4へ 〜つづく〜





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ついに来ましたね、湯俣川!待ってました!

次回はいよいよ大秘宝の登場でしょうか、それともお約束のおマゾによる大悲報のレポートでしょうか?

いずれにしても期待しています。
2014.09.10 19:22 | URL | こういち #- [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014.09.11 14:58 | | # [edit]
こういちさん、まさに「やっと」です。
これやってる時もそうですが、正直こうして記事で書いててもここまで来るのが気が遠くなる作業でしたよ。

さあ、次回はこの人が笑顔全開で湯俣川を漕ぎまくってる回になりますね。
そして爆笑しながらイワナ釣りまくってスーパーハッピーエンドに向かって行く事でしょう。

ハッピー...

エンドに...


2014.09.11 17:13 | URL | yukon780 #- [edit]

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